ご意見番の意見

2010年5月


1083.5月1日(土) 中国の栄光と恥部
 今日上海万博が開幕した。これから10月一杯向う半年間開催される。北京オリンピックに次いで、中国政府はこの上海万博を絶好の国威発揚の場と捉え、全力を注いで246カ国・地域が参加する過去最大規模の万博にしようと目論んでいる。1970年の大阪万博では、幸い仕事上何度も訪れる機会があり、人気のアメリカ館やソ連館を長い間並んで月の石を見たことも懐かしい思い出である。その他にも大阪の花博や、つくばの科学万博を訪れたことも記憶に残っている。
  これから当分上海から発信されるニュースがメディアを忙しなくさせることだろう。とにかく最近では国際的なニュースの発信源として、中国の存在感は圧倒的なパワーを与え続けている。NHKドキュメンタリー番組のアーカイブスの中でもかつての人民中国の懐かしい映像をいろいろな角度から放映しているが、観てみたい番組も多く、気がつくと録画しては改めて観賞している。中でも文化大革命が始まった1966年から76年までの中国史は興味深かった。
  今や世界中が中国に振り回され、中国の同意なしにはことが進まないキライすらある。それは一にも二にも、その成長著しい経済力に負うところが大きいが、中華思想に捉われた中国は、自らの立場を有利に持ち込もうとして、少なからず国際社会と摩擦を生じて、外から顰蹙を買っているのも事実である。
 今日の夕刊をみても、万博以外に中国を主題とした記事として、@知的財産権保護、A南太平洋のカツオ漁、について中国のやり方に対して批判的な内容が掲載されている。他にも最近中国海軍艦艇が公海とはいえ、八重山諸島の間を堂々と通過したり、何かと話題を提供することが多い。
 その中でも@については、アメリカ通商代表部(USTR)が年次報告書で、知的財産権保護が不充分な「優先監視国」として、中国、ロシア、インド、カナダなど11カ国を指定した。これら11カ国は昨年も優先監視国だった。
 これらの国々は、これまでは違法な模倣品の横行などに焦点が当てられてきたが、今後は中国などが海外の技術を模倣し国産化することにUSTRは神経を尖らせている。巧妙な手口で模倣を模倣と思わせないテクニックである。中国政府はことあるごとに知的財産権の保護には国を挙げて注意を払っていると口では言っているが、キャラクター商品の模倣品や、今回の上海万博のPR曲のパクリなどを見ていると、物真似は中国の体質だとしか思えないので直ぐになくなることはないのではないか。
1084.5月2日(日) 葛西JR東海会長の中国嫌いは異常ではないか?
 鳩山政権の新成長戦略の柱のひとつに、「技術・システムの海外展開」というのがある。その足がかりとして前原誠司・国交相がJR2社、車両会社トップらと訪米してアメリカ政府の高速鉄道構想にインフラセールスを開始した。すでに政府はインドに原発技術提供の、ベトナムには原発や高速鉄道セールスを開始している。
 わが国の鉄道技術水準は世界でも最高レベルにあるが、それでもフランスとドイツが強敵と看られている。そこへ近年はスペイン、中国、韓国が参戦して、今後は激しい受注合戦が繰り替えされそうだ。日本は、過去において中国、韓国の新幹線導入競争で敗れ、独自の技術を海外で生かせなかったが、初めて台湾の新幹線で車両以外の鉄道敷設、駅施設工事を受注し、施行した。
 日本では、政府が漸く本腰を入れて官民一体の大型海外プロジェクトへ協力体制を整えるようになったことは、資金面で優位に動けるようになったということだ。今後の成果を期待したいと思う。
 ところが、月刊誌「選択」5月号によると、今回前原大臣の訪米に同行した葛西敬之・JR東海会長が、大の中国嫌いで通っているそうである。そのこと自体個人的な感情で困ったことではあるが、どうしようもない。問題は葛西会長の中国嫌いが度を超えていることにあるようだ。中国政府の外交や経済政策に反論があるというなら、正々堂々議論することができるが、単に中国を蔑視するかのごとき中国嫌いでは、いずれ人種差別主義者と軽蔑され誰も相手にしなくなるのではないだろうか。
  例えば、新幹線京都駅には、JR西日本とJR東海の管轄地域があるそうだが、JR東海管轄地域では中国語の表記がないそうだ。JR西日本地域ではちゃんと表記があるだけに余計奇妙な感じがする。これでは自社の顧客へできるサービスを怠っていると非難されても反論できまい。この低次元の不親切な対応に葛西会長の意向が反映されているようだが、これでは個人的な遺恨、或いは私怨と言われても仕方がないのではないだろうか。
 しかし、真相はどうあれ、公務に私情を交えては拙い。ましてや、社会的にも影響力のある大会社の会長職にある人物だけに、その与える影響は少なくない。モラル的にも好ましくない。こんな私情を業務に持ち込むようでは、経営者としての感覚を疑いたくなる。JR東海もこんなボスの意向を慮って営業分野に、歪んだ配慮をするようでは、社内の士気にも影響するのではないかと思う。
 今後葛西会長がアメリカの鉄道建設工事入札の際、人種差別感や中国蔑視感が表れやしないかと懸念される。今どきこんな駄々っ子のような大物経営者がいるなんて、とても信じられない。
1085.5月3日(月) そろそろ真剣に憲法論議をするべきでは?
 今日は憲法記念日である。日米安保や沖縄基地、核問題が話題になるたびに憲法議論が持ち上がるが、憲法について正面から国民的視点で議論や論点を取り上げ、これからの日本にとって憲法改正、なかんずく「第9条」をどう取り扱うかについて真剣な議論が闘わされたことがない。
 朝日新聞の直近の世論調査によれば、改憲が必要だとする人は47%、不要とする人は39%で、3年前の調査の際前者33%、後者49%だったことに比べれば改憲賛成者が大分増えている。しかし、9条だけを考えると改正反対者が67%と全体の三分の二を占める。これは国民にとって、相変わらず9条が戦争への抑止力となって欲しいとの願いが強いからだろう。
 それにしても僅か3年間にこれだけ国民の気持ちが動くのは、それだけ将来に不安を抱いているからである。もうこうなったら真剣に憲法を議論するより仕方があるまい。憲法を改正するのかしないのか、はっきりさせれば、わが国の防衛問題にも見通しが立ってくる。例えば、沖縄の米軍基地問題等は、日米安保問題を抜きにしては解決できないのではないかと思える。そうだとすれば、根本的な問題として憲法問題をやり過ごすことはできないと思う。
 さて、毎週日経日曜版に連載されている瀬戸内寂聴さんのエッセイ、昨日付「奇縁まんだら」に、作家武田泰淳・百合子夫妻と評論家・埴谷雄高との酒にまつわるからみが面白おかしく書かれている。武田夫妻は高校ラグビー部のチームメート・大島泰毅くんの叔父叔母に当たるので、メールで記事について知らせてあげたところ直ぐ返信があり、読んでいないという。それならと今日彼にその日経記事を郵送した。
 夫妻の作品はひとつも読んでいないので、コメントは書けないが、いつか大島くんが言っていたことを思い出す。武田泰淳は旧姓を「大島泰淳」といって、旧制浦和高から東大文学部に進んだが、官憲に検挙されて退学した。その後養子縁組で大島姓から僧侶の武田姓に変わった。大島家は名前に「泰」という字を付ける。大島くんもそうだが、父上、同じ高校ラグビー部の後輩で、東大ラグビー部で活躍した二人の弟さんの名前にも「泰」という字が付けられている。大島くんのメールによれば、夫妻の一人娘で写真家の花さんとはしばしば会っているとあった。いつか武田作品を読んでみようと思っている。
1086.5月4日(火) 鳩山首相、基地移設猛反対の中を沖縄入り
 鳩山首相が首相就任後初めて沖縄を訪れた。訪問の目的ははっきりしている。すでにメディア等で報道されているように、地元に対して普天間基地移設政府案の説明と説得である。政府は普天間基地施設を二つに分散して移設しようというのである。その候補案のひとつは辺野古海上の桟橋案であり、もうひとつは徳之島への施設移設である。
 まず、仲井真・沖縄県知事と稲嶺・名護市長に会って政府の素案を説明したが、案の定辺野古案は断固反対された。住民大会に出席した首相はここでは四面楚歌だった。地元は約束違反だと首相を強く責める。
 この次は東京で徳之島の3人の町長との話し合いが持たれるが、町長らは早くから米軍基地の受け入れに強く反対している。とても首相の思う通りには進まない。
 首相はこの問題を今月末までに解決すると言い続けているが、かねがね漏らしていた腹案があると言っていたのは、キャンプ・シュワーブの海上桟橋と徳之島に分ける分割案であると分った。昨年の総選挙で「海外移設、最低でも県外移設」は、いかなる成算があって首相の口をついて出たのかまったく分らない。この発言も首相周辺では、今頃になって選挙公約ではなく、首相が話の中で個人的に発言したものだと言い逃れを言っている。常識的にみてもこの発言は明らかに国民に公約として受け止められている。普天間基地移設は現時点では完全にデッドロックに乗り上げた。最早月末までに解決する糸口も可能性も絶望的となった。
 厳しい言い方かもしれないが、鳩山首相は政治家、ましてや一国の総理大臣としての資質に欠けるようだ。政策の理念と政策の実行をどういう段取りで、誰と話し合ってどういう風に作業を進めるべきかということについてまったく分らないようだ。これでよくも政治家をやっていられると思う。首相の取り巻きも悪い。日米問題、並びに日本の防衛問題に関する重要アイテムを抱えて首相自らが沖縄へ乗り込もうとしているにも拘わらず、深く関わるべき官房長官、外務大臣、防衛大臣らが誰ひとりとして首相に同行し、首相ひとりの話し合いに任せずに、内閣の連帯責任者として立ち会おうとしないのか。無責任の謗りを免れまい。
 それにしても、連立政権を組んでいる社民党や国民新党の対応、各閣僚らの行動や対応も首を傾げるところである。まるで反応なしの他人事扱いである。社民党の福島党首に至っては、今もって海外移設とわめきちらしている。これで鳩山首相は完全に袋小路に入り込んでしまった。この様子では、事態は解決のメドが立たず、こじれる一方である。
 この難局に当たって、鳩山政権はこれからどうやって問題を打開し解決へ導こうとしていくのか。
1087.5月5日(水) 文化大革命は中国にとってプラスだったか?
