東京都内や国内、のみならず海外からも再検討するよう求められている明治神宮外苑地区の再開発計画に対して、昨日ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の日本支部は、事業者や東京都に対して強い抗議を行った。イコモスは文化遺産が危機に陥っているとして事業者に計画撤回を求め、更に東京都に対して環境アセスメントの再審査を求め、先月10日までに回答するよう求めていたが、なしの礫だったことに、改めて強く回答を求めたものである。
事業者と東京都はこれまで反対や、異見に対して誠実に対応して来なかった。イコモスの要求に対しても誠実で常識的な対応をしていない。イコモスは当計画に対してこれまで10件以上の提言をしてきたが、事業者側はほとんど取り合って来なかった。卑しくも国連の一つの権威ある機関がルールに則って質問したことに対して、無視するかの如く知らんぷりをするのはあまりにも尊大ではないかと思考する。
イコモスは、環境アセスメントの審議に際しても、事業者のまとめた報告書の内容を問題視して、関連の東京都の審議会に出席し問題点を説明することを求めたが、東京都は拒否した。
この傲慢な事業者側の言動に対して10月に国会内で開かれた再開発に反対する国会議員や都議の会合に出席した、亀井静香・元自民党政調会長は、「外苑は国民の寄進により出来た。明治神宮の一存で再開発することは許されない」と述べたうえで、神宮には明治天皇が祀られている。そこを見下ろすような超高層ビルなどが建設される開発などは行うべきではないとも話した。
亀井氏の言うこともよく分かる。外苑は大正時代に明治天皇と昭憲皇太后の遺徳を偲び、神社のある内苑とともに造営された。内苑は国の事業費によって賄われたのに対して、外苑は主に国民からの寄付や勤労奉仕によって造営された。それらの点を考慮すれば、地主である明治神宮の希望であるとか、造営に国民の声を無視するような言動は、とても受け入れられるものではない。
3月に亡くなったミュージシャンの坂本龍一氏は、亡くなる直前までこの計画の見直しを訴えていた。この他にも特に細野晴臣氏ら音楽家の中には、反対意見を述べている人が大勢いる。8月には、周辺住民らが再開発計画の手続きが違法であるとして、東京都に工事認可の取り消しを求め東京地裁に提訴している。
そもそもその再開発計画には、建築家らも環境破壊をもたらすと指摘している。三井不動産など三井グループが推進する再開発プロジェクトでは、老朽化した神宮球場などを解体して建て替え、近くに商業施設が入る高層ビル2棟を建設する計画である。しかし、神宮球場を秩父宮ラグビー場と土地を交代させるようだが、そこまでやる必要があるのだろうか。ラグビー場がリニューアルされたのは、昭和51年でそれほど古くはない。建て替えるまでもない。神宮球場だって第二球場を使用しながら交互に再建すれば、済むことではないか。また、高層ビルを神宮近くに建設するのは、お金目当てとしか思えない。無駄な投資をして、明治天皇の権威を蔑ろにし、緑の景観を台無しにするような計画に、小池都知事が賛意を示したことが理解出来ない。所詮東京都民ではなかった、学歴や成績詐称で顰蹙を買ったこともある、上から目線の知事のやることには、愛想が尽きる。
神宮外苑の再開発計画には、一都民としてその計画自体と都知事を始めとする関係者の対応がどうしても納得出来ない。
さて、60年前の今日アメリカのケネディ大統領が銃弾に撃たれ、亡くなった。当時見習い駅員として働いていたが、そのニュースはあまりにも衝撃的だった。早いものであれからもう60年も経った。正に「光陰流水のごとし」である。