5117.2021年5月16日(日) パレスチナの戦闘は停められるか。

 10日夜唐突に始まった中東イスラエルにおけるイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への空爆が、いよいよ激しくなった。テレビ画像でも夜間に空を飛び交うロケット弾の火花が闇夜を照らしている。昨日15日は、パレスチナ人にとって屈辱的な「ナクバの日」に当たり、ヨルダン川以西では各地で抗議活動が続いた。「ナクバの日」とは、1948年イスラエルの建国に際し、パレスチナ人が故郷を追われた屈辱的破局の日のことである。

 イスラエル軍は、イスラム原理主義組織ハマスの軍事拠点をはじめ、外国通信社が入居しているビルなど多くの拠点を空爆した。14日からは徐々にイスラエル軍地上部隊による砲撃を開始して、戦線は拡大しつつある。死傷者の数も増えるばかりである。

 2012年ヨルダンから鬼門のイスラエルへ入国して、世界でも最も古く、歴史のある都市のひとつ、エルサレム市内を見て回った。エルサレムはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の世界3大宗教の起源都市だけに、関連の貴重な史跡や建物を訪ねることが出来て幾分興奮した。それらの史跡がハマスの反撃によって破壊されたら、世界の宗教界というより、世界全体にとってどれほど大きな損失になるかと考えると空恐ろしい。しばしばテレビでも伝えられる東エルサレムの「嘆きの壁」や、キリストが磔にされたゴルゴダの丘にある聖墳墓教会、黄金のドーム、そしてパレスチナ・ベツレヘムにあるキリストが誕生した馬小屋跡に建てられた聖誕教会などがお互いの砲撃によって破壊されることを考えると恐ろしいくらいである。

 パレスチナ難民が多く暮らす周辺国では、イスラエルの過激な行動に対する抗議の声が強い。特にパレスチナ系住民が多く暮らすヨルダンとレバノンでは、反イスラエル感情が高まっている。22か国が加盟するアラブ連盟も「国際法や人権法に違反する犯罪行為の結果責任はすべてイスラエルにある」とする声明を採択したが、具体的な行動はしていない。エジプトやカタールが仲介に乗り出しているが、とてもそんな力はない。ここはやはり大国が介入しなければ元の鞘には収まらないだろう。そこで当然のように期待されるのがアメリカの介入である。

 ところが、そのアメリカは、中立的立場にはとても居られない。イスラエルと一心同体の同盟国だからだ。国連をはじめ、国際社会が認めない首都エルサレムを2017年にトランプ元大統領が承認し、翌年アメリカは自国大使館を首都テルアビブからイスラエルが首都と認めるエルサレムに移転したほどイスラエルとは親密な仲である。トランプ氏に代わったバイデン大統領に期待したが、本件に関してアメリカはイスラエルに同情的で仲介国としては期待出来ない。国連安保理事会で声明を公表しようにもアメリカだけが反対して、事態の好転は期待出来ない。これでは、同じく国連安保理事会でクーデターを起こしたミヤンマー国軍へ制裁を課す提案が中国とロシアの反対で行動を起こせないのと同じ理屈である。

 どうして大国は、こうも国家の非常事態を鎮火しようとする多くの意見を抑え込んで、自己主張と自己都合ばかりを押し通そうというのだろうか。これでは世界から争いごとは永遠になくならないだろう。パレスチナには第3次中東戦争以来の思い込みがあるだけに、戦火が起きた現実は悲しい。

2021年5月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com