  NHKBS放送が開始されてから今年でちょうど20年になる。これを記念していくつかの作品が再放送されている。その中でも過去に放映されたドキュメンタリー作品で、各種の賞を受賞した意欲的な作品をアーカイブスとして再放送している。
  先日「民衆が語る中国激動の時代〜文化大革命を乗り越えて〜」が放映され録画しておいたが、今日やっと全部を観ることができた。何せ4回で4時間分の長編である。中国の文化大革命(196676)については、当然のことながら断片的には知っているが、自分の知識がかなり怪しいものだということも分った。
 文革中に中国首相のまま亡くなった周恩来、文革とともに国家主席の座から追放され、不遇の死を遂げた劉少奇、さらに改革解放で今日の中国経済の礎を築いたケ小平らの業績、そして国民が彼らに寄せていた気持ちを、多くの関係者へのインタビューを通じてこれほどリアルに表現しているのには感心した。劉少奇なぞは、反革命の張本人としてあまり良いイメージで伝えられていなかったが、このビデオでは、良識の人で国民のために奉仕して、挙句の果てに毛沢東に裏切られた悲運の人ということになっている。歴史の評価もそうだが、人物評価もどれだけ公平にできるか、難しいものだ。
  私の文革に対する理解も不充分ではあるが、文革にばかり気持ちが入り過ぎて、それ以前の1958年に始まった「大躍進政策」を見落としていた。実は毛沢東は中国全土の農村に「人民公社」制度を導入して失敗した「大躍進政策」を取り繕うため、四人組や紅衛兵を使って文化大革命を仕掛けたようだ。また中国共産党内での権力闘争、敢えて言えば劉少奇に集まりつつあった権力を、毛沢東は奪還しようとして反革命打倒と見せかけたクーデターを企てたとのストーリーは、迂闊ながらこれまで気がつかなかった。その点で言えば、大躍進政策も文化大革命も独裁者・毛沢東によって計画されたライバル追い落とし運動だったと思う。何も考えず、ひたすら四人組の指令に従った当時の若者が気の毒である。今も文革に対する評価は定まらず、あまり踏み込んでは「偉大な指導者・毛沢東主席」を傷つける恐れがあり、中国政府としては腫れ物に触るように扱っている歴史事件である。
  池上彰著「そうだったのか! 中国」(集英社刊)にもかなり詳しく書かれているので、もう少し腰を据えて読んでみたいと思っている。

1088.5月6日(木) ギリシャが危ない。
 先日EUIMFが、ギリシャに対して厳しい条件をつけたうえで約14兆円の緊急融資を決定したが、ギリシャ政府が呑んだ条件をギリシャ国民が納得せず、昨日激しいデモ騒動を引き起こし3人の死者を出した。
 テレビを観ると1999年とその翌年宿泊した「ホテル・グランドブリターニュ」脇の王宮前で騒ぎを起こしている。これから相当の負担をしなければならないギリシャ国民の心情も分らないわけではないが、労働者に対する甘い待遇と年間10兆円と言われる脱税がギリシャ財政赤字の最大の原因である。ギリシャの累積赤字は実に33兆円である。こんな待ったなしの破綻状態に追い込んだのは、ほかならぬギリシャ政府と政府のやり方に甘えた彼ら自身の責任でもある。自らまいた種ではないか。特に、今回の支援に対しては同じEU圏内諸国の中でもドイツが最後まで反対していた。仮にギリシャ政府が国民の要求に屈したら、EU諸国が黙ってはいないだろう。現在ギリシャの国債がEU諸国の銀行に買われているので、ギリシャが破産したら、連鎖して銀行が窮地に追い詰められ、また他の国に財政破綻の恐れが生じてくる。
  それでなくてもポルトガル、スペイン、アイスランド、イタリア辺りも怪しい雲行きとなってきた。前2国はすでに格付けが下げられている。さらにもう一段階下られるとの噂もある。ヨーロッパ全体に連鎖的な恐慌の不安が襲ってくるかも知れない。
 ソクラテス、アリストテレス、プラトンの3賢人を輩出した長い歴史と伝統を誇るお国柄であるが、甘い蜜ばかり吸っていたギリシャ丸もエーゲ海を漂流し始めた。荒波の中で沈没しないか心配になってきた。
 案の定今日の日経平均株価は、3月11日以来の大幅な下落となり、361円も下げて終値は10,695円にまで落ちた。NYを始め、各国の株式相場もみな大幅な下落である。漸く景気も立ち直りかけてきたと囁かれる中で、暗い話題が再び襲ってきそうである。
 さて、1日に開幕した上海万博の出足は上々の様子だったが、意外にも短期間ながら入場者数は予定していたほど伸びないようだ。その中で昨日になって北朝鮮館が突然閉館した。毎度周囲を煙に巻くのが得意な国ではあるが、これには流石に上海の万博事務局も呆気にとられているようだ。察するところ昨日北京入りした、金正日総書記のお世話に万博北朝鮮館のスタッフが借り出されたのではないかとの憶測が乱れ飛んでいる。いずれ真相は判明するだろうが、相も変わらず北朝鮮という国は人騒がせな国である。
1089.5月7日(金) 政治も経済も大荒れ
 政治も経済もここ一両日はメタメタである。政治とは普天間米軍基地移設問題である。今日普天間基地のヘリ部隊移設候補地に予定されている徳之島の3人の町長が首相官邸で鳩山首相と会見した。首相はこの席で公式に沖縄県民の負担軽減のために、徳之島に基地機能の一部を受け入れて欲しいと要請した。
  しかし、町長側が過日の島民集会の決議である受け入れ反対の声を踏まえて、首相に強く反対の意思を伝えた。これに対して首相は何度でも話し合いをしたいと持ちかけたが、町長側は何度やっても平行線であるとして再度の会見を断った。首相は沖縄へも再訪する意欲を示しているが、これもどうなるかわからない。これで普天間基地移設問題は完全に行き詰まった。これから政府はどんな手を繰り出すのか。まったく見通しが立たない。
 他方、経済面で急に暗雲が垂れ込めたのは、ギリシャへの緊急融資の付帯条件に反対する国民のデモにより、ギリシャ経済が不安視されたことによる。その結果昨日の世界的な株価低落の影響が今日も続き、2日連続して大幅下落である。東証日経平均株価も昨日の361円安を受けて、今日も331円の下落である。専門家もこの先どうなるのか予想がつかないと論評している。
 ギリシャ経済もこれからどうなるのかまったく見当がつかない。信用不安は当分納まる気配が見られない。さてさて難しい局面に立ち至ったものである。
 ところで、先月辺りから両眼ともしょぼつくことが多く、気になっていた。疲れやすいのと見にくいので、一度眼科に相談してみようと思っていたが、今日名医としてテレビにも出演した近くの高瀬眼科で診てもらった。結局眼鏡が両眼とも合っていなくて白内障が始まっているという。そしてドライアイでもあるということだった。パソコンをやり過ぎることも警戒した方がいいとアドバイスをいただき、PC用の眼鏡処方箋を作成してもらった。白内障の兆候が現れてきたのは、やはり年齢的な影響が表れてきたのではないかと考えている。近日日常生活用とPC用の二つの眼鏡を作ってもらおうと思っている。取り敢えず名医の診断を受けて、PC使用禁止の厳命はなく、気持ちは幾分落ち着いた。
1090.5月8日(土) 日系人強制収容所・記録映画鑑賞会
 小中陽太郎さんから記録映画鑑賞会を行うとご案内をいただいていたので、期待して日本基督教団中目黒教会へ</B>出かけた。映画は昨年すでに公開された「東洋宮武が覗いた時代」で、戦時中アメリカのマンザナ強制収容所に押し込められ自由を奪われた日系人の日常生活を写真家・宮武の目を通して赤裸々に描いたものである。中々の力作で随分考えさせられた。格別際立ったストーリー性があるわけではなく、宮武が撮った収容所内の写真を淡々と紹介しながら、収容所生活を送った日系人にインタビューする型式で、日系人世代間の考え方の違い、日系人二世が442部隊へ参加したいきさつ、アメリカ社会の日系人に対する偏見・印象等を紹介していた。その歴史的事実については、ある程度知ってはいたが、参加者からの話を通して新たに意外な事実も知らされた。
  16歳で実際に収容所に強制収容され、戦後まで収容所生活を送った今年84歳になる武間喜美さん、ペルーで生まれ、アメリカへ連行されそのまま収容所生活を送った77歳の大阪・池田市の坪井寿美子さん、今上天皇のご学友として知られる元共同通信記者・橋本明氏ほかがショート・スピーチを行った。南米に暮らしていた日系人がアメリカ国内の強制収容所に抑留されていたとは初めて知った。南米から連行された2,200名のうち、ペルーからは1,700名もの日系人が連れて来られたという。橋本氏は日系人二世が率先してアメリカ軍へ従軍した理由とか、アメリカ人の人種差別観、911テロ直後のイスラム系住民に対するアメリカ人の嫌悪的感情は真珠湾攻撃直後の在米日系人に対する気持ちと同じだと話された。
  それにもうひとつわれわれが誤解していることに気付かされた。これは収容所とは言え、内部で強制労働を科せられていたわけでなく、3食付で働かなくてもよく、看守も厳しい人が少なかったようで割合自由が許されていたような印象だ。その点でナチスのユダヤ人強制収容所とは大部様子が違っていたようで、実際収容されていた日系人がその点について正直に告白している。
  
ロスアンゼルス在住のすずきじゅんいち(鈴木潤一)監督が、奥さんで元女優の榊原るみさんと参加され、制作の意図や息子アーチー宮武を始めとする取材者について説明された。驚いたのは鈴木さんが母校湘南高の後輩だったことで、奇遇にお互いにびっくり。
 終了後、恵比寿ガーデンプレイスのオイスターバーで小宴となり、樋口裕一・多摩大教授、外務省密約裁判原告団のひとり・北岡和義さん、目黒区議・須藤甚一郎さんら普段から親しい人たちと、橋本明さん、鈴木さん夫妻ら15〜6名くらいがわいわい食事を楽しんだ。その後、中目黒へ戻り改めて一杯やってから帰宅した。中々有意義な一日であった。
 小中さんは奥さんともども教会でお世話役をやって、最後まで皆さんに気を遣いながらあれこれ面倒をみておられた。いつものことながら頭が下がる思いである。
1091.5月9日(日) イギリスの総選挙は日本にどんな影響を与えるか。
 6日投開票されたイギリス議会の総選挙で労働党に代わって保守党が第1党になった。
 しかし、定数議席(650)の過半数は獲得できず、保守党は第3党である自由民主党と連立政権へ向けて話し合いを行うことになった。二大政党の見本と見られていたイギリスで、今回のように第1党が過半数を獲得できないという結果は予想外で異例と見られている。
