ご意見番の意見


2011年2月

1359.2月1日(火) いよいよムバラク政権も年貢の納め時か。
 エジプトが大きく揺れている。これまでアメリカは自国の中東政策の立場から、イスラム過激派と一定の距離を保ちながらイスラエルとも比較的友好的なムバラク政権を財政・軍事両面で支えてきた。この安定したムバラク政権が倒れることは、アメリカの中東政策の根幹を揺るがしかねない。何とかムバラク政権に命脈を保ってもらいたいというのがアメリカの本音である。そのため、ムバラク政権打倒を掲げるデモ隊に自重を促してきた。しかし、反ムバラクの声は日に日に勢いを増し、一触即発の様相を見せてきた。下手をするとエジプトがイスラム急進勢力に制圧されかねない。
 遂にアメリカも我慢しきれず、現状のムバラク政権を見放すことに腹を決めたようだ。「エジプト国民の願望に応じる政府への秩序ある移行を支持する」とクリントン国務長官が公式発表した。今日エジプトでは、タハリール広場を中心に100万人デモが計画されている。軍部が必ずしも政府の意向に沿わず、デモが平和的なら彼らに向けて発砲しないと発表したことが民衆を力づけることになった。
 この様子では一両日中にムバラク政権が崩壊することもあり得るのではないだろうか。奢れる者は久しからずというには30年はあまりにも長過ぎたが、流石に独裁を誇ったムバラク大統領も年貢の納め時を迎えようとしている。
 さて、国内では相変わらず霧島連山・新燃岳の噴火に住民は恐怖感を抱いている。昨日まで直径50m程度だった溶岩ドームが今日には500mほどに急速に広がり、このままだと火砕流が流出する恐れが出てきた。
 日本海側の積雪は過去2番目の積雪量と発表された。北陸では道路上に1000台以上の車が立ち往生したり、JRも運行中止になるやら、最近には見られない市民生活への打撃である。
 いずれも自然現象であり、やむを得ないというところだが、自然の猛威は一体いつになったら矛を収めてくれることだろうか。
 例年通り確定申告の時期が迫ってきた。毎年申告書類が送られてくると気持が落ち着かない。何せ面倒な書類の書き込みと帳簿・領収証の整理があるからである。2年前から個人事業主として税務署へ申告しているが、すべて手作業で行っているので、書き込みだけでも時間がかかる。昨年も来年(つまり今年のこと)こそは、PCで申請できるようソフトを買って研修を受けようと思いながら実行できずに、今年も申告の時期がやってきた。不味いことには、昨年折角揃えていたゴム印を紛失してしまい、手書きで記入せねばならず、その分余計に手間がかかる。今や手書きは時代遅れとなり、ゴム印を販売している文房具店もなくなってしまった。この事実は現代はPCで申告せよと圧力をかけているようなものだ。これから申告書類を作成して、青色申告会でチェックしてもらい税務署へ提出するまで気が重い。反省を踏まえて来年こそはPCで申告できるようにしたい。
1360.2月2日(水) エジプトに隠れてビルマの民主化が怪しい。
 ついにムバラク・エジプト大統領が折れた。来る9月の大統領任期満了まで任務を全うし、大統領選に立候補せず引退するとテレビ演説を行った。国民の要求に屈したのである。しかし、これで問題が解決したわけではない。国民は9月まで待たずに、今すぐに辞職せよと強く要求し、デモの勢いが衰える気配はない。さあ、ムバラクどうする? アメリカ政府も現時点で民主的政府への移行を求めている。アメリカはムバラク大統領を完全に見限ったのである。明後日の金曜日がイスラム教徒の求める大統領辞任の期限である。
 さて、エジプトにばかり目が移っている間に、アジアの非民主化国家ビルマの政情が注目を集めている。国際社会の批判をかわすために見せかけだけの民主的な国選を行い、同時に民主化運動のリーダーであるアウン・サン・スー・チーさんを軟禁から解放し、国際社会の声に耳を傾けたようなジェスチャーを演出した。
 昨日新しい議会の下で初めて偽装民主化議会が開かれた。今度の議会で注目されるのは、軍人出身者が大多数を占める議員による3人の副大統領候補者の選出である。意外なのは、軍政のトップに君臨し、悪評高いタン・シュエ・国家平和発展評議会議長がその副大統領候補者に自ら名乗り出なかったことである。3人の候補者から大統領が選出される決まりになっており、このままではタン・シュエ氏は大統領の地位に就けない。ただ、国際的な評価を意識して敢えてトップの職に就かなくても、背後から政治を操ることができる軍政翼賛政党「連邦団結発展党(USDP)」名誉総裁の地位に就くのではないかとの見方もされている。いかに77歳の高齢とはいえ、したたかタン・シュエがこのまま消え去るとは思えない。
 スー・チーさんの静かな活動も気になるところである。厳しい自宅軟禁に懲りて正面から軍政を批判する行動には今のところ出てこない。そこまで軍政はスー・チーさんの気持をひるませてしまったのか。これでは当分の間ビルマの民主化は望むべくもない。
1361.2月3日(木) 大相撲の取り組みで八百長が・・・。
またやってくれた! 大相撲の八百長である。これまでも度々賭博に関与したとの疑惑が問題視され、その都度日本相撲協会は疑惑を否定してきた。だが、今度ばかりは相撲協会も言い逃れは出来そうもない。これまでのように外のスポーツへ賭けていたという次元ではなく、相撲界組織内部において内部の人間が起こした身内の不祥事だからである。警察は八百長だと想像される会話のやり取りを消去したメールを復元し、証拠品として相撲協会へ提供したのである。これまでのように、確たる証拠がないのを良いことに、八百長を無気力な相撲と言葉を誤魔化し、八百長自体の存在を否定し続けてきた協会も、いよいよ逃げ切れなくなったと言ってもいい。怪しいと見られた14人の関係者のうち、早くも3人の当事者が八百長をやっていたことを認めた。開会中の国会でも取り上げられ、高木文科相が事実関係を報告し、菅首相もあってはならないことだと憂慮する発言をした。
 昔から相撲界には八百長の噂があり、週刊誌でも元力士の暴露発言として大きく取り上げられたこともある。しかし、毎度八百長を否定する相撲協会と出版社の間はこじれ裁判沙汰にもなっている。裁判では証拠不十分としてこれまでは相撲協会側の言い分が通っていたが、今度こそはれっきとした証拠を警察によって突きつけられたことにより、相撲協会の立場は極めて苦しくなった。
 昨年野球賭博が世間を騒がせた時に、あるスポーツ新聞編集の関係者で相撲界の内部情報に詳しい人から八百長相撲は絶対あると聞いた。特に、横綱・千代の富士について回った噂は知る人ぞ知ると言われ、その筋ではごく当たり前の話と受け取られているとも聞いた。真偽のほどは定かではないが、かなり相撲界の事情通でもあり、その噂を聞いた時はひょっとするとあり得ることだと思ったくらいである。
 これから相撲協会はこの八百長事件の対応に追われて大変な努力を強いられると思う。閉ざされた社会の中で自分たちの狭い世界の中で育ってきた人間だけでことを処理してきた。甘い庇護の中でぬくぬくと繁栄を享受してきた。こういう世間知らずの相撲協会役員は、世間に対してこの不祥事をどのように釈明するのだろうか。恐らくこれだけの大問題を相撲協会の理事長以下の役員が世間を納得させられるような説明ができるとは、これまでの対応を見ていてとても考えられない。
 さて、混乱のエジプトであるが、事態が変わった。タハリール広場で反ムバラク派の群集が集まっている中へ突然ムバラク支持派のラクダ、馬軍団がなだれ込んできた。軍隊は見て見ぬふりをしていて制御しないようだ。血で血を洗う騒動に発展している。ムバラク支持者がピラミッド周辺で手持ち無沙汰の観光ラクダ業者を買収して、反ムバラク集団へ突っ込ませたようだ。勿論死傷者が出たことは言うまでもない。ムバラク大統領がいかに否定しようとも、国際社会の非難を浴びることは間違いない。益々事態の予測が出来なくなってきた。
1362.2月4日(金) 中国人とのビジネス・パートナーシップの要諦
JAPAN NOW観光情報協会」の定例観光立国セミナーが開かれ、山下巌・ラオックス顧問が「中国企業の傘下に入ったラオックス」というテーマで講師を務められた。大手家電量販店・ラオックスは山下氏が社長だった2009年6月、中国の蘇寧電気と資本提携した。まさに山下氏は提携ドラマ仕掛けの中心人物だったのである。1990年に現在47歳の張近東氏が<設立した蘇寧電気は、今日ではその従業員は12万人を数え、2009年の年商は1兆6千億円を売上げている成長著しい新興企業である。
 中国資本の受け入れ提携契約前、ラオックスの外部役員は、全員この資本提携に反対だったという。反対の理由は、上場会社だったラオックス株式の34%を獲得した蘇寧側に主導権を奪われるとの懸念があったからである。山下氏の話では、ラオックスはその当時7年間に亘って赤字決算が続き、金融機関からの融資も得られず、経営は破綻寸前だったという。このままでは資金がショートして破綻すると考えた山下氏は、敢えて周囲の反対を押し切り提携話を進めて中国企業の傘下に入った。
 この過程で湘南高同級生大塚武夫氏が関係する中文産業の紹介と斡旋により、蘇寧電気が融資を引き受けることになり、蘇寧とラオックス両社間に協力関係が築かれた。当初中国企業との資本提携の説明を金融庁が受け入れてくれず、納得して理解してもらうまで大分苦労したと話された。蘇寧側にも販売戦略上「ラオックス」のブランドに強い関心があり、結果的に中国市場にも店舗展開を図ることが出来、日本国内のラオックスの経営状況も回復している。本社は日本に置いているが、ラオックス役員の7人のうち、5人が中国人で、会議は中国語で、社内も中国語が飛び交っている。それでも会社と社員にとっては経営が安定したことにより、ハッピーだと感じられるようになった。
 一般論として、日本人の間には中国企業のみならず、外国企業による企業買収、或いは資本提携に関しては些か抵抗感がある。国もそう考えているようだし、企業の当事者である役員もそうだ。
 しかし、山下氏はこの資本提携をやって良かったと述べておられた。実際行き詰まった企業が外国企業の資本融資によって立ち直り、経営が安定し、そのことを社員は幸せだと感じている。オーナーがどこの国の人であれ、会社が繁栄し、社員が恩恵を受け、幸せだと思うなら、あまり気にする必要がないとも山下氏は言っている。国際時代のビジネスというのは、そういうものなのだと思う。
