今日は全国的に風の強い1日だった。東京でも八王子市内で最大瞬間風速28.1m/s、都心で 26.2 m/sと今年最高だった。通行人が風に押されて前へ歩けない姿がテレビで放映されていた。また、渋谷では強風により街灯が倒壊する有様だった。強風の中をウォーキングに出かけ、極力風の抵抗を避けるよう建物の塀際を歩いたが、それでもかなり風はきつかった。
さて、ウクライナ戦線で優位を保っているロシアにとって、ややショッキングなニュースがあった。それは、北大西洋条約機構(NATO)へ加盟申請していたスウェーデンの加盟が認められ、200年間に亘って中立国を維持していたスウェーデンが、NATOにとって32番目の加盟国と決まったことである。これによりロシア軍艦船がバルト海を通過することが難しくなった。2022年にロシア軍がウクライナへ侵攻した脅威に備えて、北欧のスウェーデンとフィンランドは長い間中立だったが、これを機にNATOへ加盟を申請した。フィンランドは翌年23年4月に加盟を認められたが、スウェーデンは置き去りにされ認められなかった。そこには、加盟国であるトルコとハンガリーの2か国が加盟に反対していたからである。トルコとはスウェーデン国内に居住する少数民族クルド人の武装組織の活動を承認しているとトルコ側に不満があり、トルコは加盟に反対していた。しかし、話し合いの結果、加盟に同意することになった。残る反対は、ハンガリーだった。NATO加盟には加盟国の全会一致が条件で、1国でも反対があれば加盟は認められない。その1国がハンガリーだった。ハンガリーのオルバン首相は、ロシアのプーチン大統領と親交がありスウェーデンの加盟には反対していた。だが、その強権ぶりはEUから批判されていた人物である。
しかし、オルバン首相の意向に反して、ハンガリー議会は、スウェーデンのNATO加盟はハンガリー自体にとってプラスになるとして、188対6の圧倒的多数によりスウェーデンのNATO加盟に賛成したのである。
ここにひとつ別の問題が提起された。物事を決定するに際して全会一致ということは、関連する事情が複雑であればあるだけ至難である。況してや国境をまたぐ国際的な問題については、意思統一が難しい。特にしばしば問題になるのは、国連の場、とりわけ安全保障理事会の採否の際の拒否権である。5大常任理事国の内1国でも拒否すれば議題は否決される。これによりこれまで幾たびか有益と思われる事項が否決された厳しい過去の現実がある。
今回のハンガリーのケースは、オルバン首相としては当初反対した。だが、それは国意に沿わないと多数の国会議員が首相らの意に逆らった。結果的に国民の過半数が賛成の議会決議により、加盟反対から賛成に代わった。これによりスウェーデンのNATO加盟に唯一反対していたハンガリーが賛成したことになり、全会一致でスウェーデンのNATO加盟は承認された。それが、前記の通りロシアにとって大きなショックとなった。
国連安保理事会における重大な討議について考えてみると、5大常任理事国の内で反対の1票を投ずるのは、ほぼアメリカか、ロシア、中国が常態となっている。これにより世界中の人びとがどれだけ幸せの恩恵に浴しなくなってしまうかを考えると気持ちが重くなる。つい最近もパレスチナ・ガザ地区へのイスラエル軍の攻撃を止めさせるための休戦協定がほぼ決まりかけていたが、その停止案についてアメリカが異を唱えて折角の提案が否決されたのである。結果的に同地の一時休戦は流れてしまった。
多くの国連加盟国の中で、僅か5か国にのみ与えられた「拒否権」という強権によって、重大な事象が左右される。本来国の大小を問わず、ひとつの国は、他国と同等の機会をあたえられるべきであると再認識して、今改めて再検討して拒否権自体を廃止することを検討すべきではないかと考える。多数決制を重視する見地から、現在の国連安保理の常任理事国へ与えられている拒否権の特権は不平等であり、排除すべきであると思う。改めて検討されて然るべきではないかと思う。大国の都合に合わせて彼らの特権をこのまま許すことは、世界平和の足を引っ張るものである。