933.2009年12月2日(水) 証言! 外交文書の密約はあった。

 日本画家の平山郁夫氏が今日亡くなられた。79歳だった。平山画伯と言えば、シルクロードを描いた作品や、仏教の歴史・風物を主題とした作風で知られる。箱根の彫刻の森美術館、成川美術館にも画伯のシルクロードの大きな絵画が飾ってある。これらの絵を見ていると古代へのロマンが限りなく拡がっていくような大きな気持ちがしてくる。惜しい人を失った。

 さて、このところ噂が、実は噂ではなく真実だったのではないかと考えられていた、日米間の外交文書密約問題について、昨日東京地裁に証人として出廷した吉野文六・外務省元アメリカ局長が密約文書に署名したことを当事者自身の口から証言した。更に、当時の愛知揆一外相ら外務省幹部もその内容を知っていたはずだとも述べた。密約の内容は、沖縄返還時の沖縄住民への土地原状回復を行うための経費をアメリカが負担するという約束を履行せずに、実は密約によって日本が肩代わりするという内容である

 これで、日米間の4つの密約のひとつが当事者によって明かされたことになる。まだ残る3つの密約がどうだったか明確にされたわけではないが、外務省は来年1月にまとめて報告書を公表する予定である。

 こんな国民の目を騙すような例はこれまでなかったと思う。自民党政府はこれまで、一貫して「日米間に密約はない」「密約はないということは歴代の首相がはっきり答えている」との一点張りで押し通してきた。こうなると歴代の首相はみんな嘘つきだったということになる。この偽証の責任はどう償うつもりだろうか。そして、歴史上ウソを真実とした記録はどう修正するつもりだろうか。珍しいケースであるが、外交史上重大なことであり、どう決着をつけるのか注視する必要がある。

 それにしても証言した91歳になる吉野氏は、閉廷後の記者会見でこれまでも随分悩んだと言った。その挙句に「歴史を歪曲しようとすると国民のためにマイナスになることが大きい」とも述べた。覚悟のうえで真実を述べられたのだろう。人生も終盤になって、腹の中に溜っていたこれまでの心の負担や悩みを曝け出そうと決意したのだろう。

 日本とアメリカでは公文書管理制度が異なる。日本はアメリカの制度を見習い、25年か30年経てば公文書を公開して、誰でも研究出来るので、そういう制度を日本の外交にも採用することが良いとも提言した。

 今回の事件の経緯から、幸いにしてすっきりした形で密約文書が公開されることになりそうだ。一密約文書というだけではなく、制度としてあるべき形を整備することもこの際考えるべきことではあるまいか。

2009年12月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com