2008年5月

3532008年5月1日(木) 静かなメーデーは何を意味するのか。
  今日5月1日はメーデーである。ほんの少し前までは、労働者が赤旗を振って労働歌を唄いシュプレヒコールを繰り返しながら練り歩くのが、この季節の風物詩だった。そして、社会全体のエネルギーでもあった。かつては総資本と総労働の対決とまで言われ、労働者は学生まで巻き込んで賃上げ、そして未来の平和と福祉国家建設を希求して資本家に対抗したものである。それが社会主義体制の崩壊によって、いまや労働運動は年々下火となり、細々と遠慮しながらデモ行進をしている情けない状況となり、社会への訴求力も弱まった。つくづく時代の流れを感じる。
   一方、労働運動に関心を示さなくなった学生たちは、何をやっているかと言えば勉強しているわけでもなく、社会に関心を抱くこともなく、一部の真面目な学生を除くとほとんどがアルバイトと遊びに熱中して、国の将来なんかまるで考えていないように思える。他人ごとに関わることを避け、世の大きな流れから一歩距離を置いている。過保護に慣らされ、わがまま三昧に育てられてきた後遺症であろう。
   周囲に混乱と錯綜が入り混じってはいたが、熱気に溢れていたわれわれ六〇年安保世代とは、大きなギャップがあるようだ。近年学生の読書量は随分減ったと言われている。基本を学び知恵をつけた骨っぽい学生は影を潜め、小賢しく理に敏い若者が増えた。世の中は次第に白けていき、抜け殻のようになった。何とかしないといけないと思う。学生を主とする若者が元気のない社会は、活性化しないし、発展しない。いまの混乱した社会がそのことを象徴している。
 東京都の月刊広報紙に「広報東京都」という八頁のタブロイド判がある。今月は全フロンドページを使い、「新銀行東京への追加出資について」と題して、先ごろマス・メディアを賑わした400億円の追加出資に関する都の説明と言い訳記事を載せている。すでにマス・メディアで散々言い尽くされているが、骨子は@経営上の問題点、A中小企業を守るために追加出資が最善の策、B銀行による自主廃業と預金保険法の破綻処理は多額の損失を発生させる、C新たな体制で再建させ、平成二三年度には単年度黒字化を目指す、というものである。強気の石原慎太郎知事の「旧経営陣の非常識な経営の舵取りにより、予想を超える不良債権が発生した」と、相変わらず責任転嫁の姿勢は変わらない。高校の先輩である石原知事ではあるが、近年理路整然とした説法ではなく、わがままむき出しの感情論で突っ走る傾向が強い。昨今の傲慢で周囲の意見に耳を貸さないパフォーマンスでは、いずれ都民は信用しなくなり、取り巻きは良いことしか耳に入れなくなり、ついには裸の王様になってしまうことが分からないのだろうか。
 さて、今日は一件意外なことがあった。いま流行りの「振込み詐欺」である。新潟に勤務している次男を騙った「おれおれ」である。驚いたのは、1〜2日前に○○から電話があったら、連絡先を聞いておいてほしいという偽息子から電話があった。これが今日の伏線である。今日はそれを確認して、まだ連絡がないと言ったら、実は連帯保証人になったとか、○○はトンズラして債務の肩代わりをしなければならない、消費者センターに相談した、弁護士を紹介してもらった、裁判所から和解の話があった、と立て続けに話が進められ、途中で疑問を感じて本人かどうかの確認を求めたら、その辺りから相手も警戒したようだ。結局息子に携帯で確認して真相が分かったが、話の誘導の仕方といい、事前の話といい、声質といい、かなり馴れている。最近「振込み詐欺」の被害が増えているらしいが、ついにわか結界へも入り込んできた。遠いところにあると思っていたことが、あっという間に目の前に転がり込んでくる事態に油断ならず、空恐ろしい時代になったものである。
3542008年5月2日(金) 福田政権は末期症状か?
 案の定、朝日の世論調査で福田首相の人気が、ついに20%にまで下がった。毎日では18%である。日経では21%だそうだから、いずれにせよ平均して5人に1人しか福田政権を支持していないことになる。こんな低い支持率は、あの‘お坊ちゃま’首相・安倍晋三の最悪の時代にもなかった。竹下首相と森首相の退任直前の9%以来だという。この行き詰まった事態を打開する手立てが、福田首相にはあるのか。自民不人気のせいで、漁夫の利をさらったのは民主党である。支持率は自民党を抜いた。しかし、民主党の政策や、実績が支持されたわけではない。いうなれば、自民党のオウン・ゴール(自殺点)である。今回のガソリン税暫定税率問題にしても、結果的に国中を大騒ぎさせ、国民に迷惑をかけ結局元の鞘に収まっている、大騒ぎの責任は自民党ばかりでなく、全国会議員にある。民主党はもちろんのこと、共産党や民社党にも責任の一端はある。全国会議員に猛省を促したい。解散して民意を問えとの声が圧倒的に多いが、のらりくらりの福田首相はどうするのか。
 さて、前から問題視されていた静岡空港が来春の開港を前に、早くも赤字経営必至と言われている。これも発想において道路政策と変わりない。しかし、道路と違ってその必要性ありやなしやの議論が遠ざけられ、地元の中でも反対意見が強かったという。東京・名古屋間の大動脈の最高の立地にあり、既存の交通機関に恵まれ、地理的に空港を必要としない土地に、「なぜ空港なんか作る必要があるのか」との反対の声を敢えて押し切って着工した。新幹線が益々便利になるいまでは、新空港利用者はあまり期待できない。全発着便満席であっても黒字にはならないという、アダム・スミスも真っ青な計画を強引に実行した。この赤字は、国と静岡県が負担することになる。こうして、国家財政と地方財政はますます疲弊していくことになる。十年一日の如く、いつまでこういう馬鹿げたプロジェクトを「発明」し、税金の無駄遣いを続けるのか。
  ところが、この馬鹿げたプロジェクトにお追従する、よりアホな県があると聞いて開いた口が塞がらない。再来年春茨城空港が開港する。航空自衛隊百里基地滑走路に平行して、新滑走路を敷く。アホな茨城県は、「首都圏の北の玄関」として経済波及効果を期待しているらしいが、航空会社の関心は低く、全日空は羽田空港とは勝負にならないとつれない。当たり前だ。こういう無駄な空港を計画するお馬鹿さんの脳みそを覗いてみたいものである。
3552008年5月3日(土) 憲法審査会は何をしているのか?
 ゴールデンウィークも真っ盛りで、TV各局は交通機関の混雑した様子や、成田空港の海外旅行客、各地の天気予報、スポーツイベント等々中々賑々しい報道ぶりである。ところで、あまり大々的に報道されないが、今日は61回目の憲法記念日なのだ。GW休みで一昨日からガソリン代の値上げにも拘らず、郊外へ出かける人たちはどれだけ憲法記念日を意識しているだろうか。
 安倍政権時代に勢いのあった改憲の熱気も、このところぐっと冷えて、昨年春国民投票法案まで可決しながら、その後改憲の動きはさっばりだ。どうもあと一押しが出ない。国民投票法では衆参両議院に憲法審査会を設置することが決まった。しかし、ここから先へ進まない。昨年は勢いに乗って、本当に憲法改正まで突っ走りかねなかった。しかし、国民投票は決まったが、何歳までの国民に選挙権を与えるのか、具体的に肝心な点がまったく決まらなかった。最後の詰めが甘いのか、どうも熱しやすく冷めやすい性格は相変わらずだ。何のための国民投票法だったのだろう。いざという時に肝心なことが決められていない事態に、また肩透かしを食うようだ。安倍首相の病欠の事態に、首相代理職を置くという話があったが、それもすっかり忘れられてしまった。
 朝日の世論調査によると、憲法改正を必要と考える人が56%、必要ないと考える人は31%、しかし、9条の改正に反対する人は66%もいる。つまり現憲法には、国際社会の中で内容的に問題も出ているので、ここいらで議論しようということを言っているように思う。だが、憲法9条の改正には明らかに反対している。こういう意見を政治家はどう汲み上げるのか。もっともこれまでにも憲法違反を繰り返してきた自民党政権だから、9条改正反対の声が上がっても大して問題にもしないだろう。
 それより今朝の日経紙社説は、憲法改正でいまの二院制を抜本的に見直そうと提案している。どうも憲法改正というと何でもかんでも、9条の削除は戦争へつながると短絡的に考えがちだが、日経はもっと基本的な点を取り上げ、現行の二院制度は憲法の最大の欠陥であると指摘して、議院内閣制がきちんと機能するよう憲法を改正すべきであると主張している。要は、諸外国の二院制に比較してもわが国のそれは、機能を充分果たしていない、参議院の権力が強すぎて本来の二院制の意味を成していないという。参議院の選挙制度も抜本的に見直すべきであると提言している。
 とにかく、憲法問題は聖域に押しやられてはまずいと思う。昨年の国民投票法成立を機会に、何の動きもない憲法審査会がそろそろ前向きな議論を始める時が来ているのではないか。
3562008年5月4日(日) 長編時代小説「大菩薩峠」を観る。
 大分前から観たいと思っていた、中里介山の映画「大菩薩峠」を観た。先日NHKで放映された番組を録画しておいたものである。私が初めて海外へ出かけた、昭和41年に製作された岡本喜八監督作品だから、かなり古い。三船敏郎、西村晃のように、すでに故人になった有名俳優が大勢出演していて、主役の仲代達矢や加山雄三もまだ若い。「大菩薩峠」は、中里介山が世界最長を目指して書いた長編小説で、大正2年から昭和16年まで、約30年に亘って複数の新聞に連載した41巻の未完の大作で、作者が亡くなって連載は終わった。長すぎて中々読む機会がなく、せめて映画でも観てみようと思っていた。どうも同じように考える人が多かったと見え、戦前から度々映画化され、名優大河内伝次郎や、片岡知恵蔵らも主役として出演している。大菩薩峠という名に憧れ、実際に登ったことがある。あまり登山向きの山というイメージではなく、むしろハイキングに向いた、登りやすい山という印象だった。しかし、目前に雪を冠した南アルプスの峰々が素晴らしいランドスケープを見せてくれたことが強く印象に残っている。
 長編小説なので、映画ではストーリー全編を取り入れるのは難しいとは思っていたが、やはり相当割愛されている。この映画では話の筋をどう決着をつけようとしたのか、中途半端な印象がぬぐえない。主人公の机竜之介が新撰組の宴会で狂ったように暴れまわったまま終わったラストシーンはどうにも納得できなかった。課題が後へ持ち越されたようなエンディングである。原本では、まだ脇役が入れ替わってストーリーは続く。しかもつけ狙っていた宇津木兵馬が近くで待機しているし、始まったばかりの兵馬とお松のラブストーリーの結末はこの先どうなるのか。映画のシナリオがどうも腰砕けのような気がしてならない。実際、竜之介と兵馬の決闘、とストーリーの結末はどうなるのだと聞きたい気持ちである。主人公竜之介は生き残って極悪非道の殺人を犯し続け、ついには故郷近くで夜毎に辻斬りとして現れる。その辺りは映画ではまったく触れていない。やはり30年近くも世間に話題を提供しながら、連載された小説では、スケールが大きすぎて映画のスクリーンには納まり切れなかったのだろう。
