アメリカのトランプ大統領の言動が、政治、外交、経済、教育面等で世界中に複雑な問題を拡散させ、今や「トランプの行くところトラブルあり」の状態である。日本もその煽りを食い関税、防衛、日本に対する浅薄な知識において、とんでもないとばっちりを食っている。
そのトランプ旋風が、アメリカの教育界にも吹き荒れたが、先月政府機能縮小の一環として連邦教育省の廃止に向けた大統領令に署名した。今後は各州が管轄する教育担当部門が独自に指導すべきであると考えたようだ。しかし、広いアメリカ国土、多種多様な民族がいるアメリカを統一化し、一つにまとめる最も効果的な普遍的一貫教育を止めるというのはどういう意図だろうか。単に経費節減の対策とも思えない。
奇しくも昨日バイデン前大統領がシカゴで退任後初めて演説を行い、トランプ政権が社会保障局の職員を大量に削減したことを大きな損害と破壊をもたらし、国家がこんなに分断されたことはかつてなかったと厳しく非難した。
そこへこのほどトランプ政権が、大学教育界の名門ハーバード大学に対して、露骨な圧力をかけていることが分かった。その発端は、トランプ政権が学内でイスラエルへの抗議デモを理由に「反ユダヤ主義」や、「行き過ぎたDEI(多様性、公平性、包摂性)」があるとして、約90億㌦(約1.3兆円)の助成金や契約を見直す方針を表明した。最近のハーバード大に対する書簡では、反ユダヤ主義を警戒してか、人種などを考慮しない実力主義による職員採用、入学者選考、DEI取り組みの中止などを求めていたが、ハーバード大ではいかなる私立大学も連邦政府に乗っ取られることがあってはならないと、連邦政府の要求を毅然として拒否した。しかし、「改革」要求を拒否したハーバード大に対して、政府は約23億㌦(3千3百億円)分の助成金と契約を凍結すると発表した。大学教育や学問の自由が深刻な脅威に晒されているとの危機感が広がっているという。
教育省は先月ユダヤ系学生の保護に関する調査対象として、60大学の名を挙げた。中でもトランプ大統領の母校、プリンストン大も「反ユダヤ主義」を理由に2.1億㌦(3百億円)の助成金を止められた。だが、イスラエル抗議デモの中心となったコロンビア大では約4億㌦(6百億円)の補助金の取り消しを示唆されるなど厳しい追及を受け、政権の要求を受け入れることになり、警備や中東関連の教育を見直すと発表して、反って学内外から批判も出ている。その点ではジョンズ・ホプキンズ大学など他のエリート大学に対しても同じような圧力をかけている。
このところ関税についてトランプ大統領の強引なプレッシャーに対する各国の反対や、抗議などもあり、その発言が大分揺らいでいるが、対米貿易にかなりの比重を懸けている日本としても一大事であり、今日関税交渉役として赤沢経済再生大臣が訪米した。アメリカとの交渉によってどこまで日本側の主張を受け入れてもらえるか、難しい問題である。
最近朝日新聞が、トランプ大統領の言行録につき、粗探しのように紙上に採りあげているが、中でも数字的に大統領は根拠なしに思い付きで日本にとって不利な数字を挙げる点を批判している。日米安保条約についてホワイトハウスの閣議で、「アメリカは日本を防衛するために多額を支払う協定を結んでいる。アメリカが全額を負担し、日本は一切負担しない」とデタラメを言い、不満を表明する有様である。これに対して朝日は、トランプ氏の主張は事実とは異なると反論した。在日米軍駐留経費の日本側負担額は、1978~2024年度予算累計で、約8兆5千億円計上したと事実を記した。うそつき大統領をどうやって黙らせるか、大変な作業になると思う。
毎度思うことだが、このような気分次第で自己主張ばかりして、世界中を困惑させるような人物を、よくぞアメリカ人は大統領に選んだものである。いずれ全アメリカ人がそのしっぺ返しを受けることだろう。