 日本人にとって理解され易いようでいて、案外分かりにくいイギリスの選挙制度は、今回のように総選挙で単独過半数を獲得した政党がない場合は、現職首相、つまり労働党政権のブラウン首相は自ら辞任するか、下院で不信任となるまで続投できることである。
 選挙前まで労働党は定数(646)の過半数324議席を超える355議席を占めていたため、単独で政権を担うことができた。しかし、今回の総選挙では過半数326議席に対して、第1党の保守党はそれに満たない306議席で過半数に20議席及ばなかった。第2党に落ちた労働党の如きは、ほぼ100議席も失ってしまった。第3党の自民党が大きく進出したという結果ではない。保守党は労働党が失った97議席に対して108議席も増やしたことである。しかし、それでも過半数は取れなかった。政党同士の駆け引きにより党首同士の会談が頻繁に行われるだろう。
  200年あまりに亘ってイギリスでは二大政党政治が続けられてきた。ほとんど保守党と労働党が争ってきた主導権争いが、今回また労働党から保守党の手へ移るのかどうか。最近の政権交代では、大きな節目となった1979年のサッチャー保守党政権の誕生、そして1997年のブレア労働党政権がドラスチックな印象として強く残っている。前者は「新自由主義」路線を歩み、後者は「第三の道」路線を進んだ。
 しばらくは新内閣誕生のための3党間の駆け引きが行われるだろう。
 山口二郎・北大教授は「今回のイギリス総選挙で二大政党の議席が単独過半数に達しなかったことは、二大政党の間で政権をキャッチボールするシステムが変容したことを意味する」と論評し、日本が1990年代から政治改革や政党再編のモデルとしてきたイギリス・モデルが揺らいだともコメントしている。
 昨年の総選挙で二大政党化しつつあった日本の政治も、民主党による政権交代が成った。しかも過半数に届かず連立政権を組んでいる状況は、何となく今度のイギリス新内閣を想像させて日英間の選挙結果に同じような現象が表れてきたという感じである。
  これで二大政党論が高まりつつある日本の政党政治の将来性にも、疑問符が付けられたとみるべきだろうか。
1092.5月10日(月) 上海万博は予定通り賑わっているか。
 ギリシャの金融不安から、世界中が2日連続して大幅に下落した株式相場を受け、各国政府や中央銀行が緊急対策に乗り出した。これには日本銀行も協調して融資することになったようである。ヨーロッパの中央銀行はユーロ加盟圏の国債を流通市場から買い入れる方針を明らかにした。これで少しは落ち着くのではないかと思う。今日の東証の日経平均株価は、前日比166円高となった。この傾向がいつまで続くのか、外科手術ではなく緊急手当てだけに、先行きは未だ不透明である。一方でアメリカの格付け会社がポルトガルを格下げする動きもある。
 ギリシャの危機状況が、ポルトガルとスペインの財政不安の噂を一層煽っている。両国とも噂を打ち消すのに懸命のようである。特にそれを打ち消す人物、ポルトガル首相の名前が、あの哲学者ソクラテスと同じというのが面白い。哲学者の母国はもっと危ないのだから。そのポルトガルの財政赤字はGDP9.4%で、スペインは11.2%である。相当危機的状況である。加えてスペインは失業率がことのほか高く20%近い。ギリシャの財政赤字は13.6%で、同じく危機を噂されるアイルランドが 14.3%と、いずれも苦しい台所事情にある。とりわけ、ポルトガルには、国内産業があまり発展せず十分整備されていないことが、余計火のないところに煙が立つ状況へ追い込んでいる。
 それにしても、日米欧は慌てふためいて、この信用不安を何とか収めるべく懸命の努力を傾けているが、伸びゆくアジアはあまり大きな影響を蒙っている様子がない。中国なぞはびくともしていない風情である。インドしかり、発展途上国のタイ辺りでもどこ吹く風というムードで、相変わらずバンコック市内で政府と反政府デモ隊が対立したままである。
 その中国であるが、一向に景気が下火に向かう様子は見えない。ところが、あれだけ大騒ぎした上海万博のニュースが、このところ大きく伝えられないのはなぜだろうか。開幕して今日は10日目であるが、これだけ関連ニュースが伝えられず鳴りを潜めているのは、入場者が予定ほど入らないからではないかとつい下衆の勘ぐりで考えてしまう。予定では毎日平均30万人の入場者を見込んでいたようだが、数日前の発表ではその半分の約15万人とのことだったので、ボルテージも下がったのだろうか。
 不思議なくらい各テレビ局で万博関連ニュースを報道しなくなったのは、他に何か原因があるのだろうか。
1093.5月12日(火) お遊びムードの参院選候補者選び
 夏の参議院選挙に各党の推薦を受け、有名スポーツ選手がずらり立候補するようだ。率直に言ってまたか、という感が拭えない。この傾向は年々強くなる一方である。推薦の経緯がはっきりしないが、各党とも努力しないで、名が通っているからと手軽に候補者選びを進めているように思えてならない。実に安易だと思う。
 どこかの政党関係者が、あらゆる階層の人びとの中から国会議員を選ぶことは、それなりに意義があると肯定的に述べていたが、少し意味が違うのではないか。これでは何でもありではないか。
 その中で民主党小沢幹事長立会いの下に記者会見した柔道の谷亮子選手のごときは、国会とともにロンドンオリンピックで金メダルを狙うという。個人的にいろいろ挑戦するのは大いに結構だが、「二兎を追うもの一兎も得ず」の類にならなければ良いがと些か気になる。
  だが、はっきり言ってこの挑戦はちょっとハードルが高くて無理ではないかと思う。今朝のテレビでも鳥越俊太郎キャスターが、参議院選挙を目指すならこの道一本に絞り、オリンピックは潔く諦めるべきだと言っていた。まあこれが常識的な意見ではないか。
 この他にも民主党では、体操の池谷幸雄、競輪の長塚智広、自民党から堀内恒夫、石井浩郎、現職ではあるがプロレスの神取忍、「たちあがれ日本」から中畑清が出馬する。本人たちはもうすっかりその気になっている。
 これからも有名人が候補者として名乗りを挙げるだろう。政治に本気になって取り組もうと普段から地道に勉強している人なら大いに結構であるが、政党の都合で立たされ、本人に勉学意欲がなく、議決の際に自党のための単なる一票になるのが仕事なら止めてもらいたい。
  こんな中でもう一人気になる人物がいる。真山勇一・調布市議会議員である。はっきり出馬を表明していないが、法衣の下に鎧がちょろちょろ見える。元日本テレビのキャスターとして知名度はかなり高いし、かなり能書きも言う。問題はその嘘つき体質にある。拙著「停年オヤジの海外武者修行」の中で実名は挙げなかったが、私が非難したのは正にこの人物に対してである。2001年の911テロ直後、取材が難しい時期に</B>テロ取材のために勇ましくワゴンカーでイスラマバードからペシャワールまで走り、案の定郊外の検問所で追い帰されるや、「ここはダメでした。ではもっと南方の検問所へ行って、そこからレポートします」などとぬけぬけと嘘っぱちを言い、ついにその後のレポートをしなかった。あのように視聴者が固唾を呑んで見守っているような場面で堂々とウソをつくような人物は、とても信用できない。
  各党ともこんな人物に引っかからないよう、選考には充分注意されたし。
1094.5月13日(水) 二つの選挙、イギリスとフィリッピン
 6日の投票で第1党を獲得したイギリス保守党のデビッド・キャメロン党首が、自由民主党と連立政権を組んで首相に就任することに決まった。連立政権は第2次大戦中のチャーチル首相率いる挙国一致内閣以来で、もちろん戦後初めてだそうである。
 今回の政変は新しいことづくめだ。まず、何と言っても新首相の43歳7ヶ月が若く、過去200年間で最年少の首相というから驚きである。連立を組む自民党のクレッグ党首も同じ 43歳である。尤も、ブレア元首相だって就任時はキャメロン氏より5ヶ月年長だっただけの43歳だったし、ロシアのメドベージェフ大統領は44歳、アメリカのオバマ大統領は48歳である。政治の世界は、若さが強力な武器になる。こうなるとわが鳩山由起夫首相の63歳はどんなものか。
  新政権は13年ぶりに政権を獲得したが、今後自民党との政策調整、実行面であつれきもあるだろうし、すべての面でスムーズにいくとは限らない。ブラウン前政権では積極財政政策を取り、市場介入が特徴だったが、今後は財政再建を積極的に推し進め、公務員給与の抑制などに着手するとみられている。破綻寸前のギリシャと同じ程度のGDPに対する財政赤字が12%台で、赤字解消にどんな手を打つのか手腕を問われるところである。
  一方、極東のフィリッピンでも大統領選挙が行われ、ベニグノ・アキノ氏が当選を確実にした。こちらの新大統領も50歳である。アキノ氏は、フィリッピンでは名門出で血筋が良い。父親の暗殺は余りにもショッキングだったが、夫の遺志を受け継いだ母親のコラソン・アキノ元大統領は、24年前に支援者が黄色いシャツを着て「ピープルパワー革命」を巻き起こした。
  この国は発展途上国にありがちの汚職、脱税、政治腐敗で国力が上がらず、内外の投資家も資金をつぎ込むのに二の足を踏んでいる。アキノ氏が思い切ってスローガンに掲げていた汚職追放ができるだろうか。政治腐敗が蔓延る土壌だけに、アキノ氏の実行力が問われる。さもないとアキノ家に対抗するマルコス家が虎視眈々と巻き返しを狙っている。マルコス夫人も齢80歳にして、議会への復帰を狙っているというから、執念は衰えないようだ。
1095.5月13日(木) 駒沢大学公開講座始まる。
 今日から駒沢大学・マスコミ研究所の本年度の公開講座が始まった。夏休みを挟んで12月中旬までのロングスパンだ。今年は木曜日2講座、水曜日1講座を受講する。水曜日の出版関係の講座は前後期で講師が交代するので、前期は受けずに後期の清田義昭講師の講義のみ受講することにした。
 今日の講座は、大泉克郎講師による「高度情報社会のメディア・リテラシー」と、室井敏男講師の「報道されないスポーツ界の光と影」である。大泉講師は、一昨年「現代メディアと報道論」を受け持った菱山郁朗講師が日本テレビ政治部長だった経歴と似ていて、同テレビ広報部長として活躍された。またその前は社会部の報道記者として現場で取材活動されていた。
  意外だったのは昨年までに比べて両講座とも駒沢大生の受講者が多く、大泉講座では社会人を交えて全部で<span lang=EN-US>40</span>人近い受講者の内30人近く学生がいた。学生にとってこの講座で履修単位は取得できないそうだが、それでもこれだけ多数の学生が熱心に聴講するというのは、やはりマス・メディアを目指す学生が多いということだろう。