 最近は映画もまったく観なくなってしまったが、先日来話題の「靖国」も昨日から厳重警戒の下で一般に公開されている。この「靖国」も機会があれば、是非とも観てみたいと思っている。
3572008年5月5日(月) 少子化と教育問題をどうとらえるか。
 こどもの日である。いまや少子高齢化で、こどもの数は年々減少している。その分、こどもは大切にされ、やや過保護気味になってきた。しかし、これはあくまで表面上のことで、その陰でこどもに対する養育放棄や、こども虐待事件が後を絶たない。児童相談所も問題を抱えすぎて、手に負えないところも多いようだ。
 戦後しばらくベビーブームと呼ばれ、児童数も毎年うなぎのぼりに増え、昭和24年には、270万人の新生児の誕生があった。昨年は、新生児の誕生がやっと100万人を超える程度で、ピーク時に比べて4割程度にまで減ってしまった。かつてのベビーは団塊の世代と呼ばれるようになり、いまや彼らのこどもたち、団塊ジュニアが問題児になっているケースが多い。
 教育面で評価の高いフィンランドでは、一人の女性が一生に産むこどもの数は、1.84人で日本の1.32人を大きく上回っている。1970年には、日本が2.2人で、フィンランドは1.8人だった。この背景には、女性がこどもを育てるための厚い保護や、教育予算の拡充がある。その裏づけとして、北欧諸国は概して税金、とりわけ消費税が高い。ほとんど2225%で、高負担・高福祉が徹底している。しかし、国民はそれを支持している。税金は高くても必ず自分たちに還ってくると信じている。この点が重要なポイントだと思う。高負担が結果的に国民の福祉向上、教育水準上昇に貢献していることを国民が納得し、支持している。高邁な政策を打ち出して、実行できる仕組みをしっかり構築できるかどうかが大切で、北欧の国民は政府を信頼し、政策を委ねる。この点では残念ながら、わが国はとても難しいと思う。税金を上げても消えてしまったり、無駄に使われるのがはっきり分かっているからである。それに、政治家が福祉問題にまったく熱意がなく、勉強せず、教育についても問題点そのものが分からないようでは、とても頼りにすることができない。
 フィンランドの教育施設を見学したことはないが、見学したスウェーデンや、その他の欧米の教育機関を訪れた後の率直な感想は、学校現場においても彼我の差は、その関係する役所の差ではないかと思えたことである。日本の教育現場があまりにもお役所的に強請されているような印象を受けた。こども本位ではなく、先生が教育より書類作成に時間を費やしている。こどもの時に読むべき本は読まず、マナーやエチケットを学ぶこともなく、塾が氾濫してロボット化した頭でっかちの子が溢れている。これでは、世の中に愛情、情熱、思いやり、創造性、独立心に欠けた、嫌なガキがのさばるのも分からないでもない。
3582008年5月6日(火) 胡錦濤国家主席来日とビルマのサイクロン
 胡錦濤・中国国家主席が来日した。チベット問題と北京五輪が話題になっている折柄、世界中が主席の言動を注目しており、日本政府としてもその対応が中々難しい。日中両国間には、東支那海ガス田開発と毒入り冷凍ギョーザ事件の未解決問題がある。いずれも中国側に問題があると思えるが、日本はそこをずばっと突けない。外交交渉がまったく下手で、外交の何たるかが分かっていない日本の政治家と外務官僚では、いつまで経っても解決は無理だろう。
 胡錦濤主席は4日間ほど滞在するようで、その間に福田首相と会談するが、チベット問題で事を荒立てたくない日中両首脳は、肝心の点をぼかすのではないかと思う。10年前に江沢民主席来日の折には、江主席は過去の歴史問題ばかりを取り上げて、日中関係をこじらせた経緯もあり、今度はあまり踏み込んだ話し合いにはならないだろうというのが専門家の見方だ。ということは、中国側の立場を容認することになりかねず、海外から日本を見る目が厳しくなる心配がある。
 それよりいま個人的に気になっているのは、ビルマのサイクロンによる被害状況である。ビルマ駐在の外国人マス・メディアが少ないので、詳しいニュースが伝わりにくいが、今月3日に襲来以来毎日被害者数が増え続けている。最初が死者350人、翌日には3,000人になり、昨日10,000人になり、今朝15,000人から夕刻には22,500人になった。加えて約4万人の行方不明者が出ている。細々写る映像を通して見える、吹き飛ばされそうなラングーンの街が哀れである。この国の一途な外交の背後に、中国の影があるのも皮肉である。
 意地を張ったビルマ軍政は、国連救援部隊の入国を拒否していたが、ビルマ国内のライフライン停止、道路輸送の途絶、食糧不足、衛生薬品不足など国民生活の停滞により、ついに国連の援助を受け入れると発表した。10日に新憲法承認のための総選挙実施が危ぶまれていたが、軍政は意に介することなく予定通り選挙を実施する予定だった。しかし、さすがに国内にこれだけの被害を蒙ると、選挙にこだわってもおれず、とりあえず被災地区では選挙を延期するらしい。新憲法と総選挙に世界中の厳しい目が注がれている折に、このような災害を蒙るのは、天罰とも言える。軍政はもっと素直になって、国際社会の声を聞き入れ、民主化を進めなければ国際社会が国家として認めないだろう。いまの状況では、ただ優しい国民が哀れに思えて仕方がない。
3592008年5月7日(水) 胡錦濤・中国国家主席の本音はどこに?
 午前中皇居で天皇、皇后両陛下が胡錦濤・中国国家主席を歓迎する式典が中継放送され、その後両国首脳会談が行われ、記者会見、そして夕べには天皇主催宮中晩餐会が行われた。この間両国が話し合った内容が断片的に伝えられた。実質的な成果があったのは、中国側がパンダのつがいを日本に貸与するという政治とはまったく関係ないものだけだった。
 両国の首脳が会談しながら、何がゆえに実質的な成果をあげさせないのか。お互いへの奇妙な遠慮である。かつて初めて田中角栄首相が中国を訪問したとき、最後に田中首相と会った毛沢東は、「もう喧嘩は済みましたか?」と尋ねたことが当時話題になった。つまり、良き友人は相手にとって厳しい意見やアドバイスを言い、解決した後は喧嘩を水に流してお互いに友情を育てるという中国古来の格言に倣ったものだ。
 それに比べると、胡錦濤主席も福田首相も籠の中の儀式で、しゃべる言葉もブレーンが作成したものをそのまま読んでいる感じだった。これでは、いま両国間に横たわっている@東支那海ガス田開発、A冷凍ギョーザ問題、Bチベット問題、C北京五輪開会式福田首相出席、ほかについて腹を割って話し合ったということにはならないのではないか。
 日本は、胡錦濤主席にうまく利用されているのではないかとの考えがある。ヨーロッパ諸国から厳しい見方をされている中国が、日本と外交的に良い関係にあって日本の支持を得ているというPRではないかとの声である。
 したたかな中国と日本が渡り合うのは、中々大変であるし、現在の力関係とか個人的な能力を考えると日本には分が悪い。日本の外交下手は、政治家がほとんど世襲議員で、自ら苦労した体験がなく、周りにすべてのお膳立てをやってもらう環境の中で育ってきた人たちだからである。
 日本滞在中にどんなサプライズがあるのか。
 ロシアでは、今日プーチン大統領が8年間の大統領職を退き、メドベージェフ新大統領が就任した。明日プーチンが首相に就任して、いよいよわけが分からない二頭立て政治がスタートする。この国も何を考えているのかよく分からない国である。
3602008年5月8日(木) 酒井啓子教授によるイラク講座
 多摩大学・現代世界解析講座第三回は、イラク問題に詳しい酒井啓子・東京外大大学院教授の「イラクを巡る国際情勢」と題する講義である。酒井講師は、アジア経済研究所主任研究員として、イラク戦争勃発の際、連日テレビに出演されていたので、いまも知名度は抜群だし、当時は歯切れの良い解説に随分理解を深めさせてもらったものである。
 80年代に3年間も研究者としてイラクに滞在し、戦争直後にも現地を訪れているので、現地情勢に詳しく、現地の人と同じ目線でイラク情勢を観察し、アメリカに対しても真っ当で、結構きつい意見を持っておられる。いま読んでいる岩波新書「イラク・戦争と占領」でも、戦争直前に戦争へ向かう段階的なイラク内外の動きについて詳細に分析している。
 今日の講義で、特に印象的だったのは、隣国同士ではあるがアラビア人のイラクと、ペルシャ人のイランの異質な点を挙げて、両国民の民族的な違い、イラク人のイラン人に対する考え、等について話された。イラク人は戦後アメリカが去った後に、国内でイラン人につけ込まれることを心配している。現在のマリキ政権の要人は、ほとんどイランとつながっている。彼らはフセイン政権下でイランへ亡命し、何十年間もイランで生活し、イランの協力も得た人々であり、イラン的思考に染まっている。イラク国民としては、イラク人とはいえ、そういう人たちに支配されることと、しばらくアメリカ軍が駐留することのプラス面を天秤にかけている。
 変わったところでは、フランス・サッカーのジダン選手と日本ハムのダルビッシュ投手のイスラム教徒論まで話され、中々面白かった。
 ささいなことだが、2点気になった。ひとつは、質問を受けるということを多摩大学学部長が開講前に突然言われたが、その時間はほんの10分。これだけの講義内容でたった10分とは常識的には考えられない。こんな僅かな時間では、最初から中身の濃い質疑は無理に決まっている。案の定質問者は一人だけだった。受講している飯田ゼミの遠藤靖子さんも、イラクの女性について質問したかったと言っていたくらいだ。
 もう一点は、酒井講師から事前に配布されたレジュメが、「11月7日、龍谷大学」とタイプされていた。いくらなんでも半年前他大学で行った講義のレジュメをそのまま配る、無神経はちょっと理解できない。この表示を削除するとか、タイプし直すとか、もう少し気を遣ってもらいたい。
 しかし、講義内容はさすがにイラク専門家で充分期待に応えるものだった。お陰であまり聞けない専門的な知識を直接仕入れさせてもらった。この後のセミナーにも期待が持続される。
3612008年5月9日(金) この世はおかしなことばかり。
