5271.2021年10月17日(日) 次期首相は核禁止条約にいかなる対応を

 どうして日本の政治家には、世襲議員が多いのだろうか。福沢諭吉は「門閥制度は親の仇」と言ったが、世襲議員は、江戸時代のその門閥制度と同じ伝統から生まれたようなものである。アメリカではブッシュ父子大統領のようなケースは珍しいが、日本では親子2代、或いは3代政治家という例はどこにもある。今度の総選挙でも恐らく自民党が第1党になり、岸田文雄・首相が第2次岸田内閣を組閣することだろう。その岸田首相ですら広島県出身の世襲議員である。

 4年前の衆院選で当選した議員の内、驚くことにその3割を超える議員が世襲だった。過去20年間に総理大臣は延べ9人いたが、その内6人が世襲である。安定志向の強い日本人には、世襲議員がしっくりくるのか、今では世襲以外で代議士になれるのは、キャリヤ官僚を除くとほとんど見られなくなった。かつてたたき上げで首相にまでなった田中角栄のような人物が現れるのは至難ともいえる。苦労知らずで安定志向が強いせいか、一度決めたら中々それを変えようとしないのが、世襲政治家である。その典型は日米協調という名の下に、アメリカと交わした協定を頑固なまでに変えようとしないことである。世界の誰が見てもおかしいと思えるような決め事の改定すらしようとしない。

 核兵器の開発、保有、使用を全面禁止する核兵器禁止条約が、51カ国の批准を得て今年1月正式に発効した。これにより同条約を批准した国々は、当然核兵器を所有出来ないが、問題は現在核兵器を所有している国が批准していないため、核兵器を所有し続けることである。核保有国に対して核兵器廃棄を求めているが、現在彼らは廃棄を宣言するようには見えない。日本は、世界で唯一の被爆国として批准国から批准することを期待されながらもアメリカの「核の傘」の下にいるからとの理由でアメリカ政府に同調して批准しようとしない。

 そこへ昨日1400超の都市で構成するアメリカ市長会議が、アメリカ政府に対して1月に発効した核兵器禁止条約を歓迎し、核廃絶に向けた即時行動を求める決議を全会一致で採択した。共同提案したデモイン市(アリゾナ州)のカウニー市長は「核の傘」の下の日本政府に対して、核兵器の絶対悪を伝えるため被爆者たちの声を聞くべきだと日本政府の姿勢に疑問を投げている。核兵器禁止の動きが徐々に進んでいるが、これまで日本政府は、核保有国と非保有国の仲介役の立場を目指すとしていたが、その実績が今日までまったく伝えられて来ない。デモイン市を含む世界の8千以上の加盟都市とともに、核廃絶を目指す国際NPO「平和首長会議」(会長:松井一実・広島市長)や、国内の343自治体が加盟する「日本非核宣言自治体協議会」(会長:田上富久・長崎市長)が、核禁止条約の批准国を目指し、また条約への参加を政府に求めているが、果たして次期首相はこれをどう受け止め行動に移すのか。広島出身の岸田首相が首相に就任した際には、批准にかなり期待が寄せられたが、言葉だけで行動に移すことはしなかった。つまり一度決めたスタンスを変更しようという行動を起こそうとしないのが日本流儀なのであろう。

 果たして岸田氏が次の首相に選ばれた時、この全米市長会議の見解をどう受け止め行動するだろうか。大きな期待は持てないようだが、とにかく核廃絶へ向けて意思表示をして欲しい。

2021年10月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com