
2010 年11月
1267.11月1日(月) ロシア大統領がロ首脳として初めて国後島視察
尖閣諸島問題で中国の言いたい放題の嫌がらせに辟易していたのに、今日になってまた新たな難題が降りかかってきた。ロシアのメドベージェフ大統領が北方四島のひとつ、国後島を訪問したのである。戦後旧ソ連、ロシア首脳が誰も訪れなかった占領地へ現職の大統領が訪れた。日本政府はこれまでこの種の噂が流れるたびに、ロシア政府へ取り止めるよう説得していたが、ついに豪腕ロシアは中国の尖閣諸島領土問題と歩調を合わせるかのごとく、国内視察という名目をつけて北方四島の実効支配をロシア国内向けのみならず、世界へ向けてアピールし出したのだ。
確かに日本にとっても難しい問題ではある。戦後65年に亘って北方四島を支配し、ロシア住民がすでにそこに生活しているからである。ロシアの領土侵略に関して日本が絶対承服できないのは、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して落城寸前の日本に宣戦布告して、なお日本が8月15日に天皇のポツダム条約受諾詔勅により無条件降伏を宣言した。にも拘わらずソ連はその日以降も無抵抗の日本の北方領土へ容赦なく侵略し、9月2日の終戦公文書署名を以って終戦と看做し、その日以前に占領した北方四島は大戦の戦果とうそぶき、戦勝国として北方領土の実効支配を始めた。
明らかに外交協定を破って参戦し、白旗を掲げた敵に対して略奪を行って、それを戦果と称して自国の立場を正当化している。こういう違法にして、悪辣で非紳士的行為を世界は容認するのだろうか。
尖閣諸島の中国領土を主張する中国にしてもロシアの言い分と同じように、理が通らない。この両国が対日外交では、「歴史的事実を捏造している」として裏で手を握っている節がある。
日本はどうして、敵視的根拠と史実を提示し、論理を尽くして国際社会にロシア、中国の違法性と理不尽な所業を訴えて、古くから日本領土であることを知らしめようと啓蒙活動をしないのだろうか。いつまでもこのような力で押されている間に、世界は日本の論拠を信じなくなるのではないかと心配する。
菅首相が遺憾の意を表明し、前原外相が駐日ロシア大使を呼びつけて抗議をしたところで、件の大使は大統領訪問はロシア国内問題だと柳に風である。国後島島民に尋ねれば、何世代にも亘って島に住んでいるので、島から出る気持は毛頭ないという。その島の持ち主は本来日本人だということが、彼らには分らない。分らなくしたのは、代々の日本政府の寄らば大樹の陰の外交政策である。今の日本の信念のない政治力と軸のない外交力では、とても海千山千の諸外国を相手にして太刀打ちできそうもない。
この調子では百年後には、北海道も佐渡も隠岐も対馬も沖縄も、欲深い近隣諸国の領土になってしまうのではないか。
1268.11月2日(火) 共著書「そこが知りたい 観光・都市・環境」発行される。
朝刊に福本邦雄氏の死亡記事が掲載されていた。福本氏の父親は、日本共産党史上屈指の理論的指導者だった福本和夫氏である。学生時代河上肇「自叙伝」を読むと「福本イズム」の名が度々出てくるほどの大物だった。その子息の邦雄氏は、あろうことか新聞記者から自民党・椎名悦三郎氏の秘書を務め、歴代自民党首脳とパイプをつないで竹下登との関係が有名となり、政界フィクサーとしても知られた。10年前には中尾栄一元建設省の受託収賄罪で逮捕され、起訴猶予処分となったことが世に知られている。
その福本邦雄氏が、毎月購読している月刊誌「選択」に「むかし女ありけり」を連載している。元々ジャーナリストだっただけに、情報の収集や、古い話をよくご存知である。今11月号では9月号から、永井荷風と別れた元妻・藤陰静枝との関係にスポットライトを当てている。今月号の連載が123回目で、文学界の裏社会に関心のある読者には、中々面白い記事だったと思う。ところで次号124回目はあるのか。いずれにせよ、福本邦雄氏は功罪半ばする人生を送られた。享年83歳である。
さて、待っていた「そこが知りたい 観光・都市・環境」を特注していたが、今日3梱包・150冊が届いた。一見して表紙の印象が観光の雰囲気を醸しだしていて中々良い。ところが、よく見てみると最終打ち合わせで変更をお願いした背表紙の編纂者名と表紙の同じ名前の位置が修正されていない。
そんなに難しい注文ではないし、その場にいた編集者が修正を軽く引き受けていた。どうして修正すべきが、修正されないままになっているのだろう。明後日の札幌セミナー会場で参加者に配布されるが、それは間に合わない。明後日都内の出版社に連絡を取り編集者に理由を尋ねてみたい。それにしても表紙と言えば、人間なら顔である。その顔が歪められたわけである。
今日は親しい知人、友人に郵送するための準備と作業にてんてこ舞いで、約120冊を袋詰めにした。明日にも郵便局に持ち込みたい。友人たちは何とコメントを言ってくるだろうか。
昨日東京地裁で、昨年8月に起きた耳かき店員とその祖母を殺害した犯人の判決が下された。事前に裁判員制度導入後、初めての死刑判決が下される可能性があるとして注目されていた。結果として、判決は無期懲役だった。いろいろ各方面の識者がコメントを述べているが、駒沢大学の清田義昭講師が度々話された「永山基準」9項目について新聞に詳しく説明されていた。この裁判も「永山基準」に準拠しているようだ。
その基準とは、①材質=犯罪の性質、②動機、③犯行態様=残虐性、④結果の重大性=被害者数、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状、となっている。これらはもちろん死刑囚・永山則夫の裁判で考慮された観点である。この9項目がどの殺人裁判でも参考にされているようだ。それを裁判員にも考えることを求めている。裁判員になるのも大変だなぁとつくづく思う。
1269.11月3日(水) 「文化の日」は72歳の誕生日
72回目の誕生日を迎えた。昨日までの曇天はどこへ行ったのか、「文化の日」は例年通り快晴である。
今日驚いたのは、作曲家兼指揮者・松本耕氏のファンクラブ「耕友会」のコンサートが行われた新宿文化センターで、思いがけずベオグラード在住の山崎洋さんにばったり会ったことである。コンサートの4つのプログラムの内、「水脈速み(みをはやみ)」は詩人である山崎佳代子夫人が書いた詩を松本氏が作曲したものなので、作詞家として奥さんが一時帰国中であることは分る。実に意外だった。
山崎さんから初めて奥さんを紹介してもらったが、9月開催の国際ペン東京大会に出席のため来られた時、生憎会うチャンスがなかった。昨日ベオグラードからやって来たという。
コンサートは期待以上に素晴らしいものだった。オーケストラは超一流の東京フィルハーモニー交響楽団で、混声合唱は‘The Metropolitan Chorus of Tokyo’という若いコーラスがミサ曲も含め、荘重に唄ってとても良かった。総勢130名以上の大合唱は迫力もあった。折りを見て東京滞在中に山崎さんと会おうと約束して別れた。車での帰りに新宿のイタリアン・レストラン「マキャベリ」で、妻とささやかにプチ・デラックス・ディナーを楽しんだ。
誕生日は本来お祝いすべきものではあるが、老齢に入るとそう喜んでばかりもいられない。定期的に内科と整形外科に通院して、健康管理には気をつけているつもりではあるが、他にも気になるところがないわけではない。これからは一日一日を悔いないように過ごしたいと思っている。
八王子市内に住む同姓の近藤幸一さんから電話をいただいた。近藤さんが秋の叙勲を受けたというお慶びの電話だった。心からお祝いの気持ちを伝えた。勲章には種類が多くて一般人には分かりにくいが、近藤さんが受勲したのは「瑞宝双光章」というもので、JRのご出身として朝日新聞では単に「鉄道業務」、日経ではさらに詳しく「元国鉄東京西鉄道管理局八王子駅長」と書かれていた。話を伺うと何でも今朝からJR関係者や八王子市長らから多くの祝電をいただいたという。昨日発送準備をしていた書籍120冊を午後になって玉川郵便局へ運んだ。この中に近藤さん宛の書籍もある。相変わらず元気そうに話してくれるのが嬉しい。私よりちょうど10歳年長だが、お互いに健康に留意して元気でいられる内は、前向きに生きたいものである。
1270.11月4日(木) アメリカ中間選挙でオバマ政権完敗
昨日アメリカで中間選挙が行われ、充分予想されていたことではあるが、オバマ大統領に対する信頼感が大きく下降した証として、民主党議員が大幅に減少した。歴史的大敗である。
アメリカの立法は日本とはかなり異なり、任期2年の下院は全435議席の改選、そして任期6年の上院では100議席の約三分の一に当たる37議席が改選される。中間選挙の結果、下院では255議席だった民主党が185議席にまで減り、逆に共和党は178から239へ議席を伸ばした。上院でも民主党は過半数を辛うじて維持したが、59から51議席へ減らしたのに反して、共和党は41議席から46議席へ増やした。
経済不況により、失業者が増え失業率は10%近い。失業者や非正規労働者問題がクローズアップされているわが国でも精々5%前後である。これでは、失業者を含む労働者、経済界からオバマ政権に対する不満が高まるのも理解できる。
しかし、民主党惨敗の原因は、経済問題ばかりではない。茶会系候補が支持を固めたのは、2年前の大統領選でオバマ大統領当選のために活動した若者が動かなかったからだとされる。その最大の理由は、大統領があれほど熱心に法制化を説得し実現した医療保険改革が、中間層以上の選挙民から袋叩きに会い、攻撃の大きなターゲットとなったことである。
ただ、国際社会では、世界をリードするべきアメリカが国内問題にかかりきりになってもらっては困る。アメリカにとっては、仮に国内的にどうあっても国際的には民主国家として外交上で存在感を発揮し続けてもらいたい。アメリカにとっても、オバマ政権にとっても正念場になってきた。
昨日の誕生日にもうひとつグッドニュースを得られるかと期待していたが、残念ながら実現しなかった。東京六大学野球リーグ戦最後の早慶戦後の優勝決定戦で、早稲田が母校慶応に勝ったことにより、慶応連覇は夢と消えた。
特に今秋の早慶戦が注目を集めたのは、早慶戦で早稲田が1勝でもすれば、すんなり早稲田が優勝するはずだったが、ご丁寧にも連敗して慶応と同勝ち点、同勝率で首位に並び、改めて早慶戦による優勝決定戦が行われた。流石に早稲田も最後で踏ん張り、慶応を倒して優勝を決めた。早慶両校が優勝決定戦で優勝を争うのは50年ぶりということから注目されるようになった。しかも、早稲田には先日プロ野球界からドラフト1位指名を勝ち取ったエース級投手が3人もいる。これも50年前の早慶6連戦と状況が似ている。当時慶応にはプロ入りはしなかったが大型投手と言われた、清沢、角谷、三浦、丹羽の4羽烏がいた。慶応絶対有利だったが、優勝決定戦も含め1勝3敗2引き分けの戦績で優勝を逸した苦い思い出がある。
その年、1960年の6月に安保条約改定が調印され、60年安保はわれわれ学生にとって屈辱的な敗北となった。その後しばらくは抜け殻のような気持で大学キャンパスへ出かけた。その虚ろな気持を救ってくれたのが、歴史的名勝負と言われた秋の早慶6連戦だった。全試合応援のため毎日神宮球場へ通い、暗くなるまで芝の外野席で応援していた。これほどエポックメーキングで、青春を謳歌した対抗試合はなかったと思う。いずれにしろ懐かしい思い出である。
