5744.2023年5月13日(土) 防衛費増額が高齢者医療費負担増に

 昨日の本ブログにアメリカの週刊誌「TIME」が、「岸田首相は日本が長い間の平和主義を放棄し、真の軍事大国にしたいと望んでいる」と取り上げたことに対して、政府が「表題と中身に乖離がある」と「TIME」誌に掛け合ったと書いた。今日の朝刊によると同誌の記事中身は、「かつて平和主義だった日本に、世界の舞台でさらに積極的な役割を与えようとしている」に変更されたという。いくら軍事国家へまっしぐらでも、軍事大国でなくてまず関係者はホッとしているのではないだろうか。それにしても岸田首相と「TIME」は、両者ともに発言内容を確認することに甘かったような気がする。

 さて、高齢者にとってはまた厳しい仕打ちである。昨日一定額以上の収入がある75歳以上の高齢者の医療保険料を引き上げる健康保険料などの改正案が国会で可決された。これにより75歳以上の高齢者の約4割が医療費の負担増となる。改正案の内容は、75歳以上の高齢者が新たに出産育児一時金の財源の一部を負担し、現役世代の負担軽減のため、高齢者の保険料の伸び率と若い世代が高齢者医療に出す支援金の伸び率を同程度にすることが目標のようである。この法改正により高齢者の負担は段階的に増える。しかし、実はこれはこじつけのような理屈で、当てもない唐突な防衛費の大幅増額により財源が枯渇して、どうにもならず、少子化を口実に高齢者の医療費負担を減らそうとしていることは明白である。ミサイル購入のしわ寄せがお年寄りに来ただけのことである。

 例えば、現在年収が200万円の高齢者は、今年度の保険料は82,100円だったが、今回の改正で年間3,900円増え、更に2025年度の保険料は90,700円となる。また、年収400万円の高齢者は現在の保険料205,600円に今回の改正により14,000円増え、25年度には231,300円になる。これはほんの一例であるが、年収200万円というのは、月額16万7千円程度の収入で、とても余裕のある生活ではない。更にこの下には年収80万円の高齢者の保険料も引き上げられる。この法改正は少子化対策と言いつつ、高齢者全員に負担を押し付けたものだ。高齢者だってただ医療費を安くしてもらっているわけではない。そこには、これまで社会人として働き続け、働かなくなってからそのお返しとして病気になったら社会から医療費の一部を負担してもらうということから生まれた社会福祉制度の根幹である。それを若者の負担になるから一部を高齢者からいただくというのは、社会福祉の精神に悖ることにならないだろうか。

 世襲議員が多くなった政治家らの頭の中には、苦しい生活を余儀なくされている高齢者の胸の内を考える気持ちなぞさらさらない。貧しい高齢者から保険料をむしり取ろうとする前に、どうして憲法違反の軍事行動に加担する防衛費を大幅に支出する必要があるのか。もっと国民の立場に立って優先順位を考えるべきではないか。国民の声を聞き入れようともせず、世間知らずのまま防衛費だけは大量に支出しようという発想はどこから生まれてくるのだろうか。アメリカから兵器類を購入するために、苦しい生活を送っている高齢者から僅かな生活費を召し上げようとする今の保守政治家の阿漕なやり方を、このまま放置しておいても良いものだろうか。

2023年5月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com