5763.2023年6月1日(木) 議員世襲制度の総点検を

 早いもので梅雨の季節到来である。沖縄近海に強烈な台風2号が襲来して沖縄、宮古島は暴風域に襲われ、この後沖縄本島に接近するようだ。この影響で全国的に天候は思わしくない。東京も今日は晴れたが、明日、明後日はかなり雨が降るらしい。

 さて、一昨日岸田首相が政務秘書官だった長男を本日付で更迭すると述べてから、世襲議員に対する批判的なコメントが急増している。印象的なコメントもいくつかネットに公開されていた。そのひとつを見てみると、中世の政治思想家マキャベリが「君主論」の中で「君主にとって、秘書官を選定することは決して軽々しいことではない。君主の思慮ひとつで良い人材を得られることがあり、また、そうでない人物が用いられることもある。そのため、ある君主の頭脳の良し悪しを推測するには、まず最初に君主の側近を見ればいい」と明快なコメントを述べていることが紹介されている。昨今の世襲ブームにマキャベリまで登場してきたのである。岸田首相の長男を皮肉っていることは明らかである。

 黙っていても、つまり仕事をしなくても一度世襲議員として日の目を見れば、その後は黙っていても父親の代からシンパである後援会が親身になって当選のためのお膳立てをしてくれる。日本の国会議員は海外に比べて世襲議員が圧倒的に多い。現在の自民党議員の内3割以上、閣僚の半分以上が世襲議員である。イギリスでは貴族院議員ですら世襲議員は1割しかいないと言われている。1970年代から80年代に首相になった三角大福(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫)は皆世襲ではなかった。それが、平成以降の首相は、ほとんどが世襲議員である。その世襲が有利になったのは、1996年衆院選で小選挙区制が導入されて以降で、世襲候補の勝率は比例復活も含めて8割に上る。選挙で当選に有利な「地盤」「看板」「カバン」を世襲候補は継承出来るからだと言われている。

 台湾の総統だった李登輝氏は、日本の世襲制について著書の中で次のような批判的な趣旨のことを書いている。「日本が自分を見失ってしまった最大の原因は、アメリカや台湾と異なり、あまりにも世襲制がひどくなったことにある。無名の若者が国会議員になろうと思っても、ほとんど不可能であり、戦後日本の上昇は、無名の新人によって達成されたが、現在は国会議員のかなりの部分が、二世と三世で占められている」。

 これは幕末に遣欧米使節団の一員として欧米を訪れた福沢諭吉が、民主主義とは何かを考えた時、ワシントン初代大統領の子孫が大統領なわけではないし、国民は今その子孫が何をしているかさえ知らないことに驚いたという。家柄で役職が決まる門閥制度ではなく、それこそが民主主義の肝だと言い、それがあの「学問のすすめ」初編の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」という思想につながっているという。

 世襲制は違法ではなく慣習の中から定着したものだ。それだけにセルフコントロールで誰もが納得出来るものにしなければならない。さもないといつか法的な手段を講ずることになりかねない。首相長男の政務秘書官更迭について、メディアではここぞとばかり世襲制度について批判的なコメントを発していたが、これとて「のど元過ぎれば熱さを忘れる」になって世襲制度見直し論などの世論喚起には至らないだろう。これが日本の政界とメディアの「相見互い」ということだろうか。

2023年6月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com