1271.11月5日(金) 中国漁船衝突時の映像がインターネットで流れる。
あっと驚くショッキングな映像ニュースが‘You Tube’で流された。朝からテレビ、インターネットを通して後から後へと関連ニュースが流れる。まるでハチの巣をつついたような騒ぎである。そのニュースは昨日夜初めて流された。何とその映像とは、国民に広く公開すべきかどうかで喧しい尖閣諸島問題の発端となった、中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突現場のビデオ映像である。あれだけ公開するのしないのと喧々囂々の言い合いがあったのに、いとも無造作にインターネットに流出し、国民が気軽に見てしまったのである。この映像が本物かどうかという疑問も呈せられているが、どう見てもあの迫力あるシーンから考えて本物の現場写真である可能性が高い。
この映像は先日一部の国会議員を対象に公開された7分間のテープと酷似しているようだ。画像を見る限り明らかに中国漁船が巡視船「よなぐに」と「みずき」に意図的に衝突している。
それにしても政府が国民への公開をためらっているにも拘わらず、どうしてこういう映像が容易に見られる‘You Tube’で観ることができるのか。ビデオを所有している検察か、海上保安庁の誰かが何らかの意図を持ってサイトに流したのは間違いないだろう。
夕刊記事と写真を見てもその異常な衝突現場の映像はちょっと普通では考えられない。政府首脳は慌てふためいているが、どうも機密保持、危機管理がずぶずぶで甘すぎるようだ。ビデオが一体どこから流れたのか、今のところはっきりしない。国の威信にも関わることでもあり、ビデオ流失の原因を徹底的に究明して欲しいものである。
しかし、それにしても菅内閣の外交、危機管理はまったく当てにできない。こんな不透明で無様な危機管理しかできないのは、それぞれの大臣が能力的に大臣の椅子に座るだけの資質に問題があるからである。沖縄・普天間基地移設問題は未だに闇の中にあり、尖閣諸島、北方領土、さらに最近ではTPP問題も持ち上がり、政府部内で経済産業省と農林水産省が対立している。まだまだ、国内的に今年度の補正予算問題もある。国会が一向に先へ進まない。これが菅内閣の現実であり、政治執行能力である。
国民のひとりとして感じるのは、お先真っ暗ということである。
1272.11月6日(土) 愉しい高校同窓会
横浜・桜木町駅前ワシントン・ホテル内の「東天紅」で、湘南高校同期生会が開かれた。同級生も71歳、72歳となり、それぞれに老境に入ったと感じられる。同級生は全員で401名だったが、今日の出席者は78名だったので約20%の出席率である。だが、判明しているだけでも60名が物故者になっている現実を考えれば、卒業後53年も経過した現在、そんなに悪い出席率ではないかも知れない。
残念ながら高校時代から親しい轟貞雄、加藤靖典、山田勝久が出席しなかったのが、少々寂しい。ラグビー部の仲間だった大島泰毅も欠席だった。山田は心臓が悪いらしいし、大島はお母さんと奥さんの具合が悪いらしい。
近著を贈った牧野力、吉水淑浩からお礼を言われたが、特に牧野からは内容的に良いと言ってもらったので、ほっとしている。牧野は通産事務次官卒業後天下りを重ねて、今は財団法人の会長を務めている。前の独立行政法人に比べて地味なところなので、聞いてみると時間的には余裕があるとのことだった。相変わらず健康そうなので取りあえず良かった。
案の定今日の話題のひとつは、ノーベル化学賞を受賞された根岸英一先輩に関するもので、偶々卒壽の身で出席された化学の雨宮先生には、在学中根岸博士はあまり印象に残っていないとのお話だった。卒業後初めて会った石村(旧姓安藤)櫻さんは、遠路札幌から出席されたが、今年のノーベル賞受賞者は高校の先輩(根岸博士)と大学(北大)の先輩(鈴木章博士)であると鼻高々だった。
さて、来週から横浜でAPEC首脳会談が開催されるので、大分厳しい警戒態勢が敷かれている。今日も桜木町駅前には山形県警から応援に駆けつけた警官がいた。この会談の大きな話題のひとつがTPP加盟問題だろう。充分論議を尽くしているとも思えない。未だに政府内で対立している。
さらに、今日になって前原誠司・前国交大臣が一旦は中止決定を下した八ッ場ダムの建設計画が、馬渕澄夫・現大臣によって振り出しに戻りそうな雲行きになってきた。馬渕大臣が地元の声を受けて、変更しかねないよ様相である。中止決定を先に延ばすということであるが、これまでの複雑な経緯から推して、そう簡単に朝令暮改をやらないようもう少し慎重であってもらいたい。
どうも今の閣僚には、芯の強さや信念の固さが見られない。腰がふらふらしている。これだから外交ばかりか、内政も怪しくなってきた。
1273.11月7日(日) どんな結果になるか、ビルマ総選挙
昨日は日本シリーズ第6戦が行われ、セ・リーグの覇者・中日ドラゴンズとパ・リーグの3位・千葉ロッテ・マリーンズがお互いに譲らず延長15回で決着がつかず、2-2の引き分けに終った。最近あまりプロ野球をテレビでも観ることは少なくなり、今年はほとんど観ていない。今年は贔屓の巨人が優勝を逸し、日本シリーズにも出ることが無くなったので、余計興味が湧かない。オーナーの滝鼻卓雄くんにもしばらく会っていないが、ご機嫌斜めか。昨日ロッテが3勝2敗のシリーズ王手をかけて、勝てば日本一、しかもパ・リーグでは3位との但し書き付ということから、好奇心に駆られて観てみた。
それがどういうわけか、3回ごろから試合終了まで見続けることになったのは、ファインプレイとボーンヘッドが繰り返されて結構見せ場があり、ついずるずる最後まで観てしまった。テレビ中継の終ったのが12時5分前で、5時間43分の日本シリーズ史上最長試合となってしまった。
一野球ファンにとっては久しぶりに肩の凝るゲーム観戦だったが、両チームとも力の伯仲した見応えのある良いゲームだった。
さて、前々から気がかりだったビルマの総選挙が今日投票日を迎えた。1988年の反民主化反対デモに引き続いて行われた90年の総選挙以来、20年ぶりの国民投票である。90年の総選挙では、アウン・サン・スー・チーさん率いるNLD(国民民主連盟)が、全投票数の約8割を獲得して対抗する軍部に圧勝した。
しかし、それにも拘わらず敗北した軍部がNLDに政権担当能力なしと言いがかりをつけて、20年間自ら欲しいままに軍事政権を保持してきた。諸外国の強い非民主化反対の声を少しでも受け入れた形に見せようとする今回の総選挙は、すでにどうみても民主的選挙の色合いが見られない。一方的に全体の25%の議席を軍部議員に割り当て、他方で引き続きNLD指導者アウン・サン・スー・チーさんを自宅軟禁処分にしたまま、総選挙をボイコットするNLDを解党処分にして自分たちの思いのまま選挙を行い、長期政権を維持しようとの目論みである。
NLDは総選挙の信頼度を失わせるために、棄権を呼びかける運動を秘かに進めて、総選挙自体の国民的非人気を高めて、軍部に打撃を与えようとしている。スー・チーさんが言う「投票権があるように、投票したくなければ棄権する権利もある」という言葉が、力を発揮するだろうか。注目して結果をみてみたい。
1274.11月8日(月) 出版社特有の対応に戸惑い
共著が出版され、3日に親しい知人・友人らに120冊を贈呈用に郵送して、やれやれと一息ついたところである。
実は、先月中旬編集の最終打ち合わせで、出版社の担当者と執筆者が話し合った席で表紙のデザインが決まり、その一部の修正を出版社に提案した。
まず、いくつか提案されたカバー表紙のデザインの中から書名とイメージがちょうどぴったりの見本があり、衆議一決でそれを表紙に採用しようということになり、同時に細部についても2箇所の修正をお願いすることになったのである。
修正願いのひとつは表表紙に書かれた編著者名が小さいということ。もうひとつは背表紙の編著者名が書名の直ぐ下部に隙間無く続いているので、そこにスペースを取って、書名と編著者名の間をもう少し離して欲しいという比較的分り易い要望だと思っていた。
ところが出来上がった表紙は、一見して何の修正も施されていないように見えた。そこで出版社の担当者に聞いてみると間違いなく修正したと仰る。再び表紙をじっと見てみたが、どうもぴんとこない。原案とはあまり変わっていないようだ。担当者は「修正しました」とはっきり断言するので、表表紙の編著者名をメジャーで測ってみた。するとほんの若干だが、確かに寸法的には大きくなっている。釈然としないが、こちらが気のつかないような小さな修正の仕方でも出版社にとっては、こちらの言う通りに修正したということのようだ。
問題は、もうひとつの修正箇所である。背表紙の下部にある編著者名の位置であるが、これもまったく修正したように見えない。そこでくどいようだが、この箇所はまったく修正されていないのではないかと改めて尋ねてみた。返ってきたメールの回答は、文字の半角分だけ下へずらしたとの思ってもいない返事だった。せめて全角5字分程度のスペースが欲しかった。これでは、修正をお願いした意図がクリアされたとは言えないし、われわれが修正をお願いした本質的なポイントを理解していないのではないかという意味のメールを送信した。一見して書名と編著者名の間にスペースがないのが歴然としている。それでも1文字の半角分を下へずらしたと言う。このようにわれわれの望んでいる修正とはまったくかけ離れた修正の仕方は、修正とは言わないのではないか。
商品が完成した以上、格別不出来でなければ敢えて苦情をいうのは潔しとはしないので、これ以上は修正云々を追求しようとは思わないが、出版担当者の相手の気持とか、願いを斟酌しない一方的な理解の仕方や、作業のやり方には少なからず違和感を覚えた。
僭越であるが、私なりの長い営業経験からサジェストするなら、まず相手の言い分をよく聞き、何を考え、何を求めているのかということを深奥に推察し理解したうえで、相手に確認するものだが、今回出版社の対応はそうではなかった。一方的に自己流の判断で修正の意味を理解し、相手にそれを押し付けている。新著を受け取った友人からは、ちらほら礼状が届き、作品をほめてくれているが、その点で内容とは関係ないところで作業に疑問を抱くような事態になったのは、ちょっと残念な気がしている。
1275.11月9日(火) ビルマ軍事政権の背後で暗躍する中国
一昨日行われたビルマの総選挙は、投票結果がまだ発表されていないので、詳しいコメントはできないが、新憲法の制定から選挙のルール決定のプロセスに至るまで、アメリカやEU加盟国からはタン・シュエ軍事政権に対する手厳しい批判が浴びせられている。日本のメディアでも新しい選挙制度自体については極めて批判的である。
投票前から言われていたように、軍事政権の厳しい監視の下で行われる「民主化」選挙は、軍政がいかに自分たちのやり方を正当化しようとも所詮茶番である。アメリカやEU加盟国は、投票所視察団への参加を辞退した。当局は選挙前から外国人ジャーナリストの入国を認めず、そのため日本人ジャーナリストの山路徹氏なぞはタイ国境から入国ビザなしで入国して、不法入国で逮捕される有様である。自分たちの都合のためだけに、憲法を作り正当性を主張しようとする軍政の強引なやり方は、諸外国から強い非難を浴びている。
