昨日アメリカとイスラエルが、イランの首都テヘランの最高指導者ハメネイ師公邸にミサイルを撃ち込み、公邸は跡形もなく崩壊した。今朝トランプ大統領はハメネイ師が死亡したと発表した。同時に、政権の中枢であるナシルザデ国防相や、革命防衛隊のパクプール総司令官も亡くなったと伝えた。イランの31州のうち24州で被害が確認され、小学生を含む200人以上が死亡したと報道されている。これは国際法や、国連をまったく無視したアメリカ流の荒行である。日本にとっても国内消費の石油の約8割を中東諸国に頼っていて他人事ではない。いずれはっきりするだろうが、えらいことになったものである。
この米軍攻撃に対してニューヨーク・タイムズは直ちに、‘Why Have You Started This War,Mr.President? (なぜこの戦争を始めたのか、大統領?)’との社説で、大統領がイスラエルと協力してイランへの軍事攻撃を命じたことを強く批判した。
社説では、トランプ氏が2024年大統領選で「戦争を終わらせる」と公約したにもかかわらず、就任後1年余りで7カ国に軍事攻撃を命じてきたと指摘した。今回のイラン攻撃についても、昨年6月の核施設空爆を大きく上回る規模になる可能性があるとされる中、「なぜ米兵の命を危険にさらし、大規模な報復を招くリスクを負うのか、説得力ある説明がない」と批判した。
また、アメリカの憲法が宣戦権を連邦議会に付与しているにもかかわらず、議会承認を得ていない点も問題であるとした。6月の攻撃でイランの核計画は「壊滅した」とするトランプ氏の発言についても、米情報機関の分析や今回の追加攻撃がそれを否定しているとし、「真実を語る責任を軽視している」と厳しく断定した。
そのうえで軍事行動が将来的に正当化され得る可能性を完全には否定しない。イランが北朝鮮のように核兵器保有に至る事態は避けるべきだとしつつも、重要なのは「責任ある大統領」であれば、①目標を明確に説明すること、②なぜ今攻撃するのかを示すこと、③議会の承認を求め同盟国と連携すること――が不可欠だと強調し、トランプ氏はそのいずれも果たしていないと批判した。
これまで、メディアを主に、アメリカ国民の声はトランプ氏に対する批判はあっても、表立ってこのように堂々批判することはなかった。それがこのところのぼせ上がる大統領に対して明確に批判するようになったのは、ヨーロッパの国々など国際社会から非難が集中し出したことに、アメリカ・メディアの中心でもある新聞社として、もう黙ってはいられないとばかり立ち上がったのだ。これによってトランプ・サイドも今秋の中間選挙を意識するのではないだろうか。
空爆後急遽開かれた国連安保理事会では、グテーレス事務総長が「国際的平和と安全に対する重大な脅威を目の当たりにしている」と危機感を示し、双方が直ちに交渉の場に戻るよう求めた。これに対して、アメリカのウォルツ国連大使は、イランとの核協議はイランに真の交渉意思がなく失敗したと述べた。これに対して、イランのイラバニ国連大使は、交渉の最中に攻撃し、100人以上の子どもが死亡したとして人道に対する罪だと厳しく反論した。
お互いに自己の立場を主張したわけだが、イランでは王政を倒したホメイニ革命によりイスラム主義体制を堅持し、1989年ホメイニ師の死後ハメネイ師が後継者として36年余に亘り、国家の最高指導者として行政、立法、司法3権のすべてでトップの座にあって国をリードしてきた。その権力者が亡くなってイランは今後いかなる政治体制を作り上げていくのか、当分目を離せない。