
2009年9月
841.9月1日(火)民主党内に早くも内紛のきざし?
民主党が天下を取ったので、国会運営を始め役所の運営もこれまでより難しくなったようだ。国会の日程は再来週辺りに特別国会を召集して首班指名する予定だ。選挙に敗れた自民党では総裁である麻生首相が辞意を表明したにも関わらず、総裁任期が今月28日に切れるということから、総裁をその日に決定する。従ってその前の特別国会において、辞意を表明している麻生太郎を次の総理大臣候補として首班指名する、奇妙な事態になりかねない。だが、果たして全自民党員が国会の首班指名の投票用紙に「麻生太郎」という名前を書くのだろうか。流石に記者会見でもその点について質問されたが、麻生首相は一向意に介していないようだった。違った意味で「大物」である。
目新しいところでは、民主党が官僚主導を是正するために、国会議員を各省庁へ派遣するということを考えているが、それ以前に新たに「国家戦略局」と称する官僚を抑えるための組織を、各省庁とは独立した形で立ち上げる。各省庁が従来のように予算を財務省に上げるのではなく、「国家戦略局」で予算の方針と概略を決め、それを省庁へ下ろすということを検討しているようだ。予算分捕り合戦を防ぐ意味では大変効果的であるとは思う。
昨日になって八木哲郎・知研会長から一杯やりましょうとの話があり、新宿へ出かけた。高校の先輩で知研の杉沢達也監査役、久恒啓一理事長を交えて食事をした。民主党の勝利が嬉しくて一杯やる気になったと言っておられた。以前から小沢一郎の能力を高く評価して、一度民主党に政権を取らせてやりたいと言っておられただけに、その気持ちも理解できる。自民党の古い体質が嫌われ、新しい政党が国政を担うことになったので、確かに気持ちは高揚してこれまでのように政権は変らず、議員数がプラス・マイナスだけの変化よりは大分いい。期待は大きいながらも、民主党は寄り合い所帯だけに壊れ易い。そんな懸念材料がある中でスタート間もない民主党内に、早くも小沢前代表を取り巻くグループから不満の声が聞かれるという。その不協和音が、そのまま内紛へ発展しなければよいが・・・。
842.9月2日(水)64年前の今日、降伏文書に署名
昨日は第二次世界大戦開戦記念日に当る。以来70年が経った。9月1日ドイツ軍がポーランドへ進軍して戦闘は開始された。独ソ不可侵条約を結んでいたソ連も呼応するように、17日にポーランドへ侵攻した。昨日ポーランドではグダニスク郊外で記念式典が行われ、ドイツからメルケル首相、ロシアからはプーチン首相も出席した。ポーランドでは今も反ロ感情が根強く、プーチン首相は和解の旅と考えられたが、相変わらずバルト3国や東欧諸国ではアンチ・ロシアの空気が強く、流石のプーチンも言い訳と反論に終始している。
9月1日は、中国では革命60周年記念日だった。また、カダフィ大佐指導のリビアも革命40周年記念日となった。ロシア南部の北オセチア共和国で学童180人を含む330人以上が犠牲となった、ベスラン学校占拠人質事件が発生したのも5年前の9月1日である。どうも9月1日という日は、穏やかな日ではないようである。日本では86年前関東大震災が起こった。
翻って大東亜戦争は64年前の今日ミズーリー号上で降伏文書の調印により、公式に終戦となった。日本の終戦記念日は決まりきったように「8月15日」となっているが、アメリカでは調印文書に署名された今日9月2日が終戦であると言われている。
さて、政権移行に向けて着々手が打たれ、鳩山政権発足へむけた準備が進められているが、人事問題が水面下で蠢いているようである。一方で、先日鳩山代表のニューヨーク・タイムスに発表された内容がアメリカ国内で問題になっている。文藝春秋に掲載された寄稿文の要旨が掲載され、それは必ずしも鳩山氏の意図するようには伝わっていないようだが、ニューヨーク・タイムス以外のメジャー紙が取り上げ、厄介なことになりそうだ。特に、アメリカ主導の海上自衛隊によるインド洋海上給油を取り上げるかどうかという点と、沖縄の米軍基地移転問題は、アメリカから強い要請があるのではないかと極めて心配である。アメリカ政府は日本の新政権の対米姿勢が極めて気になるところで、どういう動きになるだろうと考えていた矢先に、今夜11時にオバマ大統領と鳩山代表が早速電話会談をするようになったらしい。鳩山氏はどういう対応をされるのか。どんな話し合いがなされるのか、結果に興味がある。
843.9月3日(木)懐かしいアマルフィ
昨夕急遽行われたオバマ米大統領と鳩山民主党代表との電話会談について、アメリカ・ホワイトハウスは「オバマ大統領と鳩山氏はアメリカと日本との強固な同盟関係の重要性と、より効果的な協力関係を構築する考えを強調した」と説明した。騒いでいる割りにはたいした受け止め方ではなく、そこにはアメリカ国内の騒ぎ過ぎによる日本からの反動を警戒してコメントを控え目に抑えた印象である。これに対して民主党側からは何のコメントもない。鳩山論文が物議を醸している時だけに、日本、或いは民主党としてはっきりと鳩山論文の真意についてコメントすべきだったのではないか。今後もこんな意思表示のない対応をするようだと、アメリカから組みし易しと舐められてしまうのではないかと少々心配である。民主党はアメリカと対等な立場、交渉と言っているが、これでは対等どころかアメリカから言われっ放しになってしまう。アメリカは民主党のいう沖縄の米軍普天間飛行場の移設計画の見直しについては、その考えはないとはっきり言っている。このアメリカの出方に対して、民主党はどう出るのか? 基地の見直しをアメリカに迫ると言っていたのは、民主党の選挙前の公約ではないのか。このまま日米問題について従来通り自民党的対応なら、政権交代の意味がない。さあ、民主党どうする!
アマルフィという世界遺産にも登録された素晴らしい海岸がイタリア中部のティラニア海に面してある。ここを舞台に東宝が「アマルフィ・女神の報酬」という映画を製作した。海沿いの風景が素晴らしく、ぜひその映画を見てみたいものだと思っていたが、明日で上映も終るというので、慌てて「渋東シネタワー」で観てみた。アマルフィとローマが舞台であるが、折角の機会なので、もう少しアマルフィの海岸とナポリからソレントへ向かう道路から分岐してティラニア海沿いに南下するポタジーノのようなカラーフルな街と絶壁に沿った街道を映像に映し出して欲しかった。あの素晴らしい海岸沿いの風景は、他のビーチにはないものだ。映画のストーリーは新保祐一の原作になるもので、ミステリーじみているが、もうすこし絶景を紹介して欲しいというのが本音だった。それにしてもこれほど綺麗なドライブラインは世界にもそうざらにはない。まあ、堪能したわけではないが、ある程度アマルフィの光景をストーリーそっちのけで楽しむことはできた。
その後定例の「知の現場」プロジェクトの会合に出席したが、秋に発行予定なのでスケジュール的には大分追い詰められてきた。
844.9月4日(金)民主党はどんな手を打つのか?
総選挙の総決算はまだ済んだわけではないが、人事面では各党とも大体形ができつつあるようだ。民主党は幹事長に豪腕・小沢一郎を据えるようで小沢本人もその気でいる。官房長官候補としては、今まで影武者を務めていた平野博文に決まったようだ。自民党と同じく完敗だった公明党は、落選した太田昭宏委員長、北側一雄書記長が退き、委員長の後釜には山口那津男が就任するようだ。
問題は民主党がマニフェストに盛った公約を果たして実現できるかどうかである。一般会計予算は頭に入っているが、国の正確な総予算が207兆円だということは不勉強で掴んでいなかったが、その予算の中で民主党が無駄を省くと言っている。この中から子ども手当てに9兆円をひねり出す。さらに新しい独自の政策費用をどう引き出すのか。さらに、来年度の概算要求を白紙に戻す方針であり、今年度の補正予算も見直すらしい。
その中で国土交通省は群馬県八ツ場ダムの本体工事の入札を延期すると発表した。民主党はこのダムの建設中止を主張していたので、その意向を受けて役所はしばし民主党の出方を様子見している。延期するということと、中止とではまったく異なる。延期は宙ぶらりんの状態を意味する。工事業者にとっては金が入るのか、それとも金は入らないのかという不安定な経営をいつまでも続けることになる。一方、建設中止ということになると、これまでやってきた工事にかかった費用はまったく無駄になる。特に、建設反対派の人々が、説得に応じてやっと賛成へ回ったばかりという裏の事情もあるようだから、それを考えると、果たして中止できるのかという現実問題がある。しかも、このダムの完成によって恩恵を受けるとされる関係地方自治体では、建設中止にした場合負担した経費に対する返還を要求することも考えている。早速石原慎太郎・東京都知事が返還を請求すると言い出した。さあ、民主党はこれからどういう手を打つのか。
論理的にも実践的にも民主党の現実的なお手並みを一日も早く拝見したいものである。
845.9月5日(土)日露戦争の英雄・杉野兵曹長は生きていた?