今後も軍政を維持していこうとする当局のやり方は、中国の支援により軍事政権が安定の保証を得て、その一方で中国は資源の開発の権利を得ようとしている。こういう死の商人的取引を行うことにより、ビルマ政府は非民主化を加速させ、それに加担している中国は軍政を支える役割を果たしていることになる。政治的にも、文化的にも中国は世界中の鼻つまみ者になる恐れがある。
ビルマの政治分布が明確になった後に、タン・シュエ民主?政権がスタートして、中国は果たしてビルマに対してどういうアプローチをするのか。あまり成金趣味の中国がビルマに深入りすると、純粋なビルマの人たちがカネで汚染され、ビルマ人らしい素朴さと純粋さを失い、中国に似た嫌な国になるのではないかと心配である。
今日の国会衆議院予算委員会で、来月10日にオスロで行われる中国人作家・劉暁波氏に与えられるノーベル平和賞授与式に日本政府代表者が出席しないよう中国政府から要請があったと報告された。大きなお世話である。これに対して前原外相はよく検討してみると応えるし、菅首相は外相とよく相談して回答するという。これでは日本政府は中国政府にリモコン操作されているようなものではないか。内政干渉も甚だしい。なぜ即座にわが国の問題は、日本政府が考えると言って断固つき返さないのか。わが国の首脳はどうして揃いも揃ってかくも情けない対応しかできないのか。
今日の朝日夕刊の一面トップ記事にもこんなニュースが掲載されていた。村上春樹氏のベストセラー小説「IQ84」や、東野圭吾著「白夜行」の中国語翻訳版が、無断で電子書籍化されアップル社の配信サイト「アップストア」で販売されていることが判明した。中国と台湾の読者層を対象にした日本人作家の海賊版が販売されたわけである。中国ではかねてより知的財産権について国民の間に充分な理解がなされず、これまでにも度々トラブルを引き起こしていた。今回の件については、村上事務所側は消去を依頼するという。
何だか知らない内に、政治面でも文化面でも中国ウィルスが侵入して、段々ややこしいことになってきた。
1276.11月10日(水) 日本の三権分立は絵空事か。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突のビデオ流出が政治問題化して流出の犯人探しが始まり、国家機密漏洩罪の疑いで検察が石垣海上保安部を家宅捜索していたところ、犯人が名乗り出て急転直下一件落着となった。ただ、獅子身中の虫と言おうか、身内の海上保安官が上司に告白したとあっては、あまりにも危機管理が甘い。
これを受けて今日一日中国会、国土建設省、海上保安庁、検察庁が上へ下への大騒ぎである。
一方で、今日からAPEC閣僚会議が始まった。今国内で最ももめているのは、TPP(環太平洋連携協定)に日本が参加するかどうかという問題であり、今もって結論が出ていない。
確か今国会における菅首相の冒頭演説では「参加」と明言したが、ここへ来て無条件で自由関税という一項が、第一次産業の農業・漁業従事者から死活問題と猛烈な反発を買い、締結に賛成する経済界との板ばさみになった政治家の態度が煮えきらず、結論を先延ばしにしているからである。玉虫色の大好きな民主党政権は、来年6月までに参加すべきかどうかの結論を出すべく検討するという外国人には理解しにくい、のんびりした方針を固めつつあるようだ。
だが、その頃までに腰が据わらず、強力なリーダーシップを発揮できない政府が、本当にわが国の貿易政策を決められるのか。牛肉などを売り込もうとしているアメリカ政府からは、日本が同盟に参加することを求めるアプローチがあるが、果たしてどうか。
さて、このところ駒沢大学の清田義昭講師の裁判制度に関する講義は、専門的になり面白くなってきた。今日はNNN系テレビの「法服の枷」というビデオを観賞して、その後に解説を伺い、意見を交換した。同ビデオが訴えているのは、裁判所内における裁判官の立場が裁判官は理想とする正義、真実究明を果たして履行できているのかとの疑問である。憲法違反との判決を下した長沼ナイキ訴訟で有名になった福島茂雄・元裁判官が克明に記した日記から、真摯に法の裁きに向き合う裁判官の悩みを、いくつかの他の裁判官の実例を交えながら紹介している。実際福島氏自身もナイキ訴訟の直後に、上司平賀所長から平賀書簡を受け取り、高裁長官からは口頭注意処分を受けている。一度は辞表まで提出し、その後撤回するという苦渋も味わっている。
一見裁判官は何者にも冒されず、信念に基づいて判決を下していると思われがちだが、実際には「外に向かっては聖職で内では労働者であり、黙々と働き搾取され追われて行く」との福島元裁判官の日記に記された文言はあまりにも虚しい。「どの裁判官も良心と保身の狭間で悩んでいる」「裁判官は事件の清掃人」と他の裁判官も自嘲気味に述べている。
実際福島氏は、裁判官は自衛隊とか、憲法第9条などに関して国の意向に反した判決を下すことは、将来を棒に振ることだという。上司から内々の圧力がかかり、もし逆らえば左遷が待っている。
私も発言したが、結局裁判官も司法官僚と言われ、国の方針や上司には逆らえない。その意味ではわが国では、三権分立は現実的には難しい。あまり関心を持っていなかったが、わが国では司法が立法、行政の下に位置しているということを改めて思い知らされた。
1277.11月11日(木) 海上保安官のビデオ流出行為をどう考えるか。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐるビデオ流出事件で、流出させたと名乗り出た海上保安官は、警視庁と東京地検の事情聴取に対して動画サイト‘You Tube’へ投稿したことを認めた。この行為自体は決して許されることではないが、世論は意外に冷静でよくぞやってくれたと賛同する声もある。この海上保安官は国家公務員法により職務上知ることのできた秘密を守る守秘義務違反に問われる可能性がある。しかし、ビデオ自体が国家の機密であるかどうかの議論もあり、ある識者は国民が知るべき事実で、秘密にはあたらないとの見解を述べている。
作家佐野真一氏も中国人船長を釈放する一方で、ビデオを流出させた海上保安官を逮捕するのは妥当とは思えないとも言っている。
本件のケースでは、国家公務員法の秘密とされるためには、公にされていないことと、実質的な秘密として保護に値することがクリアされなければならない。
この海上保安官が勤務している神戸海上保安部では、誰もがビデオを観ることができたといい、職務上知りえたとも言えないという空気もあるようだ。現場の冷静ぶりに引き比べて、国会の先生方の浮き足立った言動が滑稽に見える。国家機密漏洩の責任は誰が取るのかとか、今になって早くビデオ公開に踏み切らなかったからこの騒ぎになったとか、足の引っ張りあいばかりやっている。
それにしても昨晩のニュース‘ZERO’で、この保安官に個人的に接触し、取材した読売記者が堂々と彼にインタビューした時の様子をしゃべっていた。これだけ大騒ぎして当事者の名前も、顔写真も報道されていない中で、この記者はインタビューの概要についてぺらぺら話している。何だか奇妙な感じである。
そんな中で、この保安官が情報流出に‘You Tube’という新しいメディアを選んだ事実に注目し、今後のためにも情報公開のあり方と情報公開はどうあるべきか、国民の間で議論を深めるべきだと指摘したジャーナリズム論専攻の林香里・東大大学院教授の提言が目を惹いた。検討に充分値すると思う。
林教授は、「既存メディアはプロフェッショナルとして公共の利益を自ら判断し、情報を人々に伝える。だからこそ報道の自由など『特権』が認められてきたし、情報を提供した公務員が守秘義務違反に問われるのもまれだった。今守秘義務違反で国家公務員が刑事責任を問われようとしているのは、メディア環境の変化の中で起きたことだ。ネット空間では、だれもが情報の送り手となり、有益な情報もマイナスの情報もあふれている。そこにどんなルールを作っていくのか。ビデオの非公開という政府の判断の是非も含め、民主主義の土台となる公的機関の情報公開はどうあるべきか。議論を深めていくべきだ」と述べている。
1278.11月12日(金) 徴兵制は世界的に減少傾向か。
世界各地でテロや局地的な争いが頻発している中で、世界的に軍隊の徴兵制度は廃止、或いは中止の方向に向かっている。今年7月スウェーデンでは、100年以上の伝統を誇っていた徴兵制を志願制に移行させた。
ドイツでも政権与党・キリスト教民主同盟(CDU)が、徴兵制廃止を含む連邦軍改革案を幹部会で了承したことにより、野党も制度廃止に基本的に同意していることもあって、近々キリスト教民主同盟党大会で承認し、早ければ来年7月にも廃止する。徴兵制廃止を踏み切った各国にはそれぞれの内部事情があるが、ぶちあけて言えば、最大の理由は財政難のようだ。
また、徴兵制という国家の強制的な措置によって個人の自由との兼ね合いが問題になって、ヨーロッパなどでは宗教的信条などを理由に「良心的兵役拒否」を認める国も多い。同時に、一般の若者が短期間兵役を務める徴兵制より、専門性の高い職業軍人を求める意見が、軍内部などでも強まっているという。
かつてアメリカが1973年に徴兵制を停止して全員志願制を採ったのは、ベトナム戦争による大量の犠牲者を出した国民がトラウマに陥ったことが原因である。
そのほかにも、短期間の兵役期間では訓練や教育を徹底できず、投資効果も低いことが影響しているようだ。加えて近年は自国防衛のために戦うというより、海外派遣による活動で外地における戦死者が増えている事情もある。
そんなこんなが絡み合って徴兵制を敷く国が減少しているらしい。
現在世界で徴兵制度を採用している国家は、50カ国以上に上ると見られている。その中にはお隣の韓国、北朝鮮、イスラエル、ロシア、イラン、キューバなどに混じって、意外にもスイスがある。永世中立国スイスが、軍隊を編成し、海がないにも拘わらず海軍を保有したり、徴兵制度まで採っていることには、思わず本当かな?と思ってしまうが、スイスは当面徴兵制を止める考えはないようだ。東西対立が消えてヨーロッパの安全性が高まり、それに合わせてヨーロッパ各国が軍隊を減らす傾向にある中でスイスの存在は極めて異色である。
それにしても拡大する北朝鮮や中国の軍事力は怖いが、わが国に徴兵制度がないことは、平和の証として世界に誇っても良いのではないだろうか。
1279.11月13日(土) APEC首脳会議始まる。
今日から2日間横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のため、昨夜世界の超大物が特別機で続々やって来た。アメリカのオバマ大統領、ロシアのメドベージェフ大統領、中国の胡錦濤・国家主席らが厳戒体制の中で横浜入りした。中国とロシアとの関係はこのところギクシャクして、二国間首脳会談を開くのかどうかも決まっていなかったが、今夕になって急遽日中首脳会談が開かれた。これに先立ち早くも日米首脳会談が開かれ、日本はアメリカの理解ある行動に対して感謝の意を伝え、両国ともに中国を牽制しながら日米同盟の深化を確認した。日本にとっては対中・対ロを意識して殊更対米関係の強い信頼関係をアピールするとともに、アメリカがアジアに強い絆を築いていることを訴える姿勢を示した。
こうなると日米同盟の基盤固めの点では、大いなる効果があったと評価しつつも、これから生じるであろう沖縄・普天間米軍基地移設のたなざらし問題をどう解決するのか。鳩山前首相の煮え切らない対話により、日米間には大きな溝が出来ている。5月28日の日米合意確認でアメリカに辺野古基地案実施にOKのシグナルを送ったことに対して、ほぼ全沖縄島民が反対と見られる空気の中で、果たしてアメリカが望む通りの対応ができるのか、甚だ疑問である。