 ロシアも、中国もどうもおかしなことをやっている。昨日ロシアではプーチン前大統領が首相に就任した。メドベージェフ新大統領に任命されたものであるが、大分前からきな臭い動きはあった。大統領職を禅譲されたメドベージェフ政権は、実質的にはプーチン首相による院政で、プーチン首相自身がかつてほしいままにした強大な大統領権限を、次から次へ封鎖して首相権限へ移行し、思い通りに政治を操っている感じである。昨日の日経紙に依れば、プーチン大統領は離任直前に州知事など地方自治体首長の人事権を、事実上大統領から首相に移す大統領令にも署名していた。これも明らかにプーチン氏のしたたかな計算によるものだ。これで地方の政治家が忠誠を誓うのは、メドベージェフ氏ではなく、プーチン氏だということがはっきりした。まあ、よくやるなと思う。こんなことまでされても、メドベージェフ氏は大統領になりたいのか。げに恐ろしきは、名誉欲と権力欲である。
 一方、中国も北京五輪成功のためには何でもありだ。問題の聖火リレーが海外で終わり、いよいよ国内で始まったと思ったら、あっという間にチョモランマ頂上の聖火リレーとなった。中国国内では、中国ナショナリズムが盛り上がり6時間も生中継をやっていたという。しかし、本当かな?というのが、実は率直な感想である。頂上の聖火をどうも手放しでは祝福できない。下衆の勘ぐりかも知れないが、本当に約10名のリレー走者チームが一辺に登頂したのだろうか。チョモランマというのは、仮にも世界最高峰・海抜8,848mの英名エベレストであるが、そんなに簡単に登れるのかという疑問がある。たった一人でも登頂するのが至難な英雄的偉業であるのに、団体で聖火を携えたパフォーマンスをやって、団体でいとも簡単に(?)登頂成功である。本当かなぁ? しかも、頂上で聖火を点した(された)のがチベット人女性というのが、何やら怪しい。「中国の、中国による、中国のための北京五輪」成功のために、国家総動員で田舎芝居を演じているように思えて仕方がない。
 どうも、近年は普通で、ごくまともな社会がどんどん消えつつある。嫌らしい傾向である。
 さて、今夕のテレビニュースで報道されたが、広島県の公立高校入学試験で、学業成績、内申書は合格点に達していたが、県教委は面接の態度が悪いとの理由で不合格になった受験生の入学を一転して認めることに決定した。現在すでに他校へ通学している一年生に対して当初の希望校入学を許可するらしい。
  よく考えてみると、この対応はどこかおかしく、筋が通らないのではないか。これでは面接試験をやる意味がないと思う。家庭の事情のようなプライバシーの理由で不合格にしたなら、その理不尽さは糾弾されてしかるべきである。だが、このケースは、学力以外の人物評定の場で、受験校の教育関係者がその学校のカラーに合わない行儀の悪さに不合格の烙印を押したのだ。それにも関わらず学校側が下した面接評価は認められず、逆に態度の悪かった生徒が合格になるという。この措置はやはりおかしい。その生徒がいまさら入学し直したところで、学校、同級生、保護者の間にしこりが残り、教育的な見地から好ましくないのではないかと思う。それより何より、その生徒にとって一旦拒否された高校へ入りなおすことが、本人にとって幸せなことなのかどうか、県教委は考えたことがあるのだろうか。それと肝心要の入学を認めた基準と根拠は何なのか、はっきりさせる必要がある。ご意見番としては、どうも納得がいかない。
3622008年5月10日(土) ビルマの被災民が気の毒だ。
 今月2日、3日にビルマ南部を襲ったサイクロンの被害が、想像もできないほど酷いものだったようだ。ビルマ政府が外国人ジャーナリストの受け入れを頑なに拒絶しているため、中々真実を伝える正確な映像が入ってこないが、断片的な映像では目を覆いたくなるようなシーンばかりだ。
   ビルマ軍政の無情な対応は、当初海外から支援物資は一切断るというものだった。しかし、あまりにも甚大な被害が明らかになるにつれて、物資の援助は受け入れるが人的支援は必要ないというもに変わった。だが、とても普通の感覚ではない。それでいて、被災現場で援助活動に精出すビルマ軍人の姿は皆無である。こうして、被災者はどんどん増えていく。食糧が不足し、疫病が流行り、住むところがなく、家族を亡くして将来への希望を失い、それでもなお国家は国民を見捨てたままにしまうのか。あまりにもむごい。しかも、海外からの援助物資を政府の人間がネコババしているらしい。被災に遭った人々があまりにも気の毒である。さすがに見るに見かねてアメリカも、サイクロン被災者の援助を優先的に行うようビルマ政府にお願い?しているありさまである。
   そこへ今日非常識にも、新憲法案の可否を問う国民投票が、被災地を除くビルマ各地で行われた。悪評さくさくの新法案である。多分軍政の思惑通り、新憲法案は承認されるのだろう。
   それにしても、サイクロン被災の現場周辺に軍関係者、政府関係者の姿がほとんど見られないのは、どういうことだろうか。援助活動の指揮は誰が担っているのか。国家として成り立っていないのではないだろうか。あのビルマが酷い国に成り果てたというのが実感である。
   多くの国の中でも、最も国民性が素晴らしいと思っているビルマだが、国のトップが機能不全を曝け出し、これだけ無責任、無能、非情、非民主的、私利私欲だと国民があまりにも気の毒で可哀想である。
   さて、今日は結婚記念日だったので、妻と車で玉川高島屋へ出かけディナーで祝った。いつの間にやら39回目になった。25周年のときは、カナダへ銀婚旅行に行ったので、来年の40周年には、またどこかへ行こうかと思っている。
3632008年5月11日(日) 再びビルマへの熱い想い
 部屋をリメイクしようと先日デパートで机と本立て2竿を買ったが、今日配送されてきたので、早速部屋を整理する。本を買っては書斎内に手当たり次第に積み重ねていたので、いつの間にか大分溜まって足の踏み場もなくなっている。本立ては五段のものを二つ購入したのだが、それでも足りずどうすべきか考えあぐねている。どうもいま流行の「整理術」がうまくない。まったく同じ書が2種類も出てきて、そのうかつさと無駄遣いに自分でも呆れている。
 整理していた小物類の中で、サイクロン被害により、いま世界中の人々からお見舞いの気持ちを受けているビルマの民芸品が、いくつも出てきて、ついビルマへの郷愁が募ってくる。年々ビルマの友人、知人との連絡も細くなっている。いまコンスタントに手紙のやり取りをしているのは、たった二人になってしまった。あとニューヨークにひとりいる。
 一説には、被災者は150万人とも言われている。国民生活が危機に瀕している最中、やはり一部の地域を除いて新憲法案の是非を問う国民投票が強行された。この結果が出るのは、延期された地域の結果を待つので、相当遅くなるとは思うが、結果的にはどう出ようと意味のないものになるだろう。いまのところ、日本の援助は最高額のようである。いまでこそ軍政体制でお互いにあまり友好的な付き合いではないが、かつては極めて良い互恵的な関係にあった。特に、戦時中日本軍がビルマに迷惑をかけたというお詫びと反省の意味から、戦後賠償を奮発して、率先してビルマには援助を惜しまなかった。それを憶えているビルマの人たちは多い。ビルマを訪れて嫌な印象を持つことはまずない。少し滞在すると、ビルマという牧歌的な大地と素朴なビルマ人の良さがじわっと分かってくる。それが「ビルキチ」(ビルマ狂いの意)が、いっぱいいる理由である。いまのタン・シュエ政権は強引で独裁的な統治で、ビルマの国際的なイメージをどんどん壊している。国際的にビルマという国が、このように独裁的で、他国の忠告を一切聞かず、悪い意味の唯我独尊の国家との固定観念が定着するのが残念であり、それが一番心配だ。
3642008年5月12日(月) 「グリーン・ツーリズム」セミナー
 テレビニュースでは、今日もビルマのサイクロン被災の様子を伝えている。やりきれない思いである。些少ではあるが、今日近くの郵便局から日本赤十字社へサイクロン被災の義捐金を送った。女性係員からビルマとサイクロンについて尋ねられたので、知る限りで説明してあげたが、ビルマが一般的にあまり知られていないことを痛感した。
 この後毎月定例のJN協会観光立国セミナーへ出かけた。
 財団法人「都市農山漁村交流活性化機構」専務理事・斎藤章一氏による「グリーン・ツーリズムから見た観光立国」がテーマで、実績、実例を挙げて中々興味深い話をされた。財団の狙いとしては、こどもたちに農山漁村で体験学習をしてもらうこと、グリーン・ツアーを企画することによって各地域で頑張っている「おかあさん」民宿を紹介する、等々を心がけていることを知った。農山漁村を核に、町おこし・村おこしを仕掛ける試みだと理解した。推薦する民宿には外国からも多くの観光客が押し寄せて、思うように予約が取れないほど盛況らしい。初めての農山漁村におけるミーティングに参加したこどもたちが感激したとか、地方の温かいホスピタリティーに接して癒され、グリーン・ツーリズムが顕在化してきたと、めでたい話ばかり聞かされたように思ったが、一方で手放しでは喜べない点もあるのではないかと考えざるを得ない。
 グリーン・ツーリズム自体の発想は大いに結構だが、それはいま健全に発展している農山漁村が、これからも時代の流れに後れないように援助、支援していこうとするプロジェクトのように見える。過疎化が進む農山漁村や、廃村化した農山漁村はまったく対象にはなっていないと思う。これらの地域に対しては前者に対する理念でどう対応するのかが描かれていない。
 このプロジェクトのために、国家がらみで財団まで作り、自治体や農協、その他の団体と手を携えながら、グリーン・ツーリズムを推進する目的がいま少し分かりにくい。加えて、はたして国がそこまでやる必要があるだろうかと疑問も感じた。
 質問するのは差し控えたが、次の点ははっきりしている。わが国の農政は完全に失敗した。それは一過性ではなく、失政の影響はいまも全国的に尾を引いている。米の減反政策は、まさにその典型であろう。わが国の食糧自給率は40%を下回り、先進国の中でもその割合が極端に低く、中でも主食の米すら外国産米を輸入している。これら今に至る食糧不足の元凶は、明らかに米の減反政策の結果である。それを国策として指導したのは、この財団の親分格の農水省ではないか。講師の斎藤氏は、99年1月の農水省退職前は、関東農政局長の要職を務めた方であり、農政大失政を担った中心人物のひとりだったのではないだろうか。講師に対して斯様な私見を抱くのは、申し訳ないと思いつつ、どうも違和感が拭えない。いま自分たちの失政のツケを、農水省と財団ともども、その万分の一でも返そうと考えているとしたら筋違いではないかとつい邪推してしまうのである。
 今日午後中国四川省でM7.8の大地震に襲われ、死者は6千人を超えたという。まだ、多くの犠牲者が出そうだ。
3652008年5月13日(火) 駒沢大学公開講座始まる。