新しい民主党政権の内閣の姿が徐々に浮かび上がってきた。新しい組織である「国家戦略局」を統括する担当大臣を副総理格で菅直人副代表、外務大臣は私も適任と考えている岡田克也・幹事長が任命されるようだ。力のある実務者が揃った感じで、ほかに経済産業大臣と農林水産大臣、現在大忙しの厚生労働大臣、日米安保が論点になりそうな防衛大臣を誰が務めるのか、興味のあるところである。
今日は幕張小学校のクラス会が千葉市内の中華料理店「珊珊」で行われた。先日同級生椎名研二くんの実弟で冒険作家・椎名誠氏から、研二くんが昨年亡くなったと連絡してもらったので、参加者に伝えた。椎名くんもしばらくクラス会に出席しなかったので、誠氏に問い合わせたところ、訃報を聞く破目になってしまった。ところが、クラス会で聞いてみるとみんな彼が亡くなったことはすでに知っていた。研二くんの奥さんから連絡があったようだ。今日のクラス会は他のクラスの同級生も参加したので、14名も来られたが、初めて会った人が4人もいた。同じ年代なので話が食い違うようなことはないが、話題になるのは孫と介護だ。やはり最も気になる事柄であることは間違いない。
先日八王子の近藤幸一さんからいただいたコピーが、日露戦争で軍神・廣瀬武夫中佐とともに戦死したはずの杉野孫七兵曹長が実は生きていたという地方水交会雑誌の記事だった。本当のところは何せ105年前の古い記録であるので、確かめようがないが、もしそれが事実とするなら日露戦史も塗り替えられるかも知れない。しかし、話題としては興味があったので、桜田啓著「広瀬武夫」(PHP研究所発行)を読んでみた。副題として「旅順に散った海のサムライ」とあった。少し調べてエッセイにでも書いてみようと思う。
杉野が乗船艦の撃沈で行方不明になったことにより、廣瀬中佐ら乗員の退却が遅れ、結果的に廣瀬中佐を戦死に至らしめた。その杉野は乗船艦とともに沈没して海の藻屑となったと言い伝えられている。それが生きていたとなると、英雄伝が覆される。フィリッピンの陸軍特攻隊にも生き残った軍神の逸話がいくつもある。その生き残ったというより、死に損なった兵隊さんは、戦時中祖国へ帰ることが許されなかったし、親までが戦死したはずの愛しい息子が帰国することを拒んだという。
杉野兵曹長も日本に妻と3人の子どもがありながら、英雄となったがために、また「杉野はいずこ」と歌にまで歌われたために、親から帰るなと説得されて帰りがたく、満州の地で結婚して子を成して満州で果てたそうである。しかも、あの甘粕大尉が平成8年時点で存命だった日本兵に杉野を紹介したという。どこまで信じてよいのか分からないが、実際にこういう話が起きる可能性はある。
846.9月6日(日)NHK・ETV特集「金大中〜激動の生涯」
16日に特別国会で首班指名が行われ、ポスト麻生の首相が決まる。民主党の鳩山由紀夫代表が首相の座に座るのはほぼ確定的である。今気にかかるのは、前政権が名前だけをそのまま引きずって大臣を務めているが、仕事らしいことは何もやっていないのではないかと思っている。日米関係がギクシャクしかねないのに、現在の中曽根外相は動こうとの姿勢をまったく見せない。鳩山民主党代表が書いた論文が火種だと考えて、次の民主党外相に後事を託すということで何の手も打たないのだろうか。これでは、外務大臣として無為無策、怠慢である。つまりこの国際的に緊張感が高まっている時に、日本は外交をしばらくお休みするということだ。同じことは、新型インフルエンザが流行しているのに、舛添厚労相もさぼるということになる。もう少し緊張感を持って、テキパキ決めるべきことは決めて、作業を進めないと国家事業がすべて停滞することになるのではないか。この点で政治家のセンスはどうもおかしいし、この点について何も言わないマス・メディアもおかしいと思う。
夜10時からNHK・ETV特集が「金大中・肉声でたどる激動の生涯」と題するテーマで8月に亡くなった金大中・韓国元大統領の生涯を振り返っていた。時の政府から弾圧を受けながら抵抗運動を続けた、今どき珍しいほど気骨のある政治家だった。過去に何度もETV特集で取り上げられた金大中は、それだけ焦点を当てるにふさわしい人物だったことが、今日の特集を観ていてもよく分かった。
拉致事件、光州事件、死刑宣告、アメリカ亡命、自宅軟禁、大統領当選、対北朝鮮太陽政策、ノーベル平和賞受賞、宿敵・金泳三元大統領との確執と和解等々、金大中に関する話題には事欠かない。波乱に富んだ人生は、死亡時にもかなり報道され、紹介された。今日の番組では、多くの衝撃的なビデオが映し出されたが、特徴的だったのはインタビューに応える金大中から熱く伝わってきたのは、揺るがぬ信念だった。現在日韓両国間には友情と信頼が生まれ、以前に比較して遥かに両国民の間には信頼、友情、融和がある。それは金大中の功績によるところが大きい。
日韓平和条約を締結した時の外相だった河野洋平氏が、日本が靖国神社の他に国の追悼施設を作ると応えたことに対して、まだ国論が一致していないためにその動きが進まないと述べた。それに対して金大中は、両国政府間で約束したことだから、待っているとの胸元に匕首を突きつけるような言い方はしなかったと応え、むしろ河野氏は日本の対応が遅れていることを恥ずかしく思うというようなコメントを述べていた。
小中陽太郎さんも自宅軟禁中に突撃取材しているので、出演するかと思っていたら、取材者として画面に現れたのは、今もてはやされている姜尚中・東大教授だった。
847.9月7日(月)いつアフガン大統領は決まるのか。
先月20日に行われたアフガニスタンの大統領選挙は、まだ当分結果が出ない。次の大統領が決められない状態にある。やっと74%の投票所の開票結果が公表された段階である。日本や先進諸国で即日開票、遅くも投票翌日午前中には結果が分かるが、この国のように政治や治安が不安定だとそうはいかない。
不正投票があったり、タリバンの妨害があったり、投票自体が正しく行われたのか疑問であるが、現時点では現職のカルザイ氏が得票率48%を上回っており、よほどのことがない限り、このままカルザイ氏の再選という結果に落ち着くのではないだろうか。
折りも折りベルリンで会談したドイツのメルケル首相とイギリスのブラウン首相が、悪化するアフガンの治安問題を話し合う国際会議を年内に開催することで意見が一致した。アメリカ主導のやり方とアフガン政府の治安面での自立が行き詰まって犠牲者が益々増えてきた。アフガン北部でドイツ軍の要請による空爆で民間人が多数犠牲になった事件も起きた。フランス人兵士の犠牲者も増大し、仏アンテナ2でも若い兵士の戦死を伝えていた。国内テロは相変わらず激しくなる一方である。治安はガタガタである。
この混乱状態をどう収束させるのか、今までそのための国際会議が開かれなかったことがむしろ不思議である。
シアトル・マリナースのイチローが、メジャー・リーグ参加以来2000本安打を達成した。9年目でこぎつけたのは、立派なものである。いつもちょっと小生意気な発言をするが、いちいちご尤もなので感心するだけである。それにしても日頃の努力を怠らないところがえらい。
横浜在住の長老正木清幸さんからいくつかの月刊誌コピーを送ってこられた。先日来横浜市の歴史教科書採択問題、或いは田母神論文でご意見を仰っていたが、今日送っていただいた題材は右傾化した識者の討論内容と論文をどう思うか、愚見を聞かせて欲しいとのことである。かなりのボリュームだが、じっくり読んでご納得いただけるご返事をしなければいけないと思っている。
848.9月8日(火)日本の製造業、中国内の販売が日本を抜く。
このところ毎日駒沢公園までウォーキングをやっているが、昨日は前日までの無理が祟ったのか、ちょっと両膝が痛んだので中止した。その休養のおかげか痛みが消えたので、今日は駒沢大学近くまで歩く約5,000歩の自己認定Aコースをトライしてみた。格別違和感を感じなかったので、明日以降も順調に続けられればいい。
景気が一向に良くならないが、鳩山政権は徐々に水面下で動き出している。その中で、民主党、社民党、国民新党の3党合意の話し合いが、それぞれの思惑があって少々ギクシャクしているが、どうやら「沖縄基地見直し」という点で合意に至ったようだ。
しかし、民主党はこれを本当にアメリカに対して主張し、実行できるのか。確かに、沖縄側から要請された普天間基地移転を含めた「沖縄米軍基地の見直し」は一旦了解した鳩山代表だが、選挙公約でもあるマニフェストでは、そのような文言が盛り込まれなかった。単に日米対等の関係へ持っていくというだけの表現に過ぎない。少しずつ後ずさりしている感じであり、果たして民主党主導の3党連立政権が、大命題である「沖縄米軍基地の見直し」を本当にやり遂げる気があるのかどうか、注目したい。
今朝の日経新聞を見て驚いた。トップ記事として取り上げたられたのは、日本メーカーの国内販売額が、中国国内におけるそれを下回ったとの報告である。特に、日産の1〜7月国内販売額が中国国内販売額より少額だったことである。ホンダはかなり中国国内の販売額が肉薄した。コマツは4〜6月建機売上高で日中逆転により中国における売上高が日本のそれを上回った。製造業でなくてもいずれ徐々にこの日中逆転現象が当たり前になっていくのだろうか。
日本の少子高齢化がこれからどんどん進むとすれば、国内の消費が期待できず、日本企業は海外へ進出せざるを得ない。結果的に日本製品は海外で消費される傾向が助長されるということになる。それにしても、生々しい数字で示されると納得せざるを得ないが、これまでの日本経済がそういうパターンでなかっただけに、こういう現象を受け止めるのは何とも気が重い。
849.9月9日(水) 日本の教育投資は28カ国中27位
経済開発協力機構(OECD)のデータによると2006年の各国のGDPに占める教育機関への公的支出(3.3%)が、日本は28カ国中下から2番目の27位ということが分かった。すべての国の調査でなく、比較的豊かな国の中だから、極端に悪いということではないが、欧米先進国の中では教育後進国と言われても抗弁しようがない。
民主党は「OECD先進国並みの教員配置を目指し、少人数学級を推進する」と提唱している。日本の小学校1クラスの平均生徒数は28.2人で、OECD平均の21.4人に比べるとかなりの開きがある。中学校に至っては日本の33.2人に対して、OECD平均は23.9人である。
それでもわれわれが小中のころ、1学級が40人以上だったことを考えれば、教育環境は確実に良くなっていることは間違いない。
