6542.2025年4月11日(金) 懐かしい大学受験用語「四当五落」

 久し振りに大学受験当時の懐かしい言葉「四当五落」を想い出した。

 今朝の朝日新聞・死亡広告欄に目をやって意外な人物の訃報に時代を感じたのである。赤尾文夫・旺文社会長の訃報である。この人は知らないが、父親である「旺文社の赤尾好夫社長」と言えば、我々と同じ受験世代の間では旺文社を創立し、赤尾のマメタンと呼ばれた赤い表紙の英単語集などを出版した、実に著名な人物だった。旺文社は当時受験雑誌界の先陣を切っていた。赤尾社長は「大学式典序曲」のテーマミュージックで始まるラジオ番組にも出演して、英語を教えていたような記憶もある。冒頭に「旺文社の赤尾です」という口上を述べて個性的な講義を始めた。

 昭和32年に2浪に別れを告げて大学生になって以降は、受験雑誌とはまったく縁がなくなってしまったが、中高生時代は同社の発行する「中学時代」「高校時代」「蛍雪時代」をよく読んでいた。

 どうしても忘れられないのは、旺文社?が「四当五落」と言う言葉を創出して受験戦争を煽り、受験界では一時この言葉が大きな話題になっていたことで、一部には反論もでていた。その4文字は、大学受験生はひたすら脇目も振らずに受験勉強に励むべきだという主旨から「1日に4時間しか寝ない人は合格できて、5時間以上寝ている人は不合格になる」という意味である。睡眠時間が4時間程度では、認知能力が低下して、逆に勉強効果は落ちることが分かって、今やこの「四当五落」は死語となっている。当たり前だと思う。4時間しか眠らないという言葉を真面には受け止めていなかったが、本当だろうか? 健康上は問題ないのだろうか? と当時でも寝足りなかった6時間の睡眠時間だった受験生にとっては疑問の言葉であり、真剣な問題だった。

 同社が発行していた受験雑誌、「中学時代」「高校時代」も今では廃刊になったようだが、随分いろいろな思い出を残してくれた。創立者の意思を継いで旺文社は、子息を後継者にして今その子息の訃報を知ることになった。子息は我々より大分若いので、「四当五落」をどう思っていただろうか。

 今でも思い出すのは、中学2年時に購読した「中学時代」に掲載された、今や世界遺産であるチベットのポタラ宮殿のグラビア写真が強く印象に残り、いつかここを訪れて見たいものだと長年夢見るように思い、2007年に70歳を前に漸く念願を果たすことが出来たことである。宮殿入口への階段を登りながら海抜3,600mの外界を見下ろして感慨無量だったことも懐かしい。

 ところで、念願かなって大学生となると、入学式が心待ちになる。今月1日に早慶や青山学院など多くの私立大で入学式が行われたが、東大、阪大、東京都立大など国公立大では遅れて、入学式は今日行われた。

 私は、「四当五落」時代に受験に挑んでいたが、2年間を過ごした浪人時代は決してマイナス面ばかりではなかったと思っている。確かに家族には多大な世話をかけたし、視力も弱くなり眼鏡をかけるようになった。無駄だったとか、時間の浪費だったという人もいる。確かに暗闇の中ではあったし、必ずしも第一志望大に入れる保証はなかった。それでも気障なようだが、人生における気持ちのうえで余裕のようなものを身に着けたような気がしている。確かに就職の際には、不利だった。だが、今86年間歩んできた半生を振り返って、かなり思い切ったこともやってきたし我が人生に悔いはない。それは浪人生活を送った2年間に与えられた人生の余得によるものだと思っている。

 人生というものは、常に精一杯努力するなら無駄なことは無いと考えている。

2025年4月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com