 今日から近くの駒沢大学マス・コミュニケーション研究所で開講される公開講座の最初の授業に出席した。立地的には自宅から比較的近いので、多摩大学に比べて助かる。往路は徒歩で25分かけ、復路は大学キャンパス前から東急コーチのデマンドバスで自宅近くまで帰ってきた。
   キャンパスの場所、設備ともに申し分ない。特に、施設の旧所有者は三越だったが、それを買い取り、その後新しい6階建ての校舎を新築したものだ。初めて建物内部へ入ってみてそんじょそこらの安普請のビルとは少々違うと感じた。とても大学の建物とは思えないほど、全体的に格調高い。内部の雰囲気、建物の素材、空間スペース、高級感、AV設備など、大学でもこんなに金をかけて立派な施設を作るのかと感動してしまった。
 この公開講座は、大学のマス・コミュニケーション研究所というところが、学生と一般社会人を対象に、マスコミについて基本的な知識を授けようと公開したものだ。、毎週4日というのは少々きついので、今日の授業内容も検討して選択授業を絞りたいと考えている。
 今日の2科目はいずれも実際にマス・メディアの現場で取材、報道活動をされた元記者で、体験談や考え方に現場出身者ならではのリアル感があり、感銘を受けた。いずれの授業も、多摩大のような大講堂で一方的に講義をするのではなく、日本テレビ出身の菱山郁朗講師による「現代メディアと報道論」は受講生約40名、共同通信出身の片山正彦講師による「報道メディア論−体験的マスコミ入門講座」の受講生は約20名と割合ゼミ的規模で、双方向コミュニケーションが図れるサイズである。有名で偉い先生の講演ならやむを得ないが、じっくり話を聞こうとするなら、やはり少人数に限る。その点では、この公開講座は講座規模に併せて、受講料も安く理想的である。両講師とも自己紹介と質疑を通じて話をする機会があったが、こちらの求めるものと講師の望むものが割合近いように感じた。菱山講師には、1月の韓国・利川地区における倉庫爆発事故が日本で報道されない理由をぶつけてみた。とりあえず受けてもらっているので、次回どういう考えを話されるか、楽しみにしている。聴講学生は、マスコミ志望者が多いようだ。
 さて、昨日起きた中国・四川省の大地震は、死者が1万2千名を超えた。温家宝首相が現地で救援活動を指揮している。それだけ、中国政府としてもこの災害を重視していることが分かる。倒壊した建物は、トルコ地震の際見たように、ほとんど鉄骨にレンガを重ねただけで、耐震構造にはなっていないようだ。それが、昼間の災害にも拘らず、ビル内部の人たちが逃げ遅れた原因だと思う。
 一方で、ビルマのサイクロンは、死者・行方不明者が6万人を超えた。コレラ患者が現れた。にも拘らず、軍政は、支援活動に当る外国人の入国を拒んでいる。国連も苦りきっている。
3662008年5月14日(水) HP開設1周年、アクセス数は7120でした。
 昨日に続き、今日も駒沢大学マス・コミュニケーション研究所の公開講座に出席した。マスコミ志望の学生と一緒で20名足らずの受講生である。科目は「マスメディアの役割と将来」で、元毎日新聞記者、元講談社「日刊げんだい」編集長の赤羽紀元講師が、「ジャーナリズムとは何か」について話された。昨日の二人の講師と同様、取材現場の経験が豊富な方で、話に厚みがある。新聞業界の金言、戒め、心得、専門的な言葉、種別、カテゴリー等について内部の人が知りうる話をされた。知らなかった話も多く、これからもどんな話をしてもらえるか楽しみである。幸い興味のあるマス・メディア関係の話ばかりなので、自分自身の著述活動のうえにも参考になる。昨日片山講師も話されていた報道現場見学について、今日赤羽講師も触れておられたので、通信社や新聞社の見学を久しぶりに、子供のころとはまったく別の視点で観察できることはありがたい。
 さて、昨年の5月15日、五・一五事件記念日にホームページを開設したが、今日でちょうど一年になった。当初このブログ「ご意見番の意見」も果たして毎日続けて書いていけるかどうか随分気になっていたが、何とか一日も欠かさず一年間を通して書き続けることができた。僭越だが、自分の忍耐力と継続力、自己啓発力がさして衰えず、いまだ発展途上にある証明でもあると思っている。いま話題のチベットへ旅行した折にも、PCを持参して、チベット鉄道の車内でも書き続けたことは、いまにして思えば良い想い出になった。HPの体裁や内容自体は、率直に言ってやはり素人臭さが抜けていないと感じている。今後「写真自分史」を始め少しずつ更新していきたいと考えている。自分が書いた文章をどんな形にせよ、発表し残せるというのは、嬉しいことであり、ひとつのモチベーションになる。友人も結構見てくれているようだし、見ず知らずのデンマークの日本人ガイドさんからもメールで相談を受けた。コミュニケーションの幅が自分の知らないところでもどんどん広がっているようだ。アクセス数は7100を超えたが、これが個人HPへのアクセスとして多いのか少ないのかは分からない。しかし、これだけ多くの方々に、拙いHPを覗いていただいているということは励みになり、正直嬉しいことである。いまは素直にHPを公開して良かったというのが本音だ。これからはもう少し工夫して個人のHPとして、ここまでやるかと言われるまでに興味深いHPに磨いていきたい。
 一昨日発生した中国・四川省の大地震は、その後時間の経過とともに惨状が明らかになってきた。震源地近くの山間地には河川があり、道路はその河川に沿って走っているために、陥没したり、めくれ上がったり、道路が完全に決壊している。このため救援隊が被災地へ辿り着けず、被害を大きくしている。軍隊も船と徒歩で救援に向かっている。チベットで挫折し、五輪聖火リレーで躓き、ここで大地震に遭遇し、いま中国政府は正念場を迎えている。しかし、国民の批判の矛先を逸らそうと救出の感激的シーンを率先して放送させるなど、マス・メディアを通じて「やらせ」らしきパフォーマンスを奨励したり、相変わらず中国政府のやることはせこい。これまでに、12,000人以上の死者、24,000人以上が生き埋めになり、行方不明者は8,000人以上と言われている。まだまだ被害は増えそうだ。
 もうひとつの自然災害であるビルマのサイクロン被害は、昨日時点で死者34,000人、行方不明者28,000人と発表された。しかし、アメリカ政府は軍政当局の発表を信用せず、死者は10万人以上と言っている。
3672008年5月15日(木) 先輩の八百昭典さん逝く。
 多摩大学・現代世界解析講座第4回講座は、沈才彬多摩大教授による講演「中国の台頭と世界の潮流」だった。中国出身の中国問題専門家で、且O井物産戦略研究所出身らしくふんだんな資料を駆使しながら、得意の分野について持論を展開された。中国の今後の動向、米中関係、日中関係の行方、中国とのビジネスチャンスとリスク等について、独自の分析をされ、持ち時間の1時間半を甲高い声で淀みなくしゃべり続け、そのエネルギーにも感心させられた。
 寺島実郎氏の講義では、毎度たっぷりいただく資料を講義内容の補足に充てているが、三井物産戦略研究所で15年間も寺島氏の薫陶を受けた沈教授らしく、数値資料はなかなか得難く参考になるものである。
 中国台頭の例として、携帯電話、乗用車、株式の伸展具合を説明されたが、携帯電話普及台数が資本主義を導入した1989年の政府予測を、11年間で百倍も上回ったこと、1989年には中国には株式市場もなかったが、2007年の上海株式市場総資産(4兆2千億$)が世界4位となり、第2位の東京市場(4兆6千億$)を射程圏内に捉えたこと、等は面白い比較だった。やはり三井物産戦略研究所グループのスタッフの使う資料は、三井物産のネットワークを活用して世界中から収集したものであり、斬新で効果的なものだ。それにしても、沈教授の話し方は、第一回の際司会役の印象からするとあまり期待できそうに見えなかったが、中々どうして説得力があり、熱意も感じられて中国に関して良い話を聞いたと感じた。
 サラリーマン時代にお世話になった、会社の先輩で元同僚の八百昭典さんが昨晩亡くなられた。3月25日に入院先の東海大学病院へお見舞いに伺ったときは、手術も終え結構元気そうでいろいろな話もしたので、突然の訃報にまさかという思いである。私より10歳年長でいながら、得意のセールス力を活かし、嘱託としてまだ働いておられた。お得意様に対する接遇に見る、頭が下がるくらいの徹底したセールスマンシップには随分教えられた。私自身は海外業務を主に取り組んできたが、国内・海外両分野を取り扱った部署でともに働いたときには、顧客の気持ちをつかむ極意のようなものを教えてもらった。八百さん自身が長い営業活動の中から自分で習得したもので、とても他の人には真似のできないことばかりである。八百さんと国内の僻地や、離島に一緒に出かけたおかげで、全国各地に足を踏み入れることもできた。テレビで利尻・礼文、隠岐、五島列島、屋久島等の画像を見ると、いつも八百さんと一緒に訪れたことが懐かしく思い出される。それらの土地へ行くことができたのは、本当に八百さんのおかげである。思い出は尽きないが、いまはただご冥福をお祈りしたい。 合掌
3682008年5月16日(金) 健康状態が少々気になる。
 11月、1月、3月の血液検査で、両膝の炎症度(CRP)が「1.27」、「1.23」、「2.22」と悪くなっている(0.3以下なら問題ない)。昨年の8月「0.39」までは順調に回復して、あと一歩というところまで来ていたが、夏以後検査のたびに悪くなって、今日分かった先週の検査結果では、また一段と悪くなって「4.49」となった。ショック! 加えて、森内科医のサジェスチョンで検査に加えてもらった「前立腺」検査の結果が、軽いながらもPSA「4.2」という数値が表れた。松本整形外科医によると、4以下ならまったく問題ないが、一応泌尿器科の専門医に診てもらった方がよいでしょうとの診断アドバイスだった。今から思えば、3年前の人間ドック検査で前立腺には黄信号が出た。たいしたことはないと高を括り放っておいたが、一昨年、昨年と続けて何のシグナルも表れなかった。あるいは、その時すぐ専門医に相談すれば良かったかもしれない。
   昨夏以降両膝の炎症によって体調が悪いとの自覚症状はなく、むしろ良くなっていると感じていたが、今日の数値には、松本先生も私もがっくり落ち込んでしまった。来週森内科医と相談して、泌尿器科で診てもらうかどうかを決めたいと思う。長い間健康だとばかり信じきっていた身体だが、年齢とともに衰えは確実にやってきている。日常生活上困るということはまずないが、若いときのようにはいかない。これからは、いつも自分の健康をチェックしながら生活していくようになる。
 今夜の八百さんのお通夜には、会社関係者、お取引関係者、知人ら大勢が弔問に来られた。懐かしい人々にも会えて、それなりに懐旧談で盛り上がったが、何といっても八百さんがもういなくなったのは寂しい。
