昨年10月の総選挙で自由民主党・公明党の与党勢力が、衆議院の定数465議席の過半数に達せず、その後は政府の法案実施に野党の力を借りる四苦八苦の対応である。その割には何とか政策を実行しつつあるようだが、それでもこの先を考えるとあまり明るい展望が開けない。
そもそも自民党は前回の総選挙で過半数233議席を上回る247議席を獲得したが、昨年の総選挙でその内56議席を失って191議席に落ち、公明党も32議席から24議席に減らした。結果的に自民・公明の与党議席は279議席から215議席へと大幅に減少した。その一方で、野党1位の立憲民主党は98から148議席へ、国民民主党は7議席から28議席へ大きく票を伸ばした。これによって疑似自民党といわれる国民民主党は、自民党の方針に国民党の考えを強く主張し一部反映させることにもなった。
この総選挙の結果を分析してみると、自民党敗北の最大の原因は、派閥の裏金などの問題であり、自民党党首である石破首相の責任論がないわけではないが、就任後まだ間もないこともあり、責任を取って辞任するというまでには至っていない。立憲民主党野田佳彦代表は、特別国会に当たり野党間の連携を図ると言うが、予想外に票を伸ばした国民民主党の玉木雄一郎代表は、自民党との駆け引きによる戦法がより自党の存在感を高めるうえで効果的と考えたのか、野田氏の要望には応じる姿勢を見せていない。結果的に石破政権の政策には国民色が籠っている。
実は、野田代表の民主党政権退陣の要因となったのは、2012年12月に行われた総選挙で、野田代表があまり強く出られないのは、当時の野田民主党政権が安倍自民党に完敗を喫して退陣した悪夢が蘇ったからではないだろうか。
この時の民主党の負けっぷりも酷いものだった。責任を取った野田氏は首相を辞任するとともに党代表の座からも退いた。一方自民党は実に323議席を獲得し、大幅に単独で過半数241議席を上回ったのである。こんなにドラマチックなことがあるかと思えるような民主党の惨敗である。選挙の争点もなく、ただ原発ゼロに拘る民主党に対して、自民党が原発ゼロ見直しを迫っていた程度で総選挙自体も盛り上がりに欠け、投票率も59%で戦後最低の水準となるほどの有様だった。
その反面、これによって自民党はかつての勢いを取り戻し、第2次安倍内閣がその後安定政権を築くスタートとなった。因みに最近の自民党の凋落ぶりを知るうえでの参考上自民党の復活ぶりを取り上げてみる。民主党は230議席から57議席まで落とし、反対に自民党は118議席から175議席増やして、293議席となり、公明党も9議席増やして30議席となった。この結果により、自民・公明の与党が獲得したのは323議席となり、これにより定数の2/3を超えて、例え参議院で否決されても法案は衆議院で再可決できることになった。これによって懸念したのは、憲法改正論議に拍車がかかるのではないかということだった。幸い憲法改正は今も話題になるが、現状は難しい情勢である。