6638.2025年7月16日(水) 参政党の拙速な公約「日本人ファースト」

 参議院選挙の投開票日が4日後に迫り、メディアでもしきり与党苦戦の状況を説明している。とりわけ今回はこれまでの選挙では話題にも上がらなかった外国人差別が、注目されている。この点に関して一昨日の本ブログでも取り上げたところだが、昨夕この問題について日本ペンクラブから緊急声明を発するので、その様子をYouTubeで見てほしいと会員に宛ててメールが送られて来た。今朝その緊急声明を述べる桐野夏生会長のスピーチを聞いてみた。

 そもそもトランプ大統領が叫ぶ「アメリカ・ファースト」と同じような主旨の日本人優位の「日本人ファースト」のような私見を公論にして、外国人を差別しようという考え方が一般論となって拡大することが恐ろしい。

 これは、今参院選で勢いづき結党してまだ5年の参政党が、街頭演説で「日本人ファースト」を訴え、支持を広げていることが懸念されたのである。参政党は、参院選の公約ばかりでなく、国家の在り方に関して憲法は戦前に戻るような「天皇は元首として国を代表する」腹案を堅持しているようだ。その一方で、「日本人ファースト」に対して反対論も表れて対立しているからである。ただ、選挙で旗色の悪い自民党が一部参政党に同調する動きをしているかに見え、これをメディアが取り上げ、ムードを醸成している。外国人政策をめぐる選挙の公約として自民党も、「運転免許証切り替えの厳格化と、『違法外国人ゼロ』の取り組み加速」を訴え、他方参政党は「外国人の生活保護支給停止、公務員の採用制限、日本文化の理解と遵守の厳格化」をアピールしているのである。他の政党もややトーンダウンしてはいるが、共産党、社民党以外は似たり寄ったりである。この参院選挙の最中に昨日政府は、省庁横断で外国人政策を担う事務局組織として、内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置したというから選挙公約だけでは自信が持てないのだろう。

 日本ペンクラブの主張は、参院選挙では参政党などから「違法外国人ゼロ」「日本人ファースト」「管理型外国人政策」など、表現の仕方は違えども、外国人を差別、問題視するような政策が掲げられ、「外国人犯罪が増えている」「外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している」「外国人留学生が優遇されている」といった、事実とは異なる根拠のないデマが叫ばれている。これらは言葉の暴力であり、こうしたデマと差別煽動が実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋がった歴史を決して忘れてはならないと言葉を尽くしている。

 私自身最近ペンクラブの活動を控えているが、これらの主張と行動には強く賛同している。

 気がかりなのは、この「日本人ファースト」=「外国人排除」の考え方が、海外から人種差別として批判的に取り上げられ、同時に戦前の朝鮮人や少数民族への差別のような空気を醸成するようになる恐れがないだろうかと言う点である。

 それにしても、この「日本人ファースト」を掲げて、急速に名を上げ、選挙に勢いを齎し、多くの当選者を得たら、その勢いは益々手が付けられなくなるだろう。熱気にばかり魘されず、冷静さを失わず、良識ある言動を取るよう願わずにはいられない。

2025年7月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com