いま国会会期中に「政治生命を賭けて」消費増税法案の成立を図ると強調していた野田佳彦首相は、消費税値上げに反対している民主党元代表・小沢一郎氏との会合のお膳立てを小沢派の輿石幹事長に依頼し、小沢氏もこれを受け入れ、近々野田・小沢会談が行われることになった。
さて、世間が注目するその会談は直ぐさま行われるのかと思いきや、のんびりしていて来週だという。この緊急事態下になぜ直ぐ話し合いをしようとしないのか。
原発問題は一向に進展せず、最高裁から違憲の指摘があった選挙制度改革はやる気なく、税と社会保障の一体改革はストップしたまま財政再建はまったく進まず、内閣の番頭役・藤村修官房長官がこんなに物を決めなくていいんでしょうかとつい愚痴を漏らしたそうだが、あまりにも酷い。野田政権は本当に何も決めることができない。政治の機能不全を地で行っている状態である。
ついに欧米第三の格付け会社「フィッチ・レーティングス」は、日本国債の1段階引き下げを発表した。これで日本の格付けは韓国より2段階、中国やサウジアラビア、チリより1段階下に位置づけられることになった。この格付け自体は、必ずしも経済の実態を表しているわけではないが、実際に韓国や中国を旅してみて、どう見ても日本がこれらの国に劣るようには見えないものの、贔屓目ながらこの格下げにはちょっと首を傾げたくなる。これでは日本人としてのプライドが傷つくことになりはしないだろうか。
日本の長期低落傾向を露呈した、その原因はとりもなおさず、先進諸国の中で最悪とされる日本の債務残高である。あまりにも多すぎる。しかし、大分前から問題になっている国の借金を減らすとのお題目だけは、時の政府が毎度約束するが、ほとんど実行された試しがない。あまりにも緩慢な財政再建への日本政府の対応に切迫感が足りないとフィッチは見てとった。いつものことながら、官僚と政治家、特に国会議員は地道な問題解決への取り組みに消極的で、自分にとって都合の良い事案にしか取り組もうとしないからだ。
もう少しスピード感を持って真剣に国政に取り組まないなら、改めて言ってやりたい。国会議員は税金ドロボーと言われても反論のしようがあるまい。
さて、先日東京電力の社外取締役のひとりに数土文夫・NHK経営委員長が内定した。ところが、その直後から公共放送のトップが、現在マス・メディアの厳しい取材対象となっている東電の経営陣に加わることは、報道の公正さが損なわれることになるのではないかと批判が相次ぎ、数土氏は受諾を表明してはいない。
しかし、数土氏の昨日の記者会見の質疑を聞いていると、本人はやる気満々でちょっと思い違いをしている節もある。
例えば、報道の中立性の懸念について、NHKは企業内統制が利き、番組の公正公平が保証される仕組みがしっかりしていて自分は番組には口出しできないし、東電の経営執行にも関与しないという。これではこれまで何のためにNHK経営委員長を引き受けてきて、今後なぜ無給で東電社外取締役なんか引き受ける気になったのだろう。