5563.2022年11月13日(日) 岸田政権の先行きと日ロ戦争の残像

 第2次岸田内閣の評判が頗る芳しくない。発足してやっと3か月が経過したばかりだが、支持率は下がる一方で、ついに危険水域である30%台にまで落ちてしまった。昨年11月に菅前首相の後任として政権を発足させた当初は、暗い感じだった前首相に比較して、明るくクリーンな印象で徐々に支持率は上がり、今年に入ってから7月参院選まではほぼ60%だったが、その後急激に下がり出し、ついに38%に下がった。

 その岸田内閣不支持の理由は、新型コロナ対策、旧統一教会問題、安倍元首相国葬、物価対策などへの拙い対応が大きいが、最近はそれらに加えて閣僚人事問題が批判に晒されている。とりわけ昨日更迭と報道された葉梨康弘・法務大臣の軽薄な「死刑囚にハンコ」発言が、メディアで広く流布され自民党内からばかりでなく、野党や国民からも大きな反発が起きている。法相としてはテレビに出る機会が少なく、死刑実行にハンコを押せば、メディアが取り上げてくれるというような軽率な発言は、政治家として首を傾げざるを得ず非難轟々となった。問題は葉梨法相の発言自体にあるが、それに対する任命責任者である首相の解任の決断が遅すぎるという厳しい批判がある。結果的に首相は海外出張を遅らせることになり、かの地でアジア要人との会談の予定をキャンセルせざるを得なくなった。国内政治の遅滞が外交にまで影響したことになる。法相解任に加え、直前に辞任せざるを得なくなった山際大志郎・前経済再生相の処分が遅れたとの批判も与野党の間で燻っている。

 どういうわけだか、第2次内閣にはいわくつきの閣僚が他にもいる。「説明を尽くす」の一点張りで一向に説明しない「尽くし3兄弟」と自民党内から批判され、立憲民主党からも山際大臣を含めて秋葉賢也・復興相や寺田稔・総務相が「『山寺』炎上」と皮肉られている。また、3週間足らずの間に2人の閣僚が辞めたことから過去にも竹下内閣や野田内閣にその前例があった「辞任ドミノ」が今後あるのではないかと囁かれている。

 岸田首相には側近がしっかりしていないのか、どうも毅然とした判断と即応体制が取れず、決断力が弱い。岸田内閣発足時には、比較的好意的に見ていたつもりだが、今のままではこれから前途に横たわる難問を解決出来ないのではないか、また国際社会において日本の利益を損なわずに外交問題をこなして行けるのか、極めて不安である。

 さて、昨日の外電でウクライナを侵攻したロシア軍が、ウクライナ南部のヘルソンから撤退し、ウクライナ軍が国土を奪還したことを、ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日を歴史的な1日と胸を張って公表した。このところやや旗色が悪かったロシアが敗戦のイメージを強めるヘルソン放棄は、ロシアにとっても認めがたいことだと思っていたが、ロシア政府のプロパガンダを担っている国営テレビが、珍しく沈痛な面持ちで歴史的敗北と認めたようだ。テレビ司会者は過去のロシア軍の戦いに触れ、その第一に日ロ戦争の敗北を挙げたという。日本では学校で日本史の一端として習うが、ヨーロッパでは想像以上に大事件?として見られている。

 かつてこんなこともあった。2002年のサッカーのワールドカップ日韓大会予選で日本がロシアを破った時、ちょうどイギリスの湖水の町ウィンダミアを旅行中だったが、その翌日ロンドンで買い求めた新聞のトップに「日ロ戦争で再び日本がロシアを破った」と大きな見出しが出て、ロシア人が日本車の上に乗り、傷つけている写真も目にしてびっくりし、強く印象に残っていた。それほどヨーロッパでは日ロ戦争は歴史的な事件と考えられている。今ロシアはヘルソンを失ったことで、世界中から注目されている。そのおまけに日ロ戦争と日本の存在も脚光を浴びただろうか?

2022年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com