5460.2022年8月2日(火) 大学院修士号取得は、容易か?

 以前にちょっと気になっていたことがあった。それは、いつかプロ野球巨人軍の桑田真澄ピッチング・コーチが早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で修士号を得たと新聞で知った時である。彼はPL学園高を卒業して巨人軍に入団し、その後巨人軍で活躍したうえでアメリカへ渡りMLBへも入団した。だが、帰国後大学へ通ったという話はまったく知らなかった。それが唐突にどこの大学でも学ばずに大学院へ入ったと聞いた時、漠然と納得の行かない感があった。今まで普通に大学を卒業した学士が大学院修士課程へ進めるものと信じ切っていた。学校教育法102条にも大学学部を卒業した者が入学資格を有するとある。

 ところが、ここには例外規定があったのである。しかし、それは大学院自体の存在、及び価値を損ないかねないものである。その例外規定とは、「個別の入学資格審査により大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、22歳に達した者」とある。それなら仮に入学希望者が優秀だとするなら高校へ行かない中学卒業生でも大学院生になる資格があるのだろうか。実力がありながら諸々の個人的事情で大学へ進学出来なかった者にとっては、この天が授けた「抜け道」を通って通常の学卒者の上を行く学歴・修士号を手中にし得る、幸運な大学院生である。

 桑田以外にもタレントでありながら巧みな司会者である恵俊彰氏や、相撲界では元横綱稀勢の里、元関脇安美錦らが早大から、名古屋場所で関脇を務めた現役関取の大栄翔が日大大学院から修士を得ており、タレントのロンドンブーツの田村淳は、慶應義塾大学大学院で修士号を得た。

 今では大学院は、一流大学より遥かに簡単に入学出来るようだが、日ごろ多忙な彼らが、ノルマである卒業論文を何冊も書籍を読み込んで研究し、書き上げることが出来るのだろうか。出来れば彼らの卒論とやらを読んでみたいものである。最近の月刊誌「選択」8月号には、こんな風に皮肉っぽいことが書かれている。「世間からみると有名人が大学(学部)をバイパスして、いとも簡単に大学院に入っているというようにしか見えず、いい意味でも悪い意味でも大学院のイメージを崩した。今まで学究の場と敬遠していた大学院が一流大学よりはるかに簡単に入れる身近な場所になったのだ」。

 これには、アメリカの大学院修士の存在が大分影響しているらしい。アメリカではビジネス面で、修士号と博士号の力を問われるケースが多いようだが、日本の修士では所詮アメリカン・ビジネスマンには太刀打ち出来ないだろう。しかもアメリカでは、修士課程2年間で約2千5百万円の学費がかかる。この辺りにアメリカのビジネスを誤解した肩書だけを求めた最近のバイパス修士の欲望があったのだろう。流石に最近は何らかの挫折にでも当たったのか、大学院入学者は減少傾向にあるそうだが、喜んで好いのか、悲しむべきか。それにしても文部行政を主管している文部科学省は、一体何を考えているのだろうか。何もコメントしようともしていない。日本もだんだん分からない国になってきた。

2022年8月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com