 今日のセミナーでは、外国企業との資本提携を体験した実務者が企業の国際業務提携話の内部事情を率直に話してくれた。その他にも「簡単には他人に頭を下げない」「メンツを重視する」「実利的である」と中国人の特徴、性癖について話してくれた。中国人をビジネス・パートナーと考えた場合の要諦を伺えたように思う。
1363.2月5日(土) ビルマ次期大統領にティン・セイン首相
ビルマの次期大統領に3人の候補者の中からティン・セイン首相が選出された。国際社会からの批判をかわすために建前上民政のポーズをとったが、所詮はまやかしである。国家平和発展評議会のタン・シュエ議長はいかなるポジションに就任するのか、今のところ態度を明らかにしていないが、最大の実力者であるので、些か気になるところである。ティン・セイン首相を含め、二人の副大統領予定者はいずれも軍部出身で、実質的には相も変わらず軍部が国の政治を牛耳ることになる。危惧されていたことではあるが、これでは従来の軍政と何ら変わらない。下手をするとタン・シュエ闇将軍の下でこの新政権がいつまでも継続する恐れがある。
 この新政権に対して前原外相のコメントは、「新政府がより一層開かれた、民主的なミャンマーに向けて前向きな措置を講じることを期待する」である。何の積極的なアピールも伝わってこない。前原外相の稚拙な外交センスと漂流する現在の日本外交を象徴している。外相はエジプト問題でも、「エジプト国民の気持も理解できるが、現実的な政権移行を考えるべきだ」とそのコメントはまるで具体性を欠いている。こんなことなら発言しない方がよほどいい。アメリカ政府のメッセージをただ後追いしているだけで、日本政府としての確たる考えや希望、信念、アドバイス、注文などは何も話していない。いつもながらの他人事のような発言である。偽メール事件でお粗末な対応をした、軽率な前原外相の言葉はあまり期待したり、信用しない方がよい。近日モスクワを訪れるようだが、ロシアの国防相が北方領土を訪れたことに対してどんな発言をしてくれるのか。
 さて、昨日の「追放の金曜日」で遂にムバラク辞任かと一部に期待されていた向きもあったようだが、いつまでもその地位に留まっていたい軍人ムバラクは時間をかけて自らの地位を守ることに汲々として、今後民衆に受け入れられ易い「民主化政策」を小出しに打ち出してくるのではないかと推測されている。
 オバマ大統領がムバラク氏の辞任を迫っていたが、EU首脳の間ではムバラク大統領の辞任を求めるのは余計で傲慢だとの慎重な意見もあり、現時点では先行きが見えない。
 エジプトを訪れていた観光客は去り、新たに訪れる観光客もなく、観光業に頼るエジプト経済に大きな打撃を与えている。このまま政府機関や銀行等が営業を再開できないとするなら、エジプト経済に壊滅的な損害を与えかねないと憂慮されている。
 この期に及んでは、個人的な見解だが、ムバラク大統領は自ら身を退いた方が、国がうまく治まるような気がする。
 さて、国内で今最も注目を集めているニュースは、@大相撲八百長事件、A霧島連山・新燃岳火山爆発、B異常な大雪害、C小沢一郎・民主党元代表起訴、などである。中でも、大相撲は1ヶ月後に大阪春場所を控えていることもあり、開催するか否かが注目されている。現状では春場所開催も、新公益法人化も極めて見通しは暗い。世間の目は厳しく政界、メディア、ファンを含めて徹底的な調査と再建への道筋を示すことを望んでいる。
 相撲界の関係者はあまりにも好い気になり過ぎて世間を舐め、私欲がむき出しで為すべきことを為さなかったツケがここで溢れ出てきた感じがする。特別調査委員会の調査結果を待ちたい。
1364.2月6日(日) 大相撲春場所開催中止を決定
 えらいことになった。3月に大阪府立体育会館で開催される予定だった大相撲春場所が中止と決まった。終戦直後の1946年夏場所以来65年ぶりの中止である。その当時とは事情も中止の意味も違う。その理由として記者会見した日本相撲協会の放駒理事長は謝罪したうえで、現在の状況では開催に当たってファンの理解が得られないことと、八百長の実態調査に相当時間がかかるからだと語った。全容を解明した後に八百長を行った人物を処分したうえで、ファンの理解をいただき堂々とした相撲を見せたいと語った。下手をすると春場所に続く5月の夏場所だって、現在の様子では事情解明までに至らず再び中止も考えられる。実際理事長はその点にまで言及した。
 1954年春場所は京都市内の中学を卒業直前の身だったが、友だちと大阪府立体育会館へ2度までも観に行って、千秋楽には優勝した大関三根山の優勝パレードに付いて行ったくらい興奮した。あれから半世紀以上が経った。三根山と握手した感触が未だに右手に残っているような気がする。その春場所が今年は中止とは、実に残念である。
 あるスポーツ・ジャーナリストが、スポーツや賭け事の八百長はファンを意図的に騙すことになるので好ましくないが、大相撲はスポーツと神事、伝統芸能の総合的な行事なので、ファンに大きな損害を与えない限り大局的、かつ多角的な面でメリットを捉えるべきだと言っていたが、どうだろうか。ジャーナリストに言わせれば、相撲に八百長はつきものであり、騒ぐ方がおかしい。そういうものだと納得して楽しめばよいのだという。
 それも一理あると思うが、一足飛びにそういう論法で方を付けられても八百長をやった人間に助け舟を出すようなものではないか。それが本気なら、昨日放駒理事長は過去には一切なかった八百長が今回初めて発覚したというような言い回しは止めた方がいいと思う。
 調査は長引くだろうが、関係者は逃げたり、隠したりせずに相撲界は膿を出し、相撲を絶やさないために徹底的な改革を行う必要があると思う。多くの問題点が指摘されようが、私は一にも二にも組織と役員の改革をやらないとダメだと感じている。特に相撲協会内部の人間だけで経営一切を取り仕切り、外部の人間にとって伏魔殿のような場にしておいて、自分たちだけで資産運用、利益分配を策するような誤解だらけの手法は、税金が充当されて成り立っている点から考えてもおかしい。
 今日ブラックリスト上の14人の中の、ある力士の親方である間垣親方のごときは、尋ねられると関係ないと言ってふて腐れていたが、こういう不遜な態度も改めなくてはいけない。現在の各部屋が親方の個人資産のような形になっている部屋制度を、協会が一括管理しようとするアイディアが浮上した時にも、親方衆の中には大反対の声が上がったようだが、大義より利己主義を押し通そうとし、協会内部へ外部の人間が入り込むことに対して異常な拒絶反応があるらしい。そのように自分たちだけですべてを執り行おうとする偏屈な考えでは、とても再生への光が見えてこない。それなら「財団法人」の看板を取り下げて随意にやってみてはどうか。
 とにかく一度組織も制度も、人事も徹底的に見直して、まったく新しい組織体「新日本相撲協会」として再デビューしてもらいたいと願っている。
1365.2月7日(月) 元連合赤軍幹部・永田洋子獄中に死す。
昨日元連合赤軍・最高幹部のひとり、永田洋子が亡くなった。晩年は体調を崩し、死刑囚でありながら刑務所内で手術を受けたり、寝たきり状態で「手厚い看護」を受けていたが、多臓器不全により65歳のドラマチックで薄幸とも思える人生の幕を下した。
 「あさま山荘」事件の直前、赤城山を拠点に転々とアジトを移動しながら集団リンチで多数の仲間を次々に謀殺して、もうひとりの最高幹部・森恒夫とともに逮捕された、希代の鬼女である。あの忌まわしい事件からほぼ40年の月日が経つ。
 「日本赤軍」が海外でダッカ日航機ハイジャック事件や、オランダ・ハーグ事件、テルアビブ空港乱射事件等派手なテロで世界的な注目を集めたが、過激で無意味なテロが当時のアラブ左翼グループから一歩距離を置かれることになった。その一方で国内では学生運動の急進派は各セクトを大同団結して、「連合赤軍」として組織を再構築し、次第にテロリスト的な活動で国内の過激的な学生の間に徐々にその存在感を強めていった。その一部の幹部の正気の沙汰とも思えない突出した行動が、社会的に大きなショックを与える過激な運動へと突っ走っていった。
 忘れもしない凶暴な連合赤軍の運動の中で、しばしば名前が挙がった永田、森、奥平純三、和光晴生、重信房子、坂口弘、坂東国男、岡本公三らに反省の言葉はなく、自殺死、獄中生活、そして今も海外へ逃亡している者も数多くいる。全学連は当初高校ラグビー部の先輩、清水丈夫書記長らが主導した純粋な学生運動から出発し、60年安保闘争を経て、ベトナム反戦へ発展させた運動の過程で離合集散を繰り返すうちに、どこでどう間違えたのか、組織を人殺し集団へ変貌させてしまった。永田が亡くなった今になっても、「あさま山荘」事件で逮捕されて13年間服役した加藤兄弟の弟、加藤倫教氏も永田らの突出した真意が理解できず、「ベトナム戦争に反対したことは今でも間違っていたとは思わない」が、リンチや人質を捕ったりしたことがどうしても納得できなかったようだ。
 私自身60年代から70年代の初めにかけて、ベトナム反戦運動に関わったが、ベトナム人民を悲惨な生活と貧困から解放しようとの素朴な思いだけだった。とても、連合赤軍のように同じ目的を抱く同志に暴力を加えるなんて考えられもしなかった。永田や森からすれば、自分たちに逆らう者はみな逃亡兵に見えたのかも知れないが、彼らの言動には心のゆとりや、良心、思いやり、話し合い、説得、情愛がなく、直ちに同志を「総括」してしまうほど、憎しみの感情が燃え上がり一直線に暴力に走り、その行動は一気に跳ね上がっていった。今もって彼ら70年安保世代の跳ね上がった一部とわれわれ60年安保世代とは、多くの点で考えが相容れないと感じている。
 それにしても、大きな時代の流れと感慨を感じさせる永田洋子の非業の死である。
1366.2月8日(火) 住民の声は本当に正鵠を射ているのか。
 一昨日行われた愛知県の3つの選挙の投票結果が新しい地域住民の行動パターンを変えるのではないかと注目されている。3つの選挙とは、県知事選、名古屋市長選、市議会解散の是非を問う住民投票で、知事には自民党を離党した大村秀章氏が圧勝し、名古屋市長選では持論を訴え、つい最近辞職したばかりの河村たかし氏が圧勝した。両氏とも党派を超えた無党派層を結集し、民主党と自民党候補者を大差で破った。もうひとつの名古屋市議会の解散についても市民が下した結論は、河村氏の望む解散だった。
 前々から危惧していた、政治の空白と過大な出費に関してはあまり話題になっておらず、むしろ名古屋市民が既成政党の常識や政党論理に捉われなかったことを評価するマス・メディアの論調が目立つ。知事選と市長選の結果は、敗北した民主党、自民党にとって深刻な問題を提起した。今年4月全国各地で行われる統一地方選では、愛知の結果がどれだけ自営に影響されるのかを測りかねているのだ。
