首相就任以来、高市首相の支持率が、概ね64%〜75%の範囲で推移し、読売では71%、JNNの調査では82%に達している。歴代首相の中でも行動力が目立った小泉純一郎、言うだけで何も実績を残せなかった鳩山由紀夫首相に次ぐ3番目の高支持率である。このことは初の女性首相という珍しさと期待を反映しているが、割合ズケズケ物を言う性格も比較的受けているのだと思う。しかし、その反面首相就任早々に所信表明演説で述べた施政方針が、かなり厳しい批判を浴びている。高市首相が述べた所信の中で、軍事費のGDP比2%の引き上げ、医療費の大幅な削減、労働時間延長への規制緩和などが、とりわけその対象となっている。中でも日本が対米追従を強化して防衛費を飛躍的に増加させることと、少子高齢化時代において医療費を4兆円も減額し、その影響で高齢者の窓口負担を8月に1割から2割に引き上げたばかりだが、これを更に3割に引き上げるという。言葉尻では、現役世代の負担を減らすためと言っているが、その反面実際にはむしろ貧しい高齢者を苦しませることになる。その負担は防衛費を増やさなければ済むことである。加えて昨日財政制度等審議会は、介護サービス利用者の自己負担を現在の1割から2割負担に改革すべきだとの意見が強かったという。いずれそうなるかも知れない。現在この1割負担者は、91.9%を占めているそうで、ほとんどの介護サービスを受けている人の負担が増えることになる。
ついては、昨日財務省が公表した今年度上半期の経常収支は、年度半期ベースで過去最大の17兆5千億円の黒字となった。昨年の同期に比べても14.1%増えた。昨年度1年間の経常収支は、30兆3千億円だった。これを上回ることは充分考えられる。このところ海外からの利子や配当の収入など第1次所得収支の黒字拡大が経常収支を押し上げ、21年度から連続して黒字である。これらの収入を考えれば、高齢者の医療費や、介護費用の引き上げは安易に実施すべきではない。
とにかく高市政権は、病弱者や高齢者に対する優しさとおもいやりに欠ける。こんなことでは、いずれメッキが剥げて現在の高い支持率は急降下することは、充分予想できる。
他に高市政権の防衛政策に関して、特に気がかりなことがある。首相は、就任時から防衛力強化に強い意志表示をしていたが、昨日の衆議院予算委員会で来年予定されている安全保障関連3文書改訂に関して、非核三原則を堅持するのかどうかを問われ、明言を避けた。これまで「核を持たず、作らず、持ち込ませず」の三原則は、日本政府の基本的な核政策の原則だった。それに対して、昨日時点ではっきり否定しなかったことは、これまでの核政策を変えることも考えられる。これは、武器輸出拡大を目論んでいる自民・維新が、日本から輸出出来る武器を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5つの目的に限定する「5類型」の撤廃に向け、自民と維新両党が、議論を本格化させる検討に入ったことでも察せられる。まもなく「日本軍事国家」発足となる危険性が垣間見えてきた。