 大泉講師はNTV「今日のできごと」などで真山勇一氏と一緒に仕事をしたことがあり、大分親しいと言っておられた。講師は夏の参院選で「みんなの党」から出馬する噂について、憲法に対する考えが「みんなの党」とは違うのではないかと真山氏と電話で話し合ったとも言っていた。
 だが、この真山氏については偶々一昨日のブログにも書いたように、嘘つきでどうも信用ならない。大泉講師は必ずしも早大の1年先輩でもある真山氏の性格や仕事ぶりを評価しているわけでもなさそうなので、次週の講義の際にでも真山氏について話をしてみようかと考えている。
 さて、沖縄普天間基地移設問題が暗礁に乗り上げてから、政府の本音が明らかになるにつれ、基地受け入れ反対を唱える沖縄と徳之島にも、いろいろ複雑な事情が浮かび上がりつつある。同じ徳之島内の3つの町でも、飛行場のある天城町と他の2町では対応の違いがあるようだ。受け入れ容認派の人たちの間でも、表立って賛成と言うわけにいかず、とりあえず声を出さないという人たちがいるようだ。政府の話は一応聞いておこうという町長もいる。本音や思惑は、微妙に違うようだ。
 すでに政府は公表した移設案をベースにワシントンで事務担当者間の交渉を始めたらしい。そこへ今日になって鳩山首相は、5月末決着先送りについて言及した。アメリカへの約束も、県外移設という国民への約束も守れなかった。心配なのは、今後話が進むにつれて、同じ地区内で賛成派と反対派の住民同士が対立することである。
 今日の朝日夕刊「素粒子」欄に、「新釈政界用語集」として「トラストミー」は「できません」「ごめんなさい」の意に変化、また「県外」は「大気圏外を指す。転じてどこでもいい」としてあった。これを皮肉と言わずして何と言う。
 朝刊各紙には大きな扱いでひとりの財界人の訃報が載っていた。住友不動産の中興の祖として33年間に亘って代表権を持ち、98歳まで取締役として君臨した安藤太郎氏が、百歳の天寿を全うして亡くなられたのである。そう言えば、古い話だが日本航空社内で‘SUCCESSOR’と陰口を言われ、父親の威光を背に大きな顔をして営業を担当していた尖った子息には、仕事上随分手古摺らされたなぁと思うと感慨一入である。
1096.5月14日(金) ビルマの民主化運動が心配だ。
 しばらくメディアで大きなニュースとして取り扱われなかったビルマだが、民主化運動の先頭に立っていたアウン・サン・スー・チーさんが自身代表だった「国民民主連盟」(NLD)を解散させたことで、民主化運動も行き場を失ってしまった。これはもちろん彼女が意図していたわけではなく、また望んでいたことではなかった。巧妙な軍政の罠にはまってしまったのだ。軍政のしたたかな戦術的呼びかけに導かれ、辿り着いたところで受け入れられない条件を提示され、拒否した結果がこうなってしまった。今後NLDの政党活動や党員の政治活動は違法とみなされ、摘発の対象になるという。NLD関係者は解党には必ずしも賛成ではなかったが、スー・チーさんが下した決断に従った。他の民主化運動関係者にとっても大きな痛手である。
  これからスー・チーさんは、軍事政権に対してどういう方策を取って支持者に約束した民主化運動を進めていくのだろうか。果たしてビルマに民主化は訪れるのか。国際世論はスー・チーさんたちの民主化運動を強くバックアップしているが、それでも国際社会で孤立している軍事政権が、結局そのまま体制を維持して国家を統治しているという理不尽はどうにかならないものだろうか。ここでも軍政をサポートしている中国の後ろ盾が民主化の妨げとなっている。
 先日映画鑑賞会で会った映画監督の瀬川正仁さんから著作を送ってこられた。「ビルマとミャンマーのあいだ」という書名だ。副題に「微笑みの国と軍事政権」と書かれている。確かに瀬川さんがビルマを訪れたことは聞いていた。そのビルマで訪れた都市も半端ではない。われわれがビルマを度々訪れていた時代、1970年代には日本軍所縁のミートキーナやラショオは訪問許可が出なかった。航空隊の人たちからは、もう一度訪れてみたいとよく言われたものである。それにも拘わらず、瀬川さんは満遍なく各地を訪れている。許可が簡単にもらえるようになったのか、民族間の対立がなくなったのか、読むのが楽しみになってきた。お返しに、すぐ私のビルマ旅行企画体験を綴った「現代海外武者修行のすすめ」をお送りした。
1097.5月15日(土) ホームページ開設3周年を迎える。
早いものでホームページを立ち上げ、このブログを書き始めてから今日でちょうど3年になる。何とかブログはほぼ1,100回を連続して書くことができた。幸いHPへのアクセス数も17,000回を数えた。大勢の人に見てもらっていると思うと責任感のようなものが湧いてくる。
 ブログはわれながらよくぞここまで書き続けてこられたものだと思う。これも偏に毎日思ったことや感じたことを書いてみたいとの気持ちが強く、疲れていてもその思いを押しやることができなかったからに他ならない。今後いつまで書き続けることができるか、またこの個人的な記録をどうすべきかも考える必要があると思っている。
 今日は沖縄返還が成って早や38年である。返還闘争で2度ばかりデモに参加したことがあるが、仕事に追われて心情的な反対運動に終ってしまい、自分の行動に必ずしも納得しているわけではない。60年安保闘争と併せ考えると沖縄返還は了としても、その後安保条約が沖縄の足かせになっていることは間違いない。
 また、今日は昭和7年に海軍青年将校が時の首相・犬養毅を殺害した5.15事件が起きた日でもある。今や2.26事件同様に5.15事件もメディアで報道されることはなく、日本史で学ばなければほとんどの人が知らない時代になってしまった。日本人は少々過去の歴史を軽視し、こだわりがなさ過ぎではないだろうか。
 さて、先日惜しまれつつ亡くなったが、今もニュース性をもってしばしば取り上げられている人気作家・井上ひさしさんが、日本ペンクラブ第14代会長に推されたのは2003年5月の総会だった。その直後会員に推薦されたことを、偶々スイス旅行中に妻からの電話で知った。その総会記録が掲載されている「 P.E.N.358号(2003年7月1日発行)をみてみると、井上新会長が話された就任挨拶が掲載されている。それによると会員になってから理事、常務理事、副会長と駆け上がってきたが、今まではサボっていたので、会長に選出されたのは天罰に違いなく、しばらくはよく働き、過去の埋め合わせをするようにとの天の裁きが下ったものだと「更生の弁」を述べている。相変わらず人を食ったようなスピーチで、井上流のユーモアとサビを利かせている。それでも、井上会長は連綿と受け継がれてきた反核反戦の気風を受け止め、その気風を若い人に渡すことを誓うと真面目なことも言っておられる。その時私を会員に推薦して下さった専務理事・小中陽太郎さんは、井上さんから副会長になって欲しいと誘われたようだが、2トップが揃って左翼系だと野次馬が騒ぐのではないかと、小中さんは辞退してヒラの理事に降りたと伺った。
 翌月の「P.E.N.359号には、早速井上会長の発案により始まった月例会のショート・スピーチの内容が紹介されている。皮切りに会長自身が話された「遅筆生活40年」は、遅筆になった言い訳と時代背景を伝えていて、これが結構面白い。世間には出ていない井上ワールドの真骨頂である。
 この号には、6月理事会で承認された新会員が写真入りで紹介されている。私は名前、住所、電話、生年月日の後に、「エッセイスト。ギリシャ政府観光局長賞エッセイ部門入賞。推薦者 阿刀田高、小中陽太郎」と紹介されているが、同時に会員となった同期生には、阿木耀子、菊間千乃、小池真理子、なかにし礼、藤田宣永氏ら錚々たるメンバーがいる。これらの著名人が揃って私同様に阿刀田高氏の推薦を受けているのが、偶然とはいえ不思議な気がする。4年後井上会長の後任として当時専務理事だった阿刀田氏が第15代会長に選出された。
 いずれにせよ、文学界の楽屋裏や、著名作家の裏話は、含み笑いするような感じで面白い。
1098.5月16日(日) 沖縄は天気晴朗ならず波高し
 妻の元実家の所有者である西本さんが、ニューヨークから帰国の挨拶にご家族揃って来宅された。3年半に亘ってニューヨーク・JETROに勤務されていたが、転勤によりこの3月にご主人はNYからJETRO岐阜貿易情報センター所長になられた。現在岐阜市に単身赴任されている。ご家族は近所のマンションを借りて自宅の賃貸契約が切れる8月を待っておられる。 NYへ行かれる直前に生まれたお嬢ちゃんが来年小学校入学とは、実に時の流れるのは早いものだと感慨深い。上の男の子が小学2年生で、これからも転勤があるだろうし、大変だろうなぁと思う。
 さて、相も変わらず実行力の乏しい鳩山内閣が、今やぼろぼろである。平野官房長官が、今日鹿児島で徳之島の米軍基地誘致派の有力者と個別に話し合いを持った。正面突破は無理と悟ったか、政府はサイド攻撃で切り崩しにかかってきた。町長、島民が挙って反対の中で、別のルートを通して説得しようとする、住民の気持ちを逆撫でするような手法はいかがなものか。町長も住民も裏切られたような気持ちで憤懣やる方ない。
 政府が早く決着をつけたいとの気持ちも分らないわけではないが、政府のやり方がどうも拙速で泥臭い。それに鳩山首相は住民感情が一番大事で、それを尊重すると散々言っておきながら、やることはまったく逆である。
  一方日米間で実務者協議を始めたようだが、普天間移設を実現するための政府案(キャンプ・シュワーブ杭打ち桟橋方式と一部徳之島移設)をその前提として話しているなら、その前提自体が壊れかけ暗礁に乗り上げている。それを敢えて解決の見通しの立たない政府案を強引に推し進め、一方でアメリカと政府案を話し合っているようだが、皮肉にもアメリカはすでに桟橋方式に否定的な見解を示しているようだ。では一体どうすれば良いのか。はっきり言ってこういう袋小路に入った以上今のところ打つ手なしというどうにもならない状況にある。
  今日沖縄普天間基地周辺を移設反対、基地撤去を唱える人びとが雨の中で、普天間基地の周囲を一人ひとりが手をつないで「人間の鎖」デモンストレーションを行った。沖縄県民、なかんずく基地周辺住民にとっては本土返還後、失望の連続だったという。長らく旧コザ市長を務められた大山朝常氏は、著書「沖縄独立宣言」の副題に「ヤマト(日本)は帰るべき祖国ではなかった」と付けられたという。沖縄県民にとって本土復帰は喜ぶべき結果にはならなかったのか。もしそれが本音だとすると沖縄返還に多少なりともかかわった私としてもやり切れない気持ちである。いつになったらすっきりした気分になれるのだろうか。
