エジプトではモルシ氏が新大統領に決まったが、依然として軍部が隠然たる力を保ち「アラブの春」として民主化へ歩んだ筈のエジプトが、果たして国民の願っていた通り、民主国家として再生できるのかどうか危うい。
それにも増して中東で今一番混乱しているシリア情勢が、相変わらず政府軍と反政府軍の対立が戦争状態のまま収拾がつかない有様である。毎日激しい戦闘により、1日平均して100人の犠牲者を出している。治安が乱れ都市部では危険な状態が続いているため、国連停戦監視団がその職務である「監視」ができない。国連やアラブ連盟など国際社会の「国連停戦監視団の展開による事態の沈滞化」を目指した仲介は、事実上失敗した。
停戦のための安保理決議案は昨年来2度も廃案になった。いずれもロシアと中国が拒否権を行使したからである。完全に行き詰まり状態である。
一度はパム・ギムン国連事務総長が現地へ乗り込み、前国連事務総長のアナン特使とも話し合いながら、問題解決への出口を見つけようとしたが、双方とも強気の姿勢を崩さず、相手を批難する一方で事態解決へ前進できなかった。欧米諸国のアサド政権への厳しい批難に対しても、お決まりのようにロシアと中国が反論している状態で事態は好転しない。悲観的にならざるを得ないが、現状のままだとシリア政府軍と反政府軍の間で徹底的な戦闘を繰り返し、多くの犠牲を生んだうえで、力尽きた方が白旗を揚げる時期を待つしかないのではないかと残念な気持ちがする。
今日シリアの隣国・ヨルダンのテレビ討論の様子がビデオ放映された。1対1による、政府軍をかばう国会議員とそれを批難する国会議員の論争だった。徹底的に相手を論破しようとした一方がテーブルを倒して、相手は靴を投げつける激しさだった。司会者が仲に割って入ったが、それでも納まらない反政府軍支持者は、ついには小銃を取り出し、正に相手を撃たんかなのポーズまで取った。
先月訪れた時、ヨルダンでは隣国の混乱とは言え、国民は冷静さを装っているように見えたが、やはり本心は他人ごととして高みの見物とは行かないようである。
それにしても、自国のみならず、周辺諸国や欧米諸国を巻き込んで国際社会の顰蹙を買いながら、多くの国民を巻き込んで犠牲にし、独裁政治を止めようとしないアサド大統領の暴走を止める手立てはないものだろうか。