5259.2021年10月5日(火) 岸田首相の核廃絶姿勢とノーベル物理学賞受賞

 昨日第100代総理大臣に就任した岸田文雄首相は、第1次岸田内閣(首相曰く「新時代共創内閣」)の組閣を行い、その後宮内庁宮殿「松の間」で天皇による親任式が行われ、正式に首相の座に就いた。同時に新閣僚20名に対する認証式も行われた。

 夜9時から記者会見が行われて新型コロナウィルス対策をはじめ、経済政策、外交について新政権の方針を述べた。その中で自身は被爆地の広島市出身であり、人一倍核について拘りがあるような発言を行っていたが、実際に首相になって核問題についてどういう対応をするのか、広島市民ならずとも岸田首相の考え方に強い関心を寄せている。

 ところが、首相就任前に岸田氏は「核軍縮は私の政治家としてのライフワーク」と唱えていながら、昨夜は積極的に核廃絶への行動を起こす姿勢を見せなかった。実際ネット上に見る岸田氏と地元記者とのインタビューでは、屁理屈をこじつけて日本政府は核禁止条約批准をぐずぐず言いながら否定しており、岸田首相も同じ考えである。これから広島県民のみならず、全国民が岸田首相の核に対する考え方について関心を抱き、注視するだろうが、逃げることなく広島県民だけではなく、全国民に対して本音を率直に語ってもらいたい。いつまでも核禁止条約を批准しないと言い続けてお茶を濁すようなら、全国民から背中を向けられるだろう。

 さて、そろそろ恒例のノーベル賞受賞者が発表される時期になった。昨日医学生理学賞は、2人のアメリカ人研究者に授与されることが発表された。例年この時期になると話題になる村上春樹氏の文学賞受賞の注目度が今年は随分低いのだ。もう話題としては古いのだろうか。ノーベル賞については、ほとんどの分野でそれなりの世界的業績が認められて受賞の栄誉を与えられるのだが、一番難しく後々まで疑問を残すのが平和賞である。この平和賞は具体的な数値や業績が目に見えないから余計難しい。賞を授与された後になって、受賞者が反平和的な行動をしたり、多くの人びとを犠牲にするような行為を行ったケースが散見される。実際与えなければ良かったと選考者はもちろん、世界中から思われる受賞がこれまでに何度かあった。

 直近の例を挙げれば、2019年に平和賞を授与されたエチオピアのアビー首相である。アビー首相は隣国エリトリアとの関係改善などが評価されて平和賞を授与された。ところが、昨年エチオピア東部ティグライ州を拠点とする政党ティグライ人民解放戦線(TPLF)が、エチオピア政府軍の基地を攻撃したとして、ノーベル平和賞受賞者がティグライ州へ反撃を命じたのだ。これによりこの周辺地域では紛争が拡がり今や泥沼化している。平和主義者?アビー首相の頭の中はどうなっているのだろうか。自分が平和主義者であることを世界的に認めてもらったので、少しは行動を差し控えようと考えるのが普通であろうが、この御仁にはそういう考えはなさそうだ。

 ノーベル賞財団の規定には、死去した人には授与しないと決められているので、今では資格は失せてしまったが、もう少し目を広く開ければ、ギリギリで間に合った画期的な事例があったかも知れない。それは2019年10月にアビー首相に賞を授与するくらいなら、アフガニスタンで献身的にボランティア活動をしてその年の12月に殺害された中村哲医師にいち早く授与しておけば、よほどノーベル賞の価値が上がったのではないだろうか。

 そんなことを考えていた折も折、今夕になって今年度のノーベル物理学賞が他の2人の研究員とともに、日本人の真鍋淑郎プリンストン大学上級研究員に授与されるとのニュースが入って来た。90歳であるが、東大理学部、及び大学院を卒業されてから1958年にアメリカへ渡り、アメリカ国籍も取得されて現在もアメリカに在住されている。真鍋博士の研究は、「大気海洋結合モデル」という地球温暖化予測の礎となっているというが、極めて地道な研究である。しかし、今世界的に最も注目されている地球温暖化に関する研究である。こういう地道な研究を続ける人は、あまり多くないと思うが、若い研究者にとっては良い目標と励みになったことは間違いない。

2021年10月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com