下手をすると日米関係だってギクシャクしかねない。外交問題に弱い菅政権が、世界が注目する中で議長国としてどれだけ会議を仕切り、存在感をアピールできるのか、ここは正念場であろう。
さて、もうひとつ海外で前から気になっている政治問題がある。ビルマの民主化運動リーダーのアウン・サン・スー・チーさんが今日自宅軟禁の身柄拘束状態から解放されて自由を回復する日である。この国では今もって7日に行われた国民投票の結果が正式に発表されていない。軍事政権では、ほぼ8割方議席を確保して勝利を得たとの一部の報道があるが、もともとこの選挙自体が民主派勢力を疎外して実施されたもので、選挙自体の正当性に大きな疑問符がつけられている。
スー・チーさんは、当局側が言うように恐らく解放されるだろう。但し、きつい条件を負わされる。つまり軍事政権に非協力的な行動、反政府的行動をとらないとの保証を要求されるだろう。スー・チーさんはこれを断固拒絶して、当局は再び彼女の身柄を拘束する手段に出るとのシナリオが予想される。これでは、何のための解放か分らなくなるが、今や軍政はスー・チーさんの存在自体が目の上のタンコブで、何とか屁理屈をつけて彼女と彼女を支援する民主化団体の影響力を封じ込めようとするだろう。
さあ、どうなるか。注目してみてみたい。
1280.11月14日(日) スー・チーさん解放される。
昨夜ビルマの民主化運動指導者であるアウン・サン・スー・チーさんが7年半の自宅軟禁を解かれ、一応自由の身となった。珍しくビルマ国営放送もこのニュースを伝えたという。心配していたが、軍政側から今後の行動に対して格別の教育的指導や制限はつけられていないので、当面表面的には政治活動に関して支障はない。
しかし、過去の例を見る限り、解放直後は何の条件をつけずとも、行動を起こすと君子豹変して無理難題を突きつけ、従わないと身柄を拘束するというのがこれまでの軍政当局のあくどいやり方だった。ここ当分双方の動きから目が離せない。
以前(2008年)に見逃してしまったNHKのハイビジョン特集「ボルガ河民族復興の大地をゆく」という2時間番組が昨深夜再放送されたので、録画しておき今日ゆっくり観賞した。
さすがNHKと言おうか、カネと時間をかけてじっくりボルガ河沿岸の歴史ある自治国と都市を巡ってくれる。これまで知らなかったボルガ沿岸の歴史と民族の興亡を船旅で牧歌的な風景を見せながら紹介してくれた。中々興味深い労作である。
7年前シベリア鉄道でシベリア大陸を横断した時、ボルガ河の鉄橋を渡り、思わず「ボルガの舟唄」が口を突いて出たが、あの滔々と流れる母なる川ボルガを、首都モスクワからカスピ海河口のアストラハンまで3600kmを下る10日間の旅は、シベリア鉄道同様にいろいろなことを考えさせてくれる旅である。
モスクワからタタール人の街・カザフを皮切りに、スターリン時代に悲哀を味わったコサック人の街・サマラ、ドイツ出身のエカテリーナ女帝が作ったドイツ系移民の街・サラトフ、独ソ戦攻防の街・ボルゴグラード(旧スターリングラード)、モンゴル系カルムイク人のカルムイク自治共和国、そして最後はアストラハンに寄港する。それぞれの寄港地で、異なる民族の歴史の変遷を教えてくれる。特に印象的だった都市のひとつは、ドイツ系移民が居住するサラトフとボルゴグラードで、独ソ戦開始によりかなりの数の住民が死亡し、生き残った住民はシベリアへ移住させられ、偶々戦後初めて里帰りして旧居住地で思い出に耽る重苦しいシーンには心を打たれた。
それにしても帝政ロシア時代、そして革命からソ連邦瓦解まで、ロシアが行った民族弾圧は今日においてもロシアが旧ソ連時代の共和国に対して行っている政治的弾圧の行動に垣間見ることができる。
カルムイク自治共和国が、ソ連崩壊後に国内にチベット仏教を生き返らせ、ヨーロッパ唯一の仏教国として仏教を信じることの素晴らしさを語る若きイリュムジンスク大統領の自信に満ちた顔が印象的だった。
いずれにせよこういう意欲的なドキュメントを心ゆくまで観賞できるというのは、素晴らしいことだ。この番組は、これまで何年間にも亘って放映されたBSドキュメント番組の中から選りすぐったものなので、素晴らしいと思うのは当然としても、ドキュメント番組にとりわけ関心が強い私にとっては、つくづく有難いと思う。
昨日開催されたAPECも今日閉幕した。議長国として菅首相が将来のビジョンについて総括スピーチで締めたが、存在感は極めて薄かった。意識的に中国の胡錦濤・国家主席を見るせいか、メディアまで混乱している。お笑い種だが、昨日朝NHK「あさいち」に出演していた左手のピアニスト・館野泉さんを、テロップが東京芸大ピアノ科を「主席」で卒業したと紹介した。最後まで訂正されなかったところをみると、NHK内でも間違いに誰も気付かず、相当胡錦濤「主席」に幻惑されて、「主席」だか、「首席」だか分らなくなっていたに違いない。
まあ今回のAPECは成果こそないが、大きなミスもなく終ったのは、不穏な雰囲気の中で開催されたケースとしては、まずまずなのかも知れない。
1281.11月15日(月) 横綱白鵬64連勝ならず。
今日は大きな国内ニュースが二つある。ひとつは、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の映像を‘You Tube’を通して外部へ流した海上保安官について、検察庁と警視庁は逮捕せず任意捜査を続けると発表した。対立する二つの説がある。国家機密守秘義務違反で逮捕すべきという声がある一方で、一部の国会議員に映像を見せ、議員がテレビでその内容を話した以上秘密とは言えないので、国家機密には当たらないという説がある。
但し、組織として機密扱いで管理していた情報を個人の感情だけで外部へ広く流した行為が簡単に許されるのでは、海上保安庁に限らず、組織自体が成り立たないのではないかとの懸念もある。
いずれにせよ、毅然とした姿勢が見られずガタガタするばかりで、今後も同じような事件が起きるのではないかと心配である。
もうひとつのニュースは、大相撲九州場所で昨初日まで63連勝を続けていた横綱白鵬が、平幕稀勢の里に破れた。名横綱双葉山の記録69連勝を破るのではないかと期待されていたが、野望は潰えた。
海外では、ビルマのアウン・サン・スー・チーさんが解放され、早速国民民主連盟(NLD)本部前で約4万人の支持者を前に声明を発表した。長い間の自宅軟禁状態にも拘わらず、常に身の回りで監視していた軍政の係官は優しい対応をしてくれたと係官を非難することはなかった。彼女の心優しく、思いやりのある人柄が偲ばれる。
スー・チーさんは声明の中で、2千人以上に上る政治犯の釈放を求めるとともに、今後は軍政当局とも話し合いを進めると語ったが、彼女がこういう心情を話すのは初めてである。これまで民主化について、当局とは考えを改めねば話し合いはできないと頑なに語っていたが、長い軟禁状態の末、現状打開のためには自分たちの言い分を主張するだけではなく、相手の言い分も聞いてその中から妥協点を見出そうと考えを変えたのではないか。これもひとつの智恵であるので、支援する民主化仲間の同志らと充分意見調整をして、ことに当たってもらいたいものである。
現時点では双方の考え方には、大きな隔たりがあるので、そう簡単に妥協点を見出すのは難しいと思うが、今は最悪状態で、これだけ世界中から非難を浴びている現政権が、話し合いに応じようとしない以上、最善の策がダメなら次善の策を考えてみるのもひとつの方法ではないかと思う。
それにしてもいつも現在の軍事政権の背後に見え隠れする中国の存在を、世界の民主化の声で表に炙り出す必要があるのではないかと思う。
1282.11月16日(火) 事業仕分けは国の政策と矛盾している。
昨年政府の事業仕分けが注目され、大方の喝采を浴びた。これは私も所属する政策シンクタンク「構想日本」の提言を受けて初めて実行されたもので、国の事業内容の効率性と無駄をびしびし査定して、その必要性に断を下したものである。
それが、どうも言いっぱなしになり、中には看板の付け替えをすることでしぶとく生き残る事業もあって、実際には喝采を浴びた仕分けの成果に疑問が呈された。そして、昨日事業仕分け第3弾後半戦が始まり、過去の仕分け結果が予算要求に充分反映していない事業を対象としてチェックが為された。
仕分けでは対象となった28事業の内、9事業が廃止、6事業が予算圧縮、6事業が見直しとされた。その中で国の重要政策とされた観光が、オヨヨと思わせる国家の政策に逆らうような判断が下されたことには唖然とさせられた。
観光関係の3事業の内、「観光地域づくりプラットフォーム支援事業」が予算要求を半減され、これからの観光業の目玉とされている「訪日旅行促進事業(VISIT JAPAN事業)」は予算要求の三分の一を圧縮され、今後期待される「国際会議の開催・誘致の推進」は、何と予算計上が見送りとされた。
観光は菅政権の成長戦略の主要な柱ではなかったのか。
観光については、言うまでもなく近年国は経済再生の柱のひとつとして力を入れていくことを強く意識して、観光立国懇談会を発足させ、観光立国推進基本法を制定し、更に観光立国推進基本計画も策定して、着々と環境整備を行い、実効も上がっていた。更にその執行機関として一昨年には国土交通省は、外局として「観光庁」まで発足させ、わが国の遅れた観光行政を推進するための目標と枠組みは漸く緒に就いたばかりである。
近著「そこが知りたい 観光・都市・環境」の中でもこれらの政策を評価し、近未来の観光振興に大きな期待を抱いていたことを記述したばかりである。しかも、観光の振興はこれまで国の強い支援策もなくほとんど民間の手によって行われてきた。事業仕分けチームは、国家予算を削減すると強圧的な文言を弄して、観光庁予算が倍増している(21年度62.5億円→22年度126.5億円)と言いがかりをつけているが、厚労省の22年度一般会計予算27兆円と比べれば分るようにごく些少であり、観光は雇用創出を含めて経済的にも成果が上がることは明らかである。
それより何より、昨日まで観光は日本経済の切り札だの、21世紀は観光の時代だのと散々観光業界を踊らせておいて、その挙句にポイ捨てとは、やはり腹の中では観光産業は蔑視されているのだと改めて認識した。
NHK「ニュース7」で、民主党が決めた政府予算を同じ民主党議員が事業仕分けで、廃止を決めるのはおかしいと民主党内から批判的な意見が出てきたと伝えていた。出足は良かったが、このところ事業仕分けに対する全面的支持という風向きが、少しずつ変わりつつあるようだ。
それにしても納得がいかないのは、仕分け人と質問に対する説明者が観光の実態と本質についてまったく分かっていないことである。そういう人たちが過剰なパフォーマンスで演技している。これでは残念ながら日本の観光産業はいつまで経っても日の目を見ることはないのではないか。
ところで先般オープンした今話題の羽田空港国際線ターミナルビルを見学がてらランチをいただきに車で妻と出かけた。まあ物見高い見学客を含めてロビー周辺と土産物店、レストラン街は芋を洗うような人混みだった。昨年12月に新管制塔見学で訪れた時とはまったく変わった熱気が充満して、新しい観光ブームが元気づけてくれるような気がした。
そんなムードに引き比べ、何と事業仕分けはがっかりさせてくれることだろうか。
1283.11月17日(水) 「はやぶさ」 お見事!