 中国・四川省の大地震も大変である。近くのダムの壁にひびが入ったとの報道があったが、もし決壊でもしようものなら今回の大地震を上回る犠牲者が出るのではないか。この間ビルマのサイクロン災害報道が少なかったが、ビルマの自然災害も多くの犠牲者を出している。
   今日中国には何とか日本の救援隊が入国した。一方、ビルマでは相変わらず、外国から人的支援は受けないとビルマ軍政はかたくなに外国からの人的援助を拒んでいる。すでに、死者と行方不明者が7万人を超えた。その中で、10日に被災地を除いて国民投票を行った。被災地域を除外した全投票数のうち、実に92.4%が新憲法法案を賛成したと発表された。今までの軍政の統治ぶりを見て、誰もこんな好い加減な得票率を信じられるわけがない。よくやるなぁというのが皮肉な実感である。この結果をビルマ国内の内政問題として世界がすんなり認めるかどうか。
3692008年5月17日(土) 子どもに携帯電話は必要ない!
 今日政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾塾長)は、小中学生の携帯電話の使用を制限することを提案したらしい。自主的な規制ではなく、こんなことまで国がらみで規制しなければならないとは情けない。持参させる親にもそれなりの理由があるのだろうが、教育的配慮がなされずに、自分たちの言い分や都合ばかりを優先して、本当に子どもに携帯電話を持たせ、自由に使用させる必要があるのかという肝心な論点を避けている。そうでなくても、問題の多い出会い系サイトへ容易にアクセスできたり、費用もかかる。小さな子どもにとって決してプラスになるものではない。
   大人だって本当に携帯電話の利便性を仕事や生活に有効に活かしているだろうか。かなり無駄な使い方をしているのではないかと思う。電車内でもメールに夢中の若者をよく見かけるが、彼らにはまるで周囲の様子が分かっていない。まったく他人のことを気にしない。自分勝手に自分のペースを守っている。一方で、これを個人の自由だからと見過ごし鷹揚に見る空気がある。しかし、彼らの周りを見てみると、ひたすら携帯画面を見ながら何事かをやっている。どんなに車内が混んでこようと夢中になって携帯を打っているのだ。荷物が他の乗客の邪魔になろうと、お年寄りが乗ってこようと席を譲ることなどお構いなしなのである。これに似た癖を子どもの頃からつけさせるのが、小中学生の携帯電話だ。これは別に携帯電話だけに限ったことではないが、いま問題視された携帯電話について、本質的な議論をして、ダメなものはダメとはっきり結論を出した方がよい。
 さて、中国・四川省の大地震とビルマのサイクロンは、相変わらず毎日惨状を映し出している。四川省では、これから洪水も心配されているようだ。死者2万9千人に達した。日本の国際緊急援助隊の活躍ぶりが中国国内で感謝されていると報じられている。ビルマでは、死者が7万7千人、行方不明者は5万9千人である。ビルマは、友好国のタイ、インドからの人的援助以外まったく受け入れを認めていない。朝日朝刊には、「『救援強行』揺れる国連」と題して解説記事が掲載されている。いまのビルマ軍政の人的援助拒否が被害を大きくしており、これは人災であると国連安保理事会でも大きな問題になってきた。フランスと中国の立場が大きく対立している。国際社会はその国の主権を侵してでも救援を強行すべきか、否かとの重い問いを突きつけている。いまも犠牲者の数は増えている。まったくやりきれない。
3702008年5月18日(日) 政治家と役人の利得を失くせ!
 いま野党では共産党を含む国会議員の間で、この4月に実施されたばかりの後期高齢者医療制度を元へ戻すという一点だけで合意し、近く国会へそのための法案を提出するという。国はこれだけ反対の強い医療制度をよくも国民に充分説明もせず、実施へ踏み切ったものだと思う。典型的なKYと傲岸不遜の如からしむところだ。自民党内部にも長老を始めとして、反対者が多いところから推察すると、党内でも充分な根回しがなされなかったとみえる。結局与党幹部が大枠を決めて官僚が筋書きを書き、それを与党内で追認したものと思われる。誰も国民、特に該当者の苦悩なぞ分かっちゃいない。
 しかし、よく考えてみれば、反対が多そうなことぐらい分かりそうな新医療制度を、敢えて僅かな検討期間のうちにまとめてしまったのは、政治家のあなた任せと官僚のしたたかさ、及び非情だろう。突き詰めれば、本質的な問題は政治家が自らの責務を果たさないことと、官僚がやり過ぎることに起因していると思う。
 日本の社会は、主に金を稼がず権威だけを振り回す政治家と役人によって運営されている。その彼らが国家の財産の使い道を考え、方向を定めていくのだが、他人のためになすべきことが分からない人間に、実際そんなことができるわけがない。結局政治家も役人も権威を振りかざしているだけなのだ。
 政治家と役人が、国家にとってマイナス行動へばかり走るのは、世間、一般社会のことがよく分からないからである。本当の意味で世の動きが分かる世間と接触していないからだ。分かりやすく言えば、苦情処理の経験がないことが、社会人としての基礎や資質を磨く機会を逸している。政治家と役人には、実際に社会の第一線で自ら苦情に対応する機会を持ち、庶民の苦悩を知り、社会をもっと広く学んでもらいたい。
 さて、前段の後期高齢者医療制度の法案について、仮に元に戻すことになったら、この間の時間とこれに費やされた費用はまったく無駄だったということになる。率直に言えば、政治家の無駄遣いである。世間を騒がせ、年寄りを心配させ、そのうえ時間と国家の金を浪費して、はたして与野党の政治家は立つ瀬があるのかと問いたい。
 時間はかかるかも知れないが、国民の総意で政治家にとっては黙っていても当選するシステムで庇護されている「世襲制度」を廃止することである。そして、一旦役人になれば墓場まで恵まれている役人の役得をすべてなくすことである。
3712008年5月19日(月) 「安野光雅・絵本三国志展」を見学する。
 今月末開催の「JAPAN NOW観光情報協会」総会に向けた企画会議が開かれたが、総会後のシンポジウムの計画と内容について、白沢事務局長からあらましの説明があった。今年度も全国各地でいくつかのセミナーや、シンポジウムを開催する予定である。当初は7月にJN協会九州支部総会を宮崎市で開催し、その場合はゲスト・スピーカーとして、人気者・東国原宮崎県知事をお呼びする予定だったが、観光業界関係者の集客等を考慮して、福岡開催に変更となった。ちょっとがっかり。昨年各地のセミナーには、一度も参加しなかったが、今年は一度くらい参加したいと思っている。
   会議中にいつもながら須田寛副理事長(JR東海相談役)が話されるJR東海のリニアモーターカー計画を始め、鉄道、観光情報は専門家としての裏付けのある話なので、中々興味津々である。
   会議終了後、恒例のパソコン個人指導受講前の間隙を縫って、日本橋・高島屋で開催されている「安野光雅・絵本三国志展」見学に出かけた。先日招待券をいただきながら、うっかりしていて今日が最終日だと気がついたのは、今朝になってからだった。やはり、最後の一日とあって、かなり多くの人が見学に訪れていた。会場内はそれほど広くはないが、安野の絵を上手に、要領よく展示しているので、混んでいても見にくいということはなく、100枚近い絵を解説文とともに一時間半かけて一通り鑑賞することができた。
   安野の絵は、絵本をスタートに旅ものや、歴史物に精彩を放っている。シルクロードや平家物語も絵本化しているが、個性的で独特の筆遣いに人気がある。週刊朝日に三国志を連載中だが、予定の絵を書き終えたのを機に、大阪と東京で展示会を開催したという。
   一見して見学者に年配の女性客が多かったのは、意外だった。この種の展示会は近年女性が多いとは聞いていたが、展示内容が内容だけに男女の割合が4:6で男が少ないというのは予想していなかった。呉、蜀、魏三国の国盗り物語が話の中心で、いわば戦国物語であり、登場人物も賢人、英雄、豪傑等多士済々である。女性は、妖婦「ちょうせん」ぐらいしか印象に残っていない。にも拘らず、女性に人気があるのは、この三国志というストーリーが、それだけ性別を問わず、血沸き肉踊るストーリー性と壮大なロマンを含んでいるからだろうか。
   実際一枚一枚の絵に時代性が感じられたことと、何箇所かは自分でも訪れて土地柄も何となく分かっているので、余計懐かしさと思い込みが出てくる。絵を見ているだけで、ストーリーが思い出され、三国志の時代へイメージが飛躍するから面白い。
   読んだのは吉川英治もので、もうストーリーの細部までは憶えていないが、あらすじと登場人物は今でも強く印象に残っている。久しぶりに展示会を満喫した。
3722008年5月20日(火) 成田空港開港30周年
 今日は成田空港が開港して、ちょうど30周年になる。開港直前の反対派による空港施設破壊事件が、確かその40日前だった。予定されていた新空港開港は延期された。成田を想定してすべて準備を進めていたが、旅行業者にとっては面倒なことに、顧客に再び羽田空港から離着陸する連絡をしなければならなくなった。やけくそになり、どうでもいいからどっちの空港かに決めてくれというのが、本音であり、ささやかな抵抗だった。あれから30年が経過したが、旅行業者の中にもこの成田空港開港前後の騒ぎを実感として知っている人はもう数少ないと思う。時の流れは速い。改めて「光陰矢のごとし」を感じる。
 駒沢大マスコミ研究所の公開講座は2時限の筈が、一時限休講となり、現代メディア論の片山講師だけとなった。受講は社会人3人に学生10人で、授業を受ける側から言えば、受講生が少ないのは恵まれている。
   テーマは学生を対象に「ジャーナリスト志望者へ」と題して、共同通信社の入社前教育のDVDを見せて、ジャーナリストとしての心構えとか、記事の書き方のポイントみたいなものを説明された。元々興味のあるテーマなので、参考になる。ただ、受講しているのがマスコミ志望の学生にも関わらず、新聞を毎日読んでいる学生はたった二人きりというのは、ちょっと驚きであり、失望もした。
   終わってからすぐ「酒のペンクラブ」の会合へ出かける。麹町なので乗り換えなしで、駆けつけたが、40分の遅刻だった。今日はいつもより参加者が少なかったが、反って打ち解けて話し合うことができた。初めて参加した最年長で、同姓の「近藤」姓の女性とは妙に気が合ったが、失礼ながらウワバミのような人で、最後は抜け出して帰ってきた。それにしても、こういう通が好みそうな店をよく見つけ出されるなあ、と幹事役の勝野さんのまめな努力には脱帽である。
3732008年5月21日(水)米大統領選民主党候補者はオバマ氏か?
