高校時代の友人・吉水淑浩くんから、カメラ仲間と銀座でフォト展を開催するとの案内をもらったので、今日観賞に出かけた。中々印象的な写真が展示されていた。彼の2作品も良い出来栄えだと感じた。
その帰り道にJR有楽町駅前の「ヒューマン・トラスト・シネマ有楽町」で、観てみたかったドイツの山岳映画「アイガー北壁」が上映されていたので、思い切って鑑賞することにした。ナチ・ドイツ時代を背景に、アイガー北壁1番乗りを目指すクライマーと新聞社の報道内幕、それに初登攀を国威発揚に利用しようとするナチの遠まわしの圧力を取り上げたドキュメンタリー映画で、中々迫力のあるクライミングと吹雪の中の遭難救助シーンを見せてくれた。
舞台として、クライネ・シャイデック、アイガー登山電車、そして雄大なスイス・アルプス山岳風景が空撮も含めて実写で紹介され、私にとっては何度か訪れた場所でもあり、訪れた時のイメージを思い起しながら固唾を呑んで観賞した。登山経験のある身としても中々見応えのある映画で、久しぶりに本格的な山岳映画らしきものを観た気分になった。最後は北壁登攀1番乗りを目指すドイツとオーストリアの2パーティ、それぞれ2人のアルピニストが、全員遭難するという悲劇に終る結末だ。
実話としては、この遭難事故の翌年、実は私の生まれた1938年にアイガー北壁はドイツ・オーストリア合同登山隊によって初登攀された。この初登攀をナチは、オーストリアをドイツに併合する、ひとつのチャンスとして利用したと云われている。
拙著「停年オヤジの海外武者修行」に推薦文を書いていただいた登山家の芳野満彦さんも、何度かこの北壁をトライしたが、相性があまり良くなかったのか成功せず、マッターホルンに狙いを替えて、1965年日本人として初めてマッターホルン北壁を征服した。嬉しさも束の間に芳野さんとザイルを結んでマッターホルン初登攀に成功した、渡部恒明さんはその1週間後悲運にもアイガー北壁で転落し非業の死を遂げた。周囲の素晴らしい風景とそういう悲しい人間模様が織り成す綾が、後から後から脳裏に浮かんできて少々辛いが、実に感慨深い映画だった。
さて、昨日ブログに最近の若者について、些かモラルに欠けると書いたが、今日購入したあのドイツの哲学者・フリードリッヒ・ニーチェの言葉を集めたベスト・セラー書「超訳・ニーチェの言葉」の中で、ニーチェは若者についてこう言っている。「若い人が傲慢でうぬぼれているのは、まだ何者にもなっていないくせに、いかにもひとかどの者のように見せたがっている同程度の連中と仲間になっているからだ」。流石はニーチェだ。ズバリ言い当てている。