5377.2022年5月11日(水) 坊ちゃん育ちの二世大統領と苦労人の首相

 一昨日行われたフィリピンの大統領選挙で、戦前の予想通りかつて独裁体制を敷き、ハワイへ亡命した元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス氏が現職副大統領のレニ・ロブレド氏に2倍以上の得票差をつけ圧勝した。副大統領選も行われ、ドゥテルテ大統領の長女サラ氏が当選した。父親の権威をバックに幼いころから、ボンボンと言われた、所詮父親の七光りによって大統領の地位まで上り詰めた人である。選挙に際しても、一般的な主張はするが、国民が求める具体的な公約はまったく語ることはなかった。記者の質問にも真面に応えることなく、すり抜けていくような人物だという。俄か人気のようなムードの中で大統領になったとしても、果たして信頼され、長く職務を果たし、実績を残すことが出来るのか、疑問である。

 父親の独裁者時代を知らない若者が、マルコス二世の発信するSNSに引き込まれて彼へ投票したようだ。64歳とそれほど若いわけではない新大統領に懸念されるのは、近年国際法を冒してフィリピン近海へ海洋進出している中国と旨くやって行こうとの腹があることと、強権派で中国寄りだったドウテルテ現大統領の路線を継いでいこうとしていることである。

 アメリカにとってもフィリピンは重要な軍事同盟国であり、南シナ海の軍事拠点化を進めようという中国と対抗するうえでも協力が不可欠と考えている。しかし、ドゥテルテ政権同様に、マルコス政権も中国のインフラ開発への支援の見返りに親中路線を歩む考えのようである。新政権誕生は目出度いことではあるが、アメリカ同様日本にとっても、どうも気になるマルコス二世の大統領当選である。日本にとっても中国の海上進出もあり、マルコス大統領の言動が気がかりである。

 マルコス次期大統領に比べると、昨日訪日したフィンランドの女性首相サンナ・マリン氏はずっと堅実で頼りがいがあるように思える。2019年首相に就任した時、僅か34歳の若さだった。両親が早く離婚したため15歳の時からアルバイトをしていた苦労人である。

 フィンランドは、ロシアと1,300㎞に亘って国境を接しているため、ロシアに侵略される危機感からロシアを刺激しないようロシアと軍事中立態勢を取り、西側のEUには加盟したが、軍事同盟であるNATOに加盟しなかった。だが、今回のロシアのウクライナ侵攻により、フィンランド国民の気持ちは大きく変わり、安全保障上隣国のスウェーデンとともに、NATOへ加盟を申請する意向である。今日マリン首相は東大で講演し、自分たちの安全環境が脅かされる事態になったので、NATOへ加盟する意思を明確に語った。

 他国の大統領たるべき人物を、揶揄することは本意ではないが、坊ちゃん育ちの二世大統領と、家庭的に不遇で生活するためにバイトに精出さざるを得なかった苦労人の大統領とは、自ずから哲学、信念、リーダーシップ、周囲への気遣い、国民からの信頼感等において差が生れるのは当然だと思う。

2022年5月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com