1099.517日(月) タイの対立・暴動はいつ収束するのか。
 タイの暴動は一向に止む気配がない。このところバンコック市内で対立している政府軍と反政府軍は一触即発の様相を呈している。連日死者も出て内戦のように泥沼になってきた。どうしてここまでもめるのか、理由はあるにせよ多くの人を巻き込んだ戦争ゴッコの感が否めない。もう少し時が経つと戒厳令が敷かれるかも知れない。ふと41年前のタイへの新婚旅行を思い出す。事前に計画を細かく決めずに、現地を訪れてから対応しようと考えていた旅行だったが、生憎マレーシア国内で戒厳令が敷かれ空港封鎖で予定のペナンへ行けなくなってしまった。咄嗟に格別の目的もなくチェンマイへ飛んだことがあった。
 その時バンコック市内で泊ったのが、ルンピニ公園前の「バンコック・タワー・ホテル」だった。その小さなホテルは今も順調に経営されているだろうか。毎朝散歩したルンピニ公園は今では軍が封鎖している。また、チェンマイも渡航延期令が出ているようだ。
 双方の対立はぬかるみにはまったようで、解決の見通しが立たない。割合温和で人懐っこいタイ人が、よくもここまで粘り強く闘うものだとその根気に感心もし呆れもする。だが、このままいつまでも対立し続けて、ゲバルトを繰り返しているとお互いに共倒れになるのではないか。
  実際外国人観光客はタイを訪れなくなり、経済活動は停止され、このままの状態が続けば、いずれ前代未聞の不況が訪れるだろう。不思議に思うことは、こういう場合普通は国連が調停に乗り出すのだが、今回の暴動にはその兆しもない。いつもトラブルの予兆があると、国連は特使を派遣して、場合によっては介入することもあるが、今回はその素振りすら見せない。多分、王家が仲介に乗り出すとでも考えているのだろう。確かに、かつては国内にデモらしい気配が見えると必ずと言ってもいいくらい、国民から敬愛されているプミポン国王がお出ましになり、一言話すと事態は丸く収まったという感じだった。その国王も今年齢83歳でお歳がお歳だけに、自らタフな調停に乗り出すということは考えられないのではないか。
 今日も銃弾のようなものが飛び交っている。1966年初めて訪れた外国が「微笑みの国」タイだったせいで、余計タイの動向が気にかかる。
1100.5月18日(火) JN協会総会と多摩美大開講で忙しい一日
 今日は二つの予定があった。ひとつは、NPO法人JAPAN NOW観光情報協会の定期総会であり、もうひとつは今年も受講することにした多摩美術大学の外国美術史講座の最初の聴講である。
 前者は昨年まで会場はプレスセンターで行ってきたが、今年は生憎会場を予約できなかったということで、松尾理事長が会長職を務めている海事センターが入っている海事会館で行われた。このNPOは、大手企業が会員に加わっていることもあり比較的財政は豊かで、決算書類はほとんど問題ない。決算書類はすべてシャンシャンシャンと承認された。理事の改選も予定通り同意され議事はすべて滞りなく承認された。一応理事のひとりである私も引き続き2年間理事を続けることになった。
  日本経済も今や不況で行き場がなく閉塞感から脱却できない。新たな産業の創出も難しい中で、幸い観光は政府の肝いりもあり、成長材料と期待されている。われわれ観光に関わるNPOも日本経済の期待を背負っていると受け止めて、観光振興について、広く執拗に発信していく必要があると思う。その意味でも今秋上梓予定の観光書が少しでも役立てば嬉しいことである。
 観光書「そこが知りたい 観光・都市・環境」については、同じ「観光」を分担する須田寛JR相談役から早くも原稿をいただいた。須田さんの新幹線に関する近著もいただいた。とにかく須田さんは原稿を書かれるのが早い。また、全体の構成として須田さんの文章より、私の文章を前に配置することを提言された。いずれ出版社を交えて話し合いをしようということになった。
 総会後の講演は、元国交省審議官・羽生次郎氏で「アメリカの高速鉄道計画の将来展望」とアップトゥデートな話題について話された。GW中に前原大臣とともにアメリカへ新幹線敷設採用の売り込みに行った後に、ベトナムへも売り込みに行かれた。その折の現地の対応と印象について語られた。国と民間が一体となったトップセールスの印象として、アメリカの高速鉄道計画を獲得できる可能性は、極めて厳しく楽観できないと話された。そもそもライバルに比べて売り込みのスタートが遅いということと、ライバルの仏独社に比べて、売り込みがパッケージとして一体化されていないことがネックらしい。つまり、ブラジルへの売り込みの例でも分る通り、商社と車両メーカーが協力してセールスをかけているが、肝心の運営会社であるJR社が噛んでいないことに弱点があると指摘しておられた。更に後発だった中国が今や強敵になったと言っておられた。
 後者については、懇親会を途中で失礼して、一旦帰宅してから妻に車で多摩美大へ送ってもらい開講時間ぎりぎりに飛び込んだ。
 今日は、「都市を美術とともに歩く」シリーズの第1回「アメリカ・ニューヨークを歩く」と題して、笠原恵実子講師が担当されたが、ユニークな授業で中々面白かった。これまでにない教え方だった。副題が付いていて「アーティストの移住、そのbefore/afte」と、アーティストの溜り場であるマンハッタン南部、SOHO地区とブルックリンの芸術家の制作意欲の表し方が面白かった。笠原講師は、多摩美大彫刻科大学院を卒業して彫刻家として活動し、長年ブルックリンに居住しながら制作活動を続けているので、その経験談、中でも彫刻家としての視点が興味を惹いた。廃屋に近いアパートが、芸術家が住むことによって地価が上がり、ハイクラスな地域に変貌していくという見方は面白かった。次回以降他の講師の話も楽しみである。
1101.5月19日(水) 口蹄疫が拡大する一方
ギリシャの信用不安がヨーロッパ全域に不安感を煽って、ユーロ価格は下落する一方である。
  タイでは政府軍が反政府タクシン派のデモ隊を強制排除に乗り出した。随分荒っぽいやり方で催眠弾を発射したり、威嚇射撃をしてデモ隊に退去を呼びかけている。午後になってデモ隊の代表者が集会を終了すると発表し、代表者が警察に出頭した。警察も全面的に鎮圧したと発表した。ところが、デモ隊の中には、デモ中止の決定に不満を持つ者が多く、中心街の建物に火炎瓶などを投げつけて暴れまわっている。今夜になって市内に外出禁止令が出された。
  韓国では3月に不審な火災を起こして沈没した哨戒艦の原因究明がなされているが、北朝鮮の魚雷攻撃によって爆発し沈没したとの説が日増しに強まっている。国際調査団による原因解明のための調査をほぼ終了し、明日20日に韓国政府から調査結果の正式な発表がある。
  いずれも国際的にあまり芳しくないニュースばかりである。
  国内に眼を向けると沖縄普天間移設問題がデッドロックに乗り上げているが、ここ数日の間に宮崎県で発生した口蹄疫による家畜への影響がどんどん広がりをみせて、牧畜業者にとって厳しい家畜殺処分の範囲が大きく広がった。今日発表された殺処分13万頭とこれまでの処分を併せると、25万頭になった。
  ある業者が語っていたが、地域的に伝染地域内にあるが、自分の飼っている家畜は口蹄疫にかかっていない。出荷はできず、殺処分の指図を待っているが、この間6000頭の豚のエサ代が毎日75万円相当かかる。今全頭を処分すると再生産には2年以上の時間が必要で、その間の生活保障、再開のための費用等を考えると辛いと言っておられた。
  政府は補償金を出すと言っているが、その場の補償金程度ではとても元の生活を取り戻すことはできないとがっかりしながら話していた。初動の調査発表が遅れたのではないかとの声もあるが、今は伝染を防ぎ、一日も早く影響を断ち切るという決断と実行が求められる。
  それにしても暗いニュースばかりで、どうもすっきりしない。
1102.5月20日(木) 韓国哨戒艦沈没は北朝鮮による魚雷と結論
 夕刊各紙のトップ記事はすべて、3月の韓国哨戒艦沈没は北朝鮮の魚雷によるものとの韓国政府のコメント掲載である。
  今日発表された国際軍民合同調査団の報告書は、韓国哨戒艦の沈没を北朝鮮製の魚雷によるものと結論づけた。かねてから予想されていた通りで、やはりとの印象しかないが、韓国政府の必ず原因を突き止め、犯人を厳しく処罰するとの強い姿勢が国際専門家による慎重な調査となった。韓国を含む5カ国の調査団は回収された証拠物品、魚雷の部品などを科学的に調査し、分析した。
 北朝鮮による攻撃と結論づけられた根拠は、次の理由による。@回収された魚雷のスクリューの部品は、北朝鮮の魚雷の設計図と大きさや形が合致する。A魚雷後部に発見されたハングルの表記が、韓国が持っている別の北朝鮮製の魚雷の表記方法と一致する。B北朝鮮潜水艦2隻が、哨戒艦沈没の数日前に母港を出て、沈没後に帰還している。
 これらの具体的な根拠を否定し、反論するのは至難であろう。これに対して北朝鮮はいつもの通り、早速でっち上げで捏造と真っ向から反発した。更に韓国が制裁措置に踏み切れば、全面戦争を含む強硬措置をとると威嚇的なコメントを発表する一方で、北が派遣する検閲団に物証を見せるよう要求した。
 どうも穏やかでない。調査に加わったアメリカは、朝鮮戦争の休戦協定違反だとして「平和への挑戦」と強く非難した。いつものろのろしている鳩山首相も、「韓国を強く支持する。北朝鮮の行動は許し難い」とのコメントを発表した。更に国連安保理で北朝鮮への制裁決議案が提起された場合、日本政府も支持すると述べた。
 問題は中国である。毎度きれいごとや、利己的な発言しかしない国としては、今度ばかりは表立って北朝鮮を擁護する言動はしにくいのではないだろうか。遠回しだが、中国政府はこんな発言をしている。「この事件を適切に処理し、朝鮮半島の平和と安定を維持することが、関係各国の人民の共通の願いであり、関係各国の利益に合致する」。自国の利益に絡む事案だと必要以上に動くくせに、不利な立場になると俄然他人事である。これでよくも、他国の交渉に干渉できるなぁとその神経の図太さには脱帽である。
 さて、韓国艦沈没は北朝鮮にとって極めて不利であり、今後当分の間国際的にも厄介な問題となるだろう。
1103.5月21日(金) 周囲は嫌なニュースばっかり