実際過去に20回ほど文部省海外教員派遣団とともに欧米の教育施設を訪問して感じたのは、アメリカの初等学校の生徒数の少ないことが際立っていたことである。ほとんどの小学校で1クラス20人以下だった記憶がある。施設も充実していたし、教員の数も多かったし、先生が子どもの教育に情熱を持っているなあと感じられたものである。PTAの協力ぶりも献身的で心の篭った教育を施している印象が強かった。
その他にも2つほど強く印象に残ったのは、まず先生が徹底的に子ども好きだということだった。もちろん日本の先生だって、子どもが好きではないということではなく、アメリカやヨーロッパの先生の子ども好きに関しては、われわれの常識や感覚からすると並外れていた。それに地域のボランティアの協力ぶりも徹底していた。
教育的支出とか、投資というものは金額だけでは計れない。地道な地域ぐるみの協力があって初めて効果が出てくるものであると思う。日本の教育が問題なのは、投資額もさることながら、教育委員会のあり方、教育の本質、先生の質、市民の協力度合い、等がきちんとしていないことで、そうでなければ教育の成果は上がらない。
今度の調査では、他国に比べて財源が充分使われていないということであるが、その積み上げはもちろん重視すべきである。
しかし、身の回りの細かい教育的配慮がそれ以上に重要であることは言うまでもないことである。
850.9月10日(木) 民主党政権は、アメリカに自己主張できるか。
ぐずぐずしていた3党連立政権合意が漸く決まった。3党がいくつかの点で政策合意するわけではあるが、それぞれ各党がすべて平等ということではない。衆議院308議席の民主党と僅か7議席の社民党、3議席の国民新党では、そもそも重みが違うし、平等に取り扱ったら国民の意思を無為にしかねない。その裏には民主党が参議院で単独過半数を得ていないという事情がある。社民党福島党首、国民新党亀井代表がそれぞれ次の内閣で閣僚となることが内定した。
ところで、今月末来日するオバマ大統領との初の首脳会談で冒頭から、招待者がゲストのオバマ氏にきつい一発をかますわけにも行かず、アメリカのご機嫌を損ねるような行動が取りにくい。従っていきなり沖縄基地移設問題を持ち出すことができず、これが社民党と中々合意に至らなかった原因である。
合意事項の中で最も難しい日米問題については、「緊密で対等な日米同盟関係をつくる。沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」ことになった。3党合意としては玉虫色である。アメリカはこれまで日本は‘always OK’、つまり御しやすいと考えていたことがそうは問屋が卸さなくなってしまった。
今日早速モレル国防総省報道官は、民主党が海上自衛隊のインド洋での給油活動を停止する方針であることについて、公式に「日本の活動で多大な恩恵を受けてきた。活動継続を強く促したい」と民主党の考えにクギを刺すような発言をした。
これに対して民主党は来年1月の期限を延長せず、海上自衛隊を撤収させる方針に変わりがないとの立場を示し、合意に参加した社民党も呼応して、それはアメリカの立場であって、自分たちの方針が変わることはないと述べた。
日米関係で最大の懸案は、沖縄米軍基地の移転問題だが、その前に期限付きの海上自衛隊給油問題が迫ってくる。さあ民主党政権はどう対応するだろうか、しばらく目が離せない。
さて、地方自治体の中には酷い話があるものだ。千葉県が5年間に亘って公費30億円を不正処理していたことが明らかになった。ほとんどの部署で不正をやっていたとは驚きである。返還対象の管理職が現役、OBを併せて5,400人だという。呆れ果てて物が言えない。この中にこの期間の最高責任者だった堂本暁子前知事は含まれているのだろうか。自分の在任中にこれだけの悪事をやった部下たちの不始末を、もう辞めたから関係ないとは言えないだろう。それにしてもこういう悪どい小童役人の所業は、何も千葉県だけに限ったことではあるまい。
2006年の岐阜県、長崎県、2007年の宮崎県、2008年の愛知県の不正、等々これだけ連続して暴露されるということは、役人というのは国、県、市町村を問わず、隙さえあればどこも公金を誤魔化して、私腹を肥やすことをやっているのではないだろうか。
税金を払うのが本当にバカらしくなる。
851.9月11日(金) あれから8年が経った。
8年前の今日、ニューヨークで同時多発テロが起きた。あの衝撃は今でも忘れられない。あれからアメリカが、タリバン掃滅作戦と称してアフガニスタンへ侵攻し、さらに2年後イラク戦争に首を突っ込むことになった。戦争を終らせることは、大変である。近代戦争は長い年月がかかる。そのアフガニスタンの混乱は、一時終結の兆しが見えたが、アメリカ軍が増派されてから反って泥沼の様相が見えてきた。ベトナム戦争の二の舞を演じるようなことがなければ良いがと思ってしまう。
あの同時テロでは、2,700人余りの人々が亡くなった。世界貿易センタービルのあったグランド・ゼロでは、復興計画は出来たが、未だに完成していない。
あのテロ以来世界中すべてが何となく暗くなった。明るい材料もなくなった。そして、あのリーマン・ショックによる経済不況である。世界のリーダーたちに苦境の中で活路を開く能力がなくなっているのではないか。例えば、オバマ大統領にしても就任以来人気は上々だったが、最近の医療制度改革に関して、共和党保守派の反対に会い支持率も大きく下落した。
果たしてわが国は政権交代してこの難しい世界情勢の中で、これから民主党政権が上手に舵取りをやっていけるのだろうか。
今日秋葉原の東京都中小企業振興公社でシニア大楽の依頼により講師を務めた。ここでは3年前にもやったことがある。テーマは「安心できる海外旅行」で、先日来パワーポイントの材料を作成して備えてきた。このスライドが割合評判が良かった。私にとっては得意の分野であり、「臨場感」を中心に自分自身の危機一髪だった体験談を交えてお話した。私の前に二人の講師が話され、私の後に男女の落語家が一席落語をご披露された。受講者は70〜80人だったが、話し中に皆さんの顔を見ていると結構笑っておられたので、まず安心していた。割合反応は良かったと思う。終ってから藤井理事からも落語を食わないでくださいよ、と冗談を言われたくらいだ。とりあえずほっとした。
知研の秋田事務局長から今朝の読売新聞に梅棹忠夫先生の記事が掲載されているとメールで連絡があった。駅売店で買って目を通したところ、新著「山をたのしむ」の紹介だった。面白そうなので、買って読んでみようと思う。探検家らしく「自分の足で歩き、観て、観察して、考え、記述する。学問研究とは全人格的なもので、体力を伴う。学問は足でするもんや」の言葉が梅棹先生らしく印象に残った。
852.9月12日(土) 堂本暁子・前千葉県知事に責任はないのか?
一昨日の本欄で疑問を呈した一件だが、案の定といったら良いだろうか、堂本暁子・前千葉県知事が先の千葉県職員公金不正事件発覚に関連して、朝日新聞の質問に重い口を開いた。「まったく知らなかった。前知事として他人事ではすまされない。自分に起きた出来事のように心が痛む。本当に遺憾という言葉以外に見つからない」。
この人は一体何を言わんとしているのだろうか。他人事ではないと言いながら、他人事だと思っているのは当時知事だった堂本氏自身ではないか。なぜ自分に大きな責任があると言って素直に謝罪できないのか。この破廉恥な不祥事から逃げていて、朝日記者に捕まったから止むを得ず逃げ口上を言っているだけだ。その発言からは、自分にも大きな責任があると認めているわけではなく、役人の責任逃れの典型である「遺憾である」との言葉が出てきた。そのうえで、朝日によれば、来週中にも副知事ら県幹部から状況の説明を受けた後、「真摯に対応したい」ときた。
こういう発言をしておいて「真摯に対応したい」もないものだと思う。この人は結局事件から何とか逃げようと思っているだけに過ぎない。知事を2期も務めていて職場中で悪さをやっていた、その組織のトップとして8年間もの間、「まったく知らなかった」とは、あまりにも無神経で感度が鈍く、危機感に乏しく、管理能力もまったくなっていない。組織の頂点に立つ人としては、失格である。小学生時代に7年半もの間住んでいた元千葉県人としては情けないという気がする。これでは、こんな人を知事に選んだ千葉県民も救われまい。
さて、日本航空が営業不振に陥っていたことは周知のことであるが、先日の国交省への再建策説明に続いて、昨日になってアメリカのデルタ航空との提携交渉がクローズアップされてきた。どうも国交省が主導している気配があるが、デルタ航空を引受先とする数百億円の第三者割当増資をする方向で交渉しているようだ。ついに天下のナショナル・フラッグ・キャリアが外国航空会社に跪いて、大株主になってもらうようだ。
リーマン・ショックとか、新型インフルエンザによる利用客の急激な減少という不測の要因もあるが、内在的な高い給与や、社内に8つも乱立する労働組合の存在に加えて、旧JAS社員との確執と対立、働く従業員の帰属モラルと能力も影響していると思う。
しかし、その根っこには国策会社にありがちな社員の鼻持ちならないプライドの高さと、絶対つぶれないという気持ちの甘えがあるように感じたのは私だけではないと思う。表に出る経営不振の原因と隠された本当の原因をよく究明して、一日も早く態勢を立て直して欲しいと願うのは、単にかつて仕事上の取引があったからとの外野席の同情心からだけではない。
853.9月13日(日) 奥穂高のヘリ墜落事故に思う。
一昨日北アルプス・奥穂高で遭難しかかっていた登山者を、救助のために向かったヘリコプターが転落して操縦者を含む同乗の3人が死亡した。現場は険しいジャンダルム傍で、上空から撮った写真を見てもいかにも手ごわい山というように見える。あのジャンダルムは学生時代に一度通ったことがある。痩せ尾根で左右を見れば、ぐっと下まで落ち込んでいる。あまりぞっとしない登山路だったが、険しいだけに逆に関心は高まった。今でも北アルプスの山々を歩いた学生時代の登山が懐かしく思い出される。
ヘリ事故で転落寸前にヘリから降りた2人の救助隊員は、遭難しかかっていた登山者の救助に当ったが、その直後にヘリが墜落したので辛くも難を逃れた。しかし、登山者は心肺停止のまま息を引き取った。批判を恐れずに言えば、結局この救助活動は犠牲者を出しただけで、無駄に終ってしまった。