 トップの座に誰が就こうと、自治体としては住民が安定した生活を送れるよう智恵を絞るのが最大の責務であり、名古屋市長選のように度重なる選挙で時間の空白を作るようでは本旨に悖ると思う。河村新市長には自分の意見を住民に訴え、持論を通すのは了としても名古屋市民のために、どれほど粉骨砕身の努力を払い、市民を納得させられるかということが原理である。
 因みに元島根県知事だった片山善博総務相は「河村流は邪道。行政改革を一所懸命にやり、自治体が抱える巨額債務を減らす方に振り向ける。巨額債務があるのに減税するのは、長期的な財政運営の観点からいかがなものか」と河村氏の訴える市民税減税に手厳しいコメントを述べている。
 さて、昨年来メドベージェフ首相以下ロシア首脳が度々北方四島を視察して、国ぐるみで実行支配を固めつつことに対し、昨日菅首相は許し難い暴挙と発言した。これにロシア政府は即座に「北方領土の主権を見直すことはない」と反論した。ロシアがどう自己主張しようと、北方領土が日本の領土であることは歴史的にも1855年に締結された日露通交条約でも明確に証明されている。ロシアは第二次世界大戦の戦利品という解釈であるが、それはロシアの一方的な言い分で、国際的にも通らない論理だ。
 問題は、日本政府がこれまで一言もロシアに対して日本の正当性のある論理をぶつけてこなかった点である。ここにも日本外交の弱さがある。これからはただ自国の領土だと主張するだけでなく、国際社会に向かって論理的に説明し、共鳴者、同調者を増やす努力を続けていくべきではないだろうか。その点で政治家の責任は重い。いつまでも国会内で与野党が喧嘩をやっている場合ではない。
1367.2月9日(水) 明るいニュースは冬枯れ状態
 ほんの僅かではあったが、今朝この冬初めての雪が降った。カラカラ陽気の中で、少しは「干天に慈雨」ならぬ「乾天に慈雪」となっただろうか。
 このところ国内外ともに芳しいニュースはさっぱりである。エジプトの反政府デモは一時収束へ向かうかと思われたが、しばしデモ疲れを癒すかのような中休みで、その先には再び混乱がぶり返しそうな様子である。
 ビルマでは、怪しげな軍人支配の民主政府が発足しそうだが、漸くスー・チーさんが一言発言した。諸外国へ向かってビルマ現政権下では経済制裁を解除しないで欲しいと、国民感情とは反対で相容れないはずのことを述べた。もちろんスー・チーさんの真意は多くの国民が理解し、厳しい経済封鎖の中でも我慢しようと考えてくれると判断したうえでのことだと信じる。
 国内では、北方四島がらみの日ロ関係がギクシャクし出した。メドベージェフ大統領を始め、ロシア高官が続々と北方領土を訪れていることに対する菅首相の辛らつな発言が、ロシア政府を大分刺激したようである。今朝の朝日の社説にも取り上げられている。
 首相の言葉遣いに苦言を呈したうえで、日ロ間に正常な首脳外交が機能していないと指摘する。まったくその通りで、これは政治家の責任でもあるが、何よりもこれをお膳立てすべき外務省の無策無能ぶりをも露呈したのではないか。建設的な対話の回路がまったくない。朝日は、「これまでの領土交渉の経緯について何が認められ、何が認められないかを両国がきちんと確認し合うことだ」と提言する。お互いに声高に相手を誹謗中傷するだけでは、何の成果も得られまい。わが国としては、ロシアの北方四島占領に対する国際社会への問題提起と発信、と同時に両国間で議論を闘わせるルールを作りあげることが重要である。覇権国家のロシアは外交相手としては相当手ごわいが、だからと言って相手に言われ放しではジリ貧になるばかりだ。
 国会は小沢一郎・民主党元代表の強制起訴に対して野党の国会招致や、議員辞職の要求に対して民主党内では今もって結論が出ない。国会は小沢氏の顔を遠目にしながら細々と議事を行っている。今日菅政権になって以来初めて与野党党首討論を行った。質問者と答える首相の間でヒートアップはしたものの、相変わらずすれ違いの論戦で、とても濃密な党首論戦とは行かなかった。
 むしろ、大相撲の八百長問題の方が大向こうの興味を呼んだ。今日は力士会を代表して横綱・白鵬が謝罪会見をしたが、難題を解決するには全相撲界が一致協力しなければならないのに、その気持があまり感じられないことが気にかかる。任意で携帯電話の提出を求められているにも関わらず、あまり積極的に協力しようとする力士がいないことがその典型である。この様子では解決までに相当時間がかかりそうな気がする。外からでは分かりにくいが、ひょっとすると親方衆と力士が大分汚染されているのではないかと勘ぐらざるを得ない。こんな状態ではこれからどうなるのだろうか。
1368.2月10日(木) 今年は大東亜戦争開戦70周年
 今年は大東亜戦争開戦70周年という記念すべき年であるが、戦争に狩り出されて辛い戦地生活を送った方々にとって、また悲惨な戦争体験を背負った遺族にとっても、思い出したくもない唾棄すべき年であるのかも知れない。
 今年も開戦の日・12月8日と終戦記念日・8月15日が近づいてくると戦争に関するニュースが流れてくると思う。
 昨日自由が丘駅前の書店へふらりと入ったら、学研の「歴史群像アーカイブ<太平洋島嶼戦>」なる書物が目に入りつい買い求めてしまった。それらの島嶼の内いくつかの島に、度々旧厚生省の戦没者遺骨収集団のお供をして、或いは下見調査で訪れ、おかげで一般の人が知りえない戦地の現場をつぶさに観察することができた。同書をぱらぱら捲っていると思い出すシーンが随分ある。サイパン、グアム、テニアン、ロタ、パラオ、トラック、コロール、ペリリュー、アンガウル、ニューギニア、ガダルカナル、ニューブリテン、ブーゲンビル等々の中部太平洋の島々を何回となく訪れた。長年に亘って戦没者の遺骨を奉還するという尊い事業に関わることができて、戦争に関する知識とともに、戦争を見る視点が幾ばくかは変わったように思う。
 私が学生時代から関心を持ち、安保と南北問題から世界の戦乱の地を訪れ、そこで覚った臨場感や、戦争自体に対する考え方とは、若干異なるものではあったが、大東亜戦争の現場で知ったことは計り知れないほど今日仕事面でも生活面でも役立っている。
 何度も遺骨収集団でご一緒した日本遺族会の水落敏栄氏は、今や自民党参議院議員として遺族会の支援を背に、大和魂と日本人としてあるべき姿勢について存在感のある発言をされておられる。
 明日は建国記念日であるが、近年国内で話題になることが年々少なくなってしまった。ましてや建国、紀元に関して深く話されることもない。この建国記念日にしても単純に右翼的な記念日と考える人もいるが、そう短絡的に捉えるのではなく、先の戦争原因の原点のひとつと反省の気持ちをもって考えることが大切ではないか。
 建国記念日の明日から全国で映画「太平洋の奇跡」が封切られる。玉砕の島・サイパンで苦戦の末生き残った大場大尉の自伝的ドキュメンタリー映画らしく、その内容とさわりについてここ数日テレビで紹介されている。サイパンの激戦の場面も多いようなので、どういう風に描かれているのか観てみたいと思っている。
 それはそれとして、今も世界各地では紛争や戦争が絶えない。いつの時代にも反戦の声があがる。しかし、すぐにこの声はかき消されてしまう。70年前に犯した過ちを繰り返すまいと誓ったはずのわが国の周辺にもそんな空気はないだろうか。
1369.2月11日(金) 寂しい建国記念日
 昨日の本項に書いたように、今日は建国記念日で昔風に言えば紀元節に当たる。終戦翌年の紀元節を当時の国民学校の狭い講堂で、意味が分らないながらも全校生徒が、♪雲に聳ゆる高千穂の〜♪で始まる「紀元節の歌」を唄いながら、お祝いした遥かな記憶がある。
 ところが、今や建国や国の歴史を象徴するような言葉も話も今日の新聞、テレビのニュースを見る限りまったくない。インターネットのWEBサイトのニュース欄を見ても関係記事が見られない。これでは何のために建国記念日を制定したのか意味がない。折角建国記念日を国民の祝日と決めたのだから、少しはメディアも報道面でもう少し取り上げるよう配慮すべきだと考えるがいかがなものだろうか。皮肉なニュースとして、天皇が東大病院で心臓の冠動脈の検査を受けられたというのが、建国、或いは王室に関する唯一のニュースである。
 アメリカの学校を訪問した時に聞いた話がある。アメリカ人が決して忘れてはならないエポックメイクな日時として、アメリカ大陸発見の年(1492年)、アメリカ独立記念日(1776年7月4日)、そして配偶者の誕生日と結婚記念日だそうである。独立とか建国の年というのは、その国民にとっては肝に銘じて覚えておくべき日であることは洋の東西を問わない。特に忘れっぽい性格の日本人は、意識しないとすぐ忘れてしまう。それだけに日本の歴史を知るうえでも、国がもっと建国記念日の啓蒙化に力を注ぐべきだと思う。
 今ロシアが北方領土を自国領土として強く主権を主張し出したのも、日本人の建国意識の薄い点を突かれたのではないかと気になっている。
 せめて建国の日ぐらい、政府が文部省を中心としてマス・メディアが、国の歴史に関する事実を国民に伝える努力をする必要があると思う。今のありようは国を維持し、発展させていくための体を成していないと言ってもいい。
 さて、このところムバラク大統領辞任要求デモが鎮静化していたエジプトで、今日再びデモがぶり返してきた。今朝の朝刊各紙ではほとんどフロント・ページは「ムバラク大統領辞任へ」と断定的に書かれていた。この後大統領が辞任演説をして職を辞するとの筋書きと期待だった。軍の支持が得られず、混乱が収まらないので、身を退くということだった。ところが、大統領は権限をスレイマン副大統領に譲るが、課せられた責任を全うするために、その地位に任期いっぱい留まるというテレビ放送を行ったために事態は再び混沌としてきた。
 一度権力の座に就くとどうしてもしがみつきたくなるようで、ムバラク氏も長期間に亘る任期を全うして多くの国民から惜しまれながら栄光の中で去りたいらしい。だが、今やムバラク氏の思惑は完全に外れた。ここで辞めるより国を混乱から救う方法はないようだ。権力者の引き際というのは、つくづく難しいものだと感じる。
 今日は一日中雪が降っていた。近年東京では珍しい。外へ出かけることもなく自宅の庭を見ていると雪を冠した松の木に風情がある。日本の冬はやはり松と雪だ。
13702月12日(土) ムバラク政権ついに崩壊!