 ギリシャの信用不安がNY経由で東京証券市場を直撃した。今日の日経平均株価は前日比 245円安で、終値は年初来最安値9,784円となり、今年初めて1万円を下回った。NYダウも前日比376$安と急落して今年最大の下げ幅となった。
 不景気による影響は各方面に表れている。今春卒業した大学生の就職内定率は前年より3.9%低い91.8%で、比較できる1997年以降で過去2番目に低かった。高校生は前年より1.6%低い91.6%だった。男女の差はそれほどないので、全般的に景気が悪いことがこの事態をもたらしている。われわれが就職した1963年は好況だったので、あまり深刻に捉えていなかった。不況の嵐に晒されている今の学生が気の毒でならない。
 昨日韓国政府の哨戒艦沈没が北朝鮮の魚雷によるものだとの発表は世界中に衝撃を与えている。韓国は北朝鮮の検閲団派遣の受け入れを拒否し、国連安保理事会での制裁協議の要請を検討中である。同時にフランス外相へ安保理での協力を要請した。アメリカ政府は、北朝鮮を「テロ支援国家」再指定を検討することを考えている。わが鳩山首相は日米韓間でメッセージを検討すると言明した。そこへ今日来日したアメリカのクリントン国務長官は、岡田外相との会談で北朝鮮を強く非難した。多くの証拠を挙げられ、これだけ責められれば、反省し陳謝するのが常識的な対応の筈であるが、北朝鮮という国家は、外見上は土地を持ち、国民を抱えて政治機構を備えているが、国家の体を成していない。国内外に国としての責任を果たさず、外国に迷惑ばかりかけている。
 今日は昨日に比べて各国の北非難のステートメントだけで、大きな動きは出なかったが、週明けから少しずつ北朝鮮に対する非難が世界中からわっと浴びせられるのではないか。
 どこを向いても今日もあまりグッド・ニュースが聞かれない。今日大相撲夏場所13日目で横綱・白鵬が全勝で二連覇を決めた。横綱・朝青龍が去った後の大関陣がだらしない。
1104.5月22日(土) ある旅行会社社長の言葉
 今日デパートの眼鏡売り場で、先日眼科で処方箋を書いてもらった、日常用とPC用の二つの眼鏡を注文した。その後家具売り場でリビングルームのソファーを購入した。いずれもカードで支払おうとした。ところが、家具売り場の支払い中係員にカード会社から本人確認の電話が入り、私自身がカード会社係員と直接話をする破目になった。カード支払いでこんなことは初めてだが、その理由として考えられるのは、一定額以上の眼鏡代金をカードで支払って、時間を置かずに再び高い買い物をしたので、カード会社は本人以外の人物が使用したのではないかと早手回しに確認を求めたからではないかと思う。銀行口座には充分残金があるし、変だなぁとは思ったが、最近の振込み詐欺や類似の事件発生もあり、カード会社が別人使用によるものではないかと疑うのも無理はないとも感じた。すぐ住所や生年月日を照合して、カード会社にはすぐ分ってもらえたが、とんだ一件だった。
 さて、今朝の朝日日曜版「フロント・ランナー」に阪急交通社・生井一郎社長が紹介されていた。8年ほど大学の後輩に当たるが、同じ旅行業界人としての考え方には同意できるところが多い。ただ、店舗展開に消極的な考え方には疑問を感じる。旅行というのは、未知の土地で未知の人と触れ合うことであり、従って人の接触が旅の原点である。その点で旅行申込者にとって最初の接点の場である店舗を、コスト上の理由から減らしていくという姿勢は素直には納得できない。
 しかし、現場を大事にする、旅行は感性である、という個人的な捉え方は理解できる。なるほどと思ったのは、旅行業経営に関する理解の仕方だった。
 生井社長は、旅行業は利潤が少ないと言っている。それは正しい。ひとつ頷けたのは、旅行業は在庫管理を必要としないので、メーカーのような余分のコストがかからないという点に触れていたことである。更に付け加えるなら、旅行業では現金取引が多く、そのほとんどは前受金と後払いという旅行業者にとって有利な商取引が多いということである。それらが相俟って旅行業を何とか成り立たせている。
 今秋JN協会発行予定の共著「そこが知りたい 観光・都市・環境」で、今観光について執筆しているが、一般にはあまり理解されないであろう旅行業経営の特殊性とか業態などについて、少し突っ込んで書いてみようと考えている。
1105.5月23日(日) 民主党政権、基地移設の「裏切り」行為
 春のお彼岸にお墓参りができなかったので、長男家族とともに先祖と妻の実家の墓参りをした。先に私自身の生前墓もある中野の宝仙寺へお参りして、昼食後に多摩墓地を訪れた。今日の天候は雨模様とのことだったが、昨日多摩墓地のお墓周りの清掃をお願いしておいたので、断るわけにもいかず、予定通り出かけた。5月下旬というのに、肌寒い陽気には些か面食らった。
 しかし、雨の中にも拘らず多摩墓地は、いつもお世話になっている石材店には二つほど法事のような集まりがあり、少々忙しなかった。
 やるべきことをやらないと気分的にもすっきりしないが、漸く先祖の供養も済ませてほっとしたところである。それにしても、昼過ぎからずっと長男夫婦と孫3人と行動を伴にして、正直のところやや疲れた。夕食も近所で済ませて彼らが9時過ぎに帰った後は、夫婦揃ってしばし虚脱状態となった。
 さて、行き詰まった沖縄普天間基地移設問題が動き始めた。今日鳩山首相は沖縄を訪れ、仲井真知事と会い移設案の概要を説明した。県民から県内移設は認められないという強い反対の声が上がる中で、14年前に受け入れを容認した辺野古移設原案へ回帰する辺野古移設修正案を何とか受け入れてもらうより方法がなくなったのである。
 しかし、「海外移設、最低でも県外移設」を約束していた鳩山首相としては、当初の移設案に若干手を加える程度にしか、智恵は出てこない。結局多少の修正案でお茶を濁すしか方法がなくなった。だが、ここに大きな問題がある。政府はアメリカと実務者協議を進めていたが、漸くアメリカ側の了解を得られそうな感触を得たようだ。それを今日沖縄にぶつけたようである。
 鳩山首相はアメリカの了解云々という前に、まず沖縄県民の了解を得てからアメリカとの交渉を進めると繰り返し言明していた。然るに今政府が行っている交渉内容は、沖縄県民の猛反発を喰らい、早々に尻尾を巻いて逃げ出したものではないか。順序が逆なのである。これが首相の言う沖縄県民の意思を尊重するということなのか。これでは完全に県民に対する裏切りである。
 政府はアメリカのお墨付きを得てから、沖縄が絶対反対する案を手土産付きで強引に押し付けようとしているわけである。民主党政権発足時に、これからはアメリカと対等の立場で言うべきことは言うと大見得を切ったが、何のことはない。対等どころかこれ以上の卑屈な態度はないのではないか。民主党政権はアメリカにお伺いを立て、「ご許可」をいただいたので、これを沖縄県民に押し付けるという不道徳な裏切り行為を行おうとしている。これではこの先落としどころをどこに見つけようとしているのか分らない。
1106.5月24日(月) 鳩山首相は職を辞するべきだ。
 鳩山首相が昨日沖縄を訪れ、普天間基地移設について辺野古移設案を提示して沖縄県知事を始め沖縄県民を怒らせた。今日の新聞・テレビでも鳩山首相はボロクソに言われている。14年前に首相就任3ヶ月でクリントン大統領から普天間基地返還の約束を取り付けた橋本龍太郎元首相が、沖縄へ15回も訪れたのに比べて、間際になってやっと訪れた鳩山首相は本気度が大分違うと、橋本内閣で経企庁長官を務めた田中秀征氏が述べていた。
 今日の朝日夕刊「素粒子」欄にこういうことが書かれている。
  「怒、怒、怒、怒。沖縄の人々が掲げた1文字にこもる思い。普天間移設、『最低でも県外』という自らの言を忘れたのか、鳩山首相よ。沖縄より米国との協議が大切なのか、日本政府よ。『地元の理解が不可欠』ではなかったのか、米政府よ。本当に努力をしてきたか、本土に住む私たちよ。沖縄の痛みを自分の痛みと感じる努力を。怒、怒、怒、怒。この文字が努、努、努、努に見えてくる」。
  公衆の面前で総理大臣が頭を下げ、お詫びとも言い訳とも知れない言葉を漏らし、県庁入りのルートを変えれば、抗議する県民から「逃げるな!」と言われ、一国の最高指導者としては何とも情けなく恥ずかしく哀れな姿だった。これほどミゼラブルな立場に追い込まれたのは、まさに首相自身に責任があるが、はっきり言ってもうこれ以上わが国の政治を鳩山由起夫に任せることはできない。政治家としての政治理念も明確なポリシーも持ち合わせていない。ことを為すのに右往左往して決断力がない。もう好い加減に辞めてもらいたい。とても総理大臣の職を続けるのは無理だ。鳩山首相の政治手法を見ているとこれ以上職を続けると、日本を一層救い難い国へ引きずりこんでしまうのではないかと心配になる。あまりにも程度が低い。まったく情けない。
  海外のニュースでは、やはり気がかりだった韓国哨戒艦沈没事件に関して、李明博・韓国大統領が毅然として北朝鮮に制裁宣言をした。北朝鮮船舶の韓国領海の通過禁止、南北交流・交易の原則中断などの経済制裁のほかに国連安保理での協議を呼びかけると明らかにした。このほかにも韓国が拡声器で北体制の批判を行うことなどを語ったが、即座に北は応戦すると反論した。一気に臨戦態勢が盛り上がってきた。韓国国内でも緊張感が高まってきた。嫌な予感がする。
  小学校5年生時に朝鮮戦争が勃発した。その当時切実感はそれほどなかったが、映画館へ行く度に観るニュースは、朝鮮戦争だった。また2度と朝鮮半島に戦争の危険がやってこないことを祈るばかりである。
1107.5月25日(火) 今秋国際ペン東京大会開催
 日本ペンクラブの第54回総会がいつも通り東京會舘で開かれた。今年は国際ペン大会が9月に開かれるので、阿刀田高会長を始め役員が話すのは、もっぱらその話題ばかりである。決算書類は賛成多数で承認された。
  国際ペン東京大会は26年前に井上靖会長の下で開催されて以来26年ぶり3回目のことである。2回目の時はやはり会員だった父も参加した。9月23日から 30日まで京王プラザホテルと早稲田大で開催されるが、スケジュールの概要について担当理事の吉岡忍氏が説明された。運営経費は中々厳しいと言っておられ、浅田次郎氏のごときは、出版社の門前で腹を掻っ切ってでも資金を分捕ってくるなどと威勢のよい発言をしていた。外国からは中国の高行健氏のようなノーベル賞受賞作家、カナダ人作家マーガレット・アドウッド女史、キャスター小宮悦子さんらも憧れているアメリカ人作家サラ・パレッキー女史らも参加されるようだ。
