4151.2018年9月24日(月) 不安視されるバチカンと中国の接近

 キリスト教ローマ・カトリック教会の法王庁・バチカンと中国政府が長年対立していたが、懸案だった司教の任命を巡る協議が暫定的な合意に達した。これまで中国が国内で独自に任命した、ローマ法王が破門した司教7人について、バチカンが司教として認めるとの内容が盛り込まれた。この司教破門問題が両国断絶に至った最大のネックだったが、双方の歩み寄りで国交正常化の動きが加速する可能性がある。しかし、バチカンの内外から異論や懸念が噴出しているようでもある。フランシスコ法王は、中国との国交正常化を視野に積極的な外交姿勢を示しているが、中国へ相次ぐ譲歩によってキリスト教が中国政府の支配下に置かれるとの危惧があるからである。

 実は、かねてから関係修復の動きはあったが、ここへ来て台湾との外交関係を持つ国に台湾との断交を求める中国の外交方針と、現在1000万人の信者がいる中国で布教を拡大したいバチカンの思惑が図らずも一致したことがその背景にある。中国は宗教宗派を公式には認めず、地下教会が迫害を受けながらも活動している厳しい現状である。1957年唯一公認のキリスト教「中国天主教愛国会」なる教会は独自に司教を任命してきた。バチカン任命の司教を、必ずしも中国側が認めないケースもあり、両者間の溝は続いていた。爾来長い間に亘って中国とバチカンは対立してきた。近年両者間の往来が増えて行ったのは、冒頭のように両国の思惑がほぼ一致したことからである。そこには、宗教とは別の側面がある。

 それはいうまでもなく政治的な問題である。中国にとってバチカンとの接近は、台湾とバチカンの関係を断ち、台湾を孤立化させるメリットがある。その一方で、バチカンにとっては司教任命権を法王の手に取り戻すチャンスでもあり、中国国内での信教の自由を獲得し、宣教活動を拡大したいとの思惑と期待がある。

 ただ、これは中国とバチカンだけの問題ではなく、台湾との外交関係を締結している国々にも微妙に影響してくる。台湾と外交関係を維持している国は僅か17か国であるが、それらの国々はカトリック信者の多い地域である。これらの国々へも影響が及ぶのではないかと一部に懸念されている。

 果たして1951年に国交を断絶した中国とバチカンが、再び撚りを戻すことになるのだろうか。

2018年9月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com