 ついに現代のファラオ・ムバラク王国陥落! 日本時間の昨日深夜から今朝へかけてエジプト情勢が急展開した。昨日の朝刊新聞第一面には「ムバラク大統領辞任へ」とあったが、実際には職権の内かなりの部分を副大統領に委ねることにして、本人はまだ大統領の職を辞する意思はなかった。それが一夜が明け今朝の新聞第一面では、昨日の見出しから「へ」が取れて「ムバラク大統領辞任」とはっきり辞任を打ち出した。夕刊紙の一面トップもほとんどが「ムバラク辞任」である。今度は本人のテレビ演説ではなく、替わって副大統領が公表したものである。とりあえずこれでエジプト政変の第一幕に幕が降りた。
 ムバラク氏とその家族は、ヘリコプターで大統領官邸からシャルム・エル・シェイクへ向かったと言われている。シャルム・エル・シェイクはアカバ湾とスエズ湾の狭間に位置するエジプト屈指の高級リゾートとして知られ、ムバラク氏の別邸もあるが、むしろ1967年6月に勃発した第三次中東戦争時には、イスラエル空軍機がエジプト軍のアカバ湾の封鎖作戦を破壊するため電撃攻撃を仕掛けてひとしきり話題になった街である。ついに独裁者ムバラク大統領も、国民の民主化要求の声に抗しきれず、断腸の思いで30年に近い長期政権から身を退くことを決断した。
 しかし、エジプトにとって問題はこれからである。ムバラク政権が強権政治下に民主化の芽をほとんど摘んでしまったために、この後受け皿として誰もが納得するような人物も、組織も、体制も見当たらないのである。更にもっと深刻な問題は、景気停滞により8千万人の人口の内、52%を占める25歳以下の若者に職がないことである。彼らの失業率は何と20%を超えているという。しかも石油産油国と見られているが、最近では石油の輸出量より輸入量の方が多いくらい産油国としての存在感が薄い。アラブ諸国の中でもイスラエルとの関係が良好だったために、アメリカと当のイスラエルにとっても、新政権がどういう体制を作り、イスラム国としての立場を強く打ち出すようになるのか、従来と同じようにイスラエルに対して受容的な政策を取るのか、はらはらしながら見守ることになるだろう。
 一方で、中東諸国の中でも長期政権の続く国では、チュニジア、エジプトに続いて「明日はわが身」と事態を深刻に受け止めている国もある。さしあたってイェーメン、アルジェリア、サウジアラビア辺りでその影響が表れてくるのではないだろうか。
 ムバラク氏の辞任を受けてスイス銀行では、早速ムバラク氏とその一族の資産を凍結した。その資産が何と5兆8千億円だというから小さな国ならまるごと買えてしまうほどの巨額である。極貧生活を送っている庶民がいる一方で、このように権力を行使して私的に蓄財していた人物がいたわけである。これでは貧困生活を送っている国民が怒るのも無理はない。
 テレビ画面に映されるカイロの風景、とりわけナイル川に架かっている橋の遠景を見ていると、あの橋を渡ったことが思い出される。初めてエジプトを訪れた時はナセル初代大統領だった。2度目の時はサダト大統領で、3度目に訪れた時はこのムバラク大統領だった。その意味では、歴代すべての大統領と同じ都市・カイロで同じ空気を吸っていたことになる。何と言っても古代エジプト文化を造り上げた末裔たちの国であるだけに、印象的なシーンや建造物が多く、それぞれが懐かしく思い出される。
 ムバラク氏辞任を受けて、オバマ大統領やキャメロン英国首相がコメントを述べていたが、彼らの存在感に比べて最後に記者会見でコメントを述べた、疲れたようなわが菅首相の影が薄く、暗い印象にはがっかりした。
1371.2月13日(日) 週間ニュース関心度ランキング
 日経新聞電子版の先週閲読ランキングを見ると、経済専門紙だけあって普通紙の閲読とは少々異なる。因みに上位10位までは次の通りである。
@愛知県知事に大村氏、名古屋市長に河村氏
A米格付け会社、日本国債「下振れリスク高まる」
Bトヨタ車急加速問題、米運輸省「電子系に欠陥なし」
C大相撲、春場所中止に
D連合赤軍事件の永田洋子死刑囚が死亡
Eボタン1個の携帯電話、ソフトバンクが3月発売
F長友がインテルデビュー
Gエジプト情勢、緊迫続く
H米フェイスブック、新本社敷地は東京ドーム5個分
IHIS、タイ片道4800円低価格ツアー発売
となっている。
 それぞれに極めて興味のあるニュースであるが、Eの携帯電話の件は知らなかった。ムバラク大統領が辞任する直前の盛り上がりからすると、Gのニュースは昨日辺りならもっと上位に入っただろう。日経なので経済に強い興味を持っている人の関心度であるが、トップに愛知県の選挙結果がランクされているのは、民主、自民の既成政党から支持層が離れた人がいかに多いかということを示唆していると思う。この現状を多くの人々が強い関心を抱き、他方で両党関係者が心配している。これに多くの人が関心を持ち、不安視していることは、信頼できない今の政治状況そのものを象徴している。
 私には、D永田洋子の死亡関連ニュースに関心が向く。その点についてはすでに2月7日付本項に書きこんだ通りである。
 I格安ツアーについては、決め付けるわけにはいかないが、安売り合戦でわが国の旅行業界に、ただ見かけの値段だけ安ければ良いとの風潮が蔓延ることが心配である。先般独法・国民生活センターへ寄稿した文章にも書いたが、ツアーの安全性との関連をもう少しPRし、啓蒙した方が良いのではないかと思う。あまりにも安いツアーでは、安全管理、旅行者保護上の物心両面での費用投資が難しいからである。
 来週になったら、新しいニュースが顔を出すだろうが、北方領土問題に関する日ロ間の険悪な空気や、新燃岳噴火、年金一元化問題等々が躍り出て、日本人の心をやきもきさせるのではないか。
1372.2月14日(月) 北方領土問題は解決できるか。
いつのころからか聖バレンタイン・デイと呼ばれるようになった。とかくノー天気に成りがちの日本では、好きな人にチョコレートを贈るということで国中が大騒ぎしているが少し狂っているのではないか。アメリカ辺りではこんなふざけた習慣はないというから、まるで日本人はみんな菓子メーカーの口車に乗せられたピエロだ。まあ天下泰平と言っては言いすぎだろうか。
 こんな浮世離れの現実とは別に、昨晩NHKが深刻なドキュメント番組「北方領土・解決の道はあるのか」を放映していたが、ロシア首脳の北方領土訪問による領土の主権アピールと島民の生活の改善により、かつては日本領だった4つの島が今や現実的にロシア政府に実行支配され、ロシア領土となってしまったかの感がある。
 番組を観ていて考えさせられることが多い。日本には二つのグループが厳然としてあることである。ひとつは北方4島全島返還を求める正論派、もうひとつはとりあえず現実的に可能な案として、歯舞、色丹の2島返還、そしてその後残る2島返還を求めて交渉を続ける一派である。
 外務省内にも理想と現実派の2つの流れがあるという。しかも、2島返還は1956年の日ソ交渉で決まっていたことであり、他方で4島返還を求める運動に何の進展もなかったことから、日ロ間に平和条約も結ばれず、今では反って2島返還すら縁遠い話になってしまった。
 政治家がこれまで何らの行動も起こさなかったことが、領土問題未解決の最大の原因である。言うならば大罪である。4島返還を求める環境の中で、秘かに2島返還交渉へ動いていた鈴木宗男・前参議院議員も、皮肉なことに勇み足で今は獄中に繋がれた身である。ある有識者は、現在政治的には日ロ間は行き詰まっているので、他の分野における対ロ協調、その中でも日本の経済支援、技術支援、環境支援などによって友好関係を構築し、時間をかけてロシアのかたくなな気持の雪解けを待つのが良いと提言する。
 前述の通り、政治家を始めとして日本が正当性のある歴史的事実を国際社会へ訴えてこなかったことが、ロシアに思うように行動させている原因であることは論を俟たない。
 それにしてもロシアの言う4島は、国際的にもロシア領土として認められているという主張はおかしくはないか。第二次世界大戦の戦利品として、ロシアは北方領土の主権の正当性を主張しているが、日本が降伏した8月15日以降に占領したものであり、いかに国際的には大戦の終戦を9月2日としているとは言え、敗戦国の財産を強奪した、火事場泥棒的イメージは拭えない。今もこの北方問題から逃げ腰のわが国の政治家と外交官は、これまでいかなる志を抱いて一体何を仕事にしてきたのかと問いたい。
 こんな深刻なテーマが周りにいくらでもあるのに、チョコだとか、義理チョコだとか少々軽過ぎるのではないだろうか。いい気なものだと思うのは、ひがみだろうか。
 ことの是非は別にして昭和17年の今日2月14日は、日本陸軍がシンガポールを陥落させ、日本中が歓喜に湧き、燃え上がり日本国民が一番一致団結していたころだった。