昨日注目すべきニュースが2つあった。ひとつは、裁判員制度としては初めて横浜地裁で死刑判決が下されたことである。しかも、どういう意図が分らないが、裁判長が被告に控訴するよう話をしたことである。真意については憶測の域を出ないが、それでも各界から裁判長の気持を量りかねるとのコメントが寄せられたりして世論は揺れている。
今日駒沢大学で清田講師は、裁判長の発言には裁判員の負担を軽くする意味があるのではないかと話された。確かに控訴すれば、二次裁判である東京高裁で裁かれることになる。その場合は裁判員が参加しないので、仮に死刑の判決が下されても裁判員が関わった割合が小さくなり、負担が軽くなる。無期懲役になれば、プロの裁判官が自分たちのクビキを多少解いてくれたように感じられる。深刻な心境を語っていた裁判員の姿を見ていた裁判長は、そんなことを望んでいたのかも知れない。
しかし、異例な発言の裏には、裁判長が自ら下した死刑という判決に自信を持てないからだとか、これでは裁判員制度導入の意味がないとか、議論百出である。
もうひとつのニュースは、6月に回収された宇宙衛星「はやぶさ」のカプセルから小惑星「イトカワ」の成分が採集されたことが証明されたことである。これは文句なしに素晴らしい業績であり、日本の科学技術のレベルの高さを世界へアピールするものだ。
公式発表するひな壇席の宇宙航空事業団(JAXA)関係者の嬉しそうな顔が微笑ましい。
「はやぶさ」が、打ち上げられたのは2003年5月で、05年11月には20億kmも離れた小惑星「イトカワ」に着陸した。だが、05年12月から06年1月の間は通信が途絶えて一時行方不明になった。JAXA研究者や職員の懸命な回復作業の末、漸く07年4月に地球へ向けて出発することができた。そして3年後の今年6月地球へ戻ってきた。それ以来JAXAでカプセル内に約1500個の微粒子を確認した。
専門的なことは分らないが、この結果には宇宙のロマンを感じるとともに、精度の高い技術を駆使して、精巧なロケットを製造して宇宙へ打ち上げ、一旦は故障して通信も途絶する苦難の中で再び「はやぶさ」制御して地球へ戻すというオペレーションには、感嘆するばかりである。技術も凄いが、このプロジェクトに関わった関係者の辛抱強い努力と研究心には頭が下がる。最近にはない慶事であり、心から嬉しく思う。
このところ政治、外交、経済で行き詰まり状態だった日本も、科学分野では世界に冠たる実力を証明してくれた。大いに自慢して良いと思う。
1284.11月18日(木) 菱山郁朗・駒沢大講師が「週刊新潮」で話題に
今日駒沢大学で大泉克郎講師による「高度情報社会のメディア論」講義開始前に、受講者のひとり、須田修一さんが大泉講師に「週刊新潮」を手渡していたが、講義の冒頭に講師がその週刊誌の記事について説明と解説をされた。
今日発売された「週刊新潮」11月25日号に、「『ナベツネ』と『氏家』を大批判した日テレの元政治部長」というタイトルで、「日テレ・元政治部長」菱山郁朗講師に関する記事が3頁に亘ってセンセーショナルに取り上げられている。併せて菱山氏の写真も掲載されている。菱山論文が記載された「駒沢大学マス・コミュニケーション研究所」発行の研究所2009年報の写真まではっきり掲載されている。
実は、先日やはり日テレの元部長だった大泉講師からこの年報をいただいたところである。
「週刊新潮」の記事というのはこういうことのようだ。菱山氏が、研究所年報に「ナベツネ」こと、読売グループ総帥・渡辺恒雄会長と日本テレビ氏家斉一郎会長のワンマン的言動と読売グループ内に充満する二人の強烈な存在感を非難する論文を寄稿した。それが読売・日テレの首脳陣の怒りを買ったらしい。その論文とは「メディア権力の研究」と題するもので、菱山氏が日テレ在職中に取材したドキュメント番組の社内の見方や評価について、氏の視点で書いたものだ。リクルート事件当時、検察捜査が政治家にまで及んだが、菱山氏はリクルート社が社会党・楢崎弥之助代議士に賄賂を手渡そうとする現場を隠し撮りして話題になった。だが、当時の読売グループ首脳陣は隠し撮りビデオが自民党幹部、特に中曽根氏、竹下氏らに捜査の手が及ぶことを懸念して、そのスクープ的取材手法を批判したことを菱山氏は論文の中で不条理で納得できないとの感情を吐露し、同時に高齢にも関わらず渡辺、及び氏家両氏が読売グループ内に鉄壁の備えをして君臨し、隠然たる権力を行使している古い体質を堂々と批判した。
恐らくそれが大方の読売グループ社員の本音だったのではないだろうか。だが、それは読売グループ首脳陣にとっては到底許せないことなのであろう。読売も日テレも菱山論文に対するコメントはしないとジャーナリズムらしからぬ逃げの姿勢に終始している。
記事の最後では菱山論文を引用し、「身体を張って日々取材活動を続けている大多数のジャーナリストにとって全く模範とはならないし、健全なジャーナリズムは育たない。むしろ二人はジャーナリストとしては失格であり、一日も早く後進に道を譲って引退すべきだ」と手厳しい。そして、記事は「2人が単なる後期高齢者に成る日。その日を待ち望んでいるのは、ひとり菱山氏だけではなかろう」と結んでいる。
菱山氏はすでに退職したとは言え、元読売グループ社員として中々思い切った行動をされたと思う。実は、先日私の共著を菱山氏へお送りした際、この論文は久しぶりに力を入れて書いたので、ぜひじっくり読んで欲しいとメールをもらったところである。
まだ、さらっと目を通した限りでは、事実をしっかり記述しているとの印象が強い。じっくり読んで感想を菱山氏へ書き送るつもりだ。実は、菱山氏から氏の12月14日の最終講義に、聴講と懇親会に参加しないかとお誘いがあったばかりである。残念ながら当日は飯田ゼミの忘年会があるので、出席できないが、近日中にお会いすることがあるならいろいろ話し合ってみたい。
それにしても、菱山氏は蛮勇をふるって行動した、気骨のある人だ。その勇気ある言動に敬意を表し、喝采したい。今度お会いした時、話し合えるのが楽しみである。
1285.11月19日(金) 厳しい今年の就職戦線
大学生の就職状況がはかばかしくないらしい。10月1日時点で、来春卒業予定の大学生の就職内定率が過去最低の57.6%まで落ち込み、就職活動は再び氷河期に突入した。
このところ毎日のように大学生の就職活動の様子がテレビで放映されている。特に、地方の大学生が苦戦を強いられているようだ。地方には学生を受け入れる企業が少ないことがその理由である。関東や近畿は60%を超えているが、九州や北海道、四国などの大学生は中々内定を得られず、50%をちょっと超えた程度である。
翻って自分たちの時はどうだったか。卒業の1年前が空前の売り手市場で、あっと言う間に就職が決まっていた。そのおこぼれを受けてわれわれの卒業した昭和38年もあまり就職状況は悪くなかったような気がする。本気になればどんな会社だって入れると思い上がった気持があった。それで父親に頼ることもなく自分で職探しをして失敗し、私なぞは友人が次々に決まっていくのに、中々決まらず、親を心配させた。それでもゼミの先輩のルートで何とか就職することができた。
それに比べれば今の学生たちが気の毒でならない。尤も全般的に今の学生たちは世相の影響か、昔の学生のようにひたすら前向きに進むと言う感じを受けず、妙に余裕があるのか、あちらこちら目移りがしてじっと前を見つめて突き進む学生はあまり多くないような気がする。
2年前のリーマン・ショック以来就職状況は悪化の一途であり、「就職氷河期」と呼ばれた2000年前後でも60%台を維持していたことを考えると、今年の数字には極めて悲観的にならざるを得ない。特にこれまでと違って、大学院卒、理系が芳しくなく、これにいつも通り女子の内定率が低い。経済が沈滞して、就職先としての受け皿が大きく凹んでいることが致命傷であり、こればかりは経済界だけではなく、国を挙げて取り組まなければならない深刻な課題である。
今や昇り調子の中国でも、大学生の就職難は深刻な問題となっているようだ。しかも中国では大学生の就職難は日本以上に悪化して、精々内定率は40%というから驚きである。一部にかなり高いレベルを求める企業がある反面、ほとんどの労働市場は単純労働者を求めている傾向に原因があるらしい。結局大学出が就職するマネージャー・クラスの仕事が思ったほど多くないことが効いている。
一気に解決するのは難しいだろうが、就職内定率60%に対して求人率が1.28倍というのは、企業と学生の間のミスマッチを証明している。学生も高望みはほどほどにして、自分の実力にあう企業を探すよう頭を切り替えることも必要ではないか。
1286.11月20日(土) 「スマイル会」結団25年を前に解団
1986年11月に茨城県海外教育視察団にお供して、当時の西ドイツ・アウグスブルグとフランスのエブリーで学校訪問をしてから、すでに24年が経過した。その後ほぼ毎年の如く同窓会を行ってきたが、参加された先生方もかなり退職された。幸いどなたも亡くなられてはいないが、今年が最後の同窓会と相成った。24回目同窓会の思い出は尽きない。万難を排する気持で参加した。
今回その視察団「スマイル会」の最後の同窓会は、大洗海岸を目前にする鴎松亭で開催された。そもそもユニークな会の名前は、添乗員だった私が、旅行中学校訪問だけに限らず、常々「スマイル!」「スマイル!」と笑顔を湛えることを強要していたことから、帰ってから「スマイル会」と名づけられたものである。
当初は車で出かけるつもりだったが、大洗には水戸から牧歌的な鹿島臨港鉄道が運行されていると聞いたので、滅多に乗るチャンスがないと思い、試験搭乗さながらに電車で出かけることにした。JR常磐線・水戸駅で特急「スーパーひたち」から単線の単車輌に乗り換えた。車窓から見る沿線風景は稲穂も刈り取られ、まさに晩秋の田園風景である。人家はあまり見られず、これではあまり収益が上がらないのではないかと余計な心配をする。ほのぼのとした風情がいい。
