4047.2018年6月12日(火) 初の米朝首脳会談と出陣学徒壮行会

 ここ数日トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による初の米朝首脳会談が、数々の前情報や思惑などで格別な関心を呼び、世界中のメディアの注目を集めていたが、今日シンガポールのセントーサ島内のカペラホテルで予定通り開催された。両首脳は市内の別々のホテルに泊まり会議場まで車で移動したが、厳重警戒の中を各国のメディアが追い掛け回す有様である。会談終了後両首脳は至極満足そうな表情で合意文書に署名した。合同記者会見は行われず、トランプ大統領だけが記者会見を行った。

 初対面の映像で観る限り、72歳のトランプ氏と33~4歳の金正恩氏では、年齢的、また経験上からトランプ氏の方が場慣れしていて金氏はややオドオドしているように感じた。だが、その後の結果は意外なものだった。

 署名された合意文書では、トランプ大統領は会談前に妥協は許さずと強気だったうえに、ポンペオ国務長官が「朝鮮半島の完全かつ検証可能で非可逆的な非核化(CVID)がアメリカの受け入れられる唯一の結果」とまで強調していた。しかし、トランプ大統領の当初の気概はどこへやら、絶対要件としていた北朝鮮によるCVIDの受け入れも極めてトーンの低いものとなって、大分ハードルが下がってしまった。

 日本人拉致問題については事前に安倍首相がトランプ大統領に直接金委員長に伝えるよう依頼して、トランプ氏はその通り伝えたようだが、両者の会談ではそれまでの話のようだ。これは当事者である日本と北朝鮮が直接交渉によって解決すべき問題であり、国内にも日朝首脳会談開催を求める声が上がっている。

 これから関係各国の評論家諸氏の間で今回の会談の成果のプラス、マイナス両面について話されるだろうが、百戦錬磨のトランプ氏がむしろ若い金正恩氏にしてやられたような印象を受ける。

 さて、昨日兄が新聞の切り抜きコピーを送ってくれた。それによると、昭和18年10月雨の中を明治神宮外苑競技場で行われた約2万5千人の学生が行進した出陣学徒壮行会で、学生代表として答辞を読んだ東大生・江橋慎四郎さんが、兄と私の母校・湘南高校の先輩であることを知った。今年4月に97歳で亡くなられたそうだが、お住まいは鵠沼海岸で我々の実家の近くだった。厳しい戦時下に学徒動員で戦地へ招集されたが、幸い内地勤務で終戦を迎えられた。戦後文部官僚となり、東大に勤めた後、国立鹿屋体育大学初代学長に就任し、その後同大名誉教授、東大名誉教授を務められた。64年東京オリンピックでは組織委員を務められ、学徒壮行会が行われた国立競技場で開会式に出席されたが、願っておられた新国立競技場で開催される2020年東京オリンピックを観ることなく永遠の眠りに就かれた。

 江橋さんは私より19年も先輩であり、直接お会いすることはなかったが、あの戦時下の雨の中の勇ましい行進をしていた壮行会の映像は、何度観ても悲壮さと興奮を抑えきれない。太平洋戦争の多くの画像の中でも最も印象に残るシーンである。

2018年6月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com