   今年に入ってから激しい争いを繰り返していたアメリカ大統領民主党候補指名レースは、ようやく決着がつきそうだ。今日二つの州、ケンタッキーとオレゴン州で予備選が行われ、結果はオバマ氏とクリントン氏の1勝1敗だったが、一般代議員の過半数を獲得して、オバマ氏が事実上の「勝利宣言」をした。クリントン氏はなお戦いを継続する意向だが、アメリカ国内では逆転は最早難しいのではないかと考えられている。今後を考えると民主党としては、早めに候補者を決定し、共和党マケイン候補との戦いに専念したいところである。もし、このままずるずると8月の民主党全国大会まで候補者指名がずれこむと、クリントン氏の共鳴者が大統領選では共和党のマケイン氏へ投票しかねない。ましてや、黒人のオバマ氏へ投票したくない白人層は、クリントン、然らずんばマケインということになりかねない。
   私なりに昨年までは、完全にクリントン氏優位とみていた。オバマ氏の名前さえ知らなかった。それが、あれよあれよという間にオバマ氏が頭角を現し、指名レースでも最初のアイオワ州予備選に勝つや、以後ほとんど選挙戦を優位に戦ってきた。こういう勝ち方は日本ではまず考えられない。それにしても、アメリカ人というのは、こういうマラソンレースには格別根気強く付き合う国民性だ。日本人ではとてもこうは行かない。
   午後、駒沢大学の公開講座、「マス・メディアの役割と将来」を受講した。新聞の歴史や発行部数、発行新聞の変遷を通して新聞界の現状を説明してくれた。赤羽講師が元毎日新聞記者として、昨今の毎日の退潮について、ちょっと触れられたのも興味を引いた。 
   四川省大地震の被災者救助のために現地で活動していた、日本の国際緊急援助隊が昨日帰ってきた。日中両国の間に思惑の違いもあり、参加した隊員の言葉の中にも、生存者を見つけて助けたかったとの率直な声があった。現地のテレビでは活躍ぶりを伝えてはくれたが、若干食い違いがあったようだ。成田空港では、帰ってきた隊員たちを中国人留学生が出迎え、お礼を言っていたのが印象的だった。この緊急援助隊と入れ違いに、日本の医療チームが現地入りした。これもせっかく派遣したのに、現地ではどこで医療活動に携わるのかが明確でなく、手が出せないようだ。折角好意によって、必要とされる救助隊がかけつけても、連絡や話し合いが充分でなく、百%の力が発揮できないとするなら、こんなにもったいないことはない。
3742008年5月22日(木) 朝鮮問題専門家の講義を聞く。
 多摩大公開講座は今日がちょうど半分の5回目で、朝鮮問題の専門家・金美徳講師が、「今、朝鮮半島をどう考えるか」と題して豊富な資料を駆使して解説された。金講師も三井物産戦略研究所の研究員である。朝鮮半島だけに留まらず、@北東アジア経済、A北朝鮮経済、B中韓ロ北の2国間経済、と三つのテーマに分けて経済問題に限定して順次話された。とにかく朝鮮半島だけに限らず、アジア、ユーラシア全般について詳しい方である。特に、数値ばかりでなく、実情に精通しているので、説得力がある。話されるポイントと資料についてパワーポイントを使って説明されたが、早口でどんどん進まれるのでメモをとるのも大変だ。
 面白かったのは、中北関係は貿易量が一番多く、相互信頼が強いように見えるが、本心はその逆だということである。実際地下鉱物資源のように重要な原材料が北から中国へ運ばれる一方で、中国から北へ入ってくるのは、すぐ壊れるサンダルのように貧弱なものばかりで、中国が断然得をしている。朝鮮戦争の中国人義勇兵の参戦でも、彼らは朝鮮のために戦ったと賞賛されているが、そうではなく、中国人義勇兵は自国のために戦ったと考えている。加えて、両国の間には、高句麗問題が横たわっていて、北の人々の中国人に対する心情的な感情は決して良くない。高句麗問題とは、二千年前朝鮮半島の北部は中国領土だったと、近年になって中国が言い出したことから両国間にしこりとなっている問題だ。
 もう一点関心を抱いたのは、北の羅津港の地勢的な重要性に各国が目をつけていて、すでに中韓ロが狙っている。今後の物流の拠点、及びルートとして、鉄道整備が計画、施工され、そのうち3つの鉄道が注目を浴びている。それら鉄道、@図們江鉄道、A東辺道鉄道、B巴新鉄道が将来の物流の動脈となるだろう。
 また、北には物資は何でもあるという。値の高いレストランでも、食事しているのはすべて北の住民だという。富裕層も増え、桁違いの格差社会であり、韓国の見方では、北朝鮮崩壊のシナリオが描かれている。背高のっぽのホテル、「柳京ホテル」についても話が及んだ。ピョンヤンで放置されたままだった、105階建てのホテルが、16年ぶりに建築工事を再開するという。偶々今日の朝日夕刊紙上に、当ホテルについて「最近訪朝した韓国人研究家が明らかにした」と書かれていたが、その研究家とはひょっとすると金講師ではないだろうか。
 こういう話が後から後から話される。実態に即した話だから、説得力は充分である。三井物産戦略研究所の研究員はどうしてこうも自信たっぷりの解説ができるのだろう、とまさに驚きである。政府系シンクタンクだって、学者ぶってばかりいないで、手に入れた情報をもっと広く世間に公開してほしいものだ。
 これまで自分もあまりにもアジア、特に北東アジアの実態について知らなさ過ぎた。その意味では、今日の講義は「目から鱗」である。
3752008年5月23日(金) どっちもどっち、ビルマ軍政幹部と日本の政治家
 中国・四川省の大地震の死者が5万1千人を超えた。負傷者は29万人になる。一方で、ビルマのサイクロンによる死者・行方不明者は13万人以上と言われている。その中で潘基文・国連事務総長がビルマを訪れ、タン・シュエ国家平和発展評議会議長と会見し、ビルマ政府が海外各国からの援助物資や、人的支援を受けるよう「懇請」した。事務総長の意を受け、一応ビルマは要請を受け入れることを表明した。しかし、具体的な点は何にも決まっていない。
 テレビで映し出されるビルマの惨状は見るに耐えない。胸まで水に浸かりながら、小舟を引っ張っている農夫を見ていると、ビルマの雨季に訪れたときに見た同じような光景をつい思い出してしまう。四川省の地震より対応も、処理もしやすく難しくないように見えるが、事態はむしろ四川省よりよほど深刻である。ビルマの人たちはおとなしく、耐えることに馴れている。軍政はこのビルマ人の温和な性格を逆手に取って、利用しているように感じられる。それにしても軍政幹部はどうしようもない連中だ。
 四川省では、いま日本の医療チームが到着3日目にしてようやく活動を開始した。日中関係者の間で齟齬が生じたように思うが、遅ればせながら支援体制に入ったわけで、医療チームには頑張ってほしいと思う。
 こういう外国における悲惨な状況に比べて、日本ではいつまで経っても平和ボケ状態から抜け出せない。先日いかがなものかと疑問を呈した、四月にスタートした悪評の「後期高齢者医療制度」を、野党四党が足並みを揃えて、元へ戻す「後期高齢者医療法廃止法案」を参議院へ提出することになった。折角成立した大事な法律を一年間で廃案とするということ自体異例だが、そもそも現在の法律を作り、一転して廃案とする無駄と無責任を国会議員は何と心得ているのだろうか。やはり、いまの国会議員はレベルや質が低いと判断せざるを得ない。こうなったら、以前から評判の悪い「世襲制度」を始め、議員選出の全体のシステムを刷新しなければならない。当の政治家に反論があるなら、聞いてみたい。
3762008年5月24日(土) 大関琴欧洲、初優勝を飾る。
 大相撲夏場所の優勝は、14日目の今日ブルガリア出身の大関琴欧洲に決まった。最近の優勝は、モンゴル出身の二人の横綱・朝青龍と白鵬による独占状態だったので、琴欧洲の初優勝は新風を吹き込んだ感じでいい。しかもヨーロッパ人としては初めてで、日本相撲も国際的になったものだ。この琴欧洲の優勝が新鮮な感じを与えるのは、初ものづくしということに加えて、何よりも琴欧洲の誠実そうな人柄によるところが大きいと思う。
 横綱は強ければ何でも許されると言わんばかりの、傲慢不遜でルール破り、ふてぶてしい態度の横綱に引き比べ、喜びを素直に表し、言葉遣いも丁寧で、温かい人柄を偲ばせる人間性が一層相撲ファンを惹きつけるのだろう。優勝を決めた一番後の館内の拍手喝采は、横綱優勝のときに勝るとも劣らないものだった。こういう人柄の良さそうな人のインタビューは聞いているだけでもほのぼのとして、こちらまで明るい気分にさせられる。日本に来て6年足らずだそうだが、日本語も淀みなく流暢にしゃべる。
 大相撲は昨年来、しごき事件、八百長問題、横綱朝青龍モンゴル無断帰国事件、が続き文科省の注意を受けて、再生へ向け謹慎中であるにもかかわらず、新たに親方によるリンチ事件が発覚して、まるで反省が見られず救いようがない。この中で、琴欧洲の優勝、そして琴欧洲人気は、相撲界にとっては救いの神であろう。
 結局、人間は人柄が一番重要だということが琴欧洲の優勝からも見えてくる。
 さて、相変わらずビルマのサイクロン災害状況の画像が各テレビ局から流れてくる。その中で、ティン・セイン首相の災害現場視察は、あまりにも国民をバカにしている。キャスターの姜尚中・東大教授も呆れ返っていた。軍政のバカ首相は何と言ったか。数百人の哀れな被災者を前にして、「生命があるだけでも運が良かった」「自然災害はいつやってくるのか分からないので、防ぎようがない」と言ってのけた。開いた口が塞がらない。昨日トップのタン・シュエ議長が人的国際支援の受け入れを約束したにも拘らず、細目はまったく決まっていない。本当にビルマ国民のために、軍政は国際援助を受け入れる気持ちがあるのだろうか。ティン・セイン首相の前にしゃがみこんでいた被災者は、国家の責任者からこれだけ無責任で屈辱的なことを言われても、ただ黙って堪えているのだ。誰も文句も、反論も、抗議もしない。言っても聞いてもらえないと諦めているのだ。ビルマ人の従順で温和な民族性である。あまりにも気の毒で見ていられない。