今年は山の難事故が目立つ。それも高齢者の遭難が多い。先般の北海道・大雪山のツアー登山による大量遭難死は大きな社会問題となった。登山に対する関心事が高まったこと自体は決して悲観すべきことではないが、何でもかんでも健康とか、福祉のためとか言って前向きに捉えがちだが、逆の側面を考えてみることも必要ではないだろうか。今後各方面で登山のあり方を検討してみることが大切である。
一人の遭難者救助のためにヘリまで飛ばして多くの人たちが手分けして活動する。その一人の登山者の無理な行動が、結果として当事者である登山者を含めて4人の生命を奪い、ヘリコプター1機を失い、国土交通省、岐阜県警、消防署、医療関係者を心配させ混乱させて、まだこれから原因究明のために時間をかけて調査を行うことになっている。人的にも物理的にも大きなロスである。
随分大きな騒ぎになり、犠牲者まで出し、結果的に失うものが多い。登山では、ひとりの行動がいかに大勢の人々の協力を求めることにつながり、迷惑をかけ、下手をすると犠牲者まで出るということをもっと世間に啓蒙する必要がある。
先日もNHKで立山雄山から槍ヶ岳へ至る表尾根をずっと映し出していた。懐かしい光景が次から次へ展開され、気持ちだけはまた北ア表尾根コースを歩いてみたいと思わせてくれた。山は行ってみなければ、その魅力は分からないし、虜になる原因も分からない。
しかし、空気の澄んだ登山道をひたすら歩き、苦労の末に目的地へ達した時の感激は歩いた者でないと分からないだろう。山の魅力は、登った者でないと分からないが、身近なところに大きな落とし穴があることも今回のヘリ墜落事故は改めて教えてくれた。
854.9月14日(火) やったぁ!イチロー、200本
あまりぱっとしたニュースがない中で、MLBシアトル・マリナーズのイチロー選手が今日9年連続200本目の記念すべきヒットを打った。歴史の長いMLBでも過去に9年連続で200本以上のヒットを打った選手はいない。イチローが初めてである。イチローの記録は、8年連続200本以上を打ったウィリー・キーラー選手以来、実に108年ぶりだとして、全米でも絶賛されている。めでたい限りである。運が良ければ誰でもチャンスがあるのとは違って、例え強運に恵まれても実力が伴わなくては実現不可能で、その実力もスーパータレントでなければ達成出来ない記録である。東京では号外も発行されたし、ニュースはすべての夕刊紙のフロント・ページに掲載されている。
イチロー選手を見ていると、確かに昔の選手とはタイプが違う。黙ってことを成すというタイプではない。ひとこと言っておくという憎いタイプである。言っていることは、哲学的だったり、心理学者の発言だったり、市井の普通の発言だったり、意味不明だったり、とにかくその発言は含蓄に富んでいる。まだまだやれる選手なので、連続ではないにせよ、10回も年間200本以上の安打を打ったピート・ローズの記録を抜いて、11年連続して200本以上を放って欲しい。
一昨日の本欄に日本航空の再建問題に関してアメリカのデルタ航空に支援を仰ぐスケジュールに触れたら、今朝の新聞には早くも前の報道を混乱させるような内容が報じられている。何と交渉にはデルタばかりではなく、アメリカン航空が乗り出したとある。一昨日は世界一の航空会社、今朝は世界2位の航空会社が日航へ食指を動かした。嫁の貰い手が多いのは結構だが、その背景には複雑な理由もあるようだ。その最大の理由は、日航が「ワンワールド」航空連合に所属しているのに対して、デルタが「スカイチーム」航空連合に属しているからだ。この航空連合というのは、参加航空会社がお互いに共同運航、マイレージ、空港施設の共同利用などの提携関係を結び相互にメリットを共有しようとするものである。当然同じコンピューター・システムを利用している。仮にデルタから支援を受けるとすると、「ワンワールド」を脱退して「スカイチーム」に加入することになる。その辺りの手間、経費を考えて、どちらが得かと判断するわけだろう。しかし、すでに日航はデルタと実務的な交渉を始めているらしい。
今後どういう動きになっていくのか分からないが、日航としてはあっという間に正念場を迎えてしまった。日航は脆弱な財務体質に加えて、旅客需要の低迷が追い打ちをかけて資金不足に追い込まれ、今期中に2,500億円以上の資金が必要と言われている。だが、デルタに決まるにしろ、アメリカンにしろ、支援策として得られるのは、高々数百億円でとても再建の切り札にはならない。結局高コスト体質を自力で改善しなければ、抜本的な再建にはほど遠いのではないかと思う。そのためには、赤字路線からの撤退、航空機投資の抑制、そして人員削減を含むリストラによってコストを削減することが肝要ではないだろうか。果たしてこれまで殿様商売を続けてきた日航に、腹を括るその覚悟があるだろうか。
855.9月15日(火) ペンクラブ例会で落合恵子さんの話を聞く。
ペンクラブ定例の9月例会があり、前々から小中陽太郎さんと例会後に仲間と一緒に新橋のヤキトリヤへ行こうと約束していた。今日は生憎酒のペンクラブ例会ともかち合って、そちらは失礼した。ペンクラブの例会は毎度どなたかがショート・スピーチをされるので、楽しみにしているが、今月はエッセイストの落合恵子さんのお話で、ユニークなキャリアを持っている方だけに以前から一度話を聞いてみたいと思っていた。
子どもの絵本についてトークをされた。クレヨンハウスを立ち上げた時の気持ちと、絵本を子どもだけでなく、親として、また老年者にとってそれぞれ必要なものだとの考え方を話された。
彼女がそもそもクレヨンハウスを始め、その後自然食品の八百屋さんを開き、オモチャ屋さんを経営するようになった理由と哲学みたいなものを話された。その原点は、シングル・マザーだった母親が育ててくれた子ども時代に絵本だけを与えてくれたことと、そのために他の絵本が読みたくなり本屋で立ち読みをした時に、ハタキで追い出された辛い体験から、子どもがハタキで追い出されず、椅子まで置いてある書店を夢見て始めたという。ヨーロッパの都市にはどこにも子どもの絵本を専門に売る書店があり、そこには時間を過ごすことができるよう椅子まで置いてあったことに気持ちを鼓舞されたと言っておられた。
落合さんは、アンチ・エイジングに反対だという。年とともに年齢を重ねることは決して嫌うべきことではないという。その点でアメリカ人のメイ・サートンさんに共鳴を覚えたという。サートンさんは「私から年を奪わないでください」と主張している。サートンさんは、顔の皺はこれまで自分が働いた結果であり、髪の毛が白いのは、生きるために役割を果たした実績であるとして、「老い」を決して卑下するようなことはせずに、反って年をとったことにプライドを持ち、老いていく人々を大いに力づけたという。
話の中身は有意義であり、メリハリも聞いていて面白かった。流石にラジオ・アナウンサーを永年続けていた貫禄であろう。立食パーティの席でも隣の人たちと話してみて、落合さんの話は良かったと意見が一致した。
終って新橋の金陵ヤキトリ屋で飲み会を行ったが、これに大勢の人が参加したのも小中さんのお人柄であろう。大いに飲んでしゃべりあった。ここには、ペンクラブ常務理事の堀武昭さんも加わった。国際ペンの理事でもある堀さんとは、ベオグラードの山崎さんの話もあって、次回山崎さんが日本に来た場合一緒に飲もうということになった。明日韓国へ飛び、カナダのペンクラブ会長とともに来年改選の国際ペンクラブ会長選出のための根回しに活動するようだ。
その後小中さんと須藤甚一郎さんと自由が丘へやって来て三次会をやる。久しぶりに痛飲したのでかなり疲れた。
856.9月16日(水) 民主党鳩山政権、晴れてスタート
鳩山由紀夫・民主党代表が第93代総理大臣に就任して、鳩山内閣が発足した。首相自身は否定しているが、「小鳩内閣」と揶揄されるほど、小沢幹事長に影響されるのではないかと心配されている。
しかし、長い日本の保守政治の歴史上実質的な政権交代が行われたのは、初めてのことである。その点でもわが国の政治史におけるエポックメーキングな政権誕生である。
早速閣僚名簿が発表されたが、亀井静香・国民新党代表が郵政・金融担当大臣として入閣したことは問題である。国民新党代表として閣内に入り新政権に協力するという点では、歓迎されるところだが、亀井氏の郵政担当というのはあまりにも危険である。郵政事業の見直しをやると力んでいたが、小泉政権に公然と反対して自民党を飛び出し、国民新党を結成して以来、自民憎し、小泉憎しの一点で、ほとんど私怨に近いほど郵政民有化を批判し、恨んでいた。郵政民営化はすべて悪であるとの執念に近い敵愾心は、あまりにも異常で、公平であらねばならない政治家として、しかも担当大臣の対応としては、鼎の軽重を問われかねないと少々疑問に思う。郵政民営化がすべて悪いわけではない。今の経済不況の原因まで郵政民営化のせいにして、自分は批判だけするというのでは、あまりにも身勝手で無責任ではないかと思う。
実際今朝の日経紙には、「小泉路線の否定」という動機だけにこだわり、改革を逆戻りさせるのは得策ではないと主張し、更に郵貯資金から財政投融資を肥大化させたことが郵政民営化の原点だったという点、また売却手続きに批判が集まった「かんぽの宿」問題も、簡易保険加入者の資産で採算を度外視した施設を作らせた政官の甘えに根源があったと指摘している。
同じく日経社説で郵政民営化を本質的に捉えて、肥大化した「官製金融」を民間の手に委ね、資金の流れを効率化していく改革は、日本経済の持続的成長に必要であるとも述べている。
亀井氏ひとりの個人的怨念で国家事業を左右され、時計を逆回りさせられたのでは堪ったものではない。
それにしても、また閣僚は若返ったなぁと思う。総理以下18名の閣僚の内に、私より年配者は僅か3人となった。それだけ昔のような派閥政治スタイルが廃れたとも言えるのかも知れない。
ここ数日来日本航空の経営不安説が取り沙汰されている。昨日の国交省有識者会議では、今後3年間に地方空港を主に国内29路線を廃止するという荒療治に踏み込んだ。特に、地方空港発着便を廃止するという。先日オープンした静岡空港便も、神戸空港便も廃止とか、減便では、またまた地方の雇用問題を含め、地方経済にも大きな打撃を与えるだろう。リストラについてもグループ関係社員約6,800人を3年間で削減するという。半官半民だった大企業・日本航空もいよいよ赤壁に追い込まれるか。
857.9月17日(木) 民主党新政権は張り切り過ぎでは?