ところが座席の前の方から、揚げ物の匂いが漂ってくる。ところどころでポテトチップスや、ポテトフライをつまみ食いしている乗客がいる。それが車内にぷ~んと匂ってくるのだ。乗客の様態を見ているとつまみ食い、携帯メール、居眠り、おしゃべりに分けられるようだ。そんな短い旅の中15分で大洗駅に到着した。この駅舎内にはこの鉄道会社の本社がある。ここからタクシーで鴎松亭まで10分。
大洗と言えば、旧大洗荘の早稲田の石井藤吉郎氏が有名人であるが、聞いてみるととっくの昔に亡くなられたと、タクシーの運転手がそんなことも知らないのかと言わんばかりの口の利き方だった。
団員は私を別にして25名であるが、「最後のスマイル会」が効いたのか、万障繰り合わせて出席して欠席者は僅か6名だった。石橋喜代雄団長の挨拶に続いて、出席者全員が近況報告をされたが、懐かしい顔が見られる。この視察団では、ロンドン滞在中にホテルの火災騒ぎがあり、朝方になって全員が部屋から逃げる騒ぎがあったが、その当時の情景を説明される先生がおられて、改めてこの「スマイル会」が、火事現場に出遭わせたのだと再認識した。
この団のまとまりが良いのは、やはり石橋団長のお人柄と統率力が秀でているからである。近況を伺っていると淀川ゆき先生のように、現在女性として初めて牛久市教育長の職を務めておられる先生もおられるし、来年定年を迎えられる3人の先生はそれぞれ小中学校長として勤めておられる。他にも公民館や生涯学習センターで活動しておられる先生も4人おられる。皆さんそれぞれ元気に地域で活躍されている。団結成以来24年となったが、まだ物故者がいないこういう時期に解団して、当時を偲ぶのが良いのではないかという考えで未練はあるが今回が最終回となった。
走馬灯のように想いは駆け巡る。若い時代の感傷である。
部屋に引き上げてから、お声がかかり別室で二次会を12時半まで続けていた。みんな口では解団もやむを得ないと言っていたが、実は別れがたいのである。窓の外は打ち寄せる太平洋の波に月光である。ついセンチメンタルな気持になる。
1287.11月21日(日) 櫻井徳郎先生と鉾田一高へ
昨晩はすっかり飲みすぎてほろ酔い気分のまま部屋へ帰り、バタッと眠りについてしまったが、今朝になっていよいよ「スマイル会」も解団となると気持ちとしては寂しい。朝食後水戸まで何とか足を確保しようと考えていたら、取手市にお住まいの櫻井徳郎先生が、常磐線の駅まで送って下さるとの親切なお誘いに甘えてJR石岡駅まで車に同乗させていただいた。
櫻井先生の特技と専門知識を生かされた園芸については、日頃から努力されてご自宅の庭園や田畑を解放されて園芸や、土いじりを味わいたいという地域の方々を広くお招きして、「櫻友会」と称してお人柄そのままに楽しみながら和気藹々と園芸をご指導しておられる。茨城県内の学校や施設で講演をしながら、花壇の設計や造園計画にもかなり携わられたようだ。石岡駅への途次大洗海岸沿いに南下して、鉾田市内を通り抜けた時、造園を手がけられた県立鉾田一高へ寄ってみようということになり、狭い道路を走って校庭へ到着した。生憎休日なのでキャンパスはひっそりしていたが、トラック一周400mの広さがとれ、公式記録会が催されるほど校庭が広いのには驚いた。
やはり地方の学校の方が施設は広々と運動環境に恵まれている。生徒たちは思う存分走り回ることができて幸せだと思う。
櫻井先生がしみじみお話されたが、学校などの造園設計はほとんど設計者の名が表示されない。仮に名前が出るとしても代表者、つまり学校なら校長の名前が刻まれると話された。それは、他の記念碑的な彫刻や石碑でもそうだ。この鉾田一高でも校門から校舎へ向かってその前に創立周年記念彫像が建立されている。その下にその時の校長の言葉が達筆で刻まれていた。
石岡駅まで櫻井先生に送られて帰宅したのが、午後1時過ぎだった。櫻井先生には随分お世話になってしまった。この「スマイル会」の先生方には多くのことを教えてもらった。今歩んでいる旅行ジャーナリストとしての仕事でも参考になったことが沢山あった。
しかし、「スマイル会」解団となるとやはり寂しい気がする。鹿嶋市から車で来られた石橋先生には、近くへ来られる時はぜひ連絡して欲しいと仰っていただいた。良い想い出を与えてくれて感謝の気持でいっぱいである。
さあ次の教育海外研修団は1週間後で、これも今回限りで解団である。
1288.11月22日(月) 柳田稔法務大臣ついに辞任
偶々と言おうか、今夕の日経紙スポーツ欄に巨人軍の東野峻投手の今季の活躍が大きく取り上げられている。優勝を逸したとは言え、東野投手は今年13勝を挙げ巨人軍投手陣の勝ち頭となった。読んでいてパッと目がいったのは、東野投手の出身校が何と昨日櫻井先生とともに訪れた茨城県立鉾田一高だったことである。そう言えば、校舎の裏側に広いグランドがあり、更にその向うに野球場があった。こんな環境なら思い切ってプレイできるだろう。確か一時センバツにも出場して、その後プロ入りした戸田投手?が活躍したことがあった。それにしても昨日学校へ行ったのは、偶然のまた偶然と言えようか。
さて、今月14日に柳田稔法務大臣が広島市内の後援者の集まりで、大臣が国会答弁を軽視するような大臣としてあるまじき発言をしたことが物議を醸し、野党から辞任要求が出されていた。これまで通り柳田法相は、最近話題になっている検察制度を検証し、必要なら改正するために全力を注ぎたい、と検察改革に強い意欲を示していた。そのためにこのまま大臣の椅子に座り続け職務を果たすことこそが責務であるとして、頑として辞任要求をはねつけていた。
しかし、今年度の補正予算成立などの難問を抱え、民主党もこの苦境を逃れるために法相を更迭することを決断した。
自民党、公明党、みんなの党などの野党はこれだけでは引き下がらず、菅首相の任命責任も追及する構えも見せている。この先すんなり国会運営ができるのか気がかりであるが、言葉尻を捉えた与野党の不毛の論争となった感がある。結論から言えば、大臣の質が低い。法相自身「法相はいいです。答弁は2つだけ覚えておけばいい」などと軽率な発言をしたが、よくもそんなことを言えたものである。柳田法相が大臣としての資質に欠けることは明々白々である。
政治家と言えば、今や世襲政治家でなければ中々重要職には容易に就けないカラクリがあるようだが、それが苦労知らずの政治家を育てる温床になっている。それにしても、民主党は程度の低い国会議員の定数を削減すると約束したマニフェストも実行しようとの素振りすら見えない。国会議員の歳費の縮減だって、約束のほんの僅かしか実行していない。
法相の愚かな発言が出てくるのは、元を糺せば国会議員のレベルの低下に歯止めをかけようとしないからだ。どうあろうとも、いつも一番バカを見るのは国民である。
1289.11月23日(火) 第2次朝鮮戦争勃発か? 北が韓国を砲撃
今日は祭日、勤労感謝の日で、昔から毎年ラグビー早慶戦が行われる日と覚えている。今年の慶応ラグビーは今月3日の「文化の日」に戦った明治に20-17のスコアで7年ぶりに惜敗して、優勝戦線から一歩後退した。
昼間は小田急百貨店にお歳暮の買い物に出かけたので、帰ってからのビデオ観戦となった。今日の慶応は終始押されていたようだったが、確実なタックルでよく早稲田の攻撃をしのぎ、前半3-3、後半7-5の2点差で逃げ切り、2000年以来10年ぶりで早稲田に勝ち、12月の早明戦次第によっては関東大学対抗戦グループで優勝の芽が出てきた。高校の後輩、栗原大介くんも地味なプレイながら相手のトライ寸前でボールをはたき、未然に早稲田のトライを防いだ。このプレイがなかったら負けていたわけだから、殊勲甲と言ってもいい。
さて、今日の買い物でスェーター、カーディガン、Gパンをそれぞれ1枚買った。Gパンを買ったのは初めてで、一度試してみたいとは思っていたが、来月6日に韓国へ出かけるのを機会に‘MICHEL KLEIN’でしっかりしたデニムを購入した。ちょっと恥ずかしい気もしたが、寸法合せをしてはいてみると割合フィットしてその感触がいい。それに柄にもなく体形もスマートに見えるので、気に入っている。いままで食わず嫌いだったGパンだが、これからは少し熟年のお洒落も楽しんでみることも必要ではないかとも考えている。
ところで、今日午後突然えらく物騒な事件が勃発した。北朝鮮軍が韓国のヨンピョン島(延坪島)に砲撃を加えたのである。これに応戦した韓国軍との間で対抗射撃戦が行われた。砲撃戦で韓国軍兵士2名が亡くなり16名もの重軽傷者が出て、民間人も十数名が負傷した。小学校6年生の時勃発した朝鮮戦争以後も、これまで何度か北朝鮮が挑発して騒ぎが起きたことはある。記憶に新しい事件では、3月に韓国哨戒艦が北朝鮮軍の魚雷攻撃によって撃沈され、乗組員46名が亡くなった。その際にも北は関与していないと言い張った。
それにしても世界中の嫌われ者・北朝鮮の無茶で身勝手な行動により困ったことになった。今までの局地的な事件とは異なり、北が遅れて発表したコメントでは、最近北朝鮮海域に近い黄海で行われている米韓合同軍事演習が北の安全を脅かしていると北は韓国に対して警告していた。そこへ北朝鮮のウラン濃縮用施設の開発、金正日総書記の後継者として三男金正雲が決まったこと、等々が重なりマイナス・イメージで存在感を強めてきた。一方で北朝鮮軍部内における人事を巡る内輪揉め、それを抑えるために敢えて軍部が暴発したとの専門家の指摘もある。まったく先がよく分らない筋書きである。
北朝鮮がどうしてこういう荒っぽい行動に走ったのか、まったく理解に苦しむ。当分この事件に関して世界中が姦しいことだろう。第2次朝鮮戦争に発展しないことを祈るばかりである。
1290.11月24日(水) 尾を引く北朝鮮砲撃事件
昨日北朝鮮が韓国を砲撃した事件は、瞬く間に世界中に伝えられた。各国は痛烈に北を非難し、北に圧力をかけていくと公式声明を発表した。特に、日米韓は6カ国協議の参加国であり、近隣国として安全保障の問題もあり強い口調で北の行動を責めた。
民間人の間にも新たに2人の死者が出た。
その中で唯一の北朝鮮支援国と呼んでもいい中国は、北への働きかけを求められているにもかかわらず、相変わらず情報を精査するとか、これ以上この事件が拡大しないよう見守りたいとか、一歩退いた立場を取っている。いつもながら自分たちにとって不都合なことから逃げて、ひたすら自らの身を守ることに営々と努めている。
