5629.2023年1月18日(水) 加賀乙彦氏の思い出と中国の人口減少

 作家で精神科医師であり、かつ文化功労者でもあった加賀乙彦氏が亡くなられた。享年93歳だったというから私の父が亡くなった時と同い年だった。以前はしばしば日本ペンクラブの総会などでお会いしたが、最近はほとんどお会いすることはなかった。今から10年近く前にペンクラブ総会後に学士会館で軽い飲み会をやった折に、僭越だがお互いの作品について語り合った時、拙著の書名が少し長すぎると辛辣なアドバイスをされた。「現代海外武者修行のすすめ」「停年オヤジの海外武者修行」などについて単語一語で表現した方が良いのではないかとのアドバイスだった。その折加賀氏に拙著は内容を一語では言い表し難いと返答したことを思い出す。加賀氏は、自分の作品の中で一番ヒットしたのは、死刑囚が罪を犯して捕まり死刑に至るまでの心理を描写した2文字の「宣告」であると言われた。まさに単語一語である。ただ、その後で「宣告」を読んでみたがあまり興味をそそられなかった。確かに作者の意図するところは書名において一目瞭然である。加賀氏には、この他にも「湿原」「殉教者」「帰らざる夏」などがある。加賀作品よりもっと短い1文字の書名の作品だってあることはある。だが、それほど傑出した作品はないように思う。それでも「愛」や「絆」を書名にした書はある。「愛」という作品の如きは、Amazonで検索しただけでも5万点以上あるというから驚くが、世に出たヒット商品はないように思う。加賀氏は漱石の「吾輩は猫である」について書名が長いと思っただろうか。その時は聞き損なった。加賀氏は拘置所の医務技官を務めたことから、作品には犯罪者の心理や、刑務所内の空気を描いた作品が多いが、それによってオウム真理教の松本智津夫死刑囚との接点もあり、国際人権に関する活動や社会活動に熱心だった。心よりご冥福をお祈りしたい。

 さて、コロナ騒ぎで世界中から注目を浴びている中国では、ゼロコロナから解放され22日から始まる長い春節を前に、国内の人の移動が激しいようだ。ところが、唐突に中国政府は総人口が昨年61年ぶりに減少したと公表し、メディアの話題をさらっている。我々が学生だった1960年代の中国は、かなり経済的にも遅れ人口も約7億人というのが定説になっていた。それが今では倍増して14億人超を抱えているが、それも昨年をピークに下り坂に入ったようだ。中国独立後若干波はあったが、ほぼ毎年のように人口は増え続け、経済的に厳しくなると考えた政府が人口爆発を抑えようと、1979年から1人っ子政策を導入した。それが、日本と同じように少子高齢化が進むにつれ、出生数の減少が止まらなくなった。今では1夫婦に3人の子どもを認めているが、出生数の減少は止まらない。その結果61年ぶりの人口減少となったが、その一方でインドの人口は増え続け、今年中に総人口トップの座を中国はインドに奪われるのではないかと予測されている。

 先進国では同じような問題を抱え、人口減少の流れが止まらないが、反面インドのように人口が増加している国もかなりあり、世界的には昨年80億人を突破したと伝えられ、2080年代には、世界の総人口は104億人にまで増えると予想されている。そのほとんどは、インドをはじめ、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ、エチオピア、タンザニア、インドネシア、エジプトなどアジア、アフリカ諸国である。現在人口11位の日本もいずれこれらの国々に追い抜かれていくことだろう。

 それにしても食料難、貧困などが取りざたされる国々の人口が増え、経済発展を続けている先進国の人口が減少しているとは、「貧乏人の子だくさん」と言われてはいるが、なかなかピンと来ない。先進国に住んでいるせいで貧しい国の実態がよく分からないからだろうか。

2023年1月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com