4415.2019年6月14日(金) 民間企業から官公庁へ「天上がり」

 上から目線の官僚の世界には、国民が与り知らぬ間に隠密的に行動しているとの陰の声があるが、いずれ判明しそうな事象についても官庁が大手民間企業と組んで不条理なことを冒していたとは、16日付「赤旗日曜版」に目を通すまでまったく知らなかった。

 いくつも同じような事例があるようだが、際立っているのは、中西宏明・経団連会長の出身企業である日立製作所社員が、「天下り」ならぬ「天上がり」で外務省に出向し、リトアニア日本大使館に勤務していたことである。2人の日立社員の目的が、リトアニアへの原発の売り込みであることは明白である。

 日立はリトアニアへの原発輸出の話を進めていたが、2011年東日本大震災による東電福島第1原発により商談は頓挫した。この原発事故によりリトアニアでは原発建設が問題になり、その是非が翌12年の国民投票で問われ、国民の63%が建設に反対した。しかし、安倍政権は原発輸出に固執して密かに16年リトアニアと原子力開発協力の覚書を交わしていた。安倍政権と日立の癒着はあまりにも露骨である。孫崎享・元イラン大使も「両国民の利益のために働くのが大使館の仕事。一企業の原発建設について、大使がここまではっきり推進姿勢を示していたとは・・・」と当時の白石和子・リトアニア大使の原発へのめり込む姿勢に呆れているほどである。

 一昨年リトアニアを訪れた時、「命のビザ」で知られる杉原千畝・元副領事が第2次世界大戦末期にユダヤ人6千人の生命を救った行為が、同国のレジェンドとして、国中から日本人への尊敬を集めるに至ったことを知った。そのリトアニアでこのような行為が行われていたとは驚愕であるが、国と民間企業の癒着以外の何物でもない。

 調べてみると他にも役所へ「天上がり」している例がいくつもあるようだ。「働き方改革」と称して高度プロフェッショナル制度を創設して、残業時間に上限を設けたことも「天上がり」に利用されている。ところが、その上限自体が過労死ラインを超えるものである。そこには、佐川運送から厚生労働省労働基準局労働条件政策課に「天上がり」して、役所の考え方に従って労働者の労働条件を考えている実例がある。厚労省と民間企業の癒着にしてはあまりにも酷いものである。

 この他にも大企業を中心に省庁への「天上がり」が急増して、昨年10月時点で「天上がり」に該当する民間社員兼国家公務員が5890人もいるというから驚きである。

 よほど目を凝らしていないと、安倍政権は何をやらかすのかまったく見当もつかない。

2019年6月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com