5425.2022年6月28日(火) 「キューバ『危機」一発』を考える。

 ロシアのプーチン大統領の軽はずみな核の使用発言によって、核戦争が懸念される中で、昨晩NHK「映像の世紀」シリーズでドキュメンタリー「キューバ危機 世界が最も核戦争に近づいた日」が放映された。1962年10月、大学4年在学時に突然起きた世界的な事件について、この番組が伝えた核戦争勃発の危機に瀕した裏舞台の細かいところまでは知る由もなかったが、改めてその凡その舞台裏を知って驚いた。下手をすると核戦争に世界中が巻き込まれる危険性があったのだ。

 ことの発端は、アメリカ空軍の偵察機がキューバに建設中のソ連のミサイル基地を発見したことからである。これが完成すれば、アメリカの主要都市がソ連の核ミサイル射程距離内に入る。その時からJ.F.ケネディ大統領、マクナマラ国防長官、ロバート・ケネディ司法長官、ルメイ空軍参謀総長ら、ホワイトハウスと国防総省高官との間で魔の13日間と言われる連日の極秘会談が行われた。ルメイ参謀総長が積極的に先制攻撃を主張するのに対して、第3次世界大戦勃発を危惧するケネディ大統領は、何とか開戦を避けるべく情報収集にあたり、対策を練った。当時は公にされなかった会議の音声録音が記録されていたことで裏付けが出来ることが素晴らしかったと思う。

 2016年8月キューバを訪れた時、この事件が当然のように頭を過り、航空機上からソ連艦の位置を想像したりしていた。この事件の背景にはそれより以前にキューバ革命を成し遂げたカストロ革命評議会議長が、アメリカを訪問して、アメリカで歓迎され、アメリカ議会でも演説を行った。しかしながら、当時のアイゼンハウワー大統領は冷淡な対応で、カストロと会談しようとの気がないばかりでなく、会おうともしなかった。当初の会談予定日にゴルフに出かける有様だった。この絶好の機会を逃さなかったのが、ソ連のフルシチョフ首相だった。ソ連が甘言でカストロ将軍を抱き込み、キューバ国内に対アメリカ攻撃用施設の建設したのだ。

 アメリカには当時のソ連政府の社会主義政策に反対していたソ連人スパイのペンコフスキーが、機密情報をもたらしてくれた。気の毒にも、その後彼はソ連当局によって逮捕され、気の毒にも自分の考えを貫き納得したうえで処刑された。その彼が得た資料を利用して軍部は先制攻撃をしきりに説き、ケネディ大統領を困惑させた。最終的には、ケネディとフルシチョフの良識が、軍部の好戦的な積極論を抑えた。ソ連がキューバ国内のミサイル基地の撤去に同意することによって、核戦争は未然に防ぐことが出来た。

 民主主義国家アメリカのあのケネディ大統領にして、戦争防止のため軍人たちを説得することは至難の業だった。振り返って日本の戦前の軍部の横暴を誰も止めることが出来なかったことは残念だが、ある点でその局面は理解出来ないこともない。

 これほどの情報を、関係者はよくぞ今日まで保管してくれたものだと敬服し、感嘆するばかりである。それにしても、このドキュメンタリー・シリーズは、世界的事件の貴重な情報を随分思い切って解析して放映してくれる。前回もアラブ人とユダヤ人との相克の中で、活動したアラビアのロレンスについて紹介された。これからも月曜日の夜を楽しみにしたいと思っている。

2022年6月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com