3214.2016年3月1日(火) 認知症患者の家族はどこまで責任を負うべきか。

 早いもので今日から弥生3月である。寒暖のアップ・ダウンはあっても春へ向けて徐々に暖かくなっていくだろう。

 さて、2007年に愛知県大府市で認知症の男性が、1人で外出してJR東海の列車にはねられ死亡した事故により、多額の費用がかかったことから、JR東海が監督責任があるとされる家族に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は今日家族に賠償を命じた高等裁判決を破棄し、JR東海側の請求を棄却し家族側の逆転勝訴となった。

 1審の名古屋地裁では、男性の長男を事実上の監督者と判断し、妻の責任も認定し、2人に約720万円の支払いを命じた。これに納得出来なかった家族が控訴した2審の名古屋高裁では、長男の責任義務は否定したものの、「同居する妻は原則として監督責任を負う」として妻には1審の半額約360万円の賠償責任があると判断した。

 これに対してJR東海と家族の双方が上告していた。その判決が今日下されたのである。

 実は、この頃から高齢化社会の現状と認知症の高齢者介護の問題が社会問題として頻りに取り上げられ、高齢者を抱える家族の監督責任とはいかなるもので、どこまで責任を問われるのか、論議を呼んでいた。

 認知症患者を完全介護の福祉施設に預けることが出来るなら、家族としては救われる。だが、実際問題として介護すべき家族にとって希望通り引き取ってもらえることは、現状では中々難しい。仮にそうなったとしても安くはない費用を払いきれるかどうか確信が持てない。こういう家族にとって不安な精神状態にある時に、黙って家から出た認知症のお年寄りが事故を起こしたからと言って、それを家族が背負ってかかった費用を負担するというのは少々厳しい話だと思う。

 その点で、どういう判断が示されるか、今日の最高裁判決を注目していた。

 その最終判断が下されたわけであるが、その判断は家族を始めとして、大凡の部外者から受け入れられるものであろう。だが、JRにとっては多額の経費がかかったことでもあり、すんなり納得出来るものではない。当事者ばかりでなく、高齢化社会の課題として今後同じような事象が発生した時にどう対処すべきかという点で、参考しながら法的に、また実務的にどうすべきかを真剣に考える時に来ているのではないか。

2016年3月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com