今日は有力政治家を被告人とする裁判として、ロッキード事件の田中角栄被告に次ぐほど世間の関心を集め、強制起訴されていた民主党小沢一郎元代表に対する政治資金規正法違反の判決公判が行われた。検察審査会という民意が政権与党の実力者を起訴に持ち込んだ極めて異例の裁判で、無罪判決が下された。この無罪判決によって小沢派の国会議員たちは涙を流し握手して小沢氏の復権であると無邪気にはしゃいでいる。早くも党員資格停止処分を解除すると息巻いているが、国会議員としての立場をよく考え短絡的な行動は慎んでもらいたい。第一にこの無罪判決だって疑問だらけである。小沢氏が秘書らと共謀しなかったという点が証明されなかっただけであり、土地購入代金4億円の出所の不透明さや、虚偽を記載していたことは事実であり、そのプロセスは限りなく黒に近い灰色である。しかも現在政治状況が停滞している渦中で、小沢氏の復権を目論み小沢派内の結束を固めるための相談ごとなんかやっている場合だろうか、よくよく考えて行動してもらわなければ困る。
この裁判では3つの争点があった。①報告書の虚偽記載、②共謀、③起訴の有効性、である。裁判所は虚偽記載を認め、共謀があったことは認めなかった。起訴は有効とも判断した。検察官役を務めた指定弁護人は、裁判長の判決文の朗読の中で、九分九厘有罪だと信じて疑っていなかったらしい。それが思いもよらず無罪となった。この裁判はなにやら分かりにくいが、小沢氏に無罪判決が下されたにしても、依然として小沢氏の行った行為は完全にシロとは信じがたい。説明責任も果たしているとは言えないと思う。これまでの小沢氏の行動で疑惑を自ら晴らすような行動がまったくなかったからである。これまでもだんまり作戦を続けて、自らの身の潔白について公に説明したことがない。それより何より国会議員としての倫理感はどうなのか極めて疑わしい。国民として小沢氏の言動は信用できない。当分この判決は話題になるだろう。
野党の攻勢も激しくなるのは当然としても、民主党内でも野田首相の消費税値上げ法案提出に反対する勢力が勢いを増し、下手をすると国会審議がストップしかねない。また、今後検察側がこの問題にどう向き合い解決策を探っていくのかも注目していきたい。
さて、先日来福井県大飯原発の再稼動が大きな関心事となっているが、「ブレる」政治家として枝野幸男経産相が再稼動を前提に精力的に動き回っていることが話題を呼んでいる。これに対して地元民の声として、安全性の確認を訴え、再稼動は拙速に過ぎると異を唱えていた山田京都府知事、嘉田滋賀県知事らと歩調を合わせていた、橋下大阪市長が今日の読売新聞でおかしなことを言い出した。原発を再稼動しなくても今夏の電力需要を乗り切れるかどうかは関西府県民の努力次第で、仮に厳しいライフスタイルの変更が受け入れられないなら再稼動は仕方がないというような、判断を住民に下駄を預けるような言い回しに切り替えた。確かに橋下市長は完全な脱原発論者ではなかったと思う。しかし、再稼動に反対する姿勢を示しながら世論を取り込み、国や電力会社に原発再稼動について慎重に検討するよう求めてきた。それが、自分の意思に関係なく住民が決めるべきことであるとその発言はトーンダウンし、君子豹変と受け取られてもやむを得ない中途半端なものだ。
橋下市長の行動原理にはどうも市民の腹の内を測りながら、自分に都合の良い方向へ話を持っていこうとする狡さがある。一種のアジテーターの手法である。まだ、本心は測りかねるが、見出しに騙されてはいけない。市長の考えの中身をよく調べて彼の考えに賛同するのかそうでないのか、熟慮して決めないとどんでん返しを食う恐れがあると感じた。またひとり「ブレる」政治家首長の誕生か?