1979.2012年10月13日(土) どうにも気になって仕方がない。

 昨日取り上げた今年のノーベル文学賞受賞者・莫言氏に対する中国内の真偽取り混ぜたニュースが聞こえてくるが、やはりと思わないわけにはいかない。

 莫言氏は体制派作家と批判されたことに対して、「共産党が指導する中国で作品を書いているが、政党に作品の自由を奪われることはない」と反論し、併せて獄中の民主化活動家・劉暁波氏について一刻も早く自由を回復することを望むとも話した。だが、この後段のコメントについて中国メディアは報道しておらず、ネット上に流れる記者会見の動画もこの部分が削除されているという。なんだかんだと言っても、結局のところ中国政府にとって都合の悪い言動は国民の目に入らないよう強制的に消されてしまうのだ。残念ながら、これが「民主国家」中国の現実である。

 一方、昨日から俄かに大きな話題を提供しているのが、ノーベル医学・生理賞を授与された山中伸弥教授のiPS細胞が世界で初めて臨床に応用されたと報じられた読売新聞の記事である。昨日の夕刊からテレビニュースでも上へ下への大騒ぎである。研究を行い、手術を施したとされたアメリカのハーバード大やマサチューセッツ病院がその事実を否定して、疑義が一層広まった。東京医科歯科大卒の森口尚史氏という研究者が、他人の論文を盗作したと見られている。フットライトを浴びて迷惑そうな山中教授も「まだ早いんじゃないか。この段階で、十分な動物実験なしでいきなり人間というのは、私たちの考えからはあり得ない」と疑問を呈した。

 ニュースを真っ先に報道した読売新聞と共同通信は、取材過程を検証すると公表した。良きにつけ、悪しきにつけ、ノーベル賞のようなビッグトピックには、他人の功績を利用しようとするちゃっかりパフォーマンスが付きまとうものだ。しかし、森口氏の論文はアメリカはもとより、イギリスの科学雑誌‘NATURE’でも盗用と指摘され、折角の山中教授の栄誉にも傷をつけることになってしまった。どうも後味が良くない。山中教授には同情するばかりである。

 さて、何もしない政治家について、2つのことが気になった。ひとつは、自民党が大物議員引退により世襲回帰が目立ち、次の総選挙では前回総選挙のマニフェストで決めた世襲の原則禁止が形骸化しそうになったことである。これも民主党がだらしないせいで、自民党には若くして政治環境に馴染み、政治を体で知っている人として、むしろ世襲議員の方が適材であるとして、恥ずかしげもなく前言撤回を叫び出したのである。事実公募で候補者を選ぶと言っているが、その公募に名乗り出てくるのが、武部勤・元幹事長、福田康夫・元首相、中川秀直・元幹事長、大野功統・元防衛庁長官ら大物議員の子息である。これでは中国の共産党幹部の子息らのグループ・太子党と変わらないではないか。それより政治家の親類以外は政治には向かないと考える世襲賛同派の思い上がりが許せない。それなら民主党と同じ、マニフェスト違反ではないか。

 もうひとつ気になったことは、「戦争も辞さずと石原都知事が発言した」と、野田首相と石原都知事との会談内容を前原誠司・民主党政調会長が軽々しく明かし、石原都知事を批判したことである。会談内容が事実なら看過できないことであるが、それよりこんな際どい内密の話を党の幹部が何のためらいもなく口外することに危機感を覚える。尖閣諸島国有化によって日中関係が険悪になった原因を、決定した自分たちではなく石原知事の責任におっかぶせるつもりのようだが、決定したのは自分たちではないか。

 前原氏の無責任ぶりは、国交大臣に就任するや、マニフェストに書いてある通り、八ツ場ダム建設中止と宣言したが、その後任の前田大臣が中止命令を中止してもマニフェスト違反と責めるわけでもなく、自分が在職中の業務についてまったく無頓着なのである。自分の仕事に責任を持てない人物は何を言っても信用されない。こういう人物が党の中枢に座っていることが、民主党の一番信用できない点である。

2012年10月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com