この事態に在日韓国人もショックを受け、呆気にとられている。この事件は日本国内でも意外な形で影響が出てきた。今年度の民主党政権の目玉政策のひとつ、高校無償化制度について朝鮮学校へ適用するかどうかを決定していなかったが、風向きが変わってきた。これまで、朝鮮学校が金正日崇拝により、反日教育を行っていないかどうかをチェックしていたが、とんだ事件が飛びこんだことにより、政府は審査を停止すると発表した。無償化を適用しないという結論ではなく、改めて北への制裁を含めて審査をやり直すということだろうか。
子どもの教育に政治を持ち込むのは必ずしも賛同できることではないが、ここまで身勝手な主張をし、蛮行を行うようでは、政府の判断もある程度やむを得ないということになる。
JTB、近畿日本ツ-リスト、HISなど旅行会社の発表では、ツアーキャンセルする旅行者も出ているという。また、国境の軍事境界線に近い板門店の見学ツアーを当分中止する措置を取ったという。私も来月6日から韓国へ出かけるが、機会があれば板門店へのオプショナルツアーの参加を考えていたが、多分だめだろう。
横須賀に停泊中の空母ジョージ・ワシントンが動き出して、不気味さが増してきている。いつまでこの緊張状態がつづくのだろうか。
1291.11月25日(木) 「チボリ会」解団。寂しいなぁ。
今日は先週に続いて茨城県教職員海外視察団のひとつ、「チボリ会」の解団式である。会場の国民宿舎「鵜の岬」は、聞くところによると全国数々ある国民宿舎の中でも最も利用率が高く、中々予約を取れないという。それがどういうわけだか、この「チボリ会」では、今回を合せて5度目の開催で、私にとっても2度目の利用である。
日立駅に降りたった時、佐藤弘之先生が車で出迎えてくれた。そのまま日立市名誉市民で作曲家の吉田正を紹介した「吉田正音楽記念館」を見学して、その後日立繁栄の基礎を築いた久原房之助財閥が興した日本鉱業、日立製作所の前身でもあった日立鉱山の鉱山跡地に建設された「日鉱記念館」を見学した。さして期待していなかったが、意外に興味深いものだった。公害問題が世間の注目を浴びる前に、この鉱山の山中に立つ煙突が日立のシンボルだったようだ。驚いたのは、今どき二つの設備がそれぞれ入場無料ということだった。
最終回ということもあって、私を含めた20名の団員構成だったが、4名の物故者を除くと16名中12名が参加された。その当時の文部省係長で海外視察団にも参加された佐野紀さんも出席された。
開会に先立って今年2月に亡くなられた吉成貢先生の霊に黙祷を捧げた。吉成先生は昨年ご長男を亡くされ、今年はご自分が旅立たれた。偶々先生は慶応義塾の通信課程で学ばれたので、私にとっては先輩にも当たる。一昨年の慶応義塾創立150周年記念祭の折、天皇・皇后両陛下がご臨席された式典にも雨の中を出席されたとお話いただいた。私も出席の予定だったが、急遽韓国・束草(ソクチョ)市で開催の国際シンポジウムにパネリストとして招かれ、欠席することになり、お会いすることが叶わなかった。近年は「吹き矢」に熱をいれられ、スポーツである「吹き矢」について愉しそうにお話していたことが懐かしく思い出されてくる。心よりご冥福をお祈り致したい。
次いで今月9日に叙勲された外山彬先生に海野千秀団長から記念品が贈られた。会は解散を惜しむかの如く大いに盛り上がり、地元料理の宴会から二次カラオケ大会、三次部屋内懇親会と深夜12時過ぎまで思い出話やら、エピソードやら名残が尽きない一夜になった。
団長はもう80歳を超えておられるにも拘わらず、カラオケ大会では相変わらずのバリトンで演歌を熱唱され、他の団体客も聞き惚れ拍手喝采であった。最後の一曲として唄われた五木ひろしの演歌「凍て鶴」は、まさに「チボリ会」の名残り歌としていつまでも心に残るものであろう。
それぞれの団員が個人的な思いを込めて近況報告されたが、やはりこれが最後となると感慨深いものがあるのだろう。別れ難い感情が込みあげてくる。おかげさまで、この「チボリ会」では素晴らしい団長とともに、優しく思いやりのある先生方に恵まれたことは幸せだった。1980年に海外研修へ出かけてから30年間毎年繰り返された「チボリ会」も、遂に終止符を打つ時がきた。いろんなメモリーが後から後へと脳裏を駆け巡る。やはりしんみりしてしまう。これも時の流れというべきであろうか。
海野千秀先生をはじめ、団員の先生方から愉しい想い出を沢山いただいた。心より感謝している。
1292.11月26日(金) ノーベル賞受賞者・根岸栄一博士出席されず。
40年前の昨日は、あの作家・三島由紀夫が市ヶ谷自衛隊本部で居並ぶ自衛隊員を前に、国の未来を憂いて決起を促す過激な演説を行い、受け入れられないと見るや、その場で凄惨な割腹自殺を遂げ、日本中に大きなショックを与えた衝撃的な一日である。ちょうど任意で話し方講座を受講していた時で、直後に講師から件の自決について聞かされ、しばし言葉もなかったことを思い出す。
三島は「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るであろう」と言っている。日本の行方を冷ややかに予言した言葉である。なるほど当たっていると言いたいところだが、これは日本というより、より以上にお隣の中国に該当する言葉ではないだろうか。
昨日は遅くまで起きていたが、ぐっすり眠ることができた。女性の宮本先生と内海先生は、自室で5時まで話し合って休まなかったと言っておられた。朝食後名残は尽きねど別れることになり、私は二人の女性の先生とともに根本英則先生に車で日立駅まで送っていただいた。
帰ってから夕方になって六本木のアークヒルズで開催の湘南東京有志会に出席した。東京で活動する湘南高OBの会合だが、偶々会場を提供してくれている森ビルの森稔社長が、ノーベル賞受賞者・根岸栄一教授と湘南同期生ということと、一昨日根岸教授が母校・湘南を訪れ生徒に講演され、その様子が昨日のNHK朝のニュースで報道されたこともあり、今日の会合に出席されるのではないかとの期待があった。事実都合がつくならぜひ出席して欲しいとお願いしたらしい。挨拶された元国土庁長官の吉居時哉さんはまもなく来られるだろうと仰っていたが、根岸さんも大分お疲れの様子で、会の途中で欠席ということが分ってきた。カメラまで持っていったので、残念だがこのところのハードスケジュールを考えれば已むを得まい。
弁護士の田辺信彦・同窓会長(湘友会長)と川井陽一校長から根岸さんが24日に来校された時の様子について話をされた。その時の状況をまとめてテレビ神奈川が来年1月2日に「~おめでとう 湘南高校開校90周年~ノーベル賞・根岸栄一さん 母校に帰る」と題して55分間の番組を放映する。
残念ながら天野武和・前同窓会長とダークダックスの遠山功さんは出席されなかった。昭和32年卒の同期生も牧野力くんと林龍代さんだけしか出席しなかったが、おかげで多くの先輩、後輩諸兄と話し合うことができた。
川井校長によると根岸効果新たかだそうで、やはり先輩のノーベル賞受賞は生徒たちに大きな夢と誇りの気持を抱かせたようだ。在校生の中には、数学オリンピックに日本代表で出場できそうな生徒も出てきたと嬉しそうに話されていた。
いずれにせよ、ノーベル賞ほど多くの人たちに自信と夢を与えてくれるものはないと改めて感じている。日本全体にとってのみならず、母校にとっても素晴らしい出来事だ。
1293.11月26日(土) 学生相手の講義は愉しい。
池袋にある東京交通短大で学生相手に講義を行った。これはここ数年恒例になっている。今年も昨年とほぼ同じテーマで「若い時に『臨場感』を磨け!」と題して、パワーポイントを使用して約100名の学生に持論を話した。
松岡弘樹・副学長とあらましの段取りと内容について事前に打ち合わせをした。折角外部講師が話をするわけだから、専任の先生が講義する普通の授業と違って私のこれまでの体験上感じたり、ぜひ学生に伝えたいことを体験的な視点から話す方が効果的と考え、その通りに話した。
特に得意の「臨場感」について、分かりやすく説明したつもりだ。「臨場感」が判らなければ、本当にその土地が判ったことにはならないし、「臨場感」を知らないと危機意識も甘くなると例を挙げて話した。とりわけ私自身がニューヨーク同時多発テロや2008年3月に発生したチベット暴動を予見できた理由として、その根拠を説明し周辺の臨場感を知っていたからだと述べた時には、学生も信じられないような顔をしていた。まあこういう話で煙に巻くのも愉快である。話は多分学生に理解してもらえたと思う。松岡副学長には来年もぜひ講義をお願いしたいとお話があったので、お引き受けすることを約束した。とにかく学生を相手に思い切ったことを話せる講義は愉しい。
さて、今世の中にどうにもならないバカな人間が溢れている。その最たるバカは、言うまでもなく北朝鮮の金正日総書記だろう。このたわけものがいなければ、拉致家族は胸をなでおろすだろうし、北朝鮮国民は貧困から救われ国民は平等に自由を謳歌し東アジアに平和が訪れるだろう。日本の政治家の中にもとろい議員が沢山いる。その中でも地方都市で市民感情とずれた意識で得意気に動いている人物に、鹿児島県阿久根市の竹原信一市長と名古屋市の河村たかし市長がいる。芸能界では、一昨日六本木でチンピラに殴られ大怪我をして、30日から京都南座で幕を上げる顔見世興行を休演することに決まった歌舞伎役者の市川海老蔵がいる。世間知らずで、常識を欠いた大馬鹿者である。
彼らの中で一際目立った政治的パフォーマンスで注目を集める河村市長の最近の行動には首を傾げざるを得ない。河村氏が昨年4月の名古屋市長選に立候補した時の約束ごとが、市民税10%減税と議員報酬の半減だった。これが当選した時に野党議員とぎくしゃくし出した原因で、河村市長が強引に公約を実行しようとしたことが騒ぎを大きくした。そこで河村市長は博打を打った。つまり名古屋市民から市議会リコールの書名を集めた。実現できたと思いきや、選管は有効署名数が目標に達していないと判断した。これを受けた市長は、あっと驚く次の手を打った。何と改めて市民に自分を評価するかどうかの踏み絵を迫る策を行うことにした。まだ市長になって1年半にしかならないのに市長職を辞するという。改めて市民に信を問い、どこまでも持論を実行したいらしい。こうなると泥仕合である。流石に政治評論家諸氏からは市政の私物化と看做され、その行為は税金の無駄遣いだと呆れられている。
