コロナ旋風が消えて観光業界も漸く活気を取り戻しつつある。2025年に日本を訪れた外国人観光客(インバウンド)が、初めて4千万人台に達した。24年に過去最高の3,687万人になって、僅か1年でこの数字とは少々驚きである。人口減少傾向の中で、国内の宿泊や観光業はやや先行きが暗い。その中で外国人の訪日は、観光業界のみならず、国内経済にとっても大きな福音である。実際25年の訪日客による国内の消費額は、ざっと9.5兆円で、防衛費の支出額を完全に上回るほどである。現在中国における対日感情が悪化して、日本へ渡航自粛を中国政府が要請し、日本への観光客が急速に減り、例えば昨年12月の僅か1カ月間の対前年同月比で約45%も減少した。それでも全般的なインバウンド客拡大傾向は、益々拍車がかかり、いずれ日本経済を支える一大産業に発展する可能性がある。
しかし、インバウンド業が歓迎される一方で、必ずしも受け入れられない一面もある。それは、しばしばいわれているオーバーツーリズムである。過度な観光地化によって、地域住民の生活環境が脅かされることである。騒音や、交通障害など地域の住民が通常の日常生活ができなくなるような事態である。例えば、イタリアのベネチア、国内でも京都市内が最近特に話題になっていて、地域としての防衛策まで検討されている。ベネチアの非居住民に対する入島税の徴収などである。日本政府も来年度中に国際観光旅客税(出国税)を現在の1千円から3千円に引き上げ、その財源とする計画である。
それにつけて想い出すのは、旅行会社に勤めていたころは、ほとんど海外旅行アウトバウンドの企画、販売に関わっていたが、日本屈指の観光地へ親会社がハードインフラである交通機関やホテルなどを所有していたので、それを組み合わせた特殊なパッケージ旅行商品を企画した。外国人がガイドなしでも英文パンプレットの案内に従ってツアーを楽しめる仕組みになっていた。企画は専門的なジャーナリストらに評価され、新聞にも紹介され、現在の日本政府観光局、AMEX、アメリカの旅行新聞などにも好意的に取り上げてもらった。ユニークで他社では真似できないパッケージだったが、残念なことに当時はまだインバウンドが、流行するほどではなかった。それでもいずれ一般に周知されれば、ヒット商品になるだろうと信じていた。
ところが、このパッケージは夢物語に終わってしまった。まだ宣伝も行き届かず、まだ販売も伸びない時に、そんなに経費や時間をかけられない。他のツアーを企画するようにと親会社から販売中止を申し渡されてしまったのである。今思うとあのパッケージが手元にあれば、このインバウンド・ブームの乗って販売も伸びただろうと悔しい気持ちもある。
プランナーとして、今あのパッケージ商品が店頭に並べば、多くの外国人観光客が興味を抱き、購入し、素晴らしい旅を楽しめるだろうにと残念でならない。