1373.2月15日(火) 中々面白かったペンクラブ二次会
 一昨日2010年名目国内総生産(GDP)で中国が日本を追い越し、アメリカに次ぐ世界第2位の地位にのし上がったことが正式に発表された。早くから予想されていたことでもあり、数字自体には格別驚くこともないが、中国の成長スピードには驚嘆させられる。この10年間の日本の成長率が実質0.7%に留まる一方、中国は10.5%に達する猛スピードの成長率である。このままいくと15年後にはアメリカを抜いて中国は世界第1位の経済大国の座を占めることになるらしい。
 菅首相はやせ我慢だろうか、近隣の国が経済成長することは歓迎すべきこととコメントしている。しかし、いくら経済界、産業界が頑張ったところで、今の日本の政治状況を見ているとノー天気の菅首相のように超然としてはいられないのではないか。
 このGDPの数値はひとり当たりでないところが味噌で文字通り総計であり、当然人口の多い国が有利である。その点では国民の生活レベルを正確には表していない。中国が日本を追い抜いたことに、中国市街でのインタビューで中国市民はほとんどが誇らしげに自分たちの国に誇りを持っていて、いずれアメリカも追い越すと自信たっぷりに語っていた。その中でインテリ風の中国人は、一人当たりの所得を見ると日本の約十分の一であるので、これが日本に追いつくことができれば嬉しいと冷静な分析をしていた。実際中国の地方都市に行けば、国内の経済格差はもちろん、いかに農村部が貧しいかということを目の当たりに知ることができる。富の蓄積というものをどう捉えるか、数字だけでは図り知れないものをどう理解するのかという点を論議しなければ、数値だけでは表面的で通り一遍のものになってしまう。
 さて、久しぶりに日本ペンクラブ例会に出席した。今日は定例の著名人による30分ほどのショートスピーチがない。その代わりに新入会員紹介で、あれっと思う人が紹介された。誰あろう、ギニアのオスマン・サンコンさんである。テレビタレントとして知られているが、文筆家とは知らなかった。だが、サンコンさんは元々パリ・ソルボンネ大学を出たインテリで、数ヶ国語を話す。少し話をしたが、意外に小柄で如才なく中々愉快な、テレビで見る通りの人だ。その他にも阿刀田高会長、西木正明さん、轡田隆史さん、堀武昭さん、吉澤事務局長ら何人かの人と短い会話をした。終って二次会は、小中陽太郎さん、大原雄さん、西原健二さん、ヨタロウ会幹事の瀧澤ご夫妻と有楽町ガード下の「金陵」で、昨年の国際ペン東京大会について議論が沸騰した。5月の総会で報告されると思うが、国際ペン東京大会も史上最大規模で成功裏に終ったが、その裏には相当苦労話も隠されているようだ。ペン理事会の会議内容などを聞いていると、社団法人ということもあり、普通の会社組織とは大分異なる組織団体であることを知らされる。やはり利益追求団体ではないからだと思う。何かにつけ引き合いに出されるのは今話題の財団法人日本相撲協会である。かなり率直に話し合ったので、小中さん、大原さん、瀧澤ご夫妻らの激論は傍で聞いていて中々面白かった。
 小中さんからいただいたフルブライト同窓生の機関紙‘NEWSLETTER2010 12月号の表紙に高校先輩の根岸英一博士の顔写真が掲載されている。実は、3月18日に母校・湘南高校の東京有志会で根岸博士が講演されるのを機会に、根岸博士の言葉を引用した拙著を贈呈するつもりであることを小中さんにお話したら、それならと最新号をご持参いただいた。そのうえ同誌の最初の文章は同じフルブライトの小中さんご自身がペンを取っておられる。根岸博士にお会いする際、この同窓会誌をお持ちしようと考えている。
1374.2月16日(水) 政治をダメにし、希望を失わせる鳩山由起夫と小沢一郎
 民主党は小沢一郎・元代表に対する民主党員資格停止処分を決定した。政治資金規正法違反に関する検察審査会の強制起訴に対して、やましいことは一切ないの一点張りで国会の証人喚問、政治倫理審査会への出席をいずれも拒否して野党の厳しい追及をかいくぐっていた小沢一郎氏が、民主党内からも批判の矢面に立たされている。豪腕小沢の仕返しが怖い民主党幹部は誰も猫の首に鈴を着けられず、ついに菅首相が直接会って議員辞職、或いは離党を勧めたが、小沢氏はこれらをいずれも拒否してにっちもさっちも行かなくなってしまった。民主党常任幹事会は親小沢派と反小沢派が対立してすったもんだの中を、裁判で決着がつくまでの間小沢氏の党員としての活動停止を漸く決定した。この決定を受けて倫理委員会の追認を経て最終的に処分が決定する。
 かつては民主党政権の閣僚だった亀井静香・国民党代表からも、民主党は離合集散を繰り返し、内部対立でリンチを繰り返した連合赤軍と変わらないと呆れられ皮肉を言われる始末である。
 この内輪揉めのていたらくで民主党と菅政権に対する国民の支持率は急降下して、とても政権を担っていけるだけの基盤が構築されていないことが明白になった。そこへ今度は鳩山由起夫・前首相の失言である。
 沖縄における米軍駐留は敵の攻撃の抑止力になると鳩山氏が在任中に述べたことは、「方便」だったと沖縄タイムスとのインタビューの中で語った。昨年首相辞任前の沖縄訪問の際、就任時から力説していた「沖縄米軍基地の海外移設、最低でも県外移設」を諦めざるを得なくなった。鳩山氏は沖縄県民に対して、米軍が沖縄に駐在することは大きな抑止力になるので駐留させる必要があるとの結論に至った、ととってつけたようなロジックを述べていたが、それは今にして思えば、単に思いつきの「方便」だっただけなのだ。本心から米軍駐留が抑止力になるなぞ考えてもいなかったことになる。まあ酷いウソツキ総理大臣である。言葉の使い方も知らない。それより何より沖縄県民に真っ赤な嘘をついて平然としているではないか。この狂った神経とセンスはまったく理解できない。何と軽率で言葉の重みを知らない人だろうか。こういう人が国のトップの地位にいて国民を騙し続けていたことを国民は情けないと思うと同時に、恥と思わざるを得ない。
 流石に呆れた菅首相も言うべき言葉を失ったようだが、担当大臣の北沢俊美・防衛大臣は人生で1、2を争うような衝撃的な発言だと不快感を露にした。
 この鳩山由起夫なる欠陥政治家は、首相から身を退く時にも今後は国会議員としての活動から手を引き、政界から引退するとはっきり述べた。それすら舌の根も乾かぬ内に撤回した。何と言葉を軽視する政治家だろう。政治家たる資格もない、この鉄面皮には最早つける薬もない。
 こんな人物が総理大臣を務め、与党幹事長を疑惑だらけの人物が務めていた日本の政治が良くなるはずがないと、お人よしの国民は失望し悲観するだけである。
1375.2月17日(木) 甘い汁を吸う独裁者と惨めな末路
 栄耀栄華を恣にしてどん底に落ちたかつての権力者ほど惨めなものはない。「奢れる者は久しからず」を地で行っている。エジプトのムバラク前大統領にして然りである。つい1週間前まで国家非常事態下において権力を行使し、国民を弾圧していた独裁者が、今では見る影もない。カイロから逃れてシャルム・エル・シェイクの別荘に蟄居しているが、伝えられるところによると重病説もある。思考能力にも疑問符が付けられ、そのうえかつての実績についてもナセル初代大統領とサダト第2代大統領の中間政治を行っていた凡庸の人と称される有様である。更に汚職による不正蓄財で訴追される可能性も指摘されている。一旦栄光の座から滑り落ちるとその権威が失われるのは止めようがない。
 チュニジアから始まった長期政権批判による独裁者の追放の動きが、エジプトでも実現されたわけである。これが更に周辺の中東諸国に波及しつつあり、長期政権の独裁者も内心穏やかではないのではないか。すでにイェーメンでは現大統領が任期満了を以って職を去ると発表した。現在民主化を求めるデモはバーレーンとイラン、リビアに飛び火している。
 バーレーンの如きは国王が実権を握り、産油国としての裕福な財政事情をバックにデモ隊の生活保護の要求に応えようとして各戸別に約22万円を支給する苦肉の策で逃げ切ろうとしている。加えてこの国には宗派の対立が燻っている。人口の7割を占めるイスラム教シーア派が、政治の実権を握っている同じイスラム教スンニ派に痛めつけられているとの思い込みが強い。それにしてもこれまで強権的に民主化運動に圧力を加え、非難されるや子供騙しの一時金でしのごうとする無為無策のお大尽遊びにつき合わされてきた国民こそ、宗派を問わずいい迷惑で、建設的なビジョンが示されない解決策だけに不満はたまる一方であろう。
