5406.2022年6月9日(木) 衆議院議長と日銀総裁の軽薄な発言

 今日衆議院本会議で立憲民主党から2つの不信任決議案が提出されたが、いずれも否決された。ひとつは、内閣不信任案であり、これまでもほとんどの内閣が野党から不信任案を突き付けられ、反対多数で否決されている。岸田内閣は、円安と物価高に無為無策で異次元の金融緩和を未だに見直さない愚策により円安は収まらず、ロシアによるウクライナ侵略も相まって想定以上の物価高の局面になりつつあるというのが、立憲民主党の主張である。自民党と公明党は、不信任案は来月行われる参議院選目当てであると批判し、結局共産党と社民党以外は反対を表明して数の力で否決された。

 問題は、もうひとつの細田博之・衆議院議長に対する不信任であるが、立法府の長である衆議院議長が、議長としての資質を問われて不信任案を突き付けられるのは、屈辱的であり、恐らく前代未聞ではないだろうか。細田氏は、1票の格差是正を行う「10増10減」にも軽はずみな言葉を述べたが、議長になっても毎月の歳費は100万円しかもらえないなどとすねたような軽薄な発言をしたうえに、セクハラ疑惑が週刊文春誌に大きく取り上げられた。加えて今日発売の同誌にも一昨年の衆議院選で現金買収を行った公職選挙法違反が取り上げられたようだ。

 今回の細田議長の疑惑については、不信任案提出の立憲民主党に社民党と共産党が賛成をしたが、日本維新の会と国民民主党は棄権した。本会議場で反対の主旨を述べた自民党議員の言い分が、お粗末というか、主旨を取り違えたスピーチをしていた。資質に欠けるとした細田議長不信任案は議長の人格と品格を損なうもので、許せないと見当違いな議長擁護発言をしていたが、それより立法府の長として議長自身その言動に自らはどう思っているのか、セクハラ疑惑については事実無根だと強弁するだけで周囲を納得させていないではないか。

 さて、ロシア軍のウクライナ侵攻以来各物価の値上げが激しく、それに反して収入は横這いで一般国民の懐具合は益々厳しくなっているとの声が強い。世界銀行が公表した見通しでは、世界の成長率は2021年の5.7%に対して、22年は2.9%と減速予測されている。日本の2022年の1.7%は、対前年1.2%減である。その影響は円安にはっきり表れ、昨日の外為市場では、1㌦=134円を記録した。最近の2週間で7円も下落したことになる。

 こんな時に黒田東彦・日本銀行総裁が、物価の上昇に対して、無神経にも「家計の値上げ許容度も高まってきている」と講演で話したが、直ちに反発が高まり、その翌日「値上げ許容度を様々な指標で測っていたので、その言葉を使ったが、必ずしも適切でなかった」と一部修正した。しかし、野党議員や国民から依然として生活者不在であるとの声とともに、本人が実生活で品物を買う機会がなく、実態を知らないのではないかと批判された。

 そして昨日衆議院財政金融委員会で、黒田総裁は、「表現が適切ではなかった。誤解を招いたので撤回する」と陳謝した。

 立法府の最高機関の長である衆議院議長の軽はずみな発言にせよ、国内金融機関の最高責任者である日本銀行総裁の発言にせよ、もう少し踏み止まって思考してから発言することが出来ないものだろうか。

2022年6月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com