他にも目論見があるようだ。来年2月の愛知県知事選挙を睨み、市長選とセットで知事と市長同時当選というシナリオを描いているようだ。知事選には大村秀章衆議院議員を立候補させ、自らはやはり目立ちたがりやの橋下・大阪府知事と組んで地方の改革を目指すという。
ちょっと人気が出ると思うと何でもできると考える浅慮には、二の句が出ない。
1294.11月28日(日) 家族揃って墓参り
9月に結婚した二男・崇史が新妻・すみれとともに新潟市から里帰りした。昨日は新宿の京王ホテルに宿泊していたが、生憎私が講師を務めていて会えなかったので、妻が横浜市に住む長男家族5人を新宿へ呼び夕食をともにした。
今日は結婚報告を兼ねて墓参りをすることになり、中野にある近藤家の菩提寺・宝仙寺から妻の実家・川手家の多磨墓地へ回った。幸い天候に恵まれたので、紅葉の見事さも相俟って気持のすっきりした墓参りをすることができた。遅い昼食を自宅近くの「しゃぶしゃぶ料理屋」で会食とした。長男の3人の子どもは、男の子は大人しいが、2人の女の子は元気活発で幾分落ち着きがなく、目が離せない。それでもみんな元気なことで佳しとする。
さて、北朝鮮による砲撃事件以来、韓国はもちろん、周辺国の緊張度合いも高まってきた。いままでの例からすれば、いずれかに妥協点を見出して矛を収めるというのがあらすじだったが、今回ばかりは従来になくお互いに強気で、角突きあわせ再び砲撃戦が始まる形勢になってきた。今日も午前中北朝鮮国内で爆弾音が聞こえたらしいが、それは韓国へ向けて砲撃されたものではなく、北朝鮮国内で爆発音が発せられただけだったのが幸いである。
しかし、今日から砲撃現場のヨンピョン島近くの黄海上で米韓合同軍事演習が始まった。北朝鮮はもし韓国が挑発的な行動を起こせば、仕返しすると発表したり、中国政府は自国に近い海上というせいもあり、排他的経済水域における軍事演習を中止するようメッセージを発している。
中国政府は世界へ向けて北朝鮮をかばっているように見えるが、実際には親不孝者・北朝鮮の行動にはほとほと手を焼いているのが実態である。あまり北を擁護するようだと、世界中の反発を買うことくらい判りきっている。そこに、中国の煩悶がある。一旦は楊潔篪・外相を韓国へ派遣する予定だったが、米韓合同演習に抗議するように中国得意技のドタキャンをやらかした。ところが、風向きが逆風になると察するや、今度はより上級職で副首相級の国務委員・戴乗国氏を韓国へ派遣して李明博・大統領と会談させるほどの君子豹変ぶりである。
現状は中国にとって極めて不都合な状態にある。流石の中国も問題児・北朝鮮を抱え込んだ形になってほとほと困っている様子が分る。ヨンピョン島では戦時体制が敷かれ、今度こそどちらかが砲撃すれば戦争状態に突入する一触即発の状態にある。とにかく気を許せない状況になってきた。
ところで中国・広州で開催されていたアジア大会は昨日16日間の幕を閉じた。ここでも中国パワーが圧倒的な強さを誇り、参加45カ国が42競技・476種目を競う中で、中国は199個もの金メダルを獲得した。2位の韓国が76個、日本は3位とは言いながら、金メダルは前回大会を下回る48個に終った。この金メダル獲得数だけ見ても、中国の優位は断然他を圧している。得意の絶頂にある中国チームの代表者は、自分たちを他の国もひとつの指標にして欲しいと胸を張っている。このところ中国は向かうところ敵なしの心意気で、自信満々で勝負に出ている。今や引っ込み思案の日本は、どう見ても影が薄い。
日本を再び活力ある国へ復活させるために、何か起爆剤になるものはないだろうか。
1295.11月29日(月) 政府は沖縄米軍基地をどうしようというのか。
昨日3つの県、沖縄、愛媛、和歌山で県知事選が行われた。その中で最も注目されたのは、言うまでもなく沖縄県知事選である。実質的には現職の仲井真弘多知事と前宜野湾市長の伊波洋一氏の2強の争いとなったが、僅かの票差で現職の仲井真氏が勝った。勝ったのはいいが、難問を抱える沖縄県政はこれからが正念場である。最大の争点だった基地問題、なかんずく普天間基地移設に関しては、仲井真知事は以前から県内移転も已むなしとしていたが、知事選直前になって県外移設へシフトした。これにより仲井真氏と伊波氏、両者の間に大きな争点がなくなり、現職で経済通の仲井真氏が当選した。政府の考えは日米合意に基づいてほぼ県内移設で固まっており、いかに沖縄県民に強いる犠牲が沖縄内外国民の同情を呼び、再び沖縄県民を戦争の犠牲に近づけることに心情的なシンパシーがあっても、現状の米軍基地を沖縄から国内の他の土地へ移設することは、まず不可能に近いのではないだろうか。
最近の中国とのトラブル続きや、韓国ヨンピョン島砲撃事件などを見ていると、アメリカの核の傘の下にいる日本にとってアメリカは実に頼もしい存在であり、アメリカとの同盟を無視しては日本の安全は担保されないように見える。実際、クリントン国務長官が尖閣諸島は日米安保条約の枠内にあるとの「お墨付き」発言をした時の政府首脳の喜びようは、これが国のトップのありのままの姿なのかと、もう少し自制せよと言いたいくらい無邪気な騒ぎようだった。もっとアメリカの真意を探れと言いたい。アメリカは日米合意に基づいて、基地移転を速やかに進めて欲しいと日本政府に求めているのだ。それは、現在の普天間基地を辺野古へ移すということであり、現在の中国リスクが高まれば高まるほど、アメリカ軍の存在感とその必要性が高まる。もはや、アメリカ軍なしには、日本の安全保障は維持できないのっぴきならない状態に追い込まれているのである。
今米韓合同軍事演習に加わっている米原子力空母「ジャージ・ワシントン」は、母港横須賀から向かった。この事実は、すでに日本は北朝鮮が狙いを定める照準内の標的となってしまったことを意味している。戦争が起これば、沖縄も横須賀も否応なしに巻き込まれるところへ来てしまっている。これでは、好むと好まざるとに関わらず、アメリカ軍の援護を必要とするのではないだろうか。
知事選が終れば、菅首相は新沖縄知事と即刻会いたいと早くからその意志を表明していた。だが、現時点ではいつ、どこで会うのかの公式発表もない。鳩山前首相が沖縄米軍基地問題について、優柔不断の末に裏切ったような判断をして失笑を買ってからまだ間もない。菅首相はどうやって沖縄県民の信頼を回復する手を打つつもりなのか。アメリカ政府の要求と沖縄県民の基地反対の声の狭間で、どういう結論を出そうとするのか。毎度のことながら、今度も日本政府が一向に本音を表に出さないところから察すると、日本政府の考えはアメリカの要求をそのまま呑み、普天間米軍基地は海上の辺野古基地へ移設することになるのではないか。すでに他の選択肢はなくなっているように思えて仕方がない。
それにしても民主党政権の沖縄政策は、あまりにも無策と言わざるを得ない。
1296.11月30日(火) 国家機密情報がネット上に流失
警視庁公安部のテロ関連情報流出事件が、アメリカを始め国際社会から厳しい批判を浴びている。その中にはFBIの捜査資料や在日米軍の爆発物処理研修、アメリカ空軍特別捜査局機密情報等、国家にとって重要な機密情報が含まれていた。わが国の機密情報管理のあり方が国際社会において信用を失墜したことは紛れもない。
ところが、それに輪をかけたような各国の国家機密がアメリカのネットを通して暴露され、国際的に蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。なにせ先進国から途上国に至るまで国家元首や権力者の公的、或いは個人情報までが公開されるようでは、機密保持はどうなっているのかとの疑問や、それをどうやって入手し、公開されるに至ったかを不審な思いで見る国の責任者たちには不安が募っている。
これらの内部告発情報をネット上で暴露したのが「ウィキリークス」というWEBSITEである。入手したアメリカの外交文書だけでも約25万件というから途方もない。暴露された大きな原因は、「IPルーターネットワーク」という米軍が秘密情報を交換する機関情報システムに、60万人以上の米政府職員と軍人らがアクセスできたことにある。最近神戸の海上保安庁保安官が中国漁船のビデオをネット上に流したケースに似ている。流失した情報に国家の最高機密は盛り込まれていないようだが、それ以外の情報はその気になれば容易に入手可能ということだ。2001年の同時多発テロを防げなかった原因に、情報機関同士の縦割り制度があったと考えられ、それを補うために情報共有促進を図ったシステムが構築された。結果的に、それが裏目に出たようだ。
今後このような抜け穴だらけの粗雑なシステムから、情報漏れを守ることに国家ぐるみで全力を傾注することだろうが、問題はすでに流失した情報の行方である。今日の朝刊と夕刊のトップ記事に、個人情報が面白おかしく紹介されている。
例えば、「プーチン首相はバットマンでメドベージェフ大統領は相棒のロビン」「金正日は体がたるんだ年寄り」「サルコジ・フランス大統領は怒りっぽく独裁主義的」のようにとんでもない皮肉をもって伝えられている。
アメリカも国際的な信頼を失う問題と捉え、クリントン国務長官は国際社会に対する攻撃だと強く非難して防戦に懸命である。だが、その内容はなるほどと頷けるように信憑性も高い。
その中に中国が北朝鮮について語った内輪話がある。それは、①中国指導部内で韓国が主導して朝鮮統一がなされるべきだとの考えが浮上、②金正日総書記死後、北朝鮮は2~3年で体制崩壊、③中国の北朝鮮への影響力は信じられているよりずっと弱い、④中国は難民30万人の流入に対処可能、軍事的な国境封鎖も検討、などである。これらが本当だとするなら、すでに北朝鮮は中国に見放されているのだ。
これは単なる情報流出だけに終らない。われわれの気持としても、朝鮮半島が緊張している時期が時期だけに安閑としてはいられないのだ。