3772008年5月25日(日) 内憂外患の中国
 中国四川省の大地震は、空前絶後と呼んでもよいくらいの直接被害と間接被害をもたらしそうな危ない状況になってきた。このほかに北京五輪の開催が迫り、チベット問題も未解決のままである。中国共産党の一党独裁政治がこれだけ輻輳した難問を解決できるのか、いささか疑問符が付き出した。
 中国政府は、地震の被災者が昨日現在で4,550万人に達したと発表した。死者は60,560人である。4,550万人という数は、スペインの人口に匹敵する。世界で突出した人口を抱える中国が、その全中国人のうち、30人にひとりが被災者ということになる。想像を絶する規模である。怖いのは、地震専門家が指摘していた二次災害の可能性であり、震源地の近くでベールに隠された核施設の存在である。
   二次災害について言えば、従来平地で発生した大型地震に比べて、山間部で起きた四川大地震は、崩壊した土砂が谷川に入り込み川を堰き止め湖水となり、この湖が決壊するケースが想定される。更に、脆い山肌が余震で今後も崩れ落ちると、麓の道路の復旧ができないおそれがある。町ぐるみでそのまま廃町とした地区もあるようだが、町の復興の前にやるべきことは順序立ててやらねばならない。山の崩壊、岩石の崩落を防ぎ、その後に物流の生命線である道路の復旧、そして町の再建である。気の遠くなるようなストーリーだ
 核施設の被害も心配である。政府は安全だと強調するだけで、何箇所核施設があるか、どこにあるか、どの程度の被害が発生したのか、いつもの通り一切詳らかにしない。これも大いに心配である。
 チベット問題どころではなくなったと思っていたところ、外務省報道局長はイギリスがダライ・ラマ14世の入国を認め、ブラウン首相が会談したことは、中国の内政に干渉し、中国国民の感情を傷つけたと非難し出した。中国の言い分は、自国にとって不都合で気に食わないことはすべて抗議するかのように映るが、話は逆で、むしろイギリスの外交にケチをつけているのが、中国自身ではないのか。中国がイギリスの内政に干渉しているのではないかと思えてしようがない。
 中国と付き合っていくのは、相当図太い神経と論理思考がないと難しい。
3782008年5月26日(月) 日本ペンクラブ総会
 日本ペンクラブの総会、引き続いて懇親会にも出席した。一昨年の総会席上で、決算方式と決算書の記入方に疑問を感じて質問した。民間会社の決算報告書と形式が異なり、随分分かりずらかった。そのとき応えてくれた顧問税理士がこれで正しいが、ペンクラブの各書類記入方式は国家、自治体、公共団体等が伝統的に導入している形式で、民間会社のものとはまったく違う。その辺りが誤解されやすいと補足された。その後の懇親会で件の税理士と話し合ったとき、税理士は現状は問題も多いのでペンクラブの決算書類も民間会社方式に変えた方がよいとまで言ってくれ、昨年欠席した総会から民間会社と同じ記入方式に変わった。僭越であるが、一石を投じたことになる。
 今日も総会で多くの会員から質疑があったが、そのひとつは2010年に東京でペンクラブ国際大会を開催することがほぼ内定したことだ。1957年川端康成会長の下に京都で、また1983年に井上靖会長の下に東京都内で開催され、日本国内開催は3度目である。
 もう一点は、公益団体制度が法改正により、いまのあり方と登記が変わることで、ペンクラブも定款をはじめ、活動も時代に合った制度、組織に変えていかなければならないということである。初めて知ったが、ペンクラブは文科省の認可を受けた公益団体だと思っていたが、何と外務省だという。
   懇親会の後、小中陽太郎さんのお声がかりで、東京會舘近くの新国際ビルで、ペンクラブ新入会員を祝う集まりがあった。前からよく知っている、ヨタロウ会の幹事役・瀧澤陽子さん、酒のペンクラブの西山貢さんら、楽しい人たちが集まった。他愛のない話ばかりだが、小中さんを囲むこういう文学を愛し、酒を愛する気の置けない人たちと酒を酌み交わすのは、実に楽しい。
   プロスキーヤーの三浦雄一郎さんが、今日エベレスト登頂に成功した。今年75歳の三浦さんは世界最高齢で世界最高峰登頂を目指したが、昨日76歳のネパール人の登頂により、その目標は叶えられなかった。しかし、三浦さんの心臓手術を乗り切っての冒険はすごいものだと思う。三浦さんにとって2度目のエベレスト登頂であるが、当初はチベット側から入山する予定だった。それが、チベットの暴動騒ぎにより中国政府から許可が出なくなり、ネパール側から登る予定へ変更した。その他にも多くの難題があったが、それらを克服して初志貫徹した。
   まさに快挙である。後期高齢者の入り口にも達していないわれわれとしては、励みにもなるし、もうひとふん張りしなければいけないとつくづく思う。
3792008年5月27日(火) 観光庁今秋スタート!
 昨日の日本ペンクラブに引き続き、今日はプレスセンターで「JAPAN NOW観光情報協会」の総会が開かれた。総会後に基調講演とシンポジウム、そして親睦会が行われた。
   基調講演は、国土交通省大臣官房審議官・西阪昇氏がレジュメと資料を示し、「観光立国を目指して」と題して話された。その中で観光立国を目指すわが国は予定通り、今年10月に国交省内観光部門を独立させて、新たに観光庁を発足させる。これまで観光部門の職員定員79人が観光庁になると103人に増えるらしい。新たに長官、次長、参事官2名、部長が誕生することが決まっている。観光行政に力を注ぐことは大いに賛成であるが、焼け太りとなって組織が肥大化しなければよいがと願う。第一に、定員と称しているが、こんなものがあること自体、或いはこんな考え方で行政を行おうとしていることが解せない。「定員」なんてどんな基準で設定しているのか。われわれには皆目見当もつかない。屋上屋を重ねることで、伏魔殿と化さなければよいのだが、とつい気になってしまう。
   シンポジウムは「魅力ある都市圏と観光・環境交流」と題して、中部支部長・須田寛氏、四国支部長・梅原利之氏、北陸支部長・魚住隆彬氏、分家・富山県射水市長、国土交通省・西阪審議官ら5人のパネリストに、コーディネーターは恒例により白澤事務局長が務めた。観光業界の大立者が各人の立場から、地域の特徴と活かす道を話された。
   しかし、観光行政を預かる観光庁が監督官庁として独立することによって、当然全体的にモチベーションと実効の向上が期待される。だが、実務は観光客と肌身離さず接触する旅行会社や航空会社、ホテル等の観光業界が携わるわけであり、観光庁は道筋をつけ、業界がやりやすくなるよう良い指南役になることを期待したい。さもないと笛吹けど踊らずになりかねない。
3802008年5月28日(水) 健康診断にひとつの判断
 健康診断について、去る16日に血液検査の数値を知らされ、松本整形外科医から前立腺の件で、森内科医に相談されたらどうかとアドバイスをいただいた。23日に測っていただいた数値(PSA4.2」)を持って森内科医院に相談したところ、「4.2」という数字ならまだ入り口なので、それほど深刻視することもないだろう、もう少し経過をみましょうということに相成った。当面泌尿器科医院へ行かなくて済んだ。とりあえずほっとした。前立腺の黄信号は、「4」がひとつの目安らしい。危険水域を突破したというより、警戒ランプが灯ったというところか。なんでも森内科医によれば、大体相談される人は数値が7とか8で、10の人もいるという。この数値だと完全に前立腺の検査を受けなければならないし、前立腺癌の可能性も高いとのことだった。
 先日末弟・嘉正と会ったとき、その話をしたところ、弟は1516のようなことを言っていた。当然前立腺の検査をやってもらったが、癌の恐れはないということで一安心していた。経過措置と言ったって、どうやって「4」を上回らないように健康管理をすればよいのか。年々気になることが増えてきた。ある程度はしょうがないと思っているが、それにつけても年齢なりの黄信号が出るようになったということは寂しいものだ。
 今日駒沢大学の講座では、「新聞の上手な読み方」というテーマだった。ある程度知っていることではあるが、専門家から具体的に教わるとやはりそうか、なるほどと合点がいく。
 今日中国政府が四川省大地震の救援のため、自衛隊機の派遣などを含む支援を依頼してきた。被災者が必要とするテントが不足しているので、自衛隊のテント類を自衛隊機で運んできて欲しいというのが、本音らしい。これまでの中国の日本に対する気持ち、旧日本軍の侵略戦争の記憶、などを考えると中国も随分変わったと思う。それだけ中国が被災者への救援物資の不足、緊急輸送に窮しているからだろう。
 問題は、救援要請自体はお互いさまだから、要望に応じてあげたらよいのではないかと思う。ただ、気になるのは、折衝の仕方が慣例から言えば、外交ルートを完全に逸脱している。まだ、新聞紙上でも報じられていないが、どうも中国国防省が自衛隊に連絡してきたらしい。これを防衛省が受け、官邸の知るところとなったが、この間外務省はどうしていたのか。蚊帳の外だったのではないか。これは外交交渉とは言えない。この支援依頼は緊急性を要するというほどのものではない。どうして外務省には知恵者がいないのだろうか。頼りにされていないということなのだ。恥ずかしいという気持ちにならないのだろうか。これで外務省のコンプライアンスがまた問われる。いつまで経っても外務省の外交力は一流どころか、用を成さない体たらくである。
3812008年5月29日(木) IT革命とは?