 日本の政治にも同じようなことが言える。小沢一郎・元代表に対する民主党党員資格停止処分に関して早速小沢グループから反発が表面化した。小沢氏の処分と直接関係があるとは断定できないが、16名の小沢氏に近い衆議院議員が民主党を離脱はせずに党内会派を結成して執行部と対決していくと勇ましい。しかも身内の菅首相の退陣を求めていくという。彼らは全員民主党比例代表区選出の1、2年生議員である。誰のために何のために政治家になったのだと一人ひとりに尋ねてみたい。この間ロシア政府は中国と韓国との合弁事業により北方領土を開発すると発表した。完全に日本政府のぐらぐらした状態を見抜いて北方領土の実効支配を更に強固にしている。軟弱外交の日本はやられっ放しなのである。
 この間国内では霧島連山・新燃岳の爆発噴火が続き、その都度地元住民は避難したり掃除したりてんてこ舞いの有様である。更に鳥インフルエンザが各地に発生し、関係者は泣くに泣けない状態で苦しんでいる。
 大きな顔をして好待遇を受け、ちやほやされながら内輪喧嘩ばかりして、国民のために真面目に働かない政治家と、噴火で苦しんでいる牧畜業者や養鶏農家らとの間の格差は、このままにしておいては問題であろう。
 今日の唯一明るいニュースは、宇宙飛行士・若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)の司令官に日本人として初めて選ばれたことである。メデタシ、メデタシ。
1376.2月18日(金) トップを首にしたい民主党幹部
 「首相代えてもいい」今日の朝日夕刊トップ記事の見出しである。よりによって与党民主党幹部が野党である公明党幹部に打診した秘かな囁きである。国民の菅政権支持率低下と並行して、最近の政局の動きからいよいよ菅政権の命運が尽きる日が近づいているとも言える。昨日の造反議員の行動は一般の受けは良くなく、あまり意味がないと思うが、それでも心情的に賛同している同志は少なくないようだ。とは言え、こういう軽率なパフォーマンスは誤解され、益々親分・小沢一郎元代表の行動を窮屈なものにするだけではないか。
 一方で、囁きは首相がやる気があるのに、首相の首と引き換えに予算関連法案に賛成してもらおうとの一部幹部の裏取引であると捉えられている。まったく腰が据わらない菅首相の政権運営だが、これだけ周囲に舐められ、周辺が喧しくなってくると、いよいよ退任もやむを得ないと諦めるよりしようがないか。
 夜の「報道ステーション」でもこのニュースが最初のトピックとして取り上げられた。
 民主国家のわが国では、今や血で血を流す闘いはなくなったが、政権の座をいとも簡単に禅譲しようとする古い考えが未だに残っていることに危機感すら憶える。
 海外では民主化を獲得するために激しいデモが繰り広げられているのが現実である。一時的にデモが納まっていたイェーメンでも再び騒ぎが拡大している。北部地区とアデンを中心とする南部地区と分裂の可能性も出てきた。バーレーンのデモでは、治安部隊が鎮圧に乗り出し死傷者が出て、反って民衆の反政府感情に火を点けている。リビアも酷い。40年以上に亘るカダフィ大佐の独裁統治によって民主化運動が弾圧されたリビア国民は、ついに堪忍袋の緒が切れた。これっぽちも反政府デモが表面化したことがなかった「カダフィの国」に、少なくともデモが発生した。昨日現在13人の死者が出たとの情報がある。このように海外、特に中東諸国で自由を獲得するために身体を張った民主化デモが起きているのに、国内では民主化を獲得していながら非民主的な取引で上へ下への大騒ぎをしている。この平和ボケと無責任な政局にはほとほと愛想が尽きる。
 日本という国には、本当の民主政治はまだ生まれていないのではないか。
1377.2月19日(土) ラグビーのテレビ・マッチ・オフィシャルについて
 今シーズンは一度も観戦しなかったラグビーもシーズンの終わりが近づき、来週には日本選手権の決勝戦を迎える。今日は準決勝2試合をたっぷりテレビで観戦した。すでに今日までのトーナメントで2つの大学チームとクラブチームの代表は社会人チームに一蹴され、勝ち残ったのは昨年同様社会人強豪チームだけとなった。かつては、慶応と早稲田が社会人チームを破り日本チャンピォンになったことはあるが、今では社会人チームと大学チームの実力の差は歴然として、大学チームが社会人チームを降すことは望むべくもない。
 その社会人チーム同士の準決勝で、4連覇を目指す三洋電機と拮抗した力の東芝戦は、三洋が後半に逆転して決勝戦へ勝ち進んだ。もうひとつの準決勝戦はこれまた熱戦の末、サントリーが神戸製鋼を振り切った。いずれも好ゲームで久しぶりにラグビーの面白味と楽しさを堪能することができた。
 ところで、今日の試合で「テレビ・マッチ・オフィシャル」制度が実際に採用された場面を現実に初めて観ることになった。トライかどうかの微妙なシーンを前者の試合で3度も観ることになった。このシステムは2年前から大きな大会やトーナメントで採用されるようになり、レフェリーが瞬時にプレーを判定しにくかったり、プレーの死角のポジションにいて判定できなかったケースに、タッチジャッジに尋ねることはあるが、それでも自信を持って判定できない場合に、ビデオ画面を観たうえでレフェリーがジャッジするものだ。
 今日の3つのシーンでは、確かにそれなりに納得できる判定とはなった。ただ、このシステムが万能とは言い切れない点と、ラグビー・スピリットから考えるとこの制度の採用には疑問も感じる。ひとつは、ゲームが盛り上がった時点でプレーをストップするもどかしい空白の時間である。もうひとつは、ラグビーはレフェリーに全権限を委ね、お互いの信頼の元にゲームが行われ、レフェリーのジャッジに対して一切アピールはできないとの紳士的了解の下に試合を行っているからである。
 時代の変遷につれて、試合以外でもルールが変わり、ジャージーと云われるユニフォームも変わり、試合の展開に合わせて選手の交代を行う戦術にも多少の違和感を感じるが、これも時代と言ってしまえばそれまでだ。だが、昔の素朴なラグビーを知るものにとっては一抹の寂しさを感じるのも事実である。
 近代スポーツとして衣替えして、テレビ放送向けに派手で目立つユニフォームに変わり、コマーシャリズムが入り込み、外国人選手も多くなり、選手たちの気持やパフォーマンスも人の目を意識するものに変わってきた。果たしてこれが良いことなのかどうかは分らないが、アマチュアイズムの権化のように言われたラグビーにも明らかにプロ化の風が吹き込み、時代の波にさらされていることは間違いない。
1378.2月20日(日) 田園調布に白人撫子
孫のひとりがヤマハ音楽教室のエレクトーン発表会で友だちと演奏するというので、妻と横浜・関内大ホールへ出かけた。会場内は保護者らの熱気で盛り上がり、そのフィーバーに些か圧倒された。今の子どもたちの校外学習のエスカレートぶりには、遊びまわっていた自分自身の子ども時代を照らし合わせるととてもついて行けない。長男の子どもたち3人もそれぞれ塾やお稽古であまりのんびりできるような学習環境ではないようだ。親にとって経済的にも大変だし、特別子どもが好きなら別だが、無理やりそのように仕向けることにはあまり賛成できない。
 幸い孫はお稽古が気に入っているようなので、後は息子夫婦が経済的に賄えるなら、それはそれで良いと思っている。
 彼ら小学生のアンサンブル演奏は皆日頃の腕前を発揮してその熱演ぶりは見事なものだった。よく知られている「エル・クンバンチェロ」や「剣の舞」合奏などはリズミカルで迫力もあったように思う。それにしてもエレクトーンがいろいろ多彩な音をひねり出すことができるのには驚いた。偶にはこういう子どもたちのイベントに顔を出すだけでも、子どもたちの演奏を通して現代音楽の傾向を知ることもできる。
 その帰途東横線・田園調布駅で下車して、田園調布駅前から渋谷行のバスで帰ってきたが、いつも利用する自由が丘駅の隣の駅なのに、改築工事が終ってからこの駅を一度も利用したことがなく、今日は新田園調布駅完成以降初めて利用したことになる。自由が丘とはよく比較されるが、まったく雰囲気は別だ。田園調布の静かな駅前の住環境は、奇妙な話だが、1月に目黒で老人夫婦宅へ押し入った殺人強盗犯が、金持ちを狙うターゲットとして挙げた高級住宅街だけあって駅前周辺も落ち着いた佇まいで、流石にわが国最高級の住宅街だけのことはある。
 今日その田園調布駅前で一組の背の高い碧眼のカップルを見た。件の女性は何と和服姿で着こなしもきっちり決まっている。妻に聞くと持っているバッグも趣味が良く、その着物にぴったり合っているそうだ。和服女性としては歩き方も地についている。こういう和服の女性、しかも白人女性が周囲を気にすることもなく自然体であることに感銘を受けた。日本の若い女性が段々和服を着なくなって、偶に着てもしっくりいかなかったりして、大和撫子が消えつつある。それが図らずもわが国の高級住宅地の田園調布で異人撫子を目撃することになるとは、時代も変わったものだと思う。
1379.2月21日(月) カダフィ大佐よ、リビアをどうする?
