4512.2019年9月19日(木) ケニア鉄道新線建設に感じる郷愁

 昨晩テレビ東京の「未来半世紀ジパング総決算」なるシリーズ番組最終回が放映され、いくつかの衝撃的な途上国へのインフラ整備の経済援助の実態を観て少なからずショックを受けた。そのひとつに中国によるケニア鉄道新線建設のレポートがあった。

 現在中国がアフリカ、アラブ、アジアを通して「一帯一路」と称する経済支援を行う中で、財政的に苦しい途上国へ総額費用の内約9割もの資金を支援してインフラ整備に協力している事案がある。番組で紹介されたのは、2017年5月に首都ナイロビからインド洋沿岸都市のモンバサまで約470㎞の鉄道建設事業だった。従来の急行列車を上回る時速100㎞の急行列車新線を開業させたプロジェクトである。

 実は、半世紀余も昔の1968年正月に首都ナイロビから夜行寝台急行列車でモンバサへ向かった。寝台車で同室だった2人のケニア人エリートとの会話が印象に残っている。テレビの映像を見るとその時の車窓風景と随分違う。当時は、比較的道路に沿って走り住民に手を振ったりして彼らと一瞬の交流を図ったものだが、この新線では新たに路線を敷き、何と野生動物保護公園内に建設された高架鉄道橋を素早く走り抜ける。自然保護のアフリカ象やキリンがびっくりして通過する列車をぼ~と見つめている光景が気になる、と同時に些か滑稽に見えた。これでは動物たちもうかうか餌をあさっているわけにはいかないのではないだろうか。

 それより何より当時12時間もかかっていた所要時間が、僅か4時間半に短縮されたことが大きい。このSGRという鉄道は、総工事費4千億円を投じて完成へこぎつけたが、その内総費用の9割を中国政府の支援貸付金で行われた。この負債がこれからケニア政府を苦しめることになるのではないだろうか。中国政府の資金援助は途上国にとっては高利のため、途上国にとって毎年決められた返済が厳しくなっている。典型的な例として中国政府の支援によるスリランカの港湾施設建設は、完成後にスリランカ政府が計画通り返済出来ずに、99年間に亘って港湾施設を中国政府が管理運営することになった。

 このSGRにしても車内サービスはケニア人が行うが、運行管理はすべて中国人が行っている。肝心なところは、中国側に抑えられている。中国が手を差し伸べる経済支援策「一帯一路」というものはそういう気が付かない落とし穴があるものだ。これはエチオピアの鉄道建設における中国政府の関与と同じパターンである。

 毎週続いていたシリーズ番組の最後に特集で若かった私が乗車したケニア鉄道が紹介されるとは、奇妙な縁を感じる。それにしても当時の懐かしい列車が、新式列車の後塵を拝するとは残念である。あの旧型列車の方がよほど情緒はあると思うのだが・・・。

2019年9月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com