 総会後のパーティに先立ち、先日亡くなられた前会長・井上ひさし氏を追悼して黙祷した。会食中西木正明氏に、過日営業休止宣言をしたインターネット新聞社がなぜ休業に追い込まれたかを尋ねてみた。西木氏は、インターネット新聞代表だった竹内謙氏と早大探検部部員同士で親しいので聞いてみたわけである。西木氏によると理由は2つあり、そのひとつは大きなスポンサーが広告を取り止めたことであり、もうひとつはライバル間の競争が激しくなったことだそうである。西木氏は竹内氏がそう簡単にへこたれる人間ではないので、近い将来必ず復活させてくれるでしょうと話してくれた。いつか竹内氏本人に会って直接聞いてみたいが、この荒波に負けずに再び立ち上がって欲しいと願っている。
 他に何人かの会員とも立ち話をしたが、みんな異口同音に鳩山首相の言動に対して批判的だった。その鳩山内閣の閣僚で、社民党党首の福島瑞穂・消費者少子化担当相が今日沖縄を訪れ、仲井真県知事と会談した。協力して沖縄に基地を増やさないために頑張ろうと話し合ったと記者団に語った。知事も有難いとは感じただろうが、相当面食らっただろう。政府がすでに腹を決めた以上、いくら福島党首が反対を叫んでもその可能性は限りなく小さい。福島氏は社民党党首かも知れないが、閣僚でありながら、堂々閣内不統一発言をしている。これに対して首相は、閣僚の行動としていかがなものか、と言っただけであり、社民党党首としての行動ならやむを得ないとまで言っている。鳩山首相のこの厳しさのない発言に、「正体見たり」が汲み取れる。このずぶずぶ内閣ではもうまったく当てにできない。一刻も早く次ぎの首相を決めるべきだと思う。
1108.5月26日(水) 福島社民党党首は基地移設問題でどう動くのか。
 昨日沖縄を訪れ、仲井真弘多・県知事と会見した福島瑞穂・社民党党首が、普天間基地が移設されることに関して断固反対の考えを語った。特に「辺野古」という地名をはっきりさせたことを問題視している。鳩山内閣閣僚の間で充分な根回しをせずに、社民党が反対している辺野古への移設を前提にした政府案をアメリカに伝え、アメリカからもほぼ同意の感触を得たことが、大臣の職にある福島氏を焦らせたようだ。
 しかし、このプロセスを見ているとまず鳩山首相にリーダーシップが欠けている。次に閣内で大事なアイテムを話し合うことをしなかった。また、大臣の要職にあるにも拘わらず福島氏は社民党党首として個人的な行動に走った。まだ、いろいろ問題点があるが、このドサクサに国民は呆れている。沖縄県民は当然怒っている。
 この閣内不統一の行動に対して、閣僚は口々に福島氏に対して不満を述べているが、さりとて閣内収束に誰ひとりとして行動を起こそうとはしない。自民党からは社民党を連立から切ればよいのではないかと茶々を入れられる始末だ。
 それにしても、思っている以上にアメリカとの話し合いは早かった。同意を得られる腹づもりがあったと思うが、それでもアメリカは釘を刺すことを忘れなかった。移設担保である住民の了解を得ることである。この住民の了解が一番難しい。日米両国で話をどんどん進めて、結局そこだけが未解決のままということが一番心配である。
 さて、最近とかく評判の良からぬ日本相撲協会がまた新たな問題を抱えてしまった。先の夏場所中に大関琴光喜が野球賭博をやっていたと週刊誌に報道され、警察に事情聴取された。これが大きく広がるかと思いきや、別のスキャンダルが表面化した。
 昨夏の名古屋場所中に暴力団が砂被り席で相撲を観戦していたことが分った。この席は維持会員と称する、相撲協会に一定額以上の寄付をした後援者用のもので、取り持った二人の親方が理事会で事情を聞かれるようだ。以前から興行を行う相撲協会と暴力団とは結びつき易いと言われていた。今回の切符手配の背景には、どうやら獄中の親分にシャバの幹部がテレビを通してメッセージを伝える意味があったらしい。
 相撲協会もこのところの不祥事続きにうんざりしているかも知れない。しかし、元はと言えば相撲協会のゆるふんによる身から出た錆である。協会には親方を始めとする全力士への指導がどうも徹底していないようだ。財団法人である日本相撲協会に、こう度々スキャンダルを起こされるのでは、監督官庁・文科省としても何らかの規制や、立ち入り検査、指導等を行わざるを得ないのではないか。
1109.5月27日(木) 社民党は連立政権から離脱するのか。
昨日から福島瑞穂・社民党党首は政府の閣僚でありながら、普天間基地移設問題で政府の対応に対して不満を述べている。日米合意案の中に移設先を「辺野古」と記入し、閣内では記入せずにぼかすことについてダブル・スタンダードだと強く異議を唱えている。福島党首は社民党役員会でも辺野古と明記されるなら署名しないと述べ、あくまで反対を押し通すと主張した。こうなると、政府案がまとまらない。連立政権離脱や大臣辞任、さらには大臣罷免の話も聞かれる。
 偶々今日鳩山首相の呼びかけで全国知事会が開かれた。ここでも首相自身と首相の手法に対して、厳しい声が浴びせられた。首相を支持する声は極めて薄い。松沢神奈川県知事の如きは、首相のやり方を厳しく批判して、挙句の果てに首相を名指して「無能」という言葉まで使った。連立政権も、民主党も、全国知事会もまったく智恵を出せない。総選挙時に謳った「普天間基地移設⇒海外移設、最低でも県外移設」のスローガンが最初から怪しく、やはり頓挫したのだ。はっきり言って最初から実現の可能性は少なかった。それを煽るだけ煽った結果が、自分たちの首を絞めることになってしまった。最初からボタンを掛け違えていたわけである。自民党議員は、元の自民党案に戻っただけではないかとこき下ろしている。
  明日には、政府内で福島党首をどう処遇するかの結論が出るようだ。それにしても、相変わらず鳩山首相に国権の最高指導者としてのリーダーシップが見られない。まったく嫌になる。
  さて、もうひとつ国外の大事件である韓国哨戒鑑沈没事件の影響は、朝鮮半島を一触即発の危険な状態に追い込んでいる。韓国内も緊張感が高まっているようで、この時期になぜ北朝鮮が敢えてこのような暴挙に出たのか、いろいろ憶測を呼んでいる。専門家は、最近のデノミ失敗により国家経済が破綻状況になった北朝鮮の上層部が国民の批判の目を逸らすために危機感を煽ったという説、また金正日の後継者問題が原因とも指摘する。1983年のラングーン事件、87年の大韓航空機墜落事件の際も国内に問題を抱えていた。だが、ふたつの事件の直後にラングーンと同じ社会主義国家だった東ドイツを訪れたが、そこには特別不穏な空気はなかった。今度も何もなければ良いがと願う。
1110.5月28日(金) ビルマのドキュメント映画と福島大臣罷免
 ビルマ軍事政権下で自由を抑圧されているビルマ人の生活と、軍政に対して民主化を求め行動を起こした僧侶と市民のデモ風景を赤裸々に描いたドキュメンタリー・フィルムが公開されている。
 先日報道番組で鳥越俊太郎キャスターが、この映画について解説され、ぜひ多くの人に観て欲しいと推薦しておられた。ビルマとビルマ人については、人一倍懐かしさとともに拘りがあり、ぜひこの映画「ビルマVJ」を観てみたいと思っていた。副題は「消された革命」と付けられていた。VJとはビデオ・ジャーナリストを意味している。
  今日渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で観賞したが、小さな劇場で座席は150席ほどで観客は僅か十数名程度だった。確かに多くのジャーナリストが激賞するように、スクリーンからは危機感と臨場感が充分伝わってくる。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門へノミネートされただけあって、ストーリー性はないが、ビルマ軍事政権による非民主化政策と国民の民主化デモの説得力と訴求力は、手法や放送機材が未成熟な中で相当な効果を上げている。特に2007年9月、予想を遥かに上回る一般市民の声援を受け、僧侶と一般市民10万人からなるデモ行進が実現した。仮に市民が武器を持っていたら内戦状態にまで突き進んだと思われるほどの盛り上がりを見せた。
 僧侶が政治には関わらず普段から尊敬されているビルマで、あれだけ大勢の僧侶が一丸となって行進し、市民が路上やビルの窓から拍手したり、隊列に加わるような勇気ある行動と光景は、軍政側を一時ひやりとさせたのではないか。
 結局軍治安部隊による武器を使った強制排除により、無抵抗のデモ隊は壊滅させられてしまったが、その精神と残り火は確実に次なる人々に伝えられる筈である。実際その映像は「ビルマ民主の声」から、オスロの本部へ送られ、そこで編集されたニュースは世界中へ伝えられた。映像は時々刻々と小型ハンディ・カメラで撮影され送られてくる画像とともにナレーションが厳しい状況を伝えてくれる。ビルマ軍政が何と言おうと世界はビルマ政府の強圧政治と民主化を求める市民の姿を知ってしまったのである。
 市街風景とビルマ人が歩いている懐かしいシーンを見ていると、40年前初めてビルマを訪れた当時の姿が走馬灯のように甦ってくる。特にシュエタゴン・パゴダ境内へ通じる参道の階段から上がったパゴダの広間に集結した人々の姿は、ノスタルジアが感じられて、あの温和なビルマ人がこんな暴動の中へ巻き込まれている現状には、同情を禁じ得ない。
 ほとんど隠し撮りによる映像のため、必ずしも鮮明な画像ではないが、日本人ジャーナリスト長井健司さんが、ビルマ軍の発砲により路上に倒れて死亡する映像も写っている。
 プロのカメラマンではなく、アマチュアカメラマンの域を出ない普通の市民が、危険を冒しながら撮影した映像を集めた珍しいドキュメント手法であるが、反ってそのリアリティは想像以上に伝えられたのではないかと思っている。
 現実的には、相も変わらずビルマ政府は頑固に民主化を押さえつけようとしている。世界中が監視している中で、果たしていつまでこの非民主化路線を継続していけるのだろうか。軍政幹部にも早く目覚めてほしいものである。
 随分衝撃的な映画だったが、とても良かった。ビルマの現実をより多くの人々に知ってもらうためにもぜひ多くの人々に観てもらいたい映画である。早速知人、友人にメールで紹介したところ、直ちに3人から反応があり観てみたいという返信をもらった。