 ここ数日メディアではパンダが中国からやって来るニュースで持ちきりである。そして今晩2頭のパンダがやってきた。成田空港から実況放送するほどのバカ騒ぎである。聞くところでは、レンタル料金が10年契約で年間約8千万円、運送費が約4千万円だというからびっくりである。しかも食事代が一日一頭15000円だというから、二度びっくりだ。ここまでして上野動物園でパンダを飼育する必要があるだろうかと考えてしまう。上野商店街では、早くから町興しの起爆剤にしようと周辺住民ともども手ぐすねを引いて楽しみにしている。パンダの経済効果も約200億円と予想されているそうだ。
 さて、中東のデモはいよいよ本丸へ迫ってきたという印象が強い。絶対権力を行使していたカダフィ大佐のリビアでも、国内各地でデモが拡大してきた。ベンガジで始まったデモが首都・トリポリへ飛び火して押さえつけようとした軍部が発砲し、多数の死者が出た。
 リビア、或いはカダフィ大佐と聞くと多少深刻に考えた出来事を思い出す。ひとつは、1973年7月の日航機ハイジャック事件で日本赤軍と別グループが日航機をドバイでハイジャックし、機体はその後ダマスカスからリビアのベンガジへ着陸して犯人が乗客を避難させた後爆破し、犯人はカダフィ大佐の黙認の下に国外逃亡した事件である。その時偶々アフリカへ出張中にカイロ市内のホテルでベンガジからやって来た若い日本人からハイジャック機の生々しい様子を聞いたことがある。
 もうひとつの事件は、1981年9月チャウシェスク独裁政権下のルーマニアに文部省教員海外派遣団の添乗員としてお供した際、首都ブカレストからウィーンへ発つために空港へ向かっていたところ、突然国賓カダフィ大佐が到着したため空港と市内の唯一の道路が一時閉鎖されると検問所で知らされ、一瞬大慌てしたことを昨日のことのように思い出す。結果的に女性通訳を介してドライバーに何とか田んぼ道を案内させて時間前に空港へ辿り着くことが出来て、ほっとした。あの時どんな道でも良いから空港へ走ってくれとお願いした時、当惑した通訳さんがドライバーと相談してわき道であるガタガタの田んぼ道を急いでくれたことで事なきを得たことがある。その時はカダフィ大佐を恨んだものだったが、今思い出すとわが旅行人生の中でもセンセーショナルな出来事だった。そのカダフィさんの屋台骨もどうやらぐらついてきたようだ。住民に発砲したことは、デモ隊に対して言い訳の出来ない残虐な行為を冒したことになる。もし政権が転覆したら厳しい責任を取らされるのは明らかである。今もリビア情勢は刻々と悪化しているようだ。
 いつも思うことだが、こんな時天下泰平のわが日本は、パンダで大騒ぎし、国会は緊迫感もなしに揚げ足取りにうつつを抜かしている。
1380.2月22日(火) クライストチャーチで日本人生徒が大地震に遭遇
 ニュージーランドのクライストチャーチ周辺でマグニチュード6.3の大きな地震があった。クライストチャーチはフラワーガーデン・シティと呼ばれるほど清潔で綺麗な街である。富山市内の外国語専門学校生が語学学習中の校舎が倒壊し完全に壊滅してしまった。不幸にして学生と引率教師が教室内で災害に巻き込まれたらしい。彼ら生徒21人と教師2人の消息がはっきりしない。夜10時現在まだ11人が不明である。その他にもかなりの数の日本人語学留学生が滞在していて安否がはっきりしないようだ。テレビ画像を見ていても語学学校が入居していたビルは、崩落して瓦礫の山となった。1904年に完成して街の象徴だった大聖堂の崩壊した姿が痛々しい。その背後にミレニアム・ホテルが見える。1997年秋に妻とニュージーランドを旅行した時に宿泊したホテルだ。
 私自身1999年8月にイスタンブールでトルコ大地震に遭った時は、早朝でまだ眠っていたが、突然の衝撃と激震に大いに焦り慌てた。その時外国で自然災害に遭遇した時の恐怖を味わされた。
 NHK「ニュースウォッチ9」では、1時間のうち大半の40分を費やして報道していたが、心配なのはまだ生死不明の人たちが数多くいることである。
 さて、リビアのカダフィ大佐が無茶をやってくれた。無防備の反政府デモに対して軍隊と外国人傭兵を使って軍用機とヘリで銃撃したのである。自国民に対する虐殺行為である。もちろん多数の死者が出た。カダフィにはデモ隊を制圧できるとの自信、というより過信があったのだろう。しかし、征服者の自分に対していくら気に入らない人びとの集団であるにせよ、狙ったのは自分が守ってやらなければならない自国民である。狂気の沙汰である。味方に弓を引いたカダフィ体制はすでに崩壊していると考えざるを得ない。政権内部にも離反する人が後を絶たない。これからどういう戦略で反政府行動と国民を押さえ込み、その後国家を統治していこうとするのか。今やカダフィには残されたカードはないと思う。なお前進して玉砕するのか、はたまた少ない可能性であるが国を強制統治して国民を痛めつけるのか。それにしてもわが国の近くにいる裸の王様同様、ここにも自らのためには国民を犠牲にしても厭わない人物がいるのだ。酷いものだ。
1381.2月23日(水) 同級生が半世紀遅れで同窓生に
4年ぶりに湘南高校2年時のクラス会が藤沢市内の「銀座アスター藤沢賓館」で開かれた。当時担任だった春原淳三先生はその時のクラス会にご出席の後半年後に亡くなられた。90歳を超えてもクラス会にはいつも出席されていたが、晩年は体も不自由のご様子だった。
 クラスは51名だったが、すでに10名の仲間が鬼籍に入られた。在校時には高校野球の県内強豪校として知られ、甲子園も狙ったが準決勝で敗れて叶わず、その野球部の部員がクラスには4人もいた。その内レフト、センター、ライトのレギュラー3人組がみんな逝ってしまった。センターの伊藤秀男くんは放課後の練習ではいつもラグビー部と背中合わせの形で練習していて特別に気があったし、日産のセールスをスタートした時には、最初にブルーバードを買ってあげたことが思い出されてくる。
 今日出席した仲間から話を聞いてみると大病を患ったり、手術をしたり、五体満足な人は案外少ないようだ。その点では、多少部分的に具合が悪いところはあるが、外泊できたり、時によっては海外まで行けるのは、72歳にして「健康体」の部類に入るのではないかと有難く思っている。それにしてもこのように15人も出席できたのは、それぞれに幸せなことだと思う。
 51人の内女子生徒は僅か4人だったが、みな優秀だった。その中でも昨年先輩のノーベル賞受賞者・根岸英一さん、後輩の指揮者・大野和士さんとともに文化功労者に推された中西準子さんは、とりわけ目立っていた。残念ながらお忙しいらしく欠席だった。アメリカに渡った渡辺玲子さんはそれ以来出席していない。秋本さんと渡井さんは毎回出席して主婦業なりの苦労話をしてくれる。このクラス会が、1年時でもなく3年時でもなく、中途半端?な2年生時であることが珍しいと思っている。すでに先生はお亡くなりになったのに依然として続いているのは、一にかかって名幹事のきめ細かいお世話のお陰である。その幹事だった林功くんはクモ膜下出血で倒れたが、大分経過は良いようで今日も出席してくれた。快気祝いとして僭越だったが、昨年上梓の拙著を差し上げた。今年は後継者山口重裕くんがよくまとめてくれた。どんな集まりでもそうだが、そこには必ず縁の下の力持ちがいるものだ。わがクラス会がいつまで続くか分らないが、幸いにして来年も今日23日に行うことが決まった。
 仲間のひとり、図師征治くんが最後にエネルギーに火をつけるようなスピーチをしてくれたが、みんな彼の話に感心して聞き入った。昨年10月から通信教育学生として慶応義塾大学経済学部へ入学したという。卒業年次目標は、77歳の喜寿だと笑いながら述べていた。私の52年後輩にあたることになる。
 彼は高校時代も優秀だったのに、家庭の事情だろうか大学へ進学せず、当時の三井銀行に入行した。彼の周囲はエリートの学卒者ばかりだったという。真面目な性格だったので、高卒者なりに銀行員人生を全うし海外でもニューヨーク支店に3年間も勤めた。だが、こう言っては失礼だが、やはり学歴社会では後輩にどんどん追い抜かれて行って、コンプレックスにも取り付かれ、内心忸怩たるものがあったのではないだろうか。卒業後に新卒学生として職に就くことは考えていないと言っていたが、先輩?としてサジェスチョンできるようなことがあれば、無事卒業できるよう協力してあげたい。
 先月原稿を送った国民生活センターから、昨夕校正ゲラをメール送信してくれた。取り急ぎ手直しをして再送した。中々良い仕上げになっている。来月の発行が楽しみである。
 さて、昨日クライストチャーチで発生した地震は想像以上に大きな被害をもたらしている。語学研修中にその建物が全壊して、未だに日本人語学研修生の生死不明者が10人もいる。瓦礫の山となって、それを取り除く作業が大変のようだ。他の不明者を併せて日本人でまだ生死が分らない人が27名もいるという。今日救助された男子学生は、右足を切断のうえ助け出された。向学心が強かっただろう学生の胸の内を思うと、切ない気がしてならない。
1382.2月24日(木) かたや大地震、こなた政治の無為無策
 クライストチャーチ地震の救援活動のため、日本からも緊急援助隊が現地入りした。早速救助活動に携わった。まだ余震があるため思い切った作業とはいかないようだが、実績のある援助隊だけに大きな力となってくれることを期待したい。
 市内中心部に近い日本人語学研修生がいたCTVビルが倒壊したが、映像によると周囲の建物に比べてこのビルだけが完膚なきまでにつぶれている。今日はビルの建物構造上に問題があるのではないかと、地震と建築の専門家がいろいろな角度から耐震性について解説していた。そのビル跡から今日47人の遺体が発見されたという。まだ、70人以上が閉じ込められているらしい。遺体の国籍も性別も分らないようだが、恐らくその内の何人かは日本人研修生ではないかと心配である。更にニュージーランド側の救援責任者はビル滞在者の生存の可能性は少ないとまで発表した。
 それにしてもこれだけ多数の日本人が海外で遭難したのは、2001年の911テロに次ぐケースだと思う。何ともやりきれない。学生の家族も続々と現地入りしているが、この先も悲惨なドラマが待っているのではないかと気がかりである。
 さて、国内の政治関連ニュースでは、今日民主党の小沢一郎元代表に近い松木謙公・衆議院議員が農林水産政務官を辞任した。明らかに民主党の小沢氏に課した党員資格停止処分に対して抗議をしたものだ。また、新たな内輪揉めである。一週間前の16人の党内会派離脱に続く不祥事である。先の16人と松木氏のパフォーマンスは、何らの正当な理由も見当たらない。党幹部と反旗を翻した議員らの行動と論理には一片の道理も見られない。むしろ国家の正常な運営に対する冒涜ですらある。こういう酷い政治家たちが、国民不在のまま私利私欲に駆られて内輪揉めをしているだけである。
