2週間ほど前にイギリスで難民の受け入れに反対する抗議デモが、首都ロンドンを中心に大規模に行われた。イギリス国内では難民申請をする人たちとイギリス国民の間で、もめごとが絶えず、その最中にいわくつきのアメリカ人イーロン・マスク氏が、「大規模で制御不能な移民の流入がイギリス人の破壊の要因になっている」などと騒ぎを煽っている有様である。このところヨーロッパの右翼勢力による破壊的行動は、ドイツやイタリアでも注目されている。特にドイツ東部では、リベラルの左派系政治家への暴力が止まらない。標的とされているのは移民の受け入れに寛容で、LGBT等性的マイノリティーの権利向上に熱心な「緑の党」に対してである。ドイツ東部は、かつての東西ドイツ時代を考えると想像も出来ないくらい極右政党の地盤となっており、支持率も右翼が3~4割の選挙区が多い。そんな中で温暖化対策、ジェンダー平等、国粋主義や愛国主義の排除、移民共生などを掲げる左派インテリ層は、極右勢力にとって最大の敵である。かつての社会主義政権下にあった東ドイツが、今や寝返って資本主義を乗り越え、極右勢力の強力な地盤と化してしまったのも時代の流れと国民性の故だろうか。
イギリスやドイツなどヨーロッパ各国で、反左翼思想が蔓延るようになったのは、トランプ大統領のトランピズムに強く影響を受けているせいもある。
これほどとは知らなかったが、アメリカを始めとしてヨーロッパでも近年格差が拡大していることがその背景にあるようだ。例えば、エリートになるための条件として、「大学院卒」、「語学が飛びぬけて堪能」、「豊富な人脈」、「高度なプレゼンテーション能力」などが、求められている。単に普通の大学卆や、何とか英語が出来る程度ではやっていけないそうである。
トランプ氏の影響が過大となったが、議会において政党間の論争によって重要事項が決定されるというより、大統領令を優先するかのような民主主義の基本原則である、「言論の自由」を蔑ろにする言動が支配するようになった。恐ろしい世界になったものである。
我々日本人が警戒しなければならないのは、欧米の反リベラルのような動きが、日本国内でも芽生えるというより日本国内へ伝播してくることである。すでに先の参院選挙で、右翼政党・参政党が進出した。彼らが唱えている「日本人ファースト」が、治安が悪化するとか、財政負担になると言って外国人排斥に繋がらないとは言い切れない。今や健全な民主主義は姿を消し、リベラル狩りが大きな顔をしている。トランプのご機嫌取りのために防衛費予算を増額し、国内に住民の了解も得ないままにとんでもない施設を設営しようとしている。
例えば、敵基地攻撃能力の装備として、長距離射程ミサイルを熊本県庁近くの一般住宅、病院、小学校などが建ち並んでいる住宅地帯の隣の自衛隊駐屯地内に設営する計画である。反リベラルが力を持つと国民の生命、財産も危険に晒されるということである。