 夜のニュースによれば、政府は普天間基地移設に関する日米共同声明で、辺野古を明記したと発表した。その他にも米軍訓練地の徳之島への一部移転も併せて発表された。地元は辺野古も、徳之島も反対している。これを敢えて正面突破することになった。更に消費者・少子化担当相の福島瑞穂・社民党党首は、今日も辺野古明記なら署名しないと主張し、最後まで政府案に歩み寄れず、鳩山首相は福島大臣を罷免することになった。社民党としては、本音を腹に収めたままで納得できない案を受け入れてまでして政府案に同意はできなかった。それはかつての村山連立政権で党是を抑えて他党に配慮した結果、社民党らしさを欠いてその後の凋落の道を辿った思い出したくない過去があるからである。
 それにしても当分喧しいことだろう。
1111.5月29日(土) 外交密約裁判の西山太吉氏から話を聞く。
 いやぁ、今日は素晴らしい話を沢山伺った。話されたのは、外務省外交文書密約事件で38年間に亘り日本政府を相手に戦ってきた、元毎日新聞記者・西山太吉氏である。裁判自体はすでに今年4月東京地裁から勝訴の判決を得て、改めて多くの人が知るところとなったが、国としてのメンツだろうか、負け戦を覚悟で国が控訴したのでまだ完全決着とはなっていない。しかし、本件に関する限りこれまでの経緯と証拠、関係者の証言により判決を覆すのはほとんど不可能に近い。
 朝日新聞社会部 OB十日会が主催した「『ジャーナリズムのいま』を問う市民講座」第1回の講演者として話題の西山さんが、「沖縄密約の今日的な意味」と題して話された。場所は有楽町のラクチョウビル内の成城学園のクラブである。会としてもうひとり西山裁判の原告団のひとり、柴田鉄治・元朝日新聞記者が前段の話をされた。柴田氏がまだ海外特派員として活躍していたころ、海外便りをよく読んだものである。
  今年79歳になられる西山さんは、血色も良くテーブルに拳を叩きながら熱弁を揮われた。不正を許せない熱血漢の面目躍如である。お二人とも異口同音に協調されたのは、国民が罪を犯せば法によって国に罰せられるが、国が罪を犯しても罰せられないのはおかしいと仰ったことである。国は国民にウソをついてはならないという戒めには、それをやると安保条約の変質とか、外交密約という問題につながると警告された。60年安保闘争に参加した立場を考えると、もう少し現在の安保について改めて勉強してみることが必要だと反省させられた。
  印象的で眼から鱗のような話を随分なされた。西山さんが特に強調していたのは、「安保条約の中身は60年安保、70年安保、沖縄返還、2006年日米合意へと時間の経過とともにまるで変わってしまった」ということである。そして、55年体制以降、外務・防衛官僚によって日本の外交・防衛は進められ、大きな厚い壁ができて、外部の力では風穴を開けることすらできなくなっていると危機感を述べられた。今度の勝訴もやっとドリルで穴を開けた程度だという。話題の抑止力なんかとても当てにはできない。
  2006年日米合意の下に作成されたロードマップは、当時のラムズフェルド国防長官と守屋武昌・防衛事務次官の間で調整のうえ作られて磐石に固められており、そう簡単に作り直したり、破棄することはできない。今度の普天間基地移設の原案回帰もこのロードマップに沿っている。
  新たに認識させられたのは、鳩山首相の祖父・一郎元首相とその後の石橋湛山・元首相は、ともに党人派であり、真剣にアメリカに対して日本のあるべき立場を主張し、政治理念を行動に移した。アメリカが危惧する中で、鳩山一郎は日ソ国交回復を果たし、石橋湛山は日中国交回復を目指した。アメリカに言うべきことも主張した。サンフランシスコ平和条約締結後は、沖縄の施政権を返還して6年後に米陸軍の撤退を、さらに6年後に空・海軍も日本からの撤退を要求していた。
  残念ながら石橋は健康上の理由で僅か3ヶ月の短命内閣に終わり、実績は残せなかったが、長く首相の座に居たら、その後の日本は大分変わっただろう。
  しかし、その後を継いだ岸信介以降の首相は官僚であり、自分たちの領域と権益を頑として守り、安保条約を法制化して固定化した。党人派なら自主独立、中立、反戦、反核、反基地を貫き自主外交路線を歩むのに対して異なる保守の道を歩んだ。官僚が法制化して固定化した安保には、まやかしが多く、事前協議には核配置、旅団配備、直接行動などが盛られているが、実際その通り協議できる保証はない。沖縄返還に当たって「核抜き・本土並み」を標榜したが、実際にはアメリカの要望はすべて飲んでいる。非核三原則にしても、「3」原則ではなく、「2.5」原則で、陸上はともかく日本の軍港に核は持ち込まれている。
  他に大きな問題として沖縄に駐留する米軍にかかる経費はすべて日本が負担している。今や在日米軍の経費の75%は日本が負担している。また、世界に点在する在外米軍の駐留費用の50%は日本が負担している。世界で呆れられているこういう事実を外務・防衛官僚は一切国民に知らせようとしない。
  今回の辺野古移設案は、2006年の日米合意のロードマップに基づいていて、アメリカはロードマップに戻って来るのは当然との受け止め方であった。民主党政権発足時に「CHANGE」の精神で、真剣に検討し、精査してアメリカと激論を交わして変更させる気持ちがなくては、この堂々巡りも致し方ない。
  政治を監視するのは、マス・メディアだと言っておられた。若いジャーナリストの間には、優秀な人も大勢いる。むしろ彼らを殺してしまうのは、上に立つ人が問題だと言っておられたが、何もこれはメディアに限ったことではない。
  ほかにも参考になる有益な話を沢山お話いただいた。数は少ないが、世間にはこういう気骨のある立派な人もいる。
  とにかく今日一日は有意義な話を聞くことができて、充実した気持ちでいっぱいである。西山さんに感謝!感謝! 併せて真面目でタイムリーな企画を計画された主催者の労に対しても感謝の気持ちである。
1112.5月30日(日) 存在感がなくてもいざとなればやってのける国
 国連本部で4週間に亘って核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれているが、非核国と保有国の間で中々意見調整がつかず、5年前の前回同様何らの結論もまとまらないのではないかと懸念されていた。それが、土壇場で最終文書の合意にこぎつけた。完璧ではないにせよ、一応開催した成果はあったわけである。
 そこには、議長を務めたカバクチュラン・フィリッピン国連大使が自身の体調不良を押して最終文書採択のために奔走した涙ぐましい努力があったようだ。今国際社会における核問題の問題児は、イランと北朝鮮である。しかし、本当に恐れられている核保有国はイスラエルで、今回もイスラエルとイランをどう説得して核軍縮と核不拡散の方向へ両国を誘導するかということが課題だった。議長は、イラン説得のためにブラジルとトルコ首脳に電話で協力を頼み、同時にアメリカが対イラン追加制裁決議草案でロシアと、中国と合意したことが大きい。
  イスラエル説得に当たっては、エジプトがアメリカを説得して譲歩を引き出し、一方の立役者となった。
  日本国内では普天間基地移設問題の陰に隠れて、それほど注目されていなかったが、被爆地の広島や長崎では前回開催の際は明るい展望が見えなかっただけに、今回の合意を素直に評価している。しかし、それにしても日本の存在感は薄い。本来なら唯一の被爆国を切り札に、核の怖さを一番アピールできる立場にいるはずである。
  翻ってここ数日間の民主党と鳩山首相の言動を見ていると、膠着状態にあって外交交渉のテクニックと決意を示したフィリッピンとエジプトの足元にも及ばない。経済力が弱く、普段はその存在感が薄くても、いざとなれば国際問題では他国のために一肌脱ぐ心意気と周囲の信頼感が素晴らしい。
  日本外交の秘密主義と官僚機構は、このグローバル化の時代には時代遅れではないか。それに、現状で諸外国と向き合ってタフな外交交渉をやれる人材が果たしてどれだけいるだろうか。これは教育問題であるかも知れないが、小手先ではなく、全体像を描いてことを処する智恵と行動力を培った人間を育成するには、現在のわが国の機構ではだめなのかも?
1113.5月31日(月) 民主党はどう動く? 鳩山首相辞任か? 
 福島社民党党首が閣僚を罷免され、昨日は社民党が全国幹事長会議で連立内閣から離脱することを決定した。朝日新聞が実施した直近の世論調査では、内閣支持率が下り坂を転げ落ちている。遂に支持率は半月間で4%も下落する 17%となった。同時に不支持率は前回の64%から70%に上がった。原因は最近の政策実行のぶれと普天間基地移設のどたばたにつきる。
 鳩山首相は昨日済州島で日中韓首脳会議に出席し、今日は首相官邸で中国の恩家宝首相と会談した。その後首相は職を辞める気はないと辞任論をきっぱり否定した。しかし、このまま首相の座に留まっていて大丈夫だろうか。党内でも若手を中心に鳩山辞職論が浮上しているようだし、首相自身が小沢幹事長、輿石参議院議員会長を交えて善後策を講じているらしい。徐々に強くなる風圧にひょっとすると一両日中に続投か辞任か、動きが出てくるかも知れない。 
  政治がダメになったと思ったら気象もおかしくなってきた。このところ気温アップダウンが激しく、ここ2日間は肌寒かった。今日も昼間は少し暖かかったが、夜に入って幾分冷えてきた。
 これは日本だけでなく、ビルマの気候も同じようだ。記録的な猛暑に見舞われて最高気温を記録して、暑さによる死者が増えているほかにも、水不足が深刻のようだ。今月12日には、ラングーンで42.5℃になり、42年ぶりの記録だそうだ。それが連日というのだから、ほとんど冷房設備のない住民には堪らない。以前マンダレーで48℃という気温の中を歩いたことがあるが、とても長く外にはいられる気温ではなかった。どうも地球が少しずつおかしくなっているのではないだろうか。
 さて、先日来依頼されていた短い評伝を書き上げ、ある程度任せてもらって印刷・製本を一気にやってしまった。家族とご親戚に配るということから部数も十数部だけだったので、敢えて印刷業者には頼まなかった。
 幸いパソコンの個人講師から、紙面割付の仕方、表紙の全面印刷のやり方等を教えてもらっていたので、印刷までは苦にならない。案外気を遣うのは印刷用紙で、表紙用・文章用の紙質から用紙の厚さ等を決めるのが案外面倒で、特に両面印刷用の用紙でも表と裏では紙質が異なっていたり、それを同質のものを探したり、思わぬ気苦労もあった。最後に製本テープで仕上げたが、中々見映えのする冊子ができ上がったと思う。これを依頼主に早速宅急便で送った。依頼主が手にしてみて何と仰るか分らないが、一仕事終えてほっとした。
 今日嬉しいニュースがひとつあった。東京六大学最終週の早慶戦で母校慶応が宿敵・早稲田を破り、11シーズンぶり・32回目の優勝を飾った。よっしゃ!