このところ日本郵便㈱の在り方に疑問を抱いていたが、それが昨日こともあろうに直の監督官庁ではない国土交通省からきついお灸をすえられたことが明かされた。実の監督官庁の総務省は何をやっているんだと言いたい。日本郵便㈱は国を挙げた大騒動の末に、2007年当時の小泉純一郎首相の郵政民営化のお声掛けにより、全国の郵便局がすべて官営から民営に切り替わった。サービスの向上、業務のスピード化などを訴えて日本郵便株式会社がスタートしたのである。
順調に営業していると考えていたが、必ずしも我々の願っているようには事業を展開してはいなかったようだ。私自身は比較的郵便にはお世話になることが多く、手紙や書籍をよく発送する。ところが、郵便料金が少しずつ値上げされ、郵便局時代にはハガキ代が50円、定形封書代が80円だったが、その後再三値上げされて現在ハガキ代が85円、封書代が110円になった。18年間でそれぞれ70%、37.5%の値上げである。また、従来郵便物は近辺へは翌日に配達されることが多かったが、今ではほとんど2日間を要している。サービスの向上にはまったくつながっていない。
更に疑問に感じているのは、郵便局の営業体制である。平日9時から午後5時まで営業しているのは良しとして、ごく最近になって1時間の昼食時間を採り入れ、完全に営業をストップさせてしまう。しかもその時間帯が各局によってバラバラであることである。銀行などのように一般の顧客に不自由させないということから、交代制などにより営業を中止したり店舗を閉鎖することはないが、郵便局は入口を閉め、1時間の休憩時間を取っている。その間利用者は待たされるだけである。
こんな対応で利用者が喜ぶ筈がないと考えていた時に、昨日国交省から厳しいお仕置きを受けたのだ。直接利用者に不自由や不利益を与える罰ではないが、結果としては利用者に影響を及ぼすことになる。郵便局で郵便物や貨物の輸送、配送に使用していたトラックやバンなどが、貨物自動車運送事業法に定められている法定の点検を行われなかったことから同法違反として厳格な処罰を科せられたのである。この処分により日本郵便は向う5年間現在抱えている約2,500台のトラックやバンが使用出来なくなる。このため集配事業などを他の運送会社へ委託することになる。これにより、輸送能力にある程度影響が出ると考えられ、郵便物の配達も遅れる可能性が強い。
現在日本郵便は17万人の従業員を抱えて、1年間に126億通の郵便物と43億個の荷物の配送を扱っている。日本の産業界でも突出して広域的な事業会社であり、一般国民にも少なからず迷惑をかけることになる。
これほどの制裁、処分を受けなければならなかった会社としては、余りにも経営者による現場の管理が甘かったのではないかと思う。例えば、貨物車を扱う局では運転手の義務とされている飲酒のチェックをしなかったり、点呼をしなかったり、また悪質にも記録を偽装していたことも国交省の監査により判明した。まだ会社側からこの件に関しては説明がない。
利用者の立場からすれば、配達業務をスムーズに行って欲しいし、郵送料の値上げもほどほどにして欲しいものである。これも偏に社員より経営者の姿勢によるのではないかと思っている。「親の心子知らず」、日本郵便㈱生みの親である小泉純一郎元首相は、この不祥事をどう思っているだろうか。