4413.2019年6月12日(火) 香港のデモと安倍首相イラン訪問の意味

 3日前香港で103万人が参加した激しいデモがあった。香港の人口が約750万人であり、それを考えると7人にひとりが参加したことになる。香港のような狭い土地にこれほど多くの群衆が集まりデモを行うのはよほどのことである。きっかけは、香港政府立法議会が香港で拘束された刑事事件の容疑者を、中国政府の裁量次第で本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案を審議する動きに対して、若者を中心にそれを阻止しようとデモ隊が反対行動を起こしたことにある。改正案が通れば、香港滞在中に中国政府から訴追されれば捕らえられ、中国へ身柄を引き渡される可能性がある。

 そして「逃亡犯条例」を審議する予定だった今日、立法議会前にデモ隊が座り込んで警備隊との間で激しい争いとなり、立法議会開催は延期された。

 近年1国2制度の香港の国家体制が、中国共産党の必要以上の介入により揺らいでいる。中国は民主主義を装っているが、3権分立がほとんど機能していない。司法権は共産党政権行政下にあり、裁判は共産党の意向次第である。

 それにしても5年前に雨の中の民主化デモ「雨傘運動」に続き、今年も若者たちが中心となって反民主化運動で行動し世界にアピールした。彼らの民主主義擁護の信念と行動力には敬服している。それに引き換え、現在の日本の若者の社会運動への参加はずっと少なく、そのパワーも社会へのアピールも弱い。熱意もあまり感じられない。年寄りじみた考えで恐縮だが、60年安保世代として少々失望している。

 さて、今日安倍晋三首相は2泊3日の予定でイランへ飛び立った。父・晋太郎外相の秘書官として同行して以来2度目の訪問だそうである。このイラン訪問の目的は何か。中東地域の緊張緩和とされているが、巷間噂されるところでは、対立しているアメリカとイランの橋渡しという大役を担っているらしい。トランプ大統領が、昨年イラン核合意から一方的な離脱を宣言して、イランに対する経済制裁を復活させ、原子力空母まで中東に派遣してイランへ圧力を強めたことが、両国間の緊張の背景にある。

 イランは資源大国である。原油の埋蔵量は世界4位であり、天然ガスの埋蔵量は世界1位である。今ではイギリスのメイ首相、ドイツのメルケル首相らがやや精彩を欠く中で、アメリカとイラン両国と並行的に友好関係にあるのは、日本の安倍首相以外に見当たらなくなったと言われている。だが、そうそう甘いものでもあるまい。安倍首相は最高指導者ハメネイ師のご機嫌を取ってトランプ大統領との首脳会談へ結び付けられれば大成功で、世界的にも一段と知名度が高まるだろう。

 ところで僅か3日間のうちにロウハニ大統領とハメネイ師に会うだけでは、イランを広く2度訪れた私自身の経験から考えてみても、イランを知ったことにはならないし、ペルシア帝国以来3千年の歴史を誇るイランを訪れた意味はあまりないと思う。多忙な身ではあるが、地方都市、それも古代遺跡ペルセポリスなどを訪れて初めてイランという広大な国が分かってくるものである。今回も首相のような多忙な人には気の毒な海外出張である。

2019年6月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com