10年ほど前にドイツ・ケルン市内の世界遺産「ケルン大聖堂」を訪れた神奈川大学学生が大聖堂に落書きをした。その謝罪を込めてこのほど大学が、ケルン大聖堂に聖堂の外壁にガーゴイルと言われる雨樋の役を果たす彫像を寄贈したというニュースが伝えられた。ちょっと粋な話である。彫像は第2次大戦で破損した19世紀製のものと交換する形で、昨年11月に高さ20mの外壁上に設置された。大聖堂の落書き自体はよくあることなので、そのお詫びにこのような彫像(170万円相当)を寄贈されたことに大聖堂は謝意を表明しているようだ。しかし、仮にもあの素晴らしい世界遺産に落書きをするような大学生の幼児的行為は、日本人として恥ずかしい。大学生が、どうしてこのような幼稚な所作を行うのか。40年くらい前に1度だけこの厳かな大聖堂を訪れ内部の神々しい雰囲気に感動したことを覚えているだけに残念である。
日本でも靖国神社などに反日派の外国人が落書きを書き込むケースが多く、神社としては困惑しているようだ。いずれにせよ他人の財産を傷つけるような幼稚な行為は、慎むべきである。
さて、自治体の中でもかなり財政的に恵まれた東京都は、首都圏自治体から羨ましがられ、教育費の支援などでは、それは自治体ではなく国が成すべきことであると皮肉られる有様である。都民が知らない間にいろいろな催しや施設を設営している。今話題になっているのは、いずれも我々都民がまったく知らなかったことだが、東京都庁舎の壁面に夜間になるとプロジェクション・マッピングとしてライトを当ててショーを行っている。見た目には、中々興味深く観光客にとっても楽しいショーであるが、何せその費用が馬鹿にならない。48億円もかかったそうである。確かにその場にいれば、派手で明るいライトによるイラストは見て楽しいものだと思う。しかし、膨大な経費を注ぎ込んで行う事業としては、原資は都民の税金であることも考えて、前以て都民に知らせたうえで、承認を得るべきであると思う。
そういう有効か、無駄か、よくわからない企画の二番煎じがまた実施されるようだが、これまた都民には無断である。それは、お台場海浜公園に観光客に向けて世界最大級の噴水を整備することである。その目的とは、公園の存在を訴え、臨海副都心の新たなランドマークとするとの考えである。ただ、これも我々ほとんどの都民が知らない間に計画(仮称:ODAIBAファウンテン)され、経費としても20億円を超える建設費が注ぎ込まれる。経費について、都の説明はこの設備は都民の税金ではなく、臨海地域の埋め立て地の売却や、貸し付けによる収入が財源と主張している。しかし、事前に都民に対してこのような説明は一切したことがない。都民が知らない間に、計画し建設して自らの実績とする小池都知事一流の点稼ぎのやり方である。普通こんな贅沢三昧の考えでは、いくら資金があっても足りなくなることは明白である。財政豊かな東京都内に生活していることが、将来的には都民にとってプラスなのか、マイナスなのか分からなくなる。
そこへまた5日に東京都が独自に大学生を対象に海外留学支援を打ち出した。計画自体は反対するものではない。しかし、それでも何らかの方法で都民に計画を説明する機会を設けるべきだと思う。この海外留学プロジェクトは、4週間以上の短期留学生500人に最大90万円、4か月から1年間の中長期の留学生100人には、最大で315万円を助成するものである。私自身学生時代に3or4カ月のウエスタン・ミシガン大への短期留学生制度がスタートして、受験したら幸い受かった。しかし、当時約45万円?の留学費用は個人負担で、父親は留学費用なんて親が負担するものではなく、どうしても行くつもりなら自分で稼いだ金で行くべきだとどうしても留学を認めてくれず、キャンセルした悔しい思い出がある。それを考えると今の東京の学生は幸せだなぁとつくづく羨ましく感じる。
東京都のこの留学生支援制度の予算は、ざっと計算しても7億6千5百万円ほどかかる。小池知事は記者発表の際得意顔で、今年12月ごろから留学希望者を募集すると語っていたが、事前に納税者である都民への説明を行うべきではないか。これもまた知事の個人的な点数稼ぎ・実績造りである。