毎週金曜日の夕刻首相官邸周辺で、市民団体による「脱原発」「原発再稼動反対」のデモが行われ、原発反対の国民の声が少しずつ大きくなってきた。22日には市民グループの代表が野田首相と直接話し合いする場も持たれた。しかし、残念ながらこれはごく限られた30分程度の時間内で双方がお互いの言い分を主張するだけの平行線に終わり、市民団体側にはやや失望と消化不良の気持ちが残ったようだ。
原発に関しては、相変わらず政府・民主党内に容認派と反対派が混在していて、党としての見解がまとめられず、党としてどういう方向を目指し、どういう考えで政策を進めていくのかどうもはっきりしない。実際菅直人・前首相は脱原発を主唱していたし、野田佳彦・現首相は将来的には脱原発路線を歩むという煮え切らない態度に終始している。今判断の基準として提示されている「2030年」という目安の時期についても、民主党内有力者のひとり、政調会長であり、エネルギー・環境調査会長でもある前原誠司氏が、この期に及んで「2030年に拘わる必要はない」と言い出す始末で、その時期の変更も示唆するような無責任なコメントを述べる有様である。これでは、党内で意見がまとまる筈がないし、国民の信頼も得られない。
そこへ、また大きな問題が持ち上がっている。政府はこれまで原発を推進する前提で、すべての使用済み核燃料を捨てずに再利用するスケジュールの下にエネルギー政策を推進してきた。そのスケジュールの下に1993年建設以来トラブル続きで試運転すらできず、経費も予算を大幅に上回る2兆円を超えている青森県六ケ所村の中間貯蔵施設のようなゴクツブシがある。まったく無駄な投資に終わっている。しかし、脱原発を進めると核燃料の再利用の必要性がなくなるため、この六ヶ所村の施設は将来的に必要なくなるし、無駄遣いになる。当然核燃料サイクル政策の転換を考えざるを得ない。そうなると現在ある使用済み核燃料を再利用するための六ヶ所村以外の再処理工場の処遇も問題となる。原発を稼動する以上、使用済み核燃料、つまり核のゴミが排出される。このゴミを処理、或いは保管しておくための一時的な施設が中間貯蔵施設であり、その後ゴミを最終的に処理するための最終処理施設が必要である。だが、現在わが国には最終処理施設はない。中途半端なまま保管されている核のゴミを今後は最終処理しなければならず、それを地中へ埋めて捨てる直接処分ができるように法改正しようとの方針が経産省で考えられている。その場所の決定は今後に委ねられる。
先日福島県内の中間貯蔵施設の建設場所を巡って予定施設周辺住民から強い反対意見が出ていた現状から考えると、最終処理施設の建設には今後相当な時間と労力が求められそうだ。それでも今も毎日ゴミは排出されている。原発はトイレのないマンションと揶揄される始末だ。はてさて、この重要な使用済み核燃料排出物処理問題をどう解決しようというのか。