5753.2023年5月22日(月) 核廃絶か、核兵器廃絶か。

 鳴り物入りで幕を開けたG7広島サミットには、G7の首脳の他にG20の首脳らも来日した。被爆地広島から発信する核廃絶の声はどこから発するよりも世界へ響いた筈である。昨晩はウクライナから緊急来日したゼレンスキー大統領が国際会議場でスピーチを行った。今ロシアによる核の使用が懸念されている中で、大統領は平和記念資料館で数々の悲惨な資料を見学し、同時に被爆者の代表と会い話を聞いたことで原爆被災地と自国の惨状が重なって胸に迫ったようである。

 ただ、G7として議長の岸田首相はその成果について国際秩序の重要性や、核軍縮に向けた国際社会の機運について語ったが、カナダ在住のICANの被爆者サーロー節子氏は、核抑止が前提になっているとして、これでは広島で開いた意味がないと批判している。また、核拡散防止運動を進めている民間団体の反応も今ひとつのようである。

 今日の朝日朝刊の一面「視点」欄に佐藤武嗣編集委員が、前回イタリアのタオルミーナで開催されたG7におけるG7の亀裂について書いている。アメリカのトランプ大統領が「AMERICA! First!」を振りかざし、自由貿易や気候変動問題でヨーロッパと対立し、その後クリミア併合で除外したロシアを呼び戻し、G8の復活まで主張した。G7内で亀裂を生み、世界で分断を広げた反省を踏まえ、その意味では、岸田首相は、①法の支配の結束、②グルーバルサウスとの連携、③「核なき世界」に道をつける、を主たる課題に掲げた。ウクライナ侵攻を続け、核使用をちらつかせて威嚇するロシアを批判し、ロシア制裁はそれなりの効果を上げつつある。

 広島で開催した目的のひとつである「核なき世界」への足取りが今後本当に進めることが出来るのか、依然として課題として残されたままである。この広島へ世界で最初に原爆を投下したアメリカのバイデン大統領は、平和記念資料館を訪れ「核戦争がもたらした破壊的な現実を力強く思い出させるものだった」「G7が『核兵器のない世界』の実現に向けた取り組みを続けることを確認した」と苦しいアメリカ人の気持ちを代弁したが、そこから一歩踏み出すような発言はなかった。

 今朝の「天声人語」には、こんなエピソードも紹介されていた。原爆の印象について日本人と韓国人被爆者の受け止め方がこうも違うものだったのかという比較論である。日本人は、あの閃光の記憶から自らの体験を語り始める人が少なくないが、朝鮮半島出身の被爆者はそれよりも、「なぜ日本に来たのか?」と話し始めるそうである。彼らはなぜ広島にいたのか。日本の植民地支配なしには語れない。確かに広島には朝鮮半島出身者が少なくない。31年前に樺太(サハリン)を訪れ大泊(現コルサコフ)へ立ち寄った時、そこで知り合った朝鮮人のおばあさんも広島に住んでいたと言っていた。朝鮮の人たちが日本の占領下という過酷な運命に委ねられて想像もつかない放浪の旅を続けた挙句に辿り着いたのが、広島だったということなのだろうか。核がなくならない内は、世界平和は夢でしかないだろうし、旧朝鮮半島出身者にとっては日本人と同じ体験や思い出を持ちたいに違いない。

2023年5月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com