 今世論は菅政権に呆れている。しかし、後継者に適任な人物が見当たらないだけに、このままずるずる民主党政権が続くのではないか。総理大臣の首のすげ替えが非難されるが、今の菅首相と民主党のていたらくでは、国会解散、そして総選挙で改めて新内閣が誕生するのを期待するしかないのではないかと暗い気持になる。
1383.2月25日(金) カダフィの暴発が心配だ。
 ニュージーランドでは地震発生後72時間の生存分岐リミットが迫り、懸命の救出作業が続けられている。日本人の不明者はその後一人増え、現在28人の所在が分らない。いつになったら不明者の安否がはっきりするのだろう。天候も不安定で余震も続く中で、国際的支援協調の下に緊急援助隊は昼夜を分かたず、ひたすら一人でも多くの人命を救助しようと捜索に当たっている。
 その一方で北アフリカのリビアでは、人命が軽視され独裁者・カダフィ大佐が正気の沙汰とも思えない、国民を殺戮しようとする行動で世界中から厳しい非難を浴びている。それでも一切聞く耳を持たず、各地から首都へ向かって押し寄せる反政府勢力に対して、徹底的に押さえつけようと残虐な殺戮作戦を開始する構えである。
 このリビアには、正式な名の元首や権力者がいない。憲法もなく、国会もなく、内閣もなく、俗に言う「大統領」や「首相」も当然ながらいない。国家と称しているが、まるで国家の体を成していない。ひたすらカダフィ個人が個人的に「大佐」の呼称を認めさせ、独断的に権力で国家を支配しているだけである。任意団体か個人商店のような国である。カダフィに歯向かうことは死を覚悟せねばならず、今まで強権的に国民を押さえ込んでこられたのは、彼らの恐怖政治への怯えに他ならない。
 テレビから流れてくるニュースから察すると、カダフィは本気で反政府勢力をやっつける気でいるようだ。遠からず相当激しい戦いが首都トリポリ周辺で行われるに違いない。現在首都以外の都市はほぼ反政府勢力に制圧された。彼らは一斉にトリポリに向かっている。カダフィと彼を支持する政権側は外国人傭兵を含めて、首都で反政府勢力を迎え撃つ態勢であり、血で血を洗う戦闘により多くの犠牲者が出ることが懸念される。
 それにしてもカダフィのやり方は、国民を獣扱いである。首都で武器を持たない国民と重装備の政府軍が争った後には、一体何が残るのだろう。こんな内部分裂のような内戦はこれまで聞いたことがない。アメリカを始め先進国もことの重大さに不安を憶えている。とりわけ狂信的なカダフィが「核」使用に踏み切らないか。極めて事態は深刻である。ニュージーランドとは別の点で心配だ。
1384.2月26日(土) アメリカ、リビア制裁を発動
 昭和11年の今日、2.26事件が勃発した。11日の建国記念日と同じように、今ではマス・メディアはほとんどこの歴史的事件を報道しない。珍しく朝日夕刊に死刑を執行された青年将校が刑務所看守に宛てた新たな遺書が発見された事実を記事にしていた程度である。2.26事件については、松本清張「昭和史の発掘」シリーズに詳しいが、今日の遺書はこれまで明らかにされていなかったものである。評論家の松本健一氏は「貴重で大切な資料だ。地方出身の看守にとって、将校は自分たちの貧苦や不平等を救おうとした者と映り、心を通じ合わせたのだろう。事件は昭和の日本人に刺さり、今も抜けないトゲといえる」とコメントしている。だが、メディアを始め、学会や政治家たちはそのトゲを抜こうともしない。
 ことの是非は別にして、ひたむきで純真だった青年将校たちの気持を今の政治家たちも少しは見習ってはどうか。
 さて、心配していたリビア情勢がまた過激に動いた。首都トリポリへ向けて進んでいた反政府勢力に対して政府治安部隊と外国人傭兵が銃撃し、ある外国メディアによれば2千人以上の死者が出たという。カダフィ大佐は狂信的に反政府勢力に攻撃を仕掛け、トリポリ周辺では修羅場となっている。
 在リビアのアメリカ人が1人残らず国を離れたことを確認して、アメリカ合衆国政府はリビアに対する制裁を発動した。同時に国連安保理事会でもリビア制裁について検討し、近日決議採択することになった。これによってカダフィは手足をもぎ取られるような窮状に陥り、少しは根を上げるだろうか。
 それにしてもこういう緊急事態に際して、日本の存在感が薄いのは毎度のことだが、いつも我が物顔に登場して国際世論に反対を唱える中国が声ひとつ上げないのも不思議である。これには、大きな理由がある。中国は今微妙な立場にあり、下手をすると現体制にとって命取りになりかねないのだ。チュニジア、エジプトに始まった中東の独裁国政権の崩壊により、中国共産党独裁政権下でもマグマが爆発する可能性があるからだ。中国各地では集会が禁止され、数人集まればすぐ身柄を拘束されてしまう。昨日は、北京市内で集会騒動があった場に偶々通りかかった駐中国アメリカ大使が、デモを煽っていたと報道されるほど、中国公安当局は集会や、中東情勢に神経を尖らせているらしい。
 まだまだ当分の間目が離せない。
1385.2月27日(日) 岡本太郎生誕100周年の催し
 今年は岡本太郎生誕100周年に当たることから、岡本太郎に関する催しやプレゼンテーションが各地で広く行われるようだ。偶々岡本太郎さんは、妻の父・川手一郎と慶応義塾幼稚舎から普通部まで同級生として、歌手の藤山一郎さんや作家の野口富士男さんとともに竹馬の友として親しく交わり、終生交流が途絶えることはなかった。岳父からも太郎さんの話は度々聞かされていたこともあり、親しい四人の交流についてエッセイにも書いた。
 その岡本さんは明治44年2月26日生まれで昨日丁度満百歳を迎えたことになる。実は岡本さんは藤山さん、野口さん、岳父らと同じ明治44年生まれであるが、岡本さんだけが早生まれで本来ほかの3人よりも1学年上級の筈だった。ところが一人っ子だったせいもあり、中々地元川崎の学校に馴染めないという家庭環境もあって、幼稚舎に転入してきた。その時1年遅れて3人と同じ学年に入ってきた。幼稚舎に編入してからは学校の環境が気に入り、友だちとも仲良くなり幼稚舎生活をエンジョイしたようである。現在幼稚舎は渋谷区恵比寿、つまり天現寺地区に在るが、その当時は大学と同じ三田にあって川崎から青山へ引っ越してきた岡本さんは、自宅から三田までの通学を楽しまれたと仄聞している。
 昨日岡本さんがまさに百歳になった誕生日に岡本さんをモデルにした「TAROの塔」という4回シリーズのドラマ第一回が、NHKで放映されたので、妻と期待しながら観た。もとよりドラマであるので、ある程度の誇張は許されるが、ドラマでは学校名は明かされなかったが学校の寄宿舎生活で悩んでいたように描かれていた。その中で幾分変わった子という印象を与えたように描かれていた。まだ豊かでなかったあの大正時代に寄宿舎があったような小学校はほとんどなかったと思う。岡本さんは悪戯坊主だったが、学校生活をエンジョイしていたと岳父から聞いたし、幼稚舎の卒業アルバムの集合写真を見ても、腕白坊主の表情ありありである。
 寄宿舎云々は決定的な間違いというほどではないが、間違いは間違いなので、一応NHKにはメールでそのように知らせた。受信したとの通知があったので、あるいは明日にでも返事があるかも知れない。
 さて、昨日2.26事件が近年マス・メディアでほとんど報道されないことついて触れた。それが効いたのかどうか、今朝の朝日社説に2.26事件について堂々と朝日の意見を開陳している。しかも普段の2倍のスペースを割いている。
 社説論旨は2.26事件を歴史の分水嶺と断定している。その理由は、事件以前は軍部にたてついてまで正論を主張しようとする気風があったが、以降は軍部の言いなりになったというものである。それは、現在の国債大増発の流れに警告を発したものだ。軍国時代にも関わらず高橋是清蔵相は軍事費削減の主張により陸軍の権威に屈しない強い信念を訴えたからである。あまりこういう側面は紹介されないが、2.26事件を譬えに、日本が危機に立ち向かった時代の空気を伝える義務が、今日のメディアにはあるのではないか。
1386.2月28日(月) 日本旅行作家協会へ入会手続き
 去る15日に開かれた日本ペンクラブ2月例会で、顔見知りの瀧澤陽子さんから「日本旅行作家協会」で活躍されておられる山本澄子さんを紹介され、3人で話をしている時に瀧澤さんが、これまでの経歴から私が旅行作家にぴったりだと山本さんに積極的にPRしたところ、山本さんからその場で「日本旅行作家協会」会員にならないかと強く勧められた。権威のある日本ペンクラブ会員なら、改めて別の文筆家の会に入る必要がないと思い日本エッセイスト・クラブへの入会も辞退していた。折角の話もあまり積極的な気持がないままにしていたところ、先日その山本さんからの推薦ということで、「日本旅行作家協会」事務局より入会申込案内書が送られてきた。
 わざわざ送っていただいたのにしばらく放ったままにしておいたが、妻の勧めもあり考えを変えてみた。現在エッセイスト、或いは旅行ジャーナリストという肩書きで著述活動をしているが、ことさら旅行に関するテーマが多い。自分自身も長年の旅行業関係から抜け出せずに「旅行で食っている」実態から、この際旅行・観光関係の文屋としてある程度ジャンルを絞った形にしてみるのも良いのではないかと考え直してみることにした。それには「旅行作家」というタイトルは、現在の「旅行ジャーナリスト」とともに自分には案外フィットしているような気がするし、悪くないような気もしている。そんな理屈をつけて、肩書きは従来通り「旅行ジャーナリスト」と自称しつつ、「日本旅行作家協会」へ入会することを決めた。
 昨日関係書類を山本さんへ送り、参考として要請された拙著2冊を事務局へ送った。問題がなければ、来月正式に入会が承認される見込みである。
 推薦者となってくれる山本さんは、フルブライト奨学生としてボストン大学へ留学し、立正大学で教鞭を取っておられたと伺った。こういう立派な方の推薦で会員に推挙される以上、旅行に関する真っ当な文章を今後も書き続けていく気持ちを失うわけにはいかないと思っている。
 さて、今日大学入学試験で呆れた事実が発覚した。入学試験問題が受験生から外部へ携帯でメールが送られ、その解答が送り返されてきたそうだ。それも京大、早稲田、立教、同志社の一流大学である。それぞれの大学では警察に被害届を出した。今風と言えばそうだが、ワル智恵だけはどんどん進化している。真面目に勉強した受験生が損をしないよう対策を練ることが必要である。