新しい政権が稼動した。任命された各大臣も所管の省庁へ初登庁して、早速大演説をぶった。政策は民主党としてはマニフェストに約束したことで当然であるが、各大臣が一斉にラッパを吹き動き出したので、まるで目が回るかのようだ。
官房長官は事務次官の会見を取り止める。国交大臣は八ツ場ダムの建設中止、外務大臣は11月内に日米核密約問題の調査報告を、文科大臣はアニメ殿堂の見直し、郵政・金融担当大臣は郵政民営化事業の形態見直し、厚労大臣は年金徹底解明と後期医療制度の廃止、等々確かに動きが早い。これこそ政治家らしいと思うのだが、あまりにも功を焦って反動やしわ寄せが国民に及ばないことを願う。
前原国交大臣のごときは、日本航空の再建策を検討中の再建有識者会議を自民党の考えの下で組織された会議だから、そのまま受け入れるわけにはいかないと言うほどのあまのじゃくぶりである。ことは下手をすると倒産しかねない半官半民の会社の存亡に関わることである。その裏には、経営効率向上を求め不採算路線からの撤退を要求する金融機関と、航空網の維持・拡充を錦の御旗に地方空港の存続に血道を上げている国交省の対立である。当事者である日本航空そっちのけである。政権が代わって「無駄遣い」「公共事業の削減」「官僚主導の見直し」を主唱する民主党のスタンスから推して、日航社内には会社の解体が避けられないと覚悟を決めている幹部もいるらしい。日航が行き詰まったのは、他にも諸々の原因があるが、外部からプレッシャーをかけられたのでは堪ったものではない。
願わくは、民主党の面々にはくれぐれも考え違いをしないで欲しいものである。
858.9月18日(金) 日米政府間に密約あり。
今日から駒沢大学マスコミ研究所公開講座の秋季学期が始まった。春季に「本と出版の周囲」を担当していた柴野京子講師が清田義昭講師に代わった。
清田講師は、「出版ニュース」の発行責任者で長年出版業界に関わっておられる。冒頭に琉球朝日放送が制作したビデオを見せてくれた。「メディアの敗北」というテーマで「沖縄返還をめぐる密約と12日間」という副題がついた50分ドキュメンタリーだった。昭和47年4月の外務省機密漏洩事件から始まる、3つの外務省密約事件を赤裸々に描いたもので、その当時いくつかのドキュメンタリー賞をいただいた作品である。
私自身この日米密約の発生当時から関心を持っていたが、ビデオを観て改めて日米間には間違いなく密約があったことを確信した。時恰も昨日岡田外相が密約について調査して11月末までに報告するよう厳命した。これまで歴代の首相を始め外相は、ことごとく密約を否定してきた。アメリカから機密文書が公表されたにも拘らず、密約は一切ないと断言してきた。
密約事件で最大の関心を呼んだのが、外務省公電漏洩事件であり、毎日新聞・西山太吉記者が入手した公電の写しは外務省女性職員と「情を通じて」得たものであり、国家機密法に違反するという、別件の罪で逮捕し、裁判でも国の勝訴となった。国家間の密約という重要な事件を、スキャンダルという一点で問題をすり替えたものとしてマスコミが政府の姿勢を糾弾した。しかし、それ以上政府を追い詰めることはできず、マスコミの敗北と言われた。
二点目は、沖縄米軍基地の移転に伴う費用 400万$を米軍が支払うとの協定にも拘らず、実際には米軍が支払ったように見せかけ、密約により日本が支払っていたというアピアランスというパフォーマンスがあった。
三点目は、非核3原則と云われる「作らず」「持たず」「持ち込ませず」を約束したにも関わらず、条件付で核の持ち込みを容認していた。
これらの機密を追求した西山記者は、日本政府から徹底的に攻撃され、政府の圧力を恐れた毎日新聞社も西山氏を冷遇して、西山氏は孤軍奮闘で政界、マス・メディアと戦い、最後には矢折れ弾尽きて表舞台から去った。
最近になって、当事者だった元外務省アメリカ局長の吉野文六氏や、元駐米大使の村田良平氏も密約があったことを認めている。アメリカからの公文書も公開された。ここまで証拠が揃っていながら、往生際の悪い自民党政府は、これまで「ないものはない」の一点張りだった。民主党は今改めて本事件に本腰を入れて追求する覚悟を決めた。
日米密約をなぜ今、調査するのか、と問われた岡田外相は「外交に対する国民の信頼を取り戻すためだ。外交は国民の理解と信頼のうえに成り立つ。密約問題がそれを損ねているのは間違いない」と応じた。どういう報告がなされるのか。興味のあるところだ。
859.9月19日(土) アメリカ、東欧MD計画を中止
昨日ミステリー作家であり、鉄道作家としても知られる野村正樹さんから電話があり、先日校正のために野村さんに送った原稿について、話し合いをしながら確認したいという意向を伺ったので、二つ返事でお引き受けして午後渋谷でお会いした。
渋谷の「ハチ公」前で待ち合わせと言えば、お上りさんだが、珍しい現象が見られた。「ハチ公」銅像前で記念写真を撮っている外国人旅行者が多かったことである。今までそんな光景は見たことがなかったが、それもハリウッド・スター、リチャード・ギア主演で「ハチ公」をモデルにして映画「HACHI」が、人気を呼んでいるせいだろう。
野村さんは今売れっ子の作家として、すでに120冊もの著書を世に出されている。随分参考になる話を伺った。作家の視点、見方というものを教えてもらった。7月に時事通信社から出版された「鉄道トリビア探訪記」に続いて、近日東洋経済新報社から「東京八景」という思い出話を出版される。伺ったところでは、高校を卒業して上京した50年前に歩いた都内の写真が残っていたので、その地を再訪して思い出話を書かれるという話だった。
さて、ロシアがぴりぴりしていたアメリカのチェコとポーランドへのミサイル防衛(MD)システム配備を、アメリカが中止すると公表した。これもオバマ大統領の遠大な核廃絶への遠いながらも効果的で着実な一歩だと思う。4月にチェコのプラハで核廃絶への決意を宣言して、世界をあっと言わせたオバマの第2段であり、オバマもいよいよ本気で核廃絶の道へ舵を切った。ブッシュ大統領時代に進めていたヨーロッパにおけるMD計画の見直しである。目標を自国に向けられて少々神経質になっていたロシアにとっては大歓迎である。メドベージェフ大統領も今後ミサイル拡散の脅威に「共同で取り組もう」と声明を出したが、イギリスもフランスも歓迎している。こういう実務的なことが実行される(取り止めるということだが)のは、前途に希望があっていいものである。
本来アメリカの東欧へのMD配備の目的は、イランの核・ミサイル攻撃からの防衛計画のひとつだった。これに対して、ロシアがアメリカの計画に脅威を感じて、イランに防空ミサイルを売却する動きを見せていた。これでロシアも売却計画を止めるだろう。
オバマの意思に合わせて、鳩山首相もオバマとの首脳会談の際、鳩山首相から核軍縮の方向へ話を持ちかけてもらいたい。いずれにしろこのように世界情勢が混沌とした時代に、核廃絶の動きは明るい兆しである。このままこの動きが強まることを願いたい。
860.9月20日(日) どうして「取扱説明書」は分かりにくいのか。
今朝の朝日「天声人語」の引用は面白かった。中国語の漢字と日本語は似て非なることもあるという話だが、「空巣老人」という言葉が面白い。「空巣」とは穏やかでないが、中国語では独り暮らしの老人のことだという。「天声人語」氏によれば、「雛が育って飛び立てば、巣は空っぽになる。一人っ子政策の影響などで高齢者だけ残される世帯が増え、かの大家族の国でも社会問題になっている」という。そう言えば、「列車・電車」のことを「火車」といい、「自動車」のことを「機車」といったように思う。言語が同じでも生活環境や社会情勢に影響を受けることがある。その辺りが面白い。
先日購入した万歩計がどうもうまく使いこなせず機能しない。先日までまあまあ使用できたのだが、このところ数字が計上されなかったり、0に戻ったり、どうもうまく行かない。ところが「取扱説明書」、いわゆる「トリセツ」が分かりにくい。何を書いてあるのか、さっぱり分からない。順序を追って丹念に読んでも、肝心な説明が抜けている。これは本当だ。こんな粗雑なトリセツで果たして会社に苦情が来ないのだろうか。
以前からトリセツの文言や書き方はあまり評判が良くないが、改めて読み直してみて万歩計のトリセツの説明不足はやはり少々酷いと思う。これにはやりきれない思いである。オムロン製品だ。
6月に購入したソニー・ブルーレイ方式のDVDレコーダーのトリセツもよく分からず、とても真剣に読む気にもならない。まだ、使い方をマスターしていないお粗末さである。それにしても、当方の勉強不足もあるが、一般的にいってもどうして機械類の取扱説明書というのは、難しく書いてあるのだろうか。もう少し素人にも理解し易いように易しく説明できないものだろうか。設計した技術屋さんが書くので、どうしても文章の書き方に慣れていないからだという説があるが、そんなことは理由にならない。社内の両方に通じる人間が書けば簡単に済むことだ。やはり、メーカーの無責任さであり、顧客軽視の姿勢だと思う。私自身これから年齢を重ねていくと、機械ものには段々億劫になるので、ちょっと心配だが、何とか機械バカにならないようにしないといけない。
買ったばかりの万歩計を不良品として捨てるのもシャクなので、オムロン社に電話で尋ねて、何とか使いこなせるようになりたいものである。まったくやれやれだ。
861.9月21日(月) 敬老の日に思う。
