今日正午過ぎから都内ホテルで元横綱白鵬の引退会見が開かれた。薄々噂には聞いていたが、現役引退後はあの大横綱が日本相撲協会を退職するとは思いも寄らなかった。何といっても20年間の力士生活で史上最高の45回の優勝実績を誇り、その内全勝優勝は実に16回に上る。勝利数も1187勝である。力士生活からは4年前の秋場所後に引退した。
これほどの大横綱には相撲協会に残り後進の指導に一役買ってもらいたかったところだが、白鵬の要望通り、退職を認める相撲協会はなぜもっとお互いに筋道の通った話し合いをして、お互いが納得したうえで退職会見は出来なかったものだろうか。況してや白鵬は、親方の資格を得るために日本国籍まで取得していたのである。
確かに白鵬は力士としては、断トツの強さを持っていた。しかし、言動面において羽目を外すことがあり、その身勝手な行動は顰蹙を買い日本相撲協会としては許せなかったのであろう。そんな時に部屋を引き継いで間もなく部屋の弟子が暴行事件を起こし、白鵬の弟子への対応が甘すぎたようだ。処分が甘かったとの批判が出ていた。
これから白鵬は、立派な実績を引っ提げて何をしようとしているのだろうか。日本相撲協会とは手を切った。但し、彼は彼なりに相撲を出来れば世界のスポーツへ盛り上げようとの前向きの気持ちがあるようだ。これまでアマチュア相撲界に対しては白鵬杯という15年間も続けているトーナメントは今や両国国技館で開催し、それなりの実績と効果を上げている。相撲を世界的なスポーツに育てて、将来はオリンピックに相撲競技を参加させることまで考えているようだ。これまで主に日本とモンゴルの少年たちが参加していたが、今年2月の15回大会では、ポーランドやブラジルを始め、14か国から参加者があった国際大会になったそうである。しかも、新横綱大の里は中学生時代に個人優勝をし、伯櫻鵬と尊富士は、中学生時代に団体で優勝している。他にも相撲界の多彩な人材を輩出している。
白鵬は、今後「日本の誇る相撲という文化を日本相撲協会の外の立場からその発展に貢献していく決意を固めました」と語った。どういう風になるのか分からないが、「世界相撲グランドスラム」と言うプロジェクトを考えているようだ。期待したいと思っている。
白鵬の件は、これで一件落着かも知れないが、相撲界を知る人の中では、過去の実績を上げた元横綱や大関に対して相撲界はやや冷たいのではないかとの見方もある。横綱経験者が親方としての定年を待たずに日本相撲協会を次々と去る例が相次いでいる。例えば、外国出身力士として史上初めて横綱となったハワイ出身の曙は相撲協会を退職し、プロレスラーに転職した。白鵬と同じモンゴルからやって来た幕内優勝25回の朝昇龍は、場所中に酒に酔って男性に乱暴したことが原因で現役中に引退し、親方として相撲協会に残ることがなかった。更に兄の横綱若乃花とともに若貴フィーバーと呼ばれた相撲人気を確立した、優勝22回の横綱貴乃花は相撲協会と対立して退職した。他にも弟子への傷害事件を起こした横綱日馬富士も辞めている。直近で横綱10人の内、半数を超える6人がすでに相撲協会を退職した。この辺りは、放って置けない問題で、精査してもっとすっきりした日本相撲協会に育ててもらいたいものである。