 多摩大公開講座も6回目となり、今日は折り返して寺島実郎講師2度目の登板である。冒頭受講学生たちのあまりに煩い私語に対して、寺島講師自身が直接苦言を呈した。私も先週アンケート用紙に学生の私語についてクレームを書いたが、一般の聴講生は誰もそのように感じていた筈である。いまの若者は、黙って人の話を聞く訓練ができていない。おしゃべりしていないと落ち着かないようだ。いずれにせよ困ったものだ。
 寺島氏の講義は相変わらず明快だ。特に、今日はIT革命について持論を展開された。90年代東西冷戦の終結とともに、アメリカが軍事技術を主導して各分野に活用するようになったのがそもそもIT革命の走りである。妙に面白かったのは、コンビニ、カーナビ、携帯電話等々を通して、無意識のうちにつながっていると思っているが、それらによって逆に個人情報を掌握されているということに気がついていないということだった。また、インターネットが普及したり、バーコードが広く取り入れられるようになると、容易に情報を入手することが可能になるし、末端で知力を要しない仕事にたやすく就くことができる。中間管理職者は要らなくなる。つまり、誰がやっても同じ仕事に従事する人になるか、余人を以て代えがたい人になるかである。
 一例として、ワーキング・プアを取り上げた。2007年の雇用者5,561万人中、非正規雇用者は1,732万人、年収200万円以下のワーキング・プアは1,302万人、自営業者で200万円以下の人を加えると、労働人口6,402万人のうち、200万円以下の収入で働く人の割合は34%で、2,204万人になる。これもIT革命の成せるところである。
 さらに、ITの進化は、FT(Financial Technology)との結合をもたらした。金融システムの革新である。この結果ITの発展がサブ・プライム・ローンにも及んだと話された。随分考えさせられる話だった。
 終わって、NPO「知的生産の技術研究会」久恒啓一理事長、八木哲郎会長、秋田英澪子事務局長、JALの小林尚衛さん、大分空港管制官・永留浩さん、新たに会員になった大学ゼミ後輩の遠藤靖子さんと聖蹟桜ヶ丘駅ビルで夕食をともにした。みんな向上心において引けを取らない仲間ばかりである。中々打ち解けた楽しい夕食会になった。
 昨晩遅くネパールの制憲議会は、国の王制を廃止することを決定した。15日以内に王族は、現在住居としている王宮を立ち去らなければならないという。240年もの歴史を誇った国王一族が追放される。世界的に王族が君臨すること自体時代錯誤であるが、ネパールの王族にはスキャンダルが多すぎて、すっかり国民に愛想をつかされたようだ。クーデターのような国家を揺るがすような事態によって退位するのではなく、選挙で国民が選択したわけだから、甘んじて国民の判断を受けるより仕方あるまい。ここにも「奢れる平家は久しからず」が生きていた。
3822008年5月30日(金) 自衛隊機、中国へ派遣せず。
 すったもんだした挙句に、四川省大地震の救援活動として自衛隊機派遣は取りやめとなった。自衛隊機ではなく、民間機をチャーターして、テントを主とする医療器材等の救援物資を輸送することになった。当初は中国国防省が自衛隊に直接要請し、決まりかかったとも言われていた。ところが、一方で自衛隊が中国側に働きかけたともいう。ファジーな話でさっぱり分からない。中国に勇み足があったとも聞く。災害救助という大事なことを処するのに縄張り争いとか、メンツとかどうも横道に入り出していたようである。正式な外交ルートである外務省を通さないで交渉を進めたことが、順調な交渉を頓挫させることになった。日中両国間にボタンの掛け違いもあった。中国国内には日の丸機に対するアレルギーと反日感情がある。これに対して賛成意見もあったようだが、インターネットには反対意見が大きく掲載されるようになり中国政府も慌て出し、とどのつまり交渉を両外務省間の話し合いに委ねることになり、自衛隊機派遣はキャンセルされた。
 中国国防省もお粗末だったが、蚊帳の外に置かれていた日本の外務省も些かみっともないというか、だらしがない。本件を度外視しても、近年の対外交渉に関するわが外務省の即応的な対応と折衝能力は、このところ地盤沈下する一方である。外国にやられっぱなしである。これは外交官だけの責任でなく、大いに政治家の責任でもあるが、これから日本外交の行先を考えると憂鬱になってくる。
   その中で、日本としては珍しくアメリカに追従せず、独自の判断でクラスター爆弾禁止条約に合意した。アイルランドのダブリンで開催されていたオスロ・プロセス国際会議で主催国アイルランドが提案した条約案が合意された。日本もこれに合意した。この国際会議には、最初から大量保有国の米ロ中が参加していない。有力国の不参加で、合意された条約がどれだけの効果があるのかは分からない。ただ、この爆弾の殺傷能力は桁外れで、アメリカの言い分だと、抑止力として反って有効だと都合のいい持論を振りかざしている。国内でも自衛隊は本音では合意に反対で、最終的に福田首相の決断で合意することになり、保有分を廃棄することが決まった。これからどういう道筋で、これを反対国に説得していくのか、鼎の軽重を問われる。首相が思い切って決めたことを政治家と外務省が一体となって、支えあいながら我侭大国・米ロ中へ訴え説き伏せていくのか、ひとつの試練である。
   今日は朝から随分寒い。小雨が降り、気温もぐっと冷え込んでとても初夏の気候ではない。ありふれた言い方だが、地球温暖化の影響だろうか、どうも不安定すぎる。妻・護江は学生時代の友人と軽井沢へ出かけたが、震えながら厚着をして着替えを持っていった。天気予報では軽井沢は、最低気温が7℃、最高でも10℃だというから4月初めの気候だ。東京も寒い。つい暑いビルマの人びとはどうしているだろうと気にかかる。
3832008年5月31日(土) 世界禁煙デーにひとつの話題
  中国四川省大地震の被害は日一日と増大し、死者は7万人に迫っている。ここ一両日大騒ぎだった自衛隊機派遣問題も民間機チャーター便を飛ばすことで一件落着となった。ただ、どうも怪しい解決の仕方だった節がある。
   今日シンガポールで行われた各国の防衛責任者会議で、石破防衛大臣が「中国国防省から具体的な要請はなかった。相手国の文化的、民族的事情を配慮するのは当然」と中国に対して配慮ある発言をした。これを受けて中国の馬・副参謀総長が日本に対して感謝の言葉を述べた。火のないところに煙は立たないというではないか。なんだか下手な猿芝居だ。決着がついたからいいようなものの、間違いなく最初に中国国防省が日本の防衛省に、自衛隊機で緊急支援用品を届けて欲しいと要請したのではないかと疑わせるような台詞である。
   ところで今日は「世界禁煙デー」だそうだ。喫煙が健康に良くないことは、ずっと言われ続けている。医学的にもタバコが健康を蝕んでいるということは証明され、近年は禁煙キャンペーンも普及して、年々喫煙率も下がってきた。それでも多くの人がタバコを止められない。いま、日本人男性の平均喫煙率は40%、女性は13%だが、1966年には男84%、女18%だった。
   ここへ来て日本財団・笹川陽平会長が突然「たばこ値上げ運動」をぶち上げた。笹川氏の主張は、「いま273円のタバコ代は世界の先進国の中でも安過ぎる。これを千円程度にまで値上げすれば、9兆5千億円の税収増が見込めるし、たばこを止める人が増えれば、病気が減るので国民医療費が減少する」という。確かに一面で正しい点はあるが、つい思わず笑ってしまった。タバコを吸ったことのない私も、かつて考えた一案である。しかも値も同じ千円だった。もちろんこの話にJTは猛反対だし、乱暴な話に禁煙者からも論旨がおかしい、これは後期高齢者医療制度と同じ論法だと批判的な声が挙がっている。笹川氏は立法化も目指すというが、果たしてうまい具合にいくだろうか。明日衣替えだというのに、今日の寒さはどうだろう。都内で気温14℃に、降雨というのだから堪らない。体感温度はもっと低い感じである。ついに暖房をつけてしまった。妻は軽井沢から震えながら帰ってきた。