かつては9月21日と言えば、秋分の日というのが通り相場だった。それが今年は敬老の日である。以前敬老の日は「9月15日」だったが、十数年前に9月の第3月曜日が敬老に日と決まってから日時は流動的となった。今年のケースでは昔に比べると随分遅い敬老の日となったものである。
妻と見合いしたのが、41年前の敬老の日だった。そして翌年5月にめでたく結婚と相成った。その結婚以来今年は満40年・ルビー婚を迎えた。末永く気持ちを合わせて仲良くやっていきたい。
さて、高齢者とは、一応65歳以上の年配者を指している。近年の少子高齢化現象を反映して、全人口に占める高齢者の割合が年々高まっている。総務省の調査によると、女性は全女性の25.4%、つまり四分の一の女性が高齢者ということになる。男性だって全男性人口の19.9%が高齢者である。5人にひとりである。もちろんこの高齢者人口の高さは世界一であり、幸福か否かは別にして、日本は世界一のお年寄り天下となった。
昨年11月に韓国・束草市で開催されたシンポジウムでパネリストとして講演した際、「朝鮮日報」記者の資料を引用して話をした。その資料によると2015年には、韓国が日本を抜いて世界一のお年寄り国家になるというものだった。私も直前になってインターネットで調べるまで、その実態は知らなかったが、会場で私がそれに触れた時の600人の出席者の驚きと動揺は、一瞬会場がどよめいたほどである。とりわけ韓国人の出席者は複雑な気持ちに襲われ、かなりショックを受けたようだった。
どこの国でも大きな社会問題として、クローズアップされてきたのが、年金、医療、介護、雇用等の高齢者に関わる福利厚生問題である。鳩山政権になって悪評高い後期高齢者医療制度が撤廃される。まもなくその年齢に達する自分にとっては、自分自身の問題であり、歓迎すべきである。
平均寿命とともに、最近話題になっているのが、健康寿命で日本人のそれは、75歳だという。男性が72.3歳、女性が77.7歳である。その年齢に達すると身体に突然故障を抱えたり、筋肉が減少するらしい。あと2年しかないと思うとぞっとするが、それを払拭するひとつの鍵は、生きがいだそうだ。男が会社を辞め、ぶらぶら時間を空費してあまり目標とか、生きがいがなくなると75歳がデンジャラスエージと呼ばれる現象に陥るようだ。まだやることが沢山あり、まあその点ではあまり心配はないと思うが、これからの一年一年は身体と同時に、精神面もケアすることが重要だと思う。
862.9月22日(火) 好漢・田淵守くん
会社勤めのころの同僚であり、高校のちょうど10年後輩に当る田淵守くんから定期リポートを送ってこられた。いつも丁寧な取材としっかりした内容、きちんと割付けされたリポートに感心する。
「鯰亭事務所リポート」と題して、ひとりで原稿を書き、印刷物にして定期的に送ってくれる。「鯰」とは、田淵くんが自分自身につけたニックネームである。彼は高校を出てから国立大に入ったが、学生運動のやり過ぎ?で中途退学し、偶々私より遅れて中途採用で同じ会社へ入社してきた。こう言っては悪いが、4月入社の学卒定期採用者とは違うので、最初から将来のエースやエリートコースに乗ることを期待されたわけではなかった。だが、頭の切れることと人柄の良さで忽ち職場内で人望を集め、リーダー役を担うようになった。彼も意気に感じて現場従業員のために組合活動に力を入れ、職場内で自分の出世を省みることなく精一杯黒衣となって活動した。時によってはその言動は先鋭的であり、保守的な組合大会や株主総会で積極的に発言したが、いずれも為政者から歓迎されるはずもなく、組合委員に立候補しても所詮根回しの行き届いた選挙では、組合委員に選出されることもなく、組合員として思い切り活動することはできなかったのではないか。
会社からは煙たがれ、日和見的な組合からも距離を置かれ、シンパは彼を本当によく知る社員、彼の組合活動を評価する組合員しかいなかった。気の毒だった。職場環境としてはあまり恵まれていたとは言えなかったが、私を常に先輩として立ててくれ、仕事には真剣に取り掛かってくれた。会社の方針に沿っているとは受け取られず、その点ではやり方があまりうまくなかったのかも知れないが、もう少し直属の上司が細かい配慮をしたり、彼の能力を活用すれば、違った方向でもっと彼の存在感をアッピールできたのではなかったかと思うと惜しい気がしてならない。
その田淵くんも昨年定年を迎え、当初の希望通り「生涯現場職員」を全うした。信念を貫いたのだから、それはそれでよいのかも知れないが、田淵くんがそれで果たして心底から満足しているだろうかと随分気になっていた。定年直前には大腸癌に罹り、心配したが、今年2月の私の出版記念会には元気な顔を見せてくれた。
向上心が強く、在職中も勉学に励むことを忘れず、社会保険労務士と行政書士の資格を取得した。今では個人的に「鯰亭労働法務事務所」を開業して、労働問題で悩む同士へ助言している。見上げたものである。
信念を曲げず自分の信ずる道を自らの力で切り開いて、今の田淵くんがいる。しかし、他人のために尽くすことを当然のように考えている田淵くんも、これからは自分の健康をもっと考えて、更に前進して欲しいと心から願っている。
頑張れ! 田淵くん
863.9月23日(水) NHKドラマ「白洲次郎」にまつわるエピソード
一昨日から今日まで3夜連続でNHK番組「白洲次郎―戦争を背負った男」が放映された。今年2月末に2回放映されたが、3回目は準主役の吉田茂役の俳優が健康を害して撮影できず、今回その最終回分を加えて連続3回分を一気に見せてくれた。合計4時間半にのぼるテレビドラマを観たのはほとんど記憶にない。評価としては難しいが、結構楽しめた。今日の最終回で白洲がケンブリッジ大学でケインズ教授に学んだとは初めて知った。あのアカデミックなケンブリッジの街とキャンパスの雰囲気は、中々落ち着いていていい。1995年春ロンドンに駐在中だったアルペンクラブの大林玄一さんご夫妻に、妻ともども車で案内してもらったことを懐かしく思い出した。
2月は関心がありながら、部分的に観た程度だったので、話の筋が通らなかった点もあり、今度は3回分をしっかり観るつもりで待ち構えていた。
主役の白洲次郎が最近になって脚光を浴びているが、それは白洲のようなイギリス帰りで英語を解し、自分で確たるプリンシプルを持っている人物が今世間から渇望されている証拠であるのかも知れない。終戦後マッカーザーに堂々と抗議をした潔い行動と、戦後日本経済復興のための礎を作るために通産省の再建に取り組み、吉田茂の懐刀としてサンフランシスコ平和条約調印のために随行員として吉田に付き添って、吉田の手となり、足となった活躍してナビゲーターぶりを発揮した姿を描いたものである。
実は、今取りかかっている「知の現場」出版プロジェクトでは、22人の著名な言論人を取材しているが、3月末にこの番組の原作者のひとり、北康利氏をインタビューした。その折り北氏は、評伝作家として事実関係に誤りが発見された場合、どう対処されるかとの質問に対して、至極率直に事実が判明すれば、次の機会に訂正すると仰った。その一例が、昨日放映されたシーンの中にあった。白洲がGHQに乗り込んだ場面について、2月のテレビ放送後、マッカーサー財団からクレームがついたという。財団によれば、白洲がGHQを訪れた記録はまったく残っていないと言われたそうである。テレビではあれだけ何度も白洲がGHQを訪れる場面を映し出している。そんな馬鹿な話がとは思うが、実際に訪問記録が残っていないのでは、その訪問記録を証明しようがない。そこで、北氏はその当時マッカーサー総司令官が駐日アメリカ大使館に起居していたことを調べ上げ、白洲のアメリカ大使館訪問記録をチェックして、その訪問の事実が判明した。結局、それまでGHQだとばかり思っていた白洲のマッカーサーとの面会は、実はアメリカ大使館内であったことが分かったのである。
こういう事実関係についてメールとハガキで友人に知らせたところ、結構意外な反応もあった。しっかり観てみると言う声が多かったが、昨夜放送されたテレビでは、舞台は相変わらずGHQだった。しかし、これは膨大な制作費を注ぎ込んだので、改めてアメリカ大使館を舞台にしたシーンを撮影するわけには行かなかったのだろう。その他にも、ゼミの堀勇弘氏から、主役・白洲次郎役を演じた俳優・伊勢谷友介が子息の小・中学時代の同級生だという知らせをいただいた。中々の熱演だったと思う。
もうひとつ最終回の場面で、白洲チームとGHQスタッフチームとの憲法解釈について激論を交わす場面で、旧憲法の「天皇を輔弼する」の「輔弼」の語義について「advice」か、或いは「agreement」か、の議論が面白かった。改めて辞書を引いてみると「輔弼」には、「advice」「assistance」「counsel」と記されていた。
北氏との取材記は私自身が書き終え、校正も終えて年内に共著として上梓されることになっている。メールでその点も知らせたところ、多くの友人が発行され次第買って読んでみたいと言ってくれている。その他にも、私自身は作家の小中陽太郎氏、同じく野村正樹氏、経済アナリストの武者陵司氏を取材した。どんな書物に出来上がるか、大きな楽しみである。
さて、プロ野球セ・リーグで巨人軍が優勝を決めた。3連覇で33回目の優勝である。巨人軍オーナーを務めているゼミの同輩・滝鼻卓雄くんも今夜はいい気分で酔っ払っているだろう。
子どものころから大の巨人ファンだったが、寄る年波か、このところ昔ほど野球に興味を持てなくなった。テレビでもほとんど観戦しなくなった。それでも巨人軍の試合結果は少々気にはなる。マジック「1」となったので、優勝決定シーンを観てみようと6回表からずっと観ていて、優勝決定の瞬間を見られとりあえず良かった。これから、クライマックス・シリーズ(CS)、そして日本シリーズへと続くのだが、数日来少々話題になっているのが、両リーグともCSへの出場権を賭けた3位争いでセ・リーグでは目下阪神、広島、ヤクルトの3チームが争っている。問題は、セ・リーグの3位を争っているチームの勝率が5割を割りそうなことで、仮にそうなってそのチームがCSで勝ち上がり、日本シリーズでも勝ってしまうとセ・リーグでは巨人が優勝だが、日本一の座にペナントレーズで半分も勝てなかったチームが座るという奇妙なことになる。何だか不条理な話でもある。こうなるとペナントレースの意味とか、価値がなくなるのではないかと思う。やはりこれはおかしい。CSへの出場権は勝率5割を上回るという前提条件でもつけないと、しらけた空気が流れるのではないか。こんな逆転現象ぐらいプロ野球関係者は予測できそうなものだが、こういう些細なことを軽視することが、プロ野球人気に陰を落とすことになるのだ。
864.9月24日(木) 鳩山新政権順調にスタート
鳩山内閣の行動がてきぱきしていてスピード感があり、国民の信頼もうなぎ登りの様子である。鳩山首相自身国連総会出席のため訪米中であるが、最初の試練である環境サミットにおけるスピーチで男を上げた。二酸化炭素排出を2020年には、1990年比で25%削減のような高い数値を国際公約として具体的に発表したことは、主要国の高い評価を得た。その一方で、アメリカと中国の両巨大ガス排出国が著しい排出ガス削減を目指すという抽象的で、数値の裏づけのない演説をしたのとは大きな違いである。
過去にわが国は数値目標を掲げることから逃げて抽象的過ぎると言われ続けてきた。それが、今回の鳩山訪米では、打って変わって主要国に先駆けて世界に向け約束ごとを公表した。これが、うまく予定通り実行できたら世界中の日本に対する信頼は、一段と高まるだろう。仮に思惑通り行かなかった場合は、日本への信頼は忽ち失墜するだろう。日本経団連はぐずぐず言っているようだが、もう待ったなしである。やるっきゃない。
それにしても、大臣を筆頭に各省庁の仕事ぶりは、失速しないか心配なほどである。その気概や良しと二重丸を上げたいところだが、問題は亀井静香・金融担当相の、中小企業融資やサラリーマンの住宅ローンの返済に対して金融筋が3年間猶予する法案立案を検討させていることである。これは、確かに中小企業等にとっては朗報であろうが、金融機関にとってはきつい。民間の商業活動に対して国家が法律で縛るのは問題ありとする不安説がある一方で、金融機関が今後貸し渋りを増やすのではないかとの懸念材料もある。それにしても、大臣が代わっただけで今まで大して騒がれなかったことが、一気に法律化という短兵急な事態にまで発展しようとは、まさに驚きである。もう少し静かにやってもらいたいものである。この調子だと、また別のところで別の問題が噴火しかねない。
今日の朝日夕刊の一面に、「行政刷新会議事務局長、加藤秀樹氏を起用へ」と出ていた。加藤氏の肩書きに「構想日本代表」とある。加藤氏には何度もお会いしている。堅実に「構想日本」を影響力のあるシンクタンクに育て上げてきた。度々セミナーにも出席したが、明晰な頭脳で歯切れの良いスピーチは垢抜けている。
本当に加藤氏が新ポストに就くなら、確かに適任であろう。最近は、中央、及び地方自治体における「構想日本」主導の「事業仕分け」が功を奏しつつある。実績を上げていた「事業仕分け」を国家的に実施できれば、どれだけ国の財政にとって救いとなるか。国家予算の1割を削減できると言っておられるので、ぜひやってもらいたい。
865.9月25日(金) 裁判員制度は時期尚早か?
50年前の明日、伊勢湾台風が紀伊半島から中京地区を襲い、1日にして5,000名を超える犠牲者を生んだ。あの時の猛威は胸に強く焼き付いている。小中陽太郎さんもNHK名古屋に勤めていた時、報道現場に出て犠牲者の家族が遺体を焼くシーンを見て強い衝撃を受けたと仰っていた。
今日駒沢大学の講座で、清田義昭講師が見せてくれたドキュメンタリー・ビデオ「出所した男」には深く考えさせられた。清田講師は冒頭今年から実施されている裁判員制度について疑問を呈した。時期尚早だというのである。このままだと冤罪が多くなることを心配されていた。そう述べた後に、このビデオを鑑賞することになった。7年前に毎日放送が制作した作品で、地味な作品だがいくつかの賞を受賞したものだそうである。浜松市に住む河合利彦という42歳の元殺人犯の再審手続きを追ったものだ。内縁の妻の連れ子を殺害した罪で起訴され、女の「河合が殺した」の一言で、その翌日女を信用していた河合は自白してしまう。問題は、河合の自白直前に女が罪を認めたにも関わらず、女の自白のテープは秘匿され、作為的な監察医の報告書により立件されてしまう。その後に件の監察医の診断より、見識のある別の監察医が、殺害時間から推して河合殺害の不自然さを報告した。それを受けて河合は最高裁へ上告した。結果はその監察医報告は信用できないという理由から、再審却下となった。女は罪を問われず、河合は10年の刑期を終えて出所したが前科者のままで終結となった。
心が重くなるドキュメントに考えさせられた。講師が心配する、裁判員制度により冤罪が増えるとの懸念は、次の理由からである。裁判に関して素人の市民は、罪への意識と被害者への同情が強くなり、それが犯人を成敗する気持ちに変わり、死刑制度を採用しなくなる世界的風潮の中で、ともすると罪を重くする傾向に傾き、仮に死刑に値しなかった犯人に死刑を課した時、冤罪となる恐れがあると危惧しておられた。確かに講師が言われたことも理解できる。私も一般論として、まだ裁判員制度導入には、まだ環境整備が充分でなく検討課題が多すぎると思う。すでに走り出した制度ではあるが、これまで表に出なかった裁判官と検察との取引等も洗いざらい公開して、ひとつひとつつぶして行くような愚鈍な進め方も考えてみてはどうだろうか。
866.9月26日(土) 学生相手の講義は楽しい。
昨年に続いて、池袋にある東京交通短大の「平成21年度特別教養講座カリキュラム」の一環として学生相手に講義を持った。昨年は少々時間配分に失敗して時間が足りなくなってしまったので、今日は昨年よりパワーポイントのスライドを大幅に減らし、最後に時間調整の出来るスライドを一枚入れた。与えられた1時間半の制限の中でどんぴしゃりだった。100名弱の受講生だったが、今日が2学期最初の講座ということもあって、学生の目は輝いていた。話し甲斐もあった。尤もここの短大生の就職先としては、鉄道会社や旅行会社が概して人気があるようだ。その点で、私の鉄道会社員と旅行会社員としての経験は、大分参考になると考えられ、元部下だった桑原賢二助教に誘われたものだ。
テーマは「現場から真実をつかめ!」としたが、あまり人気を呼ぶような、派手なテーマではないと思われたかも知れない。ただ、学生たちの期待を裏切らない講義はできる自信はあったし、他の講師には絶対不可能な材料、コンテンツ、そして体験を持っていると確信していたので、珍しい写真を交え、臨場感について実体験を織り交ぜながら話し続けた。特に、臨場感を覚れば、危機意識も身についてくるし、危険予知も出来ると話した。その一例として、私自身がカイバル峠を訪れ、そこで銃砲店が流行っている状況を目の当たりにして、反米テロ、とりわけニユーヨーク同時多発テロを予知したことを述べた時には、目を光らせて見つめてくれた。これも臨場感のある話の例だが、赤裸々な実体験が若者には興味があると痛感した。若い学生を相手に自分の破天荒な経験を話すことができるのは、実に楽しい。
学生たちを見ていると結構楽しんで聞いているように見受けられたので、時折り脱線しながらもある程度まとめられたと思っている。
ここの学生が礼儀正しいのには感心した。最近の若い人はあまりエチケットというか、常識も備えていない人が多いが、顔を会わせると目礼してくれたり、ひとりひとりきちんと挨拶をしてくれる。ごく当たり前のことだが、中々できないのが当世の若者である。その点でも楽しく有意義な一日だった。
867.9月27日(日) 鳩山外交に成果あり
昨夜鳩山首相が帰国された。最近の日本の首相外遊でその大きな存在感を世界に示したのは、今回の鳩山訪米が断然際立っていたと思う。ほとんどの国民も今度の訪米の成果を喜んでいる筈である。
実績は大きくいって二つあると思う。その第一は、2020年までに1990年対比25%減の排出ガス削減を世界に向かって宣言したことである。この数値目標は、目標を示せなかったアメリカや中国をもたじろがせたのではないか。第二は、国連総会会議場で世界へ向かって核不拡散、核廃絶へ向かって進もうと強く呼びかけたことである。いずれも実現できるかどうか、課題は多いが、それでも内に秘めているだけではなく、はっきり世界へ向かって意思表示することで、自分にも責任感と義務感を持たせて、空気をその方向へ向けて努力することは最も大切なことである。
これで世界の日本、また鳩山首相に対する見方が大きく変わり、今後は一層注目されるようになるだろう。国民にとっても、何となく力強い気持ちになる。ともするとこれまでは、日本の首脳はおざなりのスピーチしかしないで、お飾りという空気だった。残念ながら説得力はまるでなかった。なまじ金持ちであることから、その金庫のおかげであまり外国から厳しい批判を受けることはなかったが、心ある外国人からは、主体性がなく自分の意見を述べないのが典型的な日本人と見られていただけに、各国首脳から賞賛され高い評価を受けたことは、これまでの「黙して語らず」からの脱却であり、大人の行動と言ってもいい。これからが鳩山外交の正念場になると思うので、今回と同じペースで鳩山流の存在感を示し続けて欲しい。
鳩山首相が外交で活躍している間に、国内では新閣僚が所管事業について積極的に行動している。その最たるものは、国土交通省の前原大臣である。一昨日は中止を決めた八ツ場ダム現場を訪れ、地元関係者に中止の方針を伝えた。昨日はすでに熊本県が建設中止を決めていた川辺川ダム現場を訪れた。今後ダムの建設について、ひとつの基準と方向性が示される試金石となるので、各ダム現場も注視している。それにしても、ダム建設中止問題は、進むも地獄、退くも地獄の典型的なパターンである。八ツ場ダムに至ってはほぼ建設資金の7割を投資してしまったので、引っ込みがつかない。仮に建設を止めても今後諸々かかる経費が、引き続き建設続行の場合に使われる費用を上回るという馬鹿げた話だそうだ。政権が交代したからとの理由だけで、地元住民を悩ませ、巨額の税金を注ぎ込んで無駄にして、この責任を政治家や国交省はどう取るというのか。
この財政難の時代に無駄に税金が使われるのだけは、もう願い下げにして欲しい。
868.9月28日(月) オムロン社から理解不能の商品説明
敗軍となった自民党の次期将軍を決める自民党総裁選挙が行われ、元財務大臣・谷垣禎一氏が選出された。64歳の谷垣氏に対して、対立候補の河野太郎氏と西村康稔氏はともに46歳で、古い体質だった自民党も漸く世代交代の芽が見えてきた。これからは世代交代がどんどん進むことだろう。谷垣氏が自民党員6割の支持を受けたことは、若手の二人があまりにも激しく年長者の退場を促したことへの反感もあるのではないか。いずれにせよ惨敗を喫した自民党がこれから、どう体制を建て直し、国民の信頼を取り戻していくのか、麻生総裁に比べれば、よほどまともな谷垣氏の双肩にかかっている。ここは、しばらく谷垣氏のお手並み拝見といきたい。
さて、20日の本ブログに取扱説明書の分かりにくさについて書いた。早速万歩計の製造会社・オムロン社へ電話してみた。ところが、always busyでつながらず、止むを得ず取扱説明書について不満を書いたブログを読んで欲しいということと、当方の憤懣やるかたない気持ちを書いてFAXを送った。4時間半後にオムロンヘルスケア鰍フお客様相談室の担当者から丁重な返事が送られてきた。だが、冒頭の時候の挨拶文からして間違っている。9月末にもなって「向暑の折から〜」もないだろう。鸚鵡返しに返事を書いている習慣から、手紙に向き合っていないことが推察できる。それでも私のブログを読んでくれたという。質問の中に説明書では分からず、これでは苦情が寄せられるのではないかと尋ねたが、やはり顧客から苦情がたくさんあると書いてあった。それはそうだろう。苦情があって当然である。
もうひとつ、近くにオムロン直営店があればそこへ行って教えてもらいたいとの質問には、NOとあった。東京にはサービス・ステーションがないらしい。その代わりに改めて使い方が書かれてあったが、時間の合わせ方以外はやはり分からなかった。妻も分からない。使い方なら簡単に書ける筈だが、オムロン社員の中には素人に分かるように説明できる知恵のある人がいないのだろうか。しかし、これではあまりにも顧客に対して失礼だし、無責任である。消費者がいくら努力しても使い方が分からない商品を製造し販売しているわけだ。
どうして顧客へのサービスにサービス・ステーションぐらい開設できないのか。これでは売りっぱなしで、売った以上後は買った人が自分で考えろと言っているようなものではないか。酷いものである。こんなことが一流の企業として許されるのだろうか。オムロン社の販売姿勢を問いたい。結局中途半端のまま万歩計を使うことになるが、いつまで我慢できるか。いくら読んでも理解できないということは、メーカーに購買者に分かってもらおうとの気持ちがないことと、説明がうまくないからだ。これはもう欠陥商品と呼んでもよいのではないか。いずれ近いうちにこういう欠陥商品を売りっぱなしにしている会社の不条理について、消費者センターに問い合わせてみようと思っている。
869.9月29日(火) 官僚の天下り禁止が動き出した。
新内閣のスピード感のある仕事ぶりは、極めてすっきりして爽快感がある。ただ、一気に旧習を変えたりするとひずみが出たり、反感を買ったりして逆効果になることもある。これまで散々役人のやりたい放題に頭にきていた国民にとっては、とりあえず痛快事が多い。
その中で官僚の天下り早期退職禁止は、マニフェストに盛り込まれており、首相方針として早速具体化する考えだ。独立行政法人理事長への天下りは認めないことを決めたようだ。
さて、昨日の日経朝刊に元鳥取県知事の片山善博・慶大教授がインタビューに応えていた。それによると、官僚組織の硬直化の元凶は事務次官ポストだそうだ。元自治省役人だった人だけに、役所の内情に詳しい。こうも言っている。「今までの大臣は省庁のトップではなかった。事務次官が実質的な責任を取っていて、OBになっても影響力を行使している。大臣が責任を取り、幹部職員の人事もやるようになれば、官僚組織の頂点である事務次官はいらない」そうである。事務次官だけでなく、審議官なんてのも要らないのではないか。一般の公務員についても「国家公務員はいまだに成績至上主義です。今の職員は社会主義や弱い立場の人への思いやりが欠けている。志や正義感、気迫などにあふれた若い人をもっと採用すべきである」と的を射た言い方をしている。そして、この片山教授が、「予算編成のあり方検討会」の委員として深く関わるということだから、これからは役人の傲慢な振る舞いは許されないのではないか。大いに結構である。
昨日の夜日本テレビのニュース番組「ZERO」で「核疑惑のイラン大統領を直撃・・・」と前宣伝され、実際村尾信尚キャスターが、とかく国際社会を惑わせるアフマディネジャド大統領にインタビューした。どんなインタビューになるのか興味津々だったが、質問はたったのひとつしか許されないうえに、もっと驚いたのは取材現場だった。村尾氏とカメラマンが一室に入ってそこでソファに座って対談かと思っていたら、何と二人の入った部屋にはテーブルやソファなんかなく、立ったままで、更に驚いたのは、その部屋の入口に大きなテーブルが持ち込まれ、バリケードで押し込められた形になった。そこへ大統領が通訳とともに、大勢のSPを連れてバリケードの向こう側にやってきて、たったひとつ核開発について質問をするという、前代未聞のインタビューになった。たったひとつの質問だけでは踏み込んだ取材とはならず、看板倒れのインタビューとなった。
まったくこのイランの大統領には世界中が振り回されている。
870.9月30日(水) ドナルド・キーンさんの日本文学熱に脱帽!
アメリカ領サモア諸島近海でマグニチュード8.3の大きな地震があり、日本でも津波警報が出された。昭和35年のチリ沖地震の際には、発生後22時間を経て北海道に津波が押し寄せ、函館駅まで海水が達した。5年前にインドネシアを襲った津波の脅威を思い出す。
今朝の朝日新聞に一頁全面を使って日本文学者ドナルド・キーンさんのインタビュー記事が掲載されている。内容も中々面白いし、教えられることが多い。お元気そうだが、87歳のご高齢と知り、その好奇心には驚くばかりである。2年前の小田実さんの葬儀では、確か弔辞を述べられた。その後小田さんを偲ぶセミナーでもスピーチをされた。小田さんの英訳本も出されている。
インタビュー記事を読んで、初めて知ったことも多い。日本人が大きくなり、それは国際化と共通していると述べている。しかし、グローバル化が進む一方で、日本人の外への関心も薄れたと感じておられるようだ。
「日本人の友人で最も国際的だったのは安部公房」「明治時代の日記文学の傑作は石川啄木の『ローマ字日記』」「永井荷風に会った時、すばらしい日本語で話をするのに感動した」「外国人に日本の小説を一冊推薦するなら、谷崎潤一郎の『細雪』」「ものを書く人は古典文学を学んで欲しい」と痛いことも言っている。私の場合「ものを書く人」と言えるかどうか何とも言えないが、30年前に初めて韓国・扶余市を訪れ瓦博士として知られた、李石湖博士宅を訪れた時、博士からも「日本書紀をぜひ読みなさい」と同じように古典を読むことを薦められたことを改めて思い出す。
それにしてもキーンさんの日本語は見事である。日本文学を学んだのはコロンビア大学だったが、その時習った日本人の先生を尊敬し、大きな影響を受けたという。日本文化を高く評価するキーンさんは、日本はヨーロッパの文化より水準が高かったと仰る。中国人は外国人を尊敬せず、外国のことを知ろうとしない。日本人は外国のことを正しく知ろうとする気持ちが強かったことが日本文化のレベルが高い原因だと分析している。キーンさんは日本文学を読んで読んでやっと日本文学の真髄が分かるようになったように思う。そのキーンさんは日本の小説が最も花開いた時期は、戦後の10年間だと見ている。その中で、谷崎潤一郎、永井荷風、志賀直哉、太宰治、三島由起夫、安部公房を評価している。一応私もそれぞれ読んではいるが、キーン先生にはとても敵わない。脱帽!