6137.2024年6月10日(月) インドの経済成長が紛争の原因に・・・

 今月初めに世界一の人口を数え、有権者数でも9億7千万人と言われる巨大なインドの総選挙の開票が行われ、モディ首相は与党として獲得議席は減らしたが、昨日3期目の首相に就任し、引き続き政権を担うことになった。何もかも巨大化するインドらしく、閣僚の数も71人もいるというから驚く。今インドは世界中からその経済発展ぶりが注目されている。発展の要因は、人口が増える中で中間所得層の割合が年々増加すると見込まれ、彼らが耐久消費財の購入に走るだろうと予想されているからである。国民の平均年齢は28歳と若く、中間所得層もこの10年間で倍増している。

 IMF(国際通貨基金)の成長予測によれば、2019~23年にインドのGDPは年平均7.7%の成長率を示し、成長著しい中国の5.9%を悠々上回った。それはアメリカの1.8%、日本の0.6%を遥かに凌駕している。30年には世界のGDPは、1位中国、2位アメリカ、そして3位にインドが参入し、日本は4位に下降する。更にドラマチックなのは、50年になるとインドは、アメリカを追い越して中国に次いで2位にランクアップすることであり、アメリカは3位に落ち、日本に至っては7位のメキシコに次いで8位にまで下落する。

 1人当たりのGDPで見れば、当然ながら人口の多いインドはかなり下位になる。ロシアやブラジルよりも下位にいる。現在の経済成長は、まだ初期段階であり、今後人口や中間所得層が増加することにより、経済成長が加速し、同時に1人当たりのGDPも増加するものと見られている。現在の50年の予測では、GDPベスト10からは、かつての先進国が3位のアメリカ、8位日本、9位ドイツ、10位イギリス以外は消え、途上国だった中国の1位を筆頭に、2位インド、4位インドネシア、5位ブラジル、6位ロシア、7位メキシコが入ってくる。

 インドがこのまま経済成長すると国際的に大きな影響を与えると警戒されている問題がある。インドは現在国民の8割がヒンドゥー教徒であり、宗教対立が懸念されるイスラム教徒は14%とされているが、それでも数にすれば2億人にもなる。そのイスラム教徒、及び少数派のシーク教徒に対してヒンドゥー教徒の警察権力による弾圧が厳しく、インド国内各地で暴動が相次いでいることである。モディ政権によるイスラム教徒弾圧は、国内ばかりでなく、今では国外でも頻繁に行われて、近年有力者、或いはテロリストと目をつけられたイスラム教徒の暗殺事件がしばしば伝えられている。アメリカ、カナダ、イギリスの捜査当局は、海外における反政府分子の除去を企んでいるインド当局の行動に対して警戒し、これらの国々の首脳は、直接モディ首相との会談で懸念を伝えたという。国内で総選挙が近づいているイギリスでは、インド系のスナク首相もこの問題に頭を痛めているようだ。

 インドは、現在経済成長とそれを支える人口の増加により、世界中から注目と期待を集めているが、思わぬところで躓きかねない。イスラム教徒が厳しい仕打ちを受けているインドは、アジアでもインドネシア、パキスタンに次いで世界第3位のイスラム大国である。アジアが中東のアラブ諸国を凌ぐほどのイスラム大国であることから、インドもいつまでもイスラム教徒を弾圧しているわけには行かなくなるだろう。インドの急成長によってヒンドゥー教徒のイスラム教徒いじめが脚光を浴び、それが国際社会の中で大きな問題にならなければ好いがなぁというのが率直な感想である。

2024年6月10日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com