中国の「1人っ子」政策、いわゆる人口抑制策が壁に突き当たった。実施37年で制度疲労し崩壊した。その制度を強行した1979年当時、1家庭の出生率は5人以上だった。それまで高い出生率のため、中国は人口が爆発的に増え続け、当分貧困から抜け出せないと考えた中国政府は人口抑制策を検討し始めた。それが「1人っ子」政策である。その制度のお陰で徐々に出生率が下がり始め1995年以降はついに出生率は2人を割ってしまい、人口鈍化傾向に拍車がかかったのである。こうなると「1人っ子」政策は完全に行き詰まってしまった。
一方、わが国の人口は自然現象的に減り続けて少子高齢化社会へ突入し、昨年初めて人口総数が減少し始めて今や日本の将来像にも暗い影を投げかけている。
「1人っ子」政策が始まって以降中国では、子どもが欲しくても生活に余裕のない夫婦が、無理してでも高い税金を支払って2人目を育てるか、出生届を出さずに闇に葬るか、選択せざるを得なかった。
その中国政府は今年1月「1人っ子」政策を撤廃したが、その間国内では子どもを闇に葬る暗黒の影を残していた。それは2人目出産以降には罰金を科するという厳しい縛りのために、2人目以降の誕生児に科せられた罰金を支払えず、出生届けが提出されず戸籍がない「闇の子」が国内に数多く存在していた。いま制度は廃止したが、この「闇の子」をどう復活させるのかという新しい宿題を課せられることになった。
2011年の発表では中国国内の無戸籍者は途方もない数の約1,300万人もいて、学校に通えず、医療保険などの社会保障も受けられない差別的待遇を受けている。その存在が、国内外から厳しく批判されているのが現実である。だが、一部の大都市は国の政策とは必ずしも相容れず、戸籍登録に慎重な姿勢を崩しておらず、「1人っ子」政策のひずみ解消にはまだ一定の時間がかかりそうだ。
「1人っ子」政策を導入した中国は、2人目、3人目の子を出産した親に、年収をはるかに超える多額の罰金支払いを科してきた。地方政府は罰金と引き換えでしか戸籍を与えず、無戸籍状態の子供が大量に発生した。問題視した国は80年代から繰り返し、地方政府に「戸籍登録と罰金を関連づけるべきではない」と指示してきたが、現実には放置され、人口抑制の目標達成を重視する現場では無視され続けてきた。
中国政府は昨年10月、「1人っ子」政策を撤廃し「2人っ子」政策に変更すると発表した。関係部局は「闇の子」の解消についても検討し、昨年12月になって共産党主要会議で、「闇の子」の戸籍登録を徹底する提言を承認した。ところが、人口が集中する北京や上海など都市部では、今も戸籍登録を求める声に当局担当者が「まだ細則が決まっていない」などと対応を拒否する事例が相次いでいるという。また、いずれ問題となるであろう3人目以降の罰金制度は存続しており、「闇の子」を生む構造は温存されている。中央政府の意向に反して、地方レベルでは相変わらず「1人っ子」意識が根強くはびこっているのである。
しかし人口減少の実情を考えるなら金満国家・中国にとっては人口減少よりお金を注ぎ込んでも人口増加策へ軌道修正した方が長期的に見て遥かにプラスである。やはり自然に逆らった無理な法律は、いずれマイナスとなって還って来るということを、中国政府も漸く悟ったのではないだろうか。