5189.2021年7月27日(火) 「黒い雨」裁判、上告見送りに関して一言

 今日も柔道81㎏級で永瀬貴規選手が金メダルを獲得し、団体では初めて日本ソフトボール・チームがアメリカを破り、北京大会以来13年ぶりの優勝を飾った。これで日本の金メダルは10個となった。

 しかし、オリンピック開催でお祭り騒ぎをやっている間にも、懸念されていた新型コロナウィルスは毎日拡大しているが、流石に今日の新規感染者数はギョッとさせるものだった。昨日千葉県で過去最多を記録したが、今日は東京の2,848人、埼玉県593人、沖縄県354人のいずれもが過去最多となった。全国でも7,626人となり、これは先週の約2倍だった。オリンピック関係者の感染も連日伝えられ、コロナはオリンピックの懐に入り込んできた模様である。菅首相は人流は減少しているので、オリンピックの中止は考えていないと語ったが、医療専門家らはその拡大のスピードを懸念していた。第5波もすでにやってきたのではないかと心配される。

 さて、国を被告とする裁判について一応の目安が立ったので、気づいた点を率直に記したい。先日広島への原爆投下後、放射能物質を含む「黒い雨」を浴びた住民らが、被爆者にあたるとして、被爆者同様に被爆者健康手帳の交付を国に求めていた裁判で、広島高裁は国にその公布を認める判断を下したことに、国は上告すべきか否か考慮中であった。昨日菅首相はこの判決への上告を断念する方針を表明した。広島県と広島市は、手帳の交付を国から委任されているため、裁判では被告として住民から訴えられる立場にあったが、高裁の判決後に上告の見送りを認めるよう国に求めていた。昨年7月の広島地裁の一審判決では、がんなどになった場合、不合理性がなければ原告を被爆者と認めた。今年7月の広島高裁判決では、疾病に関わらず、住民らが「黒い雨」に遭ったことを否定できなければ被爆者と認める判断を示した。

 「黒い雨」が降ったとされる地域も、おかしなことに大雨が降るか、小雨が降るかによって対応が分れる。今回の原告ら84人が居住していた地域も、それぞれ分かれている。しかし、このように地域によって被爆者、或いは非被爆者という区分けには疑問が残る。医学的には原爆症であることは調べれば当然分ることであり、地域性よりも症状によって判別すべきことではないだろうか。

 しかし、厚生労働省内部では、高裁の判断に否定的な声が強かったという。内部被ばくしたとしても放射線量は低く、健康被害は認められないとして、まかり間違えれば、話は広島だけに留まらず、同じ原爆の地・長崎や、福島原発事故の周辺住民への対応にも影響が出る恐れがあると考えたようだ。いつもはあまり明快な判断をしない首相としては、珍しく政府内でも「上告」すべしの声が高まる中を、敢えて上告を見送ったのは勇断と言えるかもしれない。

 今後被爆者の手当のためにも経費が膨らむことと思うが、今以て釈然としない点がある。それについて私見を述べたい。それは、経費の幾分かをアメリカに負担してもらうことである。原爆投下して76年が経過しようとしている。その間被爆者がどれほど苦しんだことか。どれほどの費用負担があったのか。その原因を作ったのは、いかに早く戦争を終わらせるためにはやむに得なかったとの理由があるにせよ、放射能による人体への影響があることを承知のうえで、敢えて放射能性爆弾を投下したのである。その惨状はアメリカ国民も理解している筈である。さすれば、この原因を作ったアメリカが少なくとも応分の経費を負担しても当然ではないかと考える。上告に同意した国会議員たちは、むしろその気持ちをアメリカ政府にアピールすべきではないだろうか。

2021年7月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com