5076.2021年4月5日(月) NHKのミヤンマー取材ドキュメンタリー

 今日の朝刊にミヤンマーの記事が1行も載っていなかったが、2月1日のクーデター発生以来64日間で新聞にミヤンマー関連記事が載らなかったのは僅か2度目である。今やミヤンマー情勢はそれほど注目すべき話題となっている。ところが、テレビでは、一昨日NHK・BSのETV特集「ミヤンマー危機の深層・民主化は幻だったのか―道傳愛子が鋭く迫る!」に続き、昨晩もNHK総合テレビで1時間のドキュメンタリー番組が放映された。国内の抗議デモも国軍の弾圧の中で人的犠牲を強いられながらもしたたかに活動している。特に昨晩の「緊迫ミヤンマー 市民たちのデジタルレジスタンス」の迫力ある映像と全体的な構成にいたく感銘を受けた。元々ミヤンマーでは長い軍政のせいでメディアの活動に制約が多く、現地で特派員が活動しているメディアは数少ない。朝日ですら現地駐在員がおらず、現地人と契約して現地社員として報道している有様である。ところが、2月28日以降メディアは国軍政権によって一切認められなくなった。こうなるとミヤンマー情勢の詳細が伝えられなくなる心配がある。報道の自由が失われたミヤンマーで、後者の番組が作られたのは、このまま国軍の言いなりになって耐え忍んでいることを潔しとしなかった民主派のウィンチョウさんが、主に学生たちからSNSで動画や写真を送ってもらって軍治安部隊の無法・狼藉ぶりを世界に伝えようと試みたからである。

 ドキュメンタリーでは次のような話が紹介されている。軍政府に不服従運動を行っていたエンジェルさんという19歳の女学生が、治安部隊から狙撃されて命を落とした。それを同志が軍は無防備の女性を自動小銃で射殺したと国連機関や世間へ訴え出た。すると軍は驚くことにエンジェルさんの遺体が埋葬されている墓地から遺体を掘り起こし、解剖して彼女を死に追い込んだ銃弾は、治安部隊の自動小銃で撃ったものではないとその実弾の写真を添えて、軍支配下にあるテレビでデモ隊の言い分に反論し、軍は彼女の死とは無関係だと主張した。エンジェルさんの死を無駄にしたくないウィンチョウさんと学生たちは、現場で彼女が殺害された前後の動画を集め、時系列的に編集したうえで彼女の死が治安部隊の撃った自動小銃によるものだと証明し、それを他の資料とともに国連に送るプロセスを映し出していた。ここまで突き詰めてデモ隊の行動を評価し、国軍治安部隊の悪辣さを追求する傑作ドキュメントにつくづく感銘を受けた次第である。

 このところ約20年ばかりミヤンマーを訪問していないが、街頭の映像を観ていると随分昔と様変わりしたと思う。かつては当時の首都ラングーンでさえ見られなかった市内高架橋や高層ビルが見える。男女を問わず誰でも身に着けていた腰巻のようなロンジーを若い男性はあまり履いていない。地下鉄も工事を始めたそうで、市内には地下街への入り口が見えたのが、意外だった。進出日本企業数も2桁やっとだったのが、今や433社もあるという。アジアでも大分経済発展が遅れていたミヤンマーが、少しずつ遅れを取り戻しつつあった矢先にクーデターが起きた。これからまだ何が起こるか分からない。これからもミヤンマーの動向